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京大の霊長類研究所で20億円の裏金?松沢哲郎氏と友永雅己氏に疑惑


 京都大学の霊長類研究所で最大で20億円とも言われる研究費の不正疑惑が発生しました。すでに会計検査院の職員が3度にわたってすでに訪問している他、関係者らも不正があったことを認めるような発言をしています。霊長類研究は京都大学で最も有名な研究の一つであり、実際に有名な学者さんが不正に関わっている模様。大きな問題となりそうです。(…と書いていたら、やはり大きな問題になりました)

冒頭に追記
2023/05/11追記:
●日本の霊長類研究の創始者・今西錦司がそもそもトンデモだった?
2023/07/29追記:
●「理論的貢献ゼロ」「日本の生物学を遅らせた」といった評価
2024/01/10追記:
●今西錦司を評価する人も一部は否定…賛否両論ある今西錦司の説 【NEW】


●日本の霊長類研究の創始者・今西錦司がそもそもトンデモだった?

2023/05/11追記:前回の<そもそも功績が少なく霊長研廃止は惜しくない?過大評価疑う声>では、以下のようなコメントを引用。多くの人がその廃止を惜しみ、日本が世界に誇っていたはずの「京大霊長類研究所」は、実際には全然大した実績を残していないのではないか?との見方です。これには驚きました。

<京大霊長類研究所の基礎を築いたのは今西錦司だが今西は今では世界で完全に否定されている「今西進化論」にこだわり長い間研究分野でのボスザルであり続け、結果日本での進化人類学、人間・動物行動学の研究を20年以上停滞させたと言われている>

 ただし、これは一般人コメントであり、真偽不明。世界で完全に否定されている「今西進化論」にこだわったせいで日本の研究が停滞した…というのは本当かどうかというのは、ずっと気になっていました。で、今回、今西錦司 - Wikipediaを読んでみたところ、ある程度は本当のようです。

 このウィキペディアページはやたら長いので、うちでは少しずつ紹介。ウィキペディアによると、「今西説」が独創的だったことや影響力があったことは本当みたいですね。ただし、日本独自ということではなく、西洋の研究に影響を受けていた他、西洋でも似たような研究があったとされていました。まるっきりトンデモということではなさげです。

<今西錦司は、生態研究を出発点とした独自の動物社会学や進化論を掲げ、後の生態学や動物行動学に対して様々な影響を与えたと考えられている。今西の学説は年代によって少しずつ変化しており、学説研究もないので総体を把握するのは困難である。
 しばしば上山春平のように、今西の説を日本独自の進化論という形で取り扱うマスコミ、人文系の研究者が多いが、アスキスによれば実際には、(中略、引用者注:当時の西洋の)研究に基づいている。
 (中略)山極寿一は(中略)ヤーコプ・フォン・ユクスキュルの「環世界」に類似した概念であると指摘している>
<当時のダーウィニズムで一般的だった漸進主義のゆっくりとした進化や、進化における生物の能動性を排除する機械主義的な世界観を認めないため、当時のダーウィニズムと真正面から対立するものとなった>

 『主体性の進化論』(1981)で、突然変異は<ランダムではなく発生の制約上方向性をもち、どちらかというと前適応的におきた変異に対して生物が主体的に振舞うので適応的に見える>という「今西進化論」を主張。ただし、後年、生物個体の意志によって進化が左右されるかのようなラマルクの用不用説に基づく適応概念は否定していたそうです。これもそこまでトンデモではないといったところでした。


●「理論的貢献ゼロ」「日本の生物学を遅らせた」といった評価

2023/07/29追記:今西錦司さんの話の続き。上記までで出てきた今西説との違いがいまいちよくわからず、ひょっとしたら同じものを指しているのかもしれませんが、「棲み分け理論」とされるものは評価が高そうなもの。これは全然トンデモだと感じないものであり、妥当性が高いと感じる説です。

<1933年に、川の流速に対応して生活形が分離すること、すなわち川岸から流心にかけて種ごとに異なる分布を形成すること,を加茂川で発見し、これが本理論を発意するきっかけとなった[8]:17。今西の英語で執筆された学術論文において「棲み分け」は「habitat segregation」に訳された[15]。 >

