そうなの?と驚いたのが、海外で現地の公務員へ賄賂をわたした場合でも、日本国内の法律で裁かれるということ。検索してみると、実際にそういったニュースが多数出ています。一方で、新興国では公務員に賄賂をわたすのは常識でわたさない方が変だとも言われていますので、やっていけるの!?と不思議に思いました。
2014/3/21:
●外国公務員への賄賂、海外でも日本の法律で制裁 ベトナムなどで
●日本が特別ではない…アメリカなど海外でも類似の法律がある
●過去にはフィリピンやインドネシアでも外国公務員への贈賄罪
●インドなど新興国は賄賂が当たり前なのにやっていけるの?
2018/07/25:
●三菱日立パワーシステムズがタイで贈賄、役員を在宅起訴
●初の司法取引適用で会社は不起訴…でもこれ問題あるのでは?
2020/01/21:
●名古屋市の企業のベトナム現地法人社長、不正処分逃れようとして賄賂
2020/06/25:
●1949年創業の東証1部企業「天馬」が賄賂、社長も認めていた!
●外国公務員への賄賂、海外でも日本の法律で制裁 ベトナムなどで
2014/3/21:以前、
賄賂はベトナムの文化の一部 役人だろうが民間だろうが次々と賄賂を要求という話をやっています。どうもベトナムでは賄賂なしではやっていけないそうです。
私は賄賂みたいなものが嫌いなのですけど、そうじゃないと仕事ができないというのは困ります。もし自分がそういう立場に立たされたらどうしよう?と、思いながら上記の話を書いていました。
ところが、どうも日本企業は賄賂をあげちゃダメなようです。"ODA事業でリベート1億円支出…外国公務員に"(2014年3月20日03時08分 読売新聞)によると、政府開発援助(ODA)事業を巡り、鉄道コンサルタント会社「日本交通技術(JTC)」が2008~12年、ベトナムなど3か国で計約60億円の事業を受注した見返りに、約1億円のリベートを不正に支出していたことが関係者の話で分かりました。
一連のリベート支出は、東京国税局の税務調査で判明。JTCは都合が悪かったのか、調査に提供先を明かさなかったため「使途秘匿金」と認定され、通常の法人税に加え、支出額の40%にあたる約4000万円の制裁課税を受けたといいます。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140319-OYT1T01214.htm
私が驚いたのは、提供先には相手国の公務員らが挙がっており、外国公務員への贈賄を禁じた不正競争防止法違反の疑いが強いと書かれていたこと。ベトナムの法律で裁かれるのならともかく、日本の法律で禁止されているとは思いもしませんでした。違法なんだそうです。
●日本が特別ではない…アメリカなど海外でも類似の法律がある
以前使った記事は現地で起業されているようでしたので、日本の法律はさすがに無関係でしょう。しかし、日本企業がベトナムで…というパターンは普通にあります。これで賄賂禁止ってのは倫理的な面はともかく、競争としては厳しいんじゃないかと思います。
この法律について検索かけると、類似のアメリカの法律の方がヒットしました。
賄賂禁止規定は、次の行為を禁止している。
1.上場企業、国内企業、又はいかなる者であっても、
2.不正に、
3.外国公務員(foreign official)、外国の政党(foreign political party)、もしくは、政治職の候補者(candidate for political office)に対して、
4.当該外国公務員がその義務に反する行為をするよう影響を与える目的で、又は、取引を獲得しもしくは維持するために、
5.いかなる有価物であってもその支払をし、もしくはその申し出をするために、
6.州際通商における手段(means or instrumentality of interatate commerce)を利用すること。「州際通商における手段」とは、たとえば、州をまたがっての(米国のある州と外国との間のものを含む)、電話・テレックス・電子メール等の通信手段や電車・飛行機等の交通手段等を指す。
また、上記のような違法な支払や申し出を実現するための行為を、(a)上場企業や国内企業が米国外で行ったり、(b)上場企業でも国内企業でもない者(米国に上場していない外国企業や外国個人)が米国内で行うことも禁じられる。
Wikipedia
他国の例も少しではあるものの、言及がありました。どうもアメリカが1977年にこの法律を作った他は、20年ほど例がなかったようです。しかし、1997年以降賄賂禁止条約の締約国では相次いで類似の立法がなされるようになりました。
今禁止されているってのでわかる通り、当然日本も同じような法律を作っており、1998年(平成5年)に不正競争防止法が全面改訂された際に、連邦海外腐敗行為禁止法の賄賂禁止規定に類する規定が加えられたそうです。
●過去にはフィリピンやインドネシアでも外国公務員への贈賄罪
また、
朝日新聞掲載「キーワード」の解説の解説も見つけました。
日本は1997年採択の外国公務員贈賄防止条約に基づき、98年に不正競争防止法を改正して「外国公務員への贈賄罪」を新設。国内で外国公務員に賄賂を渡す行為を禁じていました。これがさらに2004年の改正で国外での違反行為も処罰の対象に。ただし、賄賂を受け取った外国公務員は処罰の適用外になっています。
2013-09-11時点で同罪が適用されたのは、07年の電気設備工事大手「九電工」社員がフィリピン政府高官にゴルフ用品を贈った事件(略式起訴)、08年の建設コンサルタント大手「PCI」前社長がベトナム・ホーチミン市高官に現金を渡した事件(有罪判決)、12年の大手商社「住友商事」社員がインドネシア運輸省幹部を接待した容疑で書類送検された事件(不起訴)の3件があるとのこと。
ここでもやっぱりベトナムが登場。冒頭の件は政府開発援助(ODA)だったので睨まれたのかな?と思いましたが、こちらはODAとは特に書かれていませんね。
●インドなど新興国は賄賂が当たり前なのにやっていけるの?
