2022/08/06追記:
●治療薬の開発のぼ全てが失敗…20年前の重要論文が不正の可能性 【NEW】
2014/3/25:
●研究不正はなぜダメなの?不正1件発覚で損失は5000万円も!
●コピペチェックソフトはお買い得?不正を防いだ方が得になる
●STAP細胞問題では理研が1000億円の損失?ジャーナリストが指摘
●大金をつかみ損ねてもったいない!小保方晴子氏の損失も大きかった…
●理系研究者の年収はわずか300万円、でも小保方晴子氏は…?
●不正の研究者に日本学術振興会から1200万円もの研究奨励金
2014/6/10:
●アメリカでは年間110億円もの損失、国民の税金も無駄に…
2021/02/03:
●不正論文を元にした先進医療の臨床研究中止 健康被害10件報告
●治療薬の開発のぼ全てが失敗…20年前の重要論文が不正の可能性
2022/08/06追記:アルツハイマー病関連の投稿に追記した話ですが、なぜ研究不正を追求すべきなのか?に関する話でもあるのでこちらでも紹介。開発のほぼ全てが失敗してきた「アミロイド経路」でのアルツハイマー病治療薬の系統における20年前の重要論文がそもそも不正研究だったかも…という話が最近になって判明したのです。
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アルツハイマー病研究の重要論文に改ざんの疑い…2200以上の研究で引用 | Business Insider Japan(Marianne Guenot Jul. 29, 2022, 09:00 AM)
<2006年に発表され、その後のアルツハイマー病の研究に大きな影響を与えた論文に、改竄された内容が含まれている可能性があるという調査結果が、科学誌「Science」で発表された。
この調査によって、ミネソタ大学の研究者、シルヴァン・レスネ(Sylvain Lesné)を筆頭著者とする2006年の論文に画像の改竄があったことを示唆する証拠が示された。
2200以上の学術論文に参考文献として引用されたこの論文は、アルツハイマー病の早期治療の有望な標的としてアミロイドβ*56というタンパク質への関心を呼び起こした>
<彼ら(引用者注:画像解析の専門家ら)はレスネが執筆した合計20本の「疑わしい論文」を特定し、そのうち10本がアミロイドβ*56に関係するものであったとScienceは伝えている>
複数の研究者がアルツハイマー病に特化した情報サイトの「Alzforum」に対して、この結果を再現しようとしたができなかったと語っています。ただ、こうした再現実験は新発見とは異なり注目度が低く学術誌に載せてもらえない…つまり、再現実験が評価されないため、広く発表されてきませんでした。これは以前から言われている問題です。
ノーベル賞受賞者でスタンフォード大学の神経科学者であるトーマス・スードフ(Thomas Südhof)さんは、この改竄の疑いによる最も「明白な」影響は「NIH資金の浪費と研究現場での思考の浪費」だろうとしていました。また、これにより薬の開発が遅れたことで、アルツハイマー病患者の人にも被害を与えたと言えるかもしれません。これもまた不正研究が悪いと言える理由です。
なお、レスネ論文の共著者であるカレン・アッシュ(Karen Hsiao Ashe)さん単独の研究では、不正は見つかっていません。彼女の実験室所属の科学者が実験用マウスで「定期的にアミロイドβ*56を検出しており、再現性もある」と説明。依然として、アルツハイマー病がアミロイドβ*56と関連していると考えているそうです。
●研究不正はなぜダメなの?不正1件発覚で損失は5000万円も!
