私はSTAP細胞についての実在性を否定することはまだできないと思いますし、疑惑が出まくりであっても論文が今後どうなるかはわからないと思います。そこらへんは断定しないことを最初に宣言しておいて、以下の話。
不正疑惑に揺れる小保方晴子博士らのSTAP細胞論文について、「是非イグノーベル賞に」という皮肉がありました。しかし、それに対してSTAP細胞は捏造という立場の人から「イグノーベル賞は本人は真面目にやったのに、第三者からはおかしく見えるものに対して与えられるものであるので、捏造研究であるSTAP細胞論文はふさわしくない」といった反対意見が出ていました。
ただ、過去のイグノーベル賞の例を見ると、微妙です。確かに本人は真剣なのでしょうけど、いわゆるトンデモと言って良い研究での受賞はあります。
たとえば、1996年に生物多様性賞を受賞した日本人岡村長之助さんの"恐竜、馬、ドラゴン、王女、その他1000以上の、どれも全長0.25mm以下の絶滅した「小さい種」の化石を発見したことに対して"。
本業は名古屋の内科病院長であり、化石収集が趣味であった。
70年代~80年代にかけて、東北地方を中心とする地域の3億年前の地層からミニ原人やミニ動物を多数「発見」し、学会で発表したほか著書を世界中の大学や研究機関に贈るなど古生物学界に困惑を巻き起こした。
主な著書に、『人類および全脊椎動物誕生の地-日本』がある。
Wikipedia
研究業績
岩手県大船渡市から出土した石灰岩より、4億年前の1mmに満たないミニ人類、あらゆる種類の動物及び工芸品等の微化石を発見し、独自の進化論に昇華させた。1970年代から1980年代には古生物学会において数度の発表を行うとともに、国内外の多数の大学に論文を寄贈した(B5版の薄い研究論文の冊子。地質学研究室が設置されている大学の研究室・図書館に保存されていることがある)。岡村は研究成果を『人類および全脊椎動物誕生の地-日本』として、1983年に自費出版した。その後、1996年にイグ・ノーベル賞(生物多様性賞)を受賞して、世間に知られるようになった。
古生物学会の反応
日本古生物学会では、事前に題名を登録するだけで発表が可能であったが、岡村の発表後には提出方法が改められ、論旨を付すことが必須事項とされた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A1%E6%9D%91%E9%95%B7%E4%B9%8B%E5%8A%A9
それっぽく見える化石を冗談でたとえているのなら笑えるものなんですが、全然そうとは見えないものを無理やり解釈して、本気なのでは?とちょっと怖いものがあります。
この後引用しているサイトさんが写真付きで紹介していますが、棒人間のような姿をしているならともかく、私にはコーラの瓶程度にしか見えないの模様に詳細な説明をしていました。
コーラの瓶というのはたまに女性の姿にたとられます。写真ではミロのヴィーナスよろしく折れた腕らしきものも見えなくもありませんが、大目に見たとしてもそこまでです。
しかし、岡村長之助さんはそこで終わりません。
サイコドクターぶらり旅 - 偉大なる幻視者・岡村長之助(2)
「次に早くも出現したのは、図5の人類の完全な典型的標本である。現代女性のプロフィールとどこが違おうか。倒卵円形の頭部は高く直立して高さ0.8ミリを計測し、前頭部はよく発達して前方に突出し、したがって大きな大脳皮質前頭葉を十分に容れることができ、顔の相と同時に智力の程度を押し測ることができる。(中略)眼は入り目で両眼は鼻根に接するまでに近接して前方を見、そのため両眼視域は諸生物中最大値を示し、そして虹彩、強膜までも黒眼、白眼として識別できる。全く現代人そのままの姿であり、これは従来の化石としての概念を遙かに打ち破るものであって、既述のように屍蝋化後の石灰化が永く密封状態に置かれたものと解すべきで、微化石が幸いした現象ではなかろうか。口唇は割合に小さく見え、直線的に強く後方に退き、軽いオトガイ隆起を見せている。頭髪は波状で豊富に残っており、特にパーマネントしてあるようにも見える。パーマが肩の辺りまで垂れ下った姿は、現代女性の美を意識しての身ごなしと変りはない。前頭部には小動物像が載せてあり、他にも常に見られるもので、当時の身分をあらわす標象であったらしい」
http://archive.is/7pO3