 ただ、一方でこの説は前回の話以上に独創的ではない可能性も。まず、生物種がニッチを選択している現象を指摘する事自体は今西の独創ではなく、チャールズ・ダーウィンの時代から知られていたとのこと。今西さんの独自性は、個体ではなく、今西固有の用語である種が選択の単位であったことだといいます。

 こうしたこともあってか、水棲昆虫の棲み分けの共同研究者である可児藤吉さんは、生態学への理論的貢献を強調。1940年代の極めて単純な遷移モデルが流布しているなかで、様々な種間関係を先だって議論した先見性が認めらています。やはりトンデモではないし、そこまで極端に独創的ではないという以下のような話もありました。

<例えば、タンガニーカ湖におけるシクリッドの進化において、川那部浩哉らが単純な意味で生存競争の結果とはしない考察をしているのは今西の影響が指摘される。しばしば共存を強調し、競争を排除していると指摘される今西進化論だが、そもそも棲み分け説自体が「競争が避けられるなら棲み分ける」「食う-喰われるも棲み分け」という説であり、門下とみなされる吉良竜夫などの研究にも競争が重要な位置を占める>

 また、今なお今西さんの強い影響下にある分野はやはり霊長類学だとのことで、上記以外の話が出てきます。一方、上記までの部分に関しては、今西さんの説の貢献は言われているほど大きくないという声も強い模様。例えば、河田雅圭さんは「生態学や進化論において今西の「オリジナルな理論的貢献」はまったくないと考えている。」と完全否定です。

 その他、岸由二さんは1980年代まで今西説とルイセンコ説が日本の生物学に総合説の受容を遅らせるという悪影響を及ぼしたと主張。一方、今西錦司さんの弟子にあたる西田利貞さんは、これに反論し擁護しています。次回もう少し引用しますが、賛否両論あり、実際、良いところ・悪いところ両方あった感じでした。


●今西錦司を評価する人も一部は否定…賛否両論ある今西錦司の説

2024/01/10追記:予告したように、もう少し今西錦司さんに賛否両論あるという話を。賛否両論という意味でわかりやすいのが、佐倉統さん。佐倉統さんは、今西さんの影響で霊長類学を志したものの、批判的な言説をすることが多いそうですが、一部については評価しています。

<佐倉統は、今西のダーウィニズム批判は概ね1940年代の総合論に対してならばむしろ的確であった一方で、遺伝的浮動や中立説を取り込み性選択を再評価するようになった新総合説については不適当であろうと指摘している。
 佐倉によれば、今西の悪影響は生態を強調しながらも、生態が反映されたものとしての社会記述に重点をおく風潮を蔓延させ、具体的な生態描写について欧米の社会生態学に後れを取った点をあげている[24]。
 この点は霊長類学における第二世代の一人、水原洋城にも意識されており、対談集において生態学=経済学的な側面の研究をすすめる必要性があると指摘されていた[6]。 >

 今西さんは、カリスマやアイドル的な感じもあるのかもしれません。ウィキペディアでは、「現在でも今西に対するシンパシーを表明する研究者は存在する」としていました。

 具体的には、<構造主義生物学を標榜する柴谷篤弘、池田清彦[25]や、生態学者である市野隆雄[26]ら>の名前を例示。このうちの柴谷篤弘さんがまた賛否両論で、さっきとは逆で全体は評価しつつ、一部否定しています。

<柴谷は、『今西進化論批判試論』(1981)において、ダーウィンが『種の起源』で指摘しつつも自然選択説の影に隠れてしまっていた隔離説・中立説・ニッチ選択・群選択説といった現象に再評価を与えたものであり、直接的に対峙するものではないと指摘している。また、生物記号論の川出由己[27]も、今西の進化説に関しては疑問を呈しているが、その生物に対して主体性を認める姿勢を高く評価している。 >

 今西に師事して生態学を志し、後に日本へ社会生物学を導入した先駆である伊藤嘉昭は、今西の進化観を批判しつつも日本の生態学と霊長類学を牽引した業績は正しく認められるべきだと述べていたとのこと。やはり賛否両論といった感じです。