2014/3/25:なぜか研究不正について擁護する人が少なからずいますが、研究不正というのは、大きな損失ももたらします。その関係でおもしかったのが、
論文コピペ:検知システム導入進む(毎日新聞 2014年03月22日 11時41分(最終更新 03月22日 13時50分)八田浩輔)という記事です。
「STAP細胞」を巡る一連の論文不正疑惑で、繰り返し指摘されたのが「コピペ(コピー・アンド・ペースト、複写と張り付け)」。この記事のメインの内容としては、それを事前に見抜くチェックシステムやソフトを導入する動きが広がっている…というものでした。ただ、私がおもしろいと思ったのは、別の部分です。
それは、不正が1件発覚すれば所属機関の損失は5000万円に上るとの試算があるという話。米国の研究グループが国内で起きたある研究不正の損失を試算したところ、調査経費などで約52万5000ドル(約5300万円)に達したというのです。コピペチェックは、"論文の質向上だけでなく危機管理の側面も強い"ということでした。
●コピペチェックソフトはお買い得?不正を防いだ方が得になる
あるコピペチェックソフトの費用は、年300万円と80万円の2コース。上記の5300万円というのは、コピペチェックソフトの価格が十分「手ごろ」だということを示すために出されていました。割に合うんですね。
バレたら5300万円の損失ですのでバレなきゃいい、つまり、調べなきゃいいということなんで、「論文不正は気づいても知らんぷりしましょう」という主張も一応できます。馬鹿らしい主張ですけど。
ただ、何かの拍子に発覚するというのはあり得るわけで、そのときにはやはり損失が出ます。ですから、一番良いのは最初から不正をしないようにしていくことで、そこに至る過程では不正を追求する作業は必要になります。むしろ将来の莫大な損失を少なくする行動なのです。
あと、上記は不正論文を出した研究グループの損失だけで、おそらくSTAP細胞論文問題のように不完全な論文を元に第三者が追試した時間や費用の無駄は考慮されていないと思います。以前もっといろいろ書きましたけど、普通に論文不正の社会的な損失というものは大きいのです。
それから、上記はアメリカの例であり、日本とは違うかもしれません。ノバルティス・ディオバン問題のときは、アメリカと比較して日本の罰則は極端に甘いという話でした。もし不正のデメリットが他国より少ないとすると、ついやってしまう人が日本には多い、まだ露見していないなどの可能性もあります。
●STAP細胞問題では理研が1000億円の損失?ジャーナリストが指摘
しかし、不正に甘いかもしれない日本でも、研究不正が発覚すれば所属組織の研究経費を削減するよう文科省の指針が改定されるとのこと。さらに、
理研、損失1千億円!? 小保方さんショックですべてオジャンに… 2014.03.22 ZAKZAKのように理研はすでに相当な損失を出したと書いている記事もあります。
「理研が逸失した利益も相当なものだ。再生医療分野でめざましい研究成果を出したとなれば、1000億円近い予算を獲得できたはずだ。この分野では、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の開発で京大の山中伸弥教授のチームに先行されていたが、主導権を取り戻すチャンスも失った」(科学ジャーナリストの大朏(おおつき)博善氏)
でも、これどうなんでしょうね? 「詐欺し損ねた金額を損失額とは言わないでしょ」ときっついことを書いている人がいたように、「損失」と言ってしまうのには違和感があります。理研が損失を出したことは間違いないでしょうが、最初の記事とは違い、ちょっと方向性が変だと感じるものでした。これを書いた夕刊フジは、系列の産経新聞とともにSTAP細胞問題では変な記事が多かったんですよね…。
●大金をつかみ損ねてもったいない!小保方晴子氏の損失も大きかった…
この夕刊フジ記事は同様の考え方で、小保方晴子さんも「大金をつかみ損ねた」として、たいへんな「損失」を出したとしています。STAP論文に疑義が生じなければ、いま以上の厚遇も得られたと考えられるため。理研には、優れた業績をあげた任期制職員に対して報奨金を支給する制度があるんだそうです。
科学ジャーナリストの大朏博善さんは「報奨金の額は、数千万円は下らない。場合によったら、研究所をまるごと与えられていたかもしれない。理研での終身雇用も約束されたようなもので、最上級の待遇になるのは間違いない」としていました。
この報奨金の金額というのは、理事長の一存で決められるのこと。理研で最も高い収入を得ているのは、その理事長でノーベル化学賞受賞者でもある野依良治さんで年間約1840万円(12年度)。記事では、<当初、STAP論文は「ノーベル賞確実」ともいわれただけに同程度の待遇を受けられた可能性はある>と書いていました。小保方さんが将来に理研理事長クラスになれるチャンスがあったって意味ですかね…。
●理系研究者の年収はわずか300万円、でも小保方晴子氏は…?
