論文への疑問・検証というのは正当であり必要なことなのですが、今回のSTAP細胞問題においては、この作業に対する口汚いコメントが目立ちましたし、その種類もものすごい数がありました。
罵倒コメントの種類が多かったというのは次々に不利な点が見つかり、以前の主張ができなくなってしまったためです。また、そのように無理のある主張ですので、科学的でないものが多かったです。STAP細胞や小保方晴子さんを擁護するだけならともかく、誹謗中傷のようなものも珍しくありませんでした。
そのようなコメントの中で目立っていたものの一つに、「嫉妬」というものがありました。非常に優れた研究者である小保方晴子さんやSTAP細胞に対して嫉妬している…というものです。
成果を出せない研究者の嫉妬だとか、STAP細胞にその存在を脅かされるiPS派の陰謀だとかという話で、ひどいものだtと山中教授の名前を出した悪口まで言っている十分に名誉毀損に値するものまでありました。今になって見るとこれがどれだけ馬鹿らしかったかわかるでしょうが、くだらない言いがかりです。
ただ、そもそもSTAP細胞が生み出された背景に、この「嫉妬」というものがあったのでは?という逆の見方も当初からありました。これは先程のものと違って、意外にくだらないとも切り捨てられない見方だと私は思っていました。
STAP細胞問題は正常な状態なら見過ごされないような異常な点が多く、それを許してしまったのはやはり心が正常な状態ではなかったのでは?と推察されるためです。
今回の問題での最重要人物の一人、理研の笹井芳樹CDB副センター長は、ES細胞の第一人者です。そして、山中伸弥教授のiPS細胞が登場するまでは、再生医療においてもトップでした。この逆転した状況に焦りを感じて、異常性に気づかなかった、あるいは異常性を知りながら押し通した…という可能性がありそうなのです。
ここらへんの「焦り」については、ついに新聞まで触れるようになりました。
理研が落ちた「わな」:再生医療の覇権争い iPS先行で
毎日新聞 2014年03月19日 16時16分(最終更新 03月19日 16時19分)【浦松丈二】
「万能細胞を使った再生医療分野には巨額の政府予算が投下されている。そのカネを牛耳る“再生医療ムラ”内には激しい予算獲得競争、覇権争いがある」と指摘するのは近畿大学講師の榎木英介医師だ。学閥など医療界の裏を暴いた「医者ムラの真実」の著書がある。失われた人間の器官や組織を再生することでドナー不足や合併症などの解消が期待される再生医療分野に対し、政府は13年度から10年間で1100億円を支援することを決めている。
榎木さんは言う。「現在、政府予算の大半がiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究に回されています。顕微鏡1台が数百万円、マウス1匹でも数千円から特殊なものでは万単位になる。予算が獲得できなければ研究でも後れを取ってしまう。追いかける側の理研の発表では、山中伸弥京都大教授が生み出したiPS細胞に対するSTAP細胞の優位性が強調され、ピンク色に壁を塗った小保方さんのユニークな研究室内をメディアに公開するなど、主導権を取り戻そうとする理研の並々ならぬ意欲を感じた」
笹井さんはマウスのES細胞(胚性幹細胞)から網膜全体を作ることに成功した再生医療分野の著名な研究者。榎木さんは「山中教授がiPS細胞を開発するまでは、笹井氏が間違いなくスター研究者だった」と言う。だが、iPS細胞が実用化に近づいたことで、笹井さんら“非iPS系”研究者の間では「埋没してしまうのでは」との危機感が高まっていたといわれる。
「こうした競争意識が理研の“勇み足”を招いたのではないか」(榎木さん)
http://mainichi.jp/select/news/20140319k0000e040250000c.html
STAP・iPS細胞比較に山中教授反論 罪はマスコミだけでなく理研にもで書いたように、理研のプレスリリースにはSTAP細胞をiPS細胞と比較している部分が多数ありました。その中でiPS細胞への優位性を強調していないのは一点だけで、他はすべてSTAP細胞が優れていると訴えるものです。
何より問題だったのは山中教授が特にマスコミ向けに発表を行って訂正を求めなくてはいけないほど、不適切と思われる比較が含まれていたことです。
このプレスリリース自体は現時点でもまだ撤回されていないし、訂正されてもいないのですが、マスコミ向けに配られたという別の資料は先日撤回されました。これはモロに笹井さんが作ったものだったようです。
STAP細胞:理研がiPS細胞比較資料を撤回
