認知症・アルツハイマー病の原因と予防などについての話をまとめ。<遺伝はほぼ無関係、聴力低下と低学歴などでかなり予防できる>などの話をやっています。
2022/08/06追記:
●治療薬の開発のぼ全てが失敗…20年前の重要論文が不正の可能性 【NEW】
●認知症に遺伝はほぼ無関係、聴力低下と低学歴などでかなり予防できる
2018/03/26:本題に行く前に、最初にそもそも認知症とアルツハイマー病は同じもの?という話から。
認知症とアルツハイマー病はどう違う? | 認知症フォーラムドットコムによると、「アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)」というのは認知症の一種なんだそうです。
「認知症」は病名ではなく、認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす状態をさします。現在日本では認知症を引き起こす原因のうち、6割以上がアルツハイマー病だといわれているそうです。その他の原因疾患としては、血管性認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
この認知症に関して、英医学誌「ランセット」の国際委員会が「認知症の35%は予防できる」とする研究論文を2017年7月に発表しています。複数の認知症に関する論文を統計的な手法で解析し、改善できる9つのリスク要因を指摘したそうです。
研究を指揮した英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のジル・リビングストン教授によると、最も大きな要因は、中年期(45~65歳)の聴力低下で全体の9%。中年で耳が遠くなると、9~17年後に認知症になる例が増える傾向があるそうです。
これと同じくらい多かった2位は、中等教育(12~14歳)の未修了で8%。過去にも、
認知症予防に効く高学歴とバイリンガル 低学歴は認知症が多いという話をやっていますが、リビングストン教授は「教育を受けることで、脳を活性化して認知機能を高めると同時に、食物に気を使ったり運動をしたりして健康に気を配るからだ」という説明をしていました。
(
認知症の35%は予防できる 「最大の要因は聴力低下」 2017/10/8 20:00 日本経済新聞より)
元記事のタイトルになっていた「認知症の35%は予防できる」というのは、上記2つと肥満、高血圧、65歳以上の高齢期での喫煙、うつ、活動量の低下、社会的な孤立、糖尿病を改善することで予防できるという主張。遺伝的な要因はわずか7%にすぎなかったといいます。
主に教育によって、米英、スウェーデン、オランダなどでこのようなリスク要因を改善し、生活習慣を変えると、認知症が減るという報告がすでにあるそうです。なので、認知症予防は現実的だろうと考えられているわけですね。一方、認知症の新薬開発はまだ時間がかかるだろうと否定的でした。
●アルツハイマー病治療の薬開発は全部失敗してきた…新薬はいつ?
この記事の後に、
アルツハイマー治療が新局面に:日経ビジネスDigital(2017年12月7日 フィナンシャル・タイムズ)というものが出ていました。こちらは認知症の新薬開発はまだ時間がかかるだろうと否定的だったその新薬の話で、タイトルでは前向きですね。
ただ、こちらの記事でもアルツハイマー病治療の本命とみられてきたアミロイド標的薬の治験は失敗が続いていることは認めています。判明している発症メカニズムで最も有名なのは、「アミロイド経路」。ごく最近まで、アルツハイマー病治療薬の開発はほぼ全てが、アミロイド斑を脳から除去しようとするものでしたが成功しませんでした。
そのため、脳のリンパ系や免疫系に目を向けるほかの治療法の研究へと方向性が変わってきているとのこと。英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの神経科学者でアミロイド経路の発見者であるジョン・ハーディー教授は「プロセスが進んでアミロイドが既に最大化した段階で治療を施しても遅すぎるのだ。我々は現在、患者にもっと早く治療を受けさせるよう努力している」としていました。
発症前に兆候を発見する診断法を含め、新たな手法への投資が始まっているといいます。ただ、「始まっている」という言い方ですので、どちらにせよ完成するのはまだまだ先…という話でしょう。先のリビングストン教授が「まだ時間がかかるだろう」としていたのはそういうことですね。
●治療薬の開発のぼ全てが失敗…20年前の重要論文が不正の可能性
2022/08/06追記:「アミロイド経路」でのアルツハイマー病治療薬の開発はほぼ全てが失敗してきた…という話を書いてきたのですけど、なんとこの系統における20年前の重要論文がそもそも不正研究だったかも…という話が最近になって判明しています。不正研究がなぜ悪いのか?というのが、わかりやすい例のひとつになるかもしれません。
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アルツハイマー病研究の重要論文に改ざんの疑い…2200以上の研究で引用 | Business Insider Japan(Marianne Guenot Jul. 29, 2022, 09:00 AM)
<2006年に発表され、その後のアルツハイマー病の研究に大きな影響を与えた論文に、改竄された内容が含まれている可能性があるという調査結果が、科学誌「Science」で発表された。
この調査によって、ミネソタ大学の研究者、シルヴァン・レスネ(Sylvain Lesné)を筆頭著者とする2006年の論文に画像の改竄があったことを示唆する証拠が示された。
2200以上の学術論文に参考文献として引用されたこの論文は、アルツハイマー病の早期治療の有望な標的としてアミロイドβ*56というタンパク質への関心を呼び起こした>
<彼ら(引用者注:画像解析の専門家ら)はレスネが執筆した合計20本の「疑わしい論文」を特定し、そのうち10本がアミロイドβ*56に関係するものであったとScienceは伝えている>
複数の研究者がアルツハイマー病に特化した情報サイトの「Alzforum」に対して、この結果を再現しようとしたができなかったと語っています。ただ、こうした再現実験は新発見とは異なり注目度が低く学術誌に載せてもらえない…つまり、再現実験が評価されないため、広く発表されてきませんでした。これは以前から言われている問題です。
ノーベル賞受賞者でスタンフォード大学の神経科学者であるトーマス・スードフ(Thomas Südhof)さんは、この改竄の疑いによる最も「明白な」影響は「NIH資金の浪費と研究現場での思考の浪費」だろうとしていました。また、これにより薬の開発が遅れたことで、アルツハイマー病患者の人にも被害を与えたと言えるかもしれません。これもまた不正研究が悪いと言える理由です。
なお、レスネ論文の共著者であるカレン・アッシュ(Karen Hsiao Ashe)さん単独の研究では、不正は見つかっていません。彼女の実験室所属の科学者が実験用マウスで「定期的にアミロイドβ*56を検出しており、再現性もある」と説明。依然として、アルツハイマー病がアミロイドβ*56と関連していると考えているそうです。
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