 一方で、ウィキペディアのまとめとしては以下のように「現在今西の支持者は非常に少ないことは確か」として、かなり否定的になっていました。少なくとも一部で見られる今西説に対する手放しの評価は、「過剰評価である」とは言えるかもしれません。

<したがって今西は学史的には第二次世界大戦以前は若手にしか評価されなかった。そして戦後は動物行動学や生態学的な議論を進めた今西ではあるが、「変わるべくして変わる」と言いながらも発生に関する方法論や、集団遺伝学的な議論について十分な議論をしなかったこと、総合説に対する時代遅れの批判、全体論的な認識論が科学教育と合致しないこと、中心となる種・種社会・主体性といった独自の用語が多くの生物学者に理解されなかったことによって、広く受け入れられるには至らなかった[29]。近年は擬似科学的であると分類する科学哲学者もいる[30]ように、現在今西の支持者は非常に少ないことは確かである。 >


●京大の霊長類研究所で20億円の裏金?松沢哲郎氏と友永雅己氏に疑惑

2019/10/31:東大でもハラスメントはあるが少ない?教授が出張旅費不正受給で、京大は不祥事が少ないって書いた途端に、半端ないのが来ましたね。そのとき書いた東大パターンと同じで、数は少なめなものの発覚した場合は規模がでかくなる…といった感じかもしれません。

 疑惑が発生したのは、国内唯一の霊長類の研究所である京都大学の霊長類研究所。ゴリラ研究の第一人者であり、京大の総長という超有名人の山極寿一さんもここの出身です。ただ、山極寿一さんが疑われているというわけではなく、問題とされているのは、現在は京大高等研究院特別教授であり、チンパンジー「アイ」の観察で知られる松沢哲郎元教授と、大型類人猿の知性を研究してきた友永雅己教授だそうです。

 霊長研の関係者によると、ふたりは、都内の動物実験施設の設計施工会社に、霊長研関連の施設工事を予算より安い金額で受注させ、浮いた分の金を返さずに別の研究に回すなどといったことを繰り返していた可能性があります。記事では「研究費のロンダリング」と言っていましたが、会計検査院がこの裏金づくりを疑っており、会計検査院の職員が3度にわたってすでに訪問していたそうです。

 湯本貴和所長は「ふたりがやったことは遺憾です」として、不正を認めているようなことを言っていました。さらに、「今後、文科省から研究費の返還を求められる可能性が高い。その額は見積もりで最大20億円」と説明。本当に大きい案件となりそうです。
(「京大霊長類研究所」で研究費の不正が判明 返還額は最大20億円 | デイリー新潮 週刊新潮 2019年11月7日号掲載より)


●チンパンジーに言葉を教えるプロジェクトで有名だった松沢哲郎氏の経歴

 京大は生え抜きが多いイメージであり、松沢哲郎 - Wikipediaの経歴を見ると、松沢哲郎さんもやはりそうでした。

<学歴>
東京都立両国高等学校卒業
1974年 京都大学文学部哲学科卒業
1976年12月 京都大学大学院文学研究科博士課程中退
1989年 京都大学理学博士

<職歴>
1976年12月 京都大学霊長類研究所助手(心理研究部門(1993年4月 行動神経研究部門認知学習分野に改組))
1987年9月 京都大学霊長類研究所助教授(心理研究部門(1993年4月 行動神経研究部門認知学習分野に改組))
1993年9月 京都大学霊長類研究所教授(行動神経研究部門思考言語分野)
2006年4月 京都大学霊長類研究所所長
2014年4月 日本モンキーセンター所長(教授と兼任)
2016年4月 京都大学高等研究院特別教授

 アイたちチンパンジーに言葉を教えるプロジェクト(アイ・プロジェクト)などで知られ、現在はアイの子どもアユムとともに、チンパンジーでの世代間の文化伝達などを研究しているとの説明があり、想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心など、書籍も多数あります。




●目的のためには手段を選ばない…を解説していた友永雅己教授

 一方の友永雅己教授は生え抜きではなく、大阪大学から来た方でした。古いですが、友永 雅己 - 日本学術振興会のPDFに助教授までの学歴・職歴が載っています。

1986年 大阪大学人間科学部卒
1988年 大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了
1991年 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程所定単位修得退学
1991年 日本学術振興会特別研究員-PD
1991年 京都大学霊長類研究所助手
1994年 博士(理学)の学位取得(京都大学)
1996年 京都大学霊長類研究所助教授