上で中略となっているのは、引用元からその状態です。つまり、本来はもっと長かったのだと思われます。この調子で延々とやっているのですから、私は笑えるというよりも狂気を感じて怖いですわ。
前述の通りトルソー(人間の頭部・腕・足などを除いた胴体部分)に多少腕が生えた程度くらいならわからなくもないですけど、パーマの髪、前頭部の小動物像、黒眼、白眼なんかはとてもじゃないじゃ見えません。ネタ元では「黒目白目や髪の毛まで識別できるというのだ。それって……化石?」と茶化されています。
インクのしみを見せて何を想像するかで性格診断するロールシャッハ・テスト(これも批判が多い試験)をやっていただくと、長々と答えてくれそうな方です。
あとでもう一つ例をあげますが、このように必ずしもイグノーベル賞は科学的に真っ当な研究に送られるというわけではありません。検索していると、冒頭の人と同じく"イグ・ノーベル賞ってトンデモニセ科学にも賞を与えるんだね・・・"と書いて勝手に失望している人がいましたから、日本ではかなり勘違いが進んでいるようです。
このへんに関するイグノーベル賞に関する説明は、意外にも
ニコニコ大百科がなかなかいいです。
1991年に創設。企画・運営は、ネタとしか思えない研究を見つけてきては取り上げるサイエンスユーモア雑誌「風変わりな研究の年報」(Annals of Improbable Research)。世界のSF研究会などが数多く協賛する。
受賞の条件・選考基準は、『いかに人々を笑わせ、そして考えさせてくれたか』。
"ただし、日本のと学会が取り上げるようなインチキ科学・疑似科学のみを取り上げる"賞ではないとして、以下の3つに分類していました。
1.)『露骨なとんでも理論をぶち上げた人』
2.)『その道の人の記憶には永久に残るであろう(主に科学に関する)大事件を引き起こした人』
3.)『誰が得するのかわからないが偉大ではある成果を挙げた人』
ニコニコ大百科は「普通は『露骨なとんでも理論をぶち上げた人』みたいなトンデモ理論の賞だと思うでしょうが、真面目な研究も貰えるんですよ」って説明です。
一方、前述の人々は全く反対に、「『誰が得するのかわからないが偉大ではある成果を挙げた人』などに与えられるものであって、トンデモ研究は対象外だ」と勘違いなさっているようです。
イグノーベル賞のWikipediaでは、以下のような説明でした。こちらもニコニコ大百科と同じような書き方です。
イグノーベル賞の受賞条件は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」である。このため「日本トンデモ本大賞」などと同じく疑似科学者が受賞することも多く、例えばホメオパシーの信奉者ジャック・ベンベニストには1991年と1998年の2度、イグノーベル賞が贈られている。一方で、正統的な科学研究でも受賞条件を満たしていれば賞が送られる。また、受賞に不正確さなどは勘案されない。ユーモラスであれば、人類の進歩への貢献などとは無関係に選考の対象となる。
このWikipediaで出していたトンデモ研究の例である「ホメオパシーの信奉者ジャック・ベンベニスト」。この人はそもそも第1回である1991年の受賞者です。
そして、実はこのベンベニストさんも最初に話したSTAP細胞論文の話題で出ていました。しかし、それはイグノーベル賞という話題ではなく、STAP細胞がホメオパシー同様の疑似科学であるという文脈と、ネイチャーが載せた過去の大物トンデモ論文でなおかつ撤回されていない(未確認)からSTAP細胞論文もどうなるかわからんよという文脈でした。(私は今回の件で初めてこの事件を知りました)
STAP細胞論文がトンデモ論文であるかどうかは別として、このホメオパシー論文におけるネイチャーの失態はひどい話です。これについては
バンヴェニスト論文の掲載でホメオパシーを育てたネイチャーの罪に書きます。
なお、STAP細胞については科学的にほぼ否定されたとしても、「STAP細胞が都合の悪い勢力によって握りつぶされたのだ」と一部の人によって陰謀論にされるのでは?という懸念も出ていました。仮にそうなれば、これもホメオパシーの姿によく似ているということになります。
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