ネイチャーに掲載されたSTAP細胞論文の疑義が深くなってきたことについて、海外の反応が知りたいなと思っていたのですが、ほとんど記事になっていませんでした。
しかし、ここに来て長文の力の入った記事が! どうも著者が医師で研究者、しかも、今回の件での当事者の1人が所属するハーバード大で研究しているといいますので、関心があるのは当然かもしれません。
「STAP細胞」騒動「ハーバード大学」研究者たちはこう見る|Foresight(フォーサイト)執筆者:大西睦子 2014年3月17日
(引用者注:STAP細胞論文発表の)3週間後の2月19日、地元紙の『ボストングローブ』が、この論文に関する、画像の使い回しなどの疑惑を報道しました。
ただし、この頃はボストングローブ紙以外のニュースは、この問題を それほど取り上げていませんでしたので、日本人以外の仲間は、まだ単純ミスの連発くらいの認識でした。その辺は日本の報道とかなり温度差がありました。(中略)周囲の仲間たちの間で は、再現性の結果を待つ、という意見が多かったのです。
http://www.fsight.jp/25092
疑惑発生時のニュースは海外でも結構報道されました。しかし、その後の疑惑がだんだんと色濃くなってくるあたりは、どうも報道されていなかった感じがあります。
いつも海外メディアの反応を取り上げるNewSphereさんの以下の記事ですが、最初の疑惑発生の第一報からかなり間が開いています。
STAP細胞研究“間違いとするのは時期尚早” 海外メディアは静観の構え | NewSphere(ニュースフィア) 更新日:2014年3月12日
ロイター紙は、イギリスの国立医学研究所の幹細胞専門家、ロビン・ラベル=バッジ教授の言葉を引用し、研究が間違っているという仮定について、時期尚早であると警鐘を鳴らす。「私はこの件について偏見を持たない」とラベル=バッジ教授はロイター紙に語った。「メソッドが再現可能かどうかについて、各地の研究所からの報告を待っている」
ネイチャー誌のスポークスマンは、「この論文に関する問題」はネイチャー誌の注意を引き、調査が行われると述べ、それ以上のことは明らかにされていない。理研は内外の科学者のパネルによって調査を行い、結論に到達しだい公表する。ロイター紙もウォール・ストリート・ジャーナル紙も共に、調査結果を待つ構えのようだ。
http://newsphere.jp/national/20140312-2/
メディア報道とは少し別の話になりますが、この間の時期に海外の研究者は「関心を失った」という面もあったのではないか?と思います。容易さを大きな売りにしていたSTAP細胞の再現実験が全然成功しないということで関心を失ったのか、追試を掲載していた海外サイトも途中からほとんどカキコミがなくなっていました。
こうした追試失敗で要望されて理研の発表した実験手順(プロトコル)を彼らが読んだかどうかはわかりませんが、日本の研究者らが言うには「これ読んだら誰も再現実験なんかしないよね」というひどい内容でした。しかも、ネイチャー論文で主張していたはずのSTAP細胞の画期性も否定、再生医学の分野の専門家にとっては、STAP細胞はもうこの時点でほぼ終了していました。
最初の記事に戻ります。私が意外だったのは「再現性の結果を待つ」という姿勢の中でも、"彼女が何も言わなければ 、この件は彼女の罪なのだ"として、筆者の周囲の研究者たちが「小保方氏は、まず声明をすぐに出すべき」と強調していたことです。
私は疑惑発生直後に小保方晴子さんがネイチャーに対して説明責任を果たさなかったことは非難しましたが、それ以外の点は特に重視していませんでした。理研の会見においてもその点をマスコミが追求していたものの、私自身は興味なかったため引用もしていません。ネットでも「小保方晴子さんを晒し者にしたいだけだろう。マスコミに応じる必要はない」とマスコミ叩きをしていました。
ところが、海外の研究者ではもっと早い段階から、小保方晴子さん自身が説明責任を果たすべきという考え方だったようです。そういえば、日本国内でも本職の人からはそういう声が結構上がっていた気がします。ここらへんは一般人と専門家で感覚が異なるようです。
