引き続き、
世界の最先端が認めた町工場の正体は宇宙から舞い降りた研究開発型企業 三鷹光器 中村勝重社長に聞く(上)(2009年11月04日 ダイヤモンド・オンライン)からの引用です。
前回の
三鷹光器の技術も技術の大切さについての話を書きましたが、ライカマイクロシステムズ(ライカの顕微鏡部門)との提携の逸話もそのような話だと思います。
ライカマイクロシステムズを提携先に選んだ理由ですが、中村勝重社長の話を読むと、お互いに弱点を補える存在だったからということが大きいようです。
ライカマイクロシステムズは当然顕微鏡もスタンドも作っていますが、
「ところで、あなたの会社の製品は、当社が持っているパテント(特許)を利用して作った顕微鏡スタンドよりも、勝(まさ)っていますか」
と聞いたところ、「いや、勝っていない」との回答でした。そこで、「世界中で独占的に販売することを許可しますが、興味を持ちませんか」と持ちかけたようです。
三鷹光器はこのように技術で他を上回りますが、やはり中小企業ですので、世界的な販売網を持っていないという弱点があります。これはもし何かあったときに、緊急サービスを行うことができないということも意味します。
しかし、ライカマイクロシステムズにとってはそれは得意分野なわけで、そのためお互いに業務提携したということだそうです。
中村勝重社長曰く「特許は有利な契約を結ぶための手段」であり、「特許を取っているからすごいというというにはならない。特許は使ってこそ意味がある」とのことです。
三鷹光器はこの特許を交渉に利用して「取引は円建て、年間に数百台発注するという台数保証、それから製品が当社の門を出てからは、当社は一切保証しないということ」にしたそうです。
保証に関して中村勝重社長は、「交通事故をはじめ途中で何が起こるか分からないのに、保証するのはアホ」とまで言っています。そこで、保証するなら「(こちらも心配なので)値段をボリますよ。そちらとしては安いものを買った方が得でしょ。その代わり当社を出たら、いくらで売るかについては、とやかく言いませんから」という契約になりました。
「こうした契約ができるのも、特許があり、製品が魅力的だからです」と中村勝重社長は言いますが、これもまた技術の重要性を示していると思います。
ところで、三鷹光器は
三鷹光器 中村義一会長3 ~「いいもの」を作るには~でも書いたように、本来作って終わりでなく、実際に使われているところを見せてもらって、問題点や改良すべき点を洗い出し、今後さらに良いものを作るということを重視しています。
そこで世界に広がるお客さんの苦情を聞くために、ライカマイクロシステムズにも条件を出しているようです。
まず、過去1年の間に、ライカで三鷹の製品を一番売ったセールスマン2~3人を、ライカマイクロシステムズの経費で三鷹に送ってもらい、三鷹光器の社員と一緒に、3日間トレーニングしているようです。そうすると、アメリカではこうだった、ヨーロッパや中国では、ああだったという話が聞けるそうです。
さらにもう一つ、アメリカで春と秋にある脳神経外科の学会で、ライカマイクロシステムズが出展しているブースに、三鷹の社員が自由に出入りできるという条件も付けているそうです。そこで現場の声を聞く、「外国で、我々の製品がどう見られているか、実際に見てきなさい、苦情を聞きなさい」ということのようです。
こういった姿勢は三鷹光器の技術を支えるものの1つだと思います。
また、もう1つ開発自体重視しているというのも、技術の強さではないかと思います。
前回書いたように三鷹光器は医療、3次非接触測定器、天体望遠鏡と3つの分野で仕事をしています。この3分野のうち「ロケットや人工衛星に載る望遠鏡の仕事は、しょっちゅうあるわけではないので、その間は開発に集中している」そうで、これが結果的に開発重視になっているのではないかと思われます。
これは先日書いた
エーワン精密と同様のものを感じます。エーワン精密は設備投資額を予め価格に織り込んでおき、必ず一定の設備投資を行うにしていました。
そのエーワン精密は値下げせずにものを売ることができました。これも技術があるからこそです。
当たり前かもしれませんが、「技術がある」って重要だなと思いつつ、今日はここで終わりにします。
新規分
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三鷹光器の太陽熱発電(ヘリオスタット方式) ~太陽光じゃなくて熱?~ 関連
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三鷹光器の技術 ■
三鷹光器 中村義一会長1 ~ユニークな入社試験~ ■
三鷹光器 中村義一会長2 ~日本の良くないところ~ ■
三鷹光器 中村義一会長3 ~「いいもの」を作るには~ ■
三鷹光器 中村義一会長4 ~「専門家」ではいけない~ ■
エーワン精密 必勝のバランス ■
その他の企業などについて書いた記事
Appendix
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