毎日新聞 2014年03月18日 20時51分(最終更新 03月18日 21時31分)
新たな万能細胞「STAP(スタップ=刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得)細胞」の作製成功を発表した英科学誌ネイチャーの論文に重大な過誤があった問題で、著者の多くが所属する理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)は18日、作製成功の記者会見で配布したSTAP細胞とiPS細胞(人工多能性幹細胞)を比較する記者向けの資料を撤回すると発表した。「誤解を招く表現があった」と理由を説明し、謝罪している。
撤回するのは「STAP細胞が明らかにした新しい原理の補足解説」と名付けられた資料。A4用紙1枚で、マウスの血液細胞で比較すると、作製効率はiPS細胞が約0.1%なのに対し、STAP細胞は30%などとイラスト入りで書かれている。1月28日の記者会見で小保方晴子・研究ユニットリーダーや笹井芳樹・副センター長らが記者に説明するための補足資料として配布された。(中略)
同センターの広報担当者は資料について「誤解を招く表現があると以前から指摘されていた。STAP細胞の論文の撤回が検討されており、作製効率についてiPS細胞と比較する段階ではない」と説明した。【斎藤広子】
http://mainichi.jp/select/news/20140319k0000m040085000c.html
【STAP細胞】記者向け資料撤回 iPSとの比較で「誤解招く」+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
撤回したのは、STAP細胞と人工多能性幹細胞(iPS細胞)を比較した補足資料。会見で説明した小保方晴子・研究ユニットリーダーと笹井芳樹副センター長が作ったといい、理研のホームページでは公開していなかった。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140318/trd14031820100012-n1.htm
下記のように「マスコミが悪い」と批判された内容についても、やはり笹井さんや小保方晴子さんが原因のようです。もちろんプレスリリースを無批判に信用するのではなくマスコミが独自に検証した方が良かったというのはありますが、かなり難しい話であり、圧倒的に悪いのは理研側です。
これに対して、iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大教授が2月10日に記者会見し、「iPS細胞の作製効率は発表時は約0.1%だったが、2009年に20%まで上昇させることに成功した。報道には誤解があり、理研が配布した補足資料が誤解の一因になっている」と指摘した。(毎日新聞)
理研は、資料でiPS細胞の作製にかかる時間を2、3週間とし、作製効率を0・1%とした点に問題があったとしている。STAP細胞は2、3日で作製でき、効率は30%を超えるとされていた。(産経新聞)
こういった感じで最初にも書いたように、笹井芳樹CDB副センター長は、今回の問題での最重要人物の一人です。ただ、ニュースでの扱いはちょっと軽い感じになっているのは気になりますし、記者会見の受け答えを見ると理研側も当初は問題にしないつもりだったように見えました。
理研と国に利用された小保方晴子 予算獲得・女性活用推進の道具や
理研に学者らから批判続出 STAP細胞は本当にできた?捏造では?など何度も触れていますが、小保方晴子さんは実行者としてうまく利用されたという面も見受けられます。
トカゲのしっぽ切りとか、スケープゴートとか言われているように、小保方さん一人に責任を押し付けて終わり…という結末は防がなくてはいけません。さらに笹井芳樹CDB副センター長にとどまらず、理研としての問題という点も追求してほしいです。
たとえば、今回撤回された資料と同じ問題を含んだ理研本体のプレスリリースは、前述の通り取り下げられていません。これは理研という組織として問題があることを認めたくないためではないか?と想像します。
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/ ただ、ここらへんが逆に理研の誠意のなさの現れであり、STAP細胞問題が研究者らの問題でなく理研の問題になっているという原因の一つです。理研の対応は本当ひどいですよ。
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