前述の通りアメリカが先行して立法化されています。しかし、今も本当に守られているんですかね? ベトナムの他にフィリピン、インドネシアが出ていますが、カンボジアやミャンマーも賄賂で有名ですし、たぶん東南アジアはほとんどがそうでしょう。
インドも政治の腐敗が大きいことが有名ですし、同じBRICsのブラジルも有名、というか、BRICsは残りがロシアと中国なので、みんなダメじゃないです? 新興国は基本的に賄賂が常識的なのではないかと疑ってしまいます。
(2018/07/25追記:後に、
賄賂が通用しないなんて! 日本企業がインドでびっくりする理由などの話を書いています)
別に「賄賂ぐらいいいだろう」と主張するわけでなく、さっき書いたように個人的には嫌いなのですが、何か不思議な気分になる話でした。
●三菱日立パワーシステムズがタイで贈賄、役員を在宅起訴
2018/07/25:タイでの火力発電所建設をめぐる贈賄疑惑で、東京地検特捜部は、大手発電機器メーカー「三菱日立パワーシステムズ(MHPS)」の元役員ら3人を不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)罪で在宅起訴しました。
起訴状によると、3人は2015年2月、タイ南部での火力発電所建設をめぐり、工事現場に海路で資材を滞りなく搬入するため、タイ運輸省港湾局支局長に対し、輸送業者を介して現金1100万タイバーツ(当時のレートで約3900万円相当)を支払ったとされています。
特捜部や関係者によると、タイ運輸省港湾局支局長の方から三菱日立パワーシステムズが現場に設けた仮桟橋をめぐる手続き上の不備を突く形で賄賂を要求。3人は現地からの相談を受け、支払いを了承するなどしていたそうです。
●初の司法取引適用で会社は不起訴…でもこれ問題あるのでは?
これを報じた記事は、
元役員ら3人在宅起訴=初の司法取引、法人は不起訴-タイでの公務員贈賄・東京地検:時事ドットコム(2018/07/20-18:24)というもの。「初の司法取引」という点が注目されたニュースでした。6月に開始したばかりの司法取引で、
MHPS側は捜査に全面的に協力する見返りに、特捜部は同社の刑事責任を問わないというものだったそうです。
この記事より前に、三菱日立パワーシステムズが社員らの不正行為を明かし、
法人の立件を見送ってもらう狙いがあるとみられる、と伝えていた
司法取引を初適用 東京地検、外国公務員への贈賄事件で:朝日新聞デジタル(2018年7月14日11時41分)ので
はてなブックマークでは、以下のような批判も出ていました。
FTTH “同社は社員らの不正行為を明かし、法人の立件を見送ってもらう狙いがある”どドン引きですよ 逆やろ、社の不正を暴くために実行に携わった個人を免責するんやろそこは
usomegane 贈賄行為で最大の利益を得るのは会社なのにそっちは立件見送り。トカゲの尻尾切り。より大物を挙げるために下っ端は見逃すってのが本来の使い方じゃないのかよ。
vox_populi 問題大ありの雰囲気が漂う、司法取引初適用の事例。
tokatongtong 予想通りとはいえ、その活用のされ方がノッケから見事なまでに「日本版」すぎて笑うしかない。
海外がどうなっているかはわからないですけど、とりあえず、確かに変な話。会社は被害を被らないので不正がむしろ起こりやすくなりそうですし、上層部が部下に罪をなすりつけるということも可能になります。安倍政権のことを思い出しちゃいましたわ。
●名古屋市の企業のベトナム現地法人社長、不正処分逃れようとして賄賂
2020/01/21:また、賄賂の問題があったので追記。
ベトナム税関へ贈賄の疑い 元会社社長を書類送検、愛知県警 | 共同通信(2020/1/20 18:31)というニュースが出ていました。
まず、名古屋市東区の会社「タイセイ」のベトナム現地法人の電線加工品販売会社が、電線の原材料を輸入した際に実際と異なる品目や数量を書類に記載し、関税を過少申告したことことが問題の発端です。これ自体が悪いことで、まず問題ですよね。ただ、これによって、日本の警察に書類送検される…ということはありません。
ということで、現地法人の元社長(愛知県北名古屋市在住)が書類送検されたのには別の理由があります。過少申告によって受ける追徴課税や行政処分を減免してもらう見返りに、ベトナムの税関職員に約735万円相当の現金を渡した疑いのためとされていました。これまでの事件と同じで、賄賂のせいで日本の法律に引っかかったようです。
●1949年創業の東証1部企業「天馬」が賄賂、社長も認めていた!
2020/06/25: 1949年創業ということで、ぽっと出ではなく結構歴史のある東証1部上場のプラスチック成形「天馬」。ここの海外子会社が2017年と19年、追徴金の減額などを目的に、現地公務員に日本円で計2500万円相当を渡していたことが判明しました。やはり外国公務員への贈賄を禁じた不正競争防止法に抵触する疑いがあるとされています。
第三者委の調査報告書によると、子会社は17年、金型の輸出入に関し、現地税関局から17億9000万円相当の追徴金を求められ、現金提供を計画。同じ年の6月、税関局の調査リーダーだった職員に1000万円相当を渡しました。2019年にも同様のことがあり、やはり優遇を受けています。
(
「天馬」子会社が海外贈賄か 追徴減額目的、計2500万円:時事ドットコムより)
報告書は、天馬本社の藤野兼人社長も現金提供の一部を事前承認していたと指摘しており、えらいことになっていますね。藤野社長は責任を取り、株主総会後に取締役を退任する意向を示していたとのこと。ただ、別記事を見ると、創業者同士で委任状争奪戦になっており、すんなり退場するわけではなさそうでした。
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