 友永 雅己さんもチンパンジーの認知と行動の発達などの書籍があり、検索では共著もヒットします。



 共著では、マキャベリ的知性と心の理論の進化論―ヒトはなぜ賢くなったかというのがあったのが、印象に残りました。おそらくタイトルの「マキャベリ的知性」というのは、マキャベリズムの関係でしょう。マキャベリズムは、「目的のためには手段を選ばないやり方」のことを言いますので、今回の不正経理事件を思わせるものがあります。



●架空発注を繰り返し、不正額は最低でも1億数千万円に!との続報

2019/12/06:京大が調査委員会を設置して内部調査していることが判明した…ということで、大手マスコミ各社も報道を開始しました。松沢哲郎元教授が特定の業者と独占的な契約を結び、順法意識が欠如して会計制度を軽視した結果、利益供与に発展したとみています。一方、松沢元教授は毎日新聞の取材に「調査を受けているのは事実だが、コメントできない」としてました。
(京大霊長類研の設備工事で特別教授ら研究費不正使用か 大学側が内部調査 毎日新聞2019年12月6日 11時21分(最終更新 12月6日 11時21分)より)

 この問題では、京大が18年5月に関係者から通報を受けていたものだという新情報もあります。調査に1年以上かかるというのなら普通にありますが、内部調査開始までだいぶ時間がかかったというのは、ひっかかるところですね。

 関係者によると、工事は同研究所のチンパンジー用のおりの設置。2010年度から数年間にわたり交付された研究補助金のうち約1億3500万円が余り、別のおりの設置費用に充てることを計画して、付き合いのある業者に落札させたたといいます。

 ただ、これが問題の全容という話ではありません。このおりの設置で業者に赤字が出たため、補塡として、京大野生動物研究センター熊本サンクチュアリ(熊本県)の工事に絡んで架空発注を繰り返す、ということをやっていた模様。実際には工事や物品納入がないにもかかわらず、業者に金を支払っていたとされています。

 私的流用はないとみているものの、不正額は少なくとも1億数千万円に上るという書き方をしていました。デイリー新潮だと最大20億円で、そちらは大げさだったのかもしれないものの、まだ増える可能性はありそうです。


●京都大が報告書「4人が関わって、4年間で5億円の不正支出」

2020/04/03:続報が来ました。「まだ増える可能性はありそうです」と書いていたのですけど、その予想が当たって以前より金額が増えています。また、不正に関わったことがわかった人も増えたみたいですね。

 <京大霊長類研の教授ら4人 5億円余を不正支出 大学が報告書>(NHK 2020年4月2日 22時31分)によると、タイトルの通り、霊長類研究所の教授ら4人が、研究費5億円余りを不正に支出していたとする調査報告書を京都大学がまとめたことがわかったそうです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200402/k10012365331000.html

 前述の2人以外の名前は今回の記事でも未掲載で、その他の話も以前と同じ話が多め。4人は愛知県などにある京都大学霊長類研究所とその関連施設で平成26年度までの4年間に行われたチンパンジーのおりの工事などの28件で、架空取り引きなど総額5億円余りの不正な支出をしていた、とされています。

 このほか、入札前に予算を業者に伝えたり、入札すべき工事を随意契約にしたりするなどの不適切な事例も確認されたとのこと。また、これらは取り引きを通して業者に発生した赤字を補填(ほてん)するために行ったと説明しているということで、私的な流用はなかった、と結論付けられたようです。


●以前からトラブル!2015年から京都大と霊長研教授らに訴訟

2020/04/20:その後NHK以外での報道がありましたが、基本的には同じ。まず、教員4人による不正支出を認定する報告書をまとめたという話。また、14件で計約4800万円、入札妨害が7件で計約4億4千万円など、合わせて34件の不正使用で、研究費約5億1千万円の不正使支出があったと認める、とされていました。
(東京新聞:京大霊長類研、5億円の不正認定 調査委、研究費の返還求め提訴も:社会(TOKYO Web) 2020年4月17日 21時37分より)

