●松阪牛の定義 品種ではなく産地不定、実は松阪生まれではない?
2014/3/30:本当は別の話を書きたかったんですが、先に定義についてやっておいた方が良いだろうということで、今回は定義について。この別の話というのは、
松阪牛の読み方、「まつざかぎゅう」「まつさかぎゅう」は間違い?というもので、すぐやるつもりが、2年も経ってしまいました。
さて、定義について。松阪牛個体識別管理システムに加入している生産者(肥育農家)と松阪牛生産地域の市・町で構成されている松阪牛協議会の
松阪牛とはというページでは、以下のように松阪牛の定義が説明されています。
<松阪牛は、生産区域が「旧22市町村(市町村数は2004年11月1日現在)で対象牛は「生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、松阪牛個体識別管理システムに登録された黒毛和種、未経産の雌牛」。肥育期間は「生産区域でのみ肥育され生産区域での肥育期間が最長・最終」などのシステムの条件を満たし出荷されたものと定められています>
●品種で「松阪牛」というものはない 但馬牛など全国各地から導入
重要であろうと考えられるのは「松阪牛生産区域に導入され」というところ。別に松阪の牛を使っているとは限らない上に、導入先も決まっているわけではないといった書き方です。この後も同様に子牛の生まれ故郷はバラバラであるというのがわかる部分があります。
<(導入登録)
肥育農家が、
全国の産地から厳選し、松阪牛生産地域に導入された生後約12ヶ月までの素牛(「もとうし」子牛のことです。)を、三重県松阪食肉公社に管理委託している松阪牛個体識別管理システムに登録します>
<松阪牛の中でも、兵庫県産の子牛を松阪牛生産地域で900日以上の長期にわたって肥育した牛については「特産」と呼び、長期肥育でしか味わうことのできない松阪牛独特の甘味のある肉質を保証しています。(特産松阪牛)>
しかも、同じページでは「牛の用途別から見た分類」などと解説を始め、乳用種・肉用種の分類、肉用種の中の西洋牛・和牛の分類、和牛の中の黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種などと分けています。はっきり書いていないのですが、これはひょっとして子牛の生地だけでなく、品種すら一定ではないということでしょうか?
気になって
Wikipediaを見ると<但馬牛の他、全国各地から黒毛和種の子牛を買い入れ、三重県松阪市及びその近郊で肥育された牛。
品種としての呼称ではない>とのこと。産地バラバラ、品種ではないとはいうものの、一応黒毛和種という点は統一されている感じです。
●産地偽装対策で逆に松坂牛ブランド崩壊…94%は以前なら不合格の肉!
Wikipediaを読んでいると、別の部分で気になることが書いてありました。2002年(平成14年)8月19日以前は「松阪牛」全てが高級銘柄牛肉であり、そのため「松阪牛」という単語自体が高級牛肉の意味を持つこともあったそうです。2002年8月19日以前は、イメージ通り高級牛肉というものでした。
ただ、逆に言うと、2002年8月19日以降は違うんですね。区域内の生産であれば
格付けが低いものまで「松阪牛」との呼称が許され、全てが最高級とは限らなくなっているとのこと。もうすっかりダメになっちゃった感じですね。なぜこうなったのか?という経緯を見ると、皮肉にも産地偽装対策のせいであったようです。
<2001年(平成13年)に発生したBSE問題や産地偽装事件への対応のため、2002年(平成14年)には子牛の導入から出荷までを管理する「松阪牛個体識別管理システム」が発足し、これに登録した肉牛を松阪牛とした。しかし一方で、2002年(平成14年)8月19日の規約改訂により、「松阪牛」の定義から枝肉格付けが削除され、
格付けが最低のC-1であっても「松阪牛」と名乗れるようになった。このため、全ての「松阪牛」が最高肉質等級の牛肉である時代は終わった。現在の松阪牛は、特産松阪牛が全体の6%しかなく、