上記で「いま以上の厚遇」と書いているのは現時点でも小保方晴子さんは他の研究者よりも十分に扱いが良いため。理研は「個人の給与額は明かしていない」ものの、サイトで職員の待遇は公開しているそうです。
常勤研究者 平均年収 約942万円(12年度)
任期制職員 年俸制 平均約691万円(12年度)
小保方さんはこのうちの任期制職員。ただ、研究管理職を務める小保方氏の場合は700万円ってことはないようです。固定給は「約682万円、約825万円、約1273万円の3段階」で「ここに諸々の手当てが付く」ので、「少なくとも800万円以上の収入はあるはずだ」とされていました。
この他に理研は"14日の会見で小保方氏のチームに「1000万円の研究費と1000万円の人件費を支給している」とも明かしている"ともありましたが、これって人件費合わなくないです? 先述の小保方さんの年俸を考えると、チームに複数の人がいて1000万円ってことにはならないでしょう。
小保方晴子さんの研究ユニットは広報用の嘘で、本当は他に誰もいないって噂もあったんですけど、そういうことなんでしょうか? これなら1000万円が全部小保方さんということで解決します。ちなみに理研じゃない他の研究者さんは以下の通りだそう。
「博士号を取っても、研究室を持てないポストドクターがたくさんいる。職にありつけても、理系研究者で年収は平均300万円程度。理研は業界内でも待遇がいいといわれている。それでも末端の研究員は400~500万円程度だろう。それに比べれば彼女はかなり恵まれた立場にいる」(近畿大学講師の榎木英介医師)
「300万円」は逆に低すぎてひどいです。この年収で働き詰めなんですから、そりゃ自殺者も出ますわ…。なお、平均収入は一部の高収入者によって押し上げられていることが多いため、実態はさらにひどいという可能性があります。やばいですね。
●不正の研究者に日本学術振興会から1200万円もの研究奨励金
小保方さんは以下の別記事だと「年間1000万円近い給与」としています。上の「1000万円の人件費」とやはり合いますが、それはともかく小保方さんの「損失」として、より深刻な話が
日刊ゲンダイ|博士号剥奪で研究費返還も…小保方さんを待つ「借金地獄」 2014年3月18日では書かれていました。
「小保方さんは08年から3年間、日本学術振興会の『特別研究員』に選ばれ、毎月20万円の研究奨励金のほか、年間150万円の研究費が補助されています。規定によると、不正行為や特別研究員としてふさわしくない行為があった場合、『支給済みの研究奨励金の返還要求』と定められている。仮に博士論文が不正、悪質と判断されたら、今まで支給された約1200万円を返還要求される可能性があります。原資は税金だけに放置するわけにはいかないでしょう」(科学ジャーナリスト)
別に小保方さんを追い詰めたいわけではないのですが、「税金の無駄遣い」と言われてしまうとやはり「返還を要求するべき」という回答をせざるを得ません。組織相手だと言いやすいものの、個人相手だとこういうのはたとえ正論であっても言いづらいところがありますね。ただ、たとえ不正行為が発覚したとしても、日本学術振興会が果たしてそこまでやるだろうか?とも思います。憎まれ役をやりたくないってのもあるでしょうし、世論を見極めながらになりそうです。
なお、日本学術振興会から1200万円もの研究奨励金が出ていたというのは、それだけの研究資金が研究不正によって無駄になったという話でもあります。こういうのは本当に損失ですね。やっぱり研究不正を擁護しちゃいけませんし、むしろ積極的に追求して不正に使われる資金を減らしていかなくてはいけないと言えるでしょう。
●アメリカでは年間110億円もの損失、国民の税金も無駄に…
2014/6/10:
米国史上最悪の「科学研究不正」の反省と対処に学ぶこと(Foresight(フォーサイト)執筆者:大西睦子 2014年4月3日)で、最初の記事より詳しい話がありました。
どうも前述の計算をやったのは、「ロズウェルパークがん研究所」っぽいですね。"研究に使用したコスト、不正が発覚した後の調査にかかるコスト、さらに不正後の修復に必要なコスト"を推定して、これを損失額とみなしたとのこと。こちらでは、その結果を"研究不正1ケースが及ぼす損害額"を「52万5000ドル(約5400万円)」としていました。毎日新聞の約5300万円で微妙に違うんですけど、これはおそらく算出した米ドル/円のレートの違いでしょう。
また、<科学研究における不正行為を監視する政府機関「米国研究公正局」に、2009年の1年間だけで報告されたのは217ケース><これを元に、毎年米国で報告される研究不正による損害を推定すると、110 ミリオンダラー(約110億円)を超える>といった感じで、不正がはびこっている様子も書かれていました。
また、作者の大西睦子さんは"これが公的研究機関によるものであったり、あるいは何らかの公的補助を受けている研究であれば、その損害は国民が被ることになる"という点も指摘。これは重要でしょう。今はあまり目にしなくなりましたが、研究不正くらいで大騒ぎして…と言う人が疑惑発生当初は結構いました。ただ、我々にとっても無関係なことではないのです。
●不正論文を元にした先進医療の臨床研究中止 健康被害10件報告
2021/02/03:肺がんの手術前後の患者に心不全の薬「hANP」を注射することで、がんの転移による再発を抑えられるとする先進医療の臨床研究。この臨床研究の有効性の根拠となる論文と安全性の根拠となる論文に不正が見つかり、臨床研究が中止となりました。不正がなければ、そもそも行われるはずがなかった臨床研究ということになります。
この不正論文をもとにした臨床研究というのは、上記までで書いてきたとのと同じようにお金や人を無駄に浪費した…という問題がありますが、それだけでは済まない…というわかりやすいケースでしょう。この臨床研究では、すでに160人の肺がん患者が手術時にhANPの注射を受けてしまっていました。
そして、このケースでは、臨床研究と因果関係が完全に否定できない健康被害が10件報告されているとのこと。これらは注射によるものではなく、がんの手術自体が原因と判断して、研究を続けていたものだそうですが、根拠のない治療方法だったため、メリット無しでリスクのみを背負っていた状態だと言えます。なので、研究不正くらいで騒ぐな!なんて言わないでくださいね。研究不正では人を殺すことすらできるのです。
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