個人的な話ですが、STAP細胞論文問題で手一杯で寝不足気味。おかげでろくに記事も読んでいなかった武田薬品の話は今回初めて触れます。だいぶおっそいのですが、初期っぽい記事から。
武田薬品社長が謝罪 高血圧治療薬の広告「不適切」:朝日新聞デジタル 2014年3月4日00時44分
製薬大手の武田薬品工業が製造販売する高血圧治療薬「ブロプレス」の医師向けの宣伝広告に、もとになった臨床研究論文とは異なるグラフが掲載された問題で、長谷川閑史社長は3日、記者会見で「(ほかの薬と)差があると理解されかねない表現があった」と謝罪した。論文では「差がない」となっていた。(中略)
京都大などの研究チームは2006年に国際高血圧学会で報告し、08年に米心臓協会の医学誌で論文を発表した。ところが、同社の宣伝用パンフレットには学会発表のグラフを掲載し、病気が起こった率のグラフの説明について、ブロプレスが低くなるかのような表記があったという。
これについて同社は①製薬業界の広告に関する自主規制に従って論文から引用すべきなのに、学会発表のデータを使用②他の薬と効果に統計的に有意な差がないのに、誤解されるような表現があったことが不適切だったと認めた。
http://www.asahi.com/articles/ASG3375L8G33ULBJ015.html
また、降圧剤だったのか! 日本では降圧剤が超売れ筋商品であり、それだけ競争が激しく不正を犯す動機も高いのかもしれません。「ブロプレス」も確かランキング上位で名前を見かけた気がします。…今パッと検索すると、やはりディオバンとのトップ争いといった勢いの人気商品だったみたいですね。
(追記:他の降圧剤に失礼なので、「この関連のところはみんなかなり怪しいのかもしれません」と書いていたのを、「それだけ競争が激しく~」に変更しました。申し訳ありません)
しかし、ノバルティスのひどさでディオバンの使用中止が進んでいるのに、ブロプレス(一般名カンデサルタン)の武田薬品まで悪質となってしまうと…。いや、本当腐ってますね、この業界は。次から次へとひどい話が出てきて驚かされます。
このブロプレスの問題を指摘したのは、京都大学病院医師の由井芳樹さんだそうです。名前聞いたことあるぞ!と思ったら、前述のノバルティスの問題も指摘した方。日本の良心ですね。
武田薬品に飛び火する誇大広告疑惑 米医学誌で指摘した京大医師に直撃|ダイヤモンド・オンライン 2014年3月2日 週刊ダイヤモンド編集部
製薬大手ノバルティス ファーマが販売する降圧剤に関する不正論文問題を追及した京都大学病院医師、由井芳樹氏が国内最大手である武田薬品工業の降圧剤に関する論文でも疑義を呈し、ノバルティスと同様に誇大広告の疑いが出てきた。
http://diamond.jp/articles/-/49558
あるベテラン医学者は「疑義が出された論文は大抵、その時点でアウト」だとしています。そういった論文は多くの場合、「不正が行われたか、データ上に致命的な欠陥がある」ためです。
"由井氏が指摘した問題点は2つ"あります。
1つは、心血管系の病気の累積発症率をブロプレスとアムロジピンで比較したグラフについて、論文で使われたのとは異なるグラフが複数存在しているということ。もう1つは、論文に掲載されたグラフの統計処理の手法が不適切であることだ。
このうちの2つ目は最初の記事では出てきていない話かな?と思いましたが、セットみたいな感じでしょうか? 「抗がん剤のように死亡率が高く、患者にさまざまな治療が行われている病気ならまだしも、降圧剤のような治療の場合、途中でクロスすることは考えにくい」ということのようです。
なお、武田薬品の認めた"統計的に有意な差がないのに、誤解されるような表現があった"ですが、これもさらに実際の内容は悪い可能性があります。
"詳細を見ると、アムロジピンを投与した患者群に比べて、ブロプレスを投与した患者群には、利尿剤やベータ遮断剤など別の種類の降圧剤が投与されているケースが多い"
つまり、他の降圧剤を併用しなければ、ブロプレスはアムロジピンに負けていた可能性が高いのです。直接的には武田薬品というよりは研究者の問題でしょうが、いずれにせよめちゃくちゃです。
また、先ほど引用しなかった朝日新聞の"同社のこれまでの調査では、臨床研究に社員は関与しておらず、結果のデータを改ざんできる立場にもなかった"にまで、ダイヤモンド・オンラインでは踏み込んでいました。
CASE-Jのデータ管理や解析を担い、一連のグラフを作成したのは京都大学にある京大EBM研究センターだ。(中略)
もっとも京大EBMセンターでは、ほとんど業務を行っておらず、主な業務や計画は、武田の社員に丸投げし、医薬品開発支援会社のシミックとともに行っていたという疑惑もある。CASE-Jについての計画から発表までの経緯をまとめた「CASE-J物語」(先端医学社)という本が出版されており、同書の中に、その武田の社員が「システム構築に関して実質上責任者」であり、「シミックと組もう」と発言するくだりがあるのだ。
その社員は06年に学会発表が終わった後、07年3月に武田を退職し、京大EBM研究センターに移籍。08年にハイパーテンションで発表された論文には、京大EBM研究センターの職員の肩書きで掲載されている。利益相反についての記述もない。
また、"臨床研究では、誇大広告に対する医師への利益供与も疑われて"おり、"癒着があれば、ノバルティスの論文不正問題と同じ構図といえる"としていました。
同様に東洋経済オンラインの記事でも、それぞれ
ノバルティスに続き、武田薬品でも不正が発覚 東洋経済オンライン 筒井 幹雄 :東洋経済 記者 2014年03月04日
http://toyokeizai.net/articles/-/32103"問題点がよく似た構造になっていることがわかる"
武田薬品「誤解を生む表現」の裏に多くの不可解 東洋経済オンライン 岡田 広行 :東洋経済 記者 2014年03月06日
http://toyokeizai.net/articles/-/32282"不正に操作した疑いのあるデータを用いて宣伝していたノバルティスには、薬事法違反容疑で東京地検の捜査が入った。武田もおとがめなしというわけにはいかないかもしれない"
として、その類似性を指摘していました。
こちらの問題も大ごとになりそう…というか、ならないといけません。もしこのまま沈静化してしまったのなら、日本がおかしいということです。
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