残りの94%を規約改訂前の基準では松阪牛と呼称することが許されなかった牛肉が占めている。また、素牛は最高品質とされる但馬牛や淡路ビーフ(淡路島で生育した但馬牛)のみであったが、規約改訂後は九州産の但馬牛系の牛(純粋な但馬牛ではない)を素牛として飼育する畜産農家が増えている>
松阪牛協議会は"肥育農家が、全国の産地から厳選"などと言っていましたが、Wikipediaはそれを真っ向否定していますね。こんなこと書いて怒られないんでしょうか。但馬牛というのが盛んに出てきていますが、この定義からすると、ある松阪牛が和牛であり、黒毛和種であり、但馬牛でもあるということで、なかなか素人にはわかりづらいことになっています。
●放牧を行なうことはない!自然ではないやり方で飼育する松坂牛
短いのでもうちょっとWikipediaからおもしろい話を引用。<但馬牛の他、全国各地から子牛を買い入れ、肥育農家にて3年程度肥育する。肥育は牛舎で主に穀物類を与え、放牧を行なうことはない>とされていました。残酷だ!って批判のあるガチョウの珍味フォアグラのことを思い出してしまいました。
フォアグラ(仏: foie gras フランス語発音: [fwa ɡʁɑ]は、世界三大珍味として有名な食材。ガチョウやアヒルなどに沢山のエサを与えることにより、肝臓を肥大させて得る[注釈 1]。(中略)
1^ フランス語で「フォワ (foie) フランス語発音: [fwa]」は「肝臓」を、「グラ (gras) フランス語発音: [ɡʁɑ]」は「脂の多い、肥大した、太った」を意味する。即ち、「フォワ・グラ」は「脂肪肝」と訳せる。ただし、疾患としての「脂肪肝」はフランス語では「stéatohépatite」である。
ある大きな生産農場では、数千羽のアヒルが、3羽ひとまとめの狭いケージで肥育されるが、ケージは給餌作業がしやすいよう作業者の身長に合わせて地上に設置され、床にはアヒルの糞尿と食べ残しが放置されたり、飼育数が多いため、一羽一羽の健康状態にまで手が回らないと報じられる。
Wikipedia
●牛にビールを飲ませた理由は、三重県人が下戸でタバコも吸わないから?
松阪牛に戻って、あともう一つ飼育方法について。かなり怪しい話ですけど。一部にはビールを飲ませる事もあるという話です。肥育末期に摂食量が落ちる「食い止まり」という現象への対処のためで、ルーメン(第1胃、瘤胃)内の発酵状態を改善する作用が食欲増進に通じ、より肉付きを良くするのが目的とされています。
ここの記述では、三重県は全国一下戸の人間が多く、統計上によると約53%の三重県人は下戸だと言うなどと書かれていました。ただ、[要出典]となっており、怪しい記述です。もう一つ、こちらは[要出典]ではありませんが、さらに三重県は喫煙者数も日本一少ないとした上で、以下のように書いています。
<そのため「牛にだけでも晩酌気分を味わわせてやろう」と下戸で煙草も吸わない飼い主が、牛にビールを飲ませたのが事の発端[要出典]。これが功を奏したのかビールを飲ませた牛が、稀に見る優れた肉質である事が判明し、市場において破格の高値(約3000万円)で取引された。それ以後、このビールを飲ませる事が広まり、後に獣医学的にも優れていることが判明した)>
三重県の人が下戸が多いってのは私も経験的には感じており、同意します。でも、出典はつけましょうね。ここらへんの経緯の逸話はかなり怪しいです。ただ、ビールを飲ませているという話は私も聞いたことがありますし、優れているという部分には要出典表記がないので、本当なのかもしれません。
もう一つ、松阪牛については書く予定ですが、松阪牛以外でも「えっ、そのブランドの定義ってそんなだったの?」という騙された気分になるものは結構あります。そっちの話もまたやりたいです。(追記:2年近く経ってやっと書きました
松阪牛の読み方、「まつざかぎゅう」「まつさかぎゅう」は間違い?)
【本文中でリンクした投稿】
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