さて、報道の途絶えていたアメリカのメディアですが、3月10日に『Nature』から"この問題に関する経緯と編集部としての見解も含めた記事"を出したことで、報道を再開したようです。同時期に日本では"論文に使用されている画像が、まったく別の実験である小保方氏の博士論文の複製"だという決定的な疑惑が発生しています。
ただ、これはNewSphereで伝えていた頃ですので、「STAP細胞研究“間違いとするのは時期尚早”」というものだったのでしょう。別に日本でも報道では捏造決定なんて言っていませんでしたけどね。とりあえず、この時期はNewSphereが「静観の構え」としていた頃にあたります。
しかし、それでもやはり問題視されているのは、小保方晴子さんが説明責任を果たしていない点です。"例えば『ロサンゼルス•タイムズ』"が、「小保方氏がこの論議に反論していない」“異常な状況”としていました。皆さん"理解できないと異口同音"に言っていたそうです。ここらへんは徹底されていますね。
日本では一部で「魔女狩りみたいなものはやめろ!」と強く主張されている方がいましたが、むしろ日本の報道姿勢は甘いのかもしれません。
それから、結構多くの方が「海外では許される。そんなことを気にする日本はおかしい。だから研究者が逃げるのだ」と批判していたコピペの話。これがバッサリと切り捨てられていて笑いました。
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小保方晴子の博士論文 20ページ以上ほぼコピペで、学者らに衝撃 ■
小保方晴子早稲田大博士論文、大量の盗用コピペ 実験の実態なしか?小保方氏の博士論文の約20ページが米国立衛生研究所 (NIH)のサイトとほぼ同じ、つまりコピーペーストしたというニュースが流れてきました。このニュースには、さすがに同僚の研究者たちも呆れてしまいました。
これが深刻なのは小保方晴子さん個人の問題というより、なぜ審査で見つからなかったのか?という点です。記事ではここから日本の博士号取得に関する問題を書いていて、一番力点を置いているようでした。
ここらへんは長いのでまとめながら。"そもそも、米国と日本では、博士号の品質が大きく異なり"、"日本の博士号のシステムは""すべての国の中で、日本は間違いなく最悪の国のひとつ"であると認識されているようです。
これは日本が"1990年代に、日本政府が、ポスドク(博士号を取得した後、常勤研究職になる前の研究者のポジション)の数"増加という質ではない量だけを重視したためです。このせいで、ポスドクが職にあぶれると同時に、博士の質が低下しました。馬鹿らしい話です。
日本の場合、ほとんどの学生が、修士号取得後のわずか 3、4年で博士号を取得して卒業します。いわば、博士号の“安売り”とも言える状況です。
しかし 米国では、政府の報告によると、大学学士を得てから博士号を取得できるまでにかかる 平均年数は10.1年で、博士号を取得できた時点 の平均年齢は33.3歳です。しかも、最終的に博士号を取得できるのは半分程度で、多くの学生がドロップアウトします。
その分アメリカは"博士号を取得する"とリターンが大きいようですが、"学位の授与にふさわしくない人材には学位を与えません"という当たり前のことが日本では無視されているようです。
私はアメリカの悪いところを指摘する投稿もたくさん書いていますし、「海外と比べて日本は遅れている」という主張にするのも本当は嫌です。ただ、良いところは良いと学ぶべきでしょう。
そういう良いところの一つだなと思ったのが、教員が学生の出来・不出来によっても評価されるというところです。
常田聡研究室など盗用論文多発の早稲田大に擁護、コピペは普通でも書きましたが、少なくともコピペ論文を許すような教員は、追放しなくてはいけません。
あっ、あと、なぜ審査で見つからなかったのか?と感じているハーバード大の方に一つ言っておきたいのが、件の論文の審査者の一人はハーバード大のバカンティ教授だということです。ですから、バカンティ教授も同じく責任を問われるべきです。
(10:30追記:明日書きますけど、バカンティ教授は審査していないと主張しているそうです)
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