 ところで、私は教授らと業者との間ではトラブルはなかったと思っていたんですよ。おりの設置で業者に赤字が出たため、補塡として別の工事に絡んで架空発注を繰り返す、といったことをやっていたという報道があったためです。

 しかし、どうも違ったようでした。2017年11月30日という最近ではない記事で、京都大学「霊長類研究所」を詐欺的と訴えた「新証拠」--内木場重人 | ハフポストというものがありました。トラブルが起きていたんですね。また、この話は京都大の対応も早くなかったことを示唆しています。

 記事によると、京都大学および同研究所の教授と准教授(ともに当時、前述の二人とイニシャルが一致)を被告とした訴訟が2015年から続いていました。原告は工事を受注した業者で、東京地方裁判所で行われた1審では2017年5月、原告が敗訴したものの、控訴して争っているという状態でした。


●赤字補てんの約束を破る詐欺行為…メールや録音テープで証拠

 原告の動物実験施設の設計施工会社によると、3件の工事で赤字が発生したのですが、自社の経営判断で安すぎる金額で受注したのではなく、「詐欺」にあったようなものだといった主張をしていたようです。しかも、いくつもの有力な物的証拠を出していました。

<京大のM教授、T准教授らより事前の計画段階から相談されており、当初から大学側の予算額も聞いていた。(中略)
工事内容はいずれも予算額で収まらず、相当額の赤字が発生することは事前の打ち合わせで教授らもよくよく認識承知しており、それどころか、赤字分は以後、別の仕事を順次随意契約で発注し、その額に別予算で上乗せして補填する、という確約までしていた。(中略)が、実際に補填の話になると言を左右にして応じてくれない。やむを得ず提訴した――という主張だ>
<打ち合わせ内容のメモや後日作成した「議事録」、これに訂正があるならば申し出てほしい旨のメールと、そのメールを教授側が消去した記録、さらには、具体的な赤字額とそれを補填すると明記した後日作成の「確認書」(教授らの署名押印あり)などが存在した>

 これだけの証拠がありながらなぜか東京地裁は、京都大に忖度した判決に。ただ、控訴して新証拠として決定的な「録音テープ」を提出した…というところまでが記事の話でした。

 その後の話はなぜか検索しても出てこなくて、判決がどうなかったのかは不明。ただ、前述の通り、京都大による調査が行われて、認めざるを得ないというところまでやっと行った…ということみたいですね。どうも霊長研だけでなく、京都大側の対応にも問題がありそうでした。


●お金がない!不正を招いたのは、日本政府の研究予算の削減?

2020/06/28:京都大が調査結果を発表しました。4人は、平成26年度までの4年間、研究所や関連施設のチンパンジーのおりの工事で架空取り引きなどを繰り返し、総額5億円余りの不正な支出をしていたという報告に。20億円までは行きませんでしたが、十分すぎるほどの高額です。
(京大霊長類研不正 調査結果公表06月26日 18時01分 NHKより)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200626/2000031459.html

 契約後の不適切な仕様変更による過大な支出、架空の取り引き、入札妨害など、あわせて34件の不正が確認されたといいます。大学側は、順法意識の欠如や会計制度の軽視があったとしていて、今後、4人の懲戒処分を行う方針。一方、別記事によると、刑事告発については明言していませんでした。

 こうした不正は取り引きを通して業者に発生した赤字を補てんするために行ったとみられ、調査に対して、教授らは「窮状を訴える取引業者を何とかしてあげたかった」と話しているとのこと。ただ、前述の通り、業者は騙されたと主張していたんですけどね。今回も同じようなことを言っていました。

【工事業者の主張】
問題となった支出のきっかけは、平成23年に行われたチンパンジーのおりの工事契約。大学が確保した予算を大幅に上回る工事だったが、将来、別の工事で赤字を補填すると約束されたため、実際より低い価格で入札したと主張。
「入札前に松沢特別教授と面会した際、今後も自分には大きな予算がつくと言っていたので、いずれ埋め合わせをしてくれると信じた。以前から小さな案件で予算が足りないが受注してくれないかと頼まれたことがあり、なれ合いになっていた。好んでやったわけじゃないではないが自分の非は認める」

 今回の件を問題視しないというわけにはいかないのですけど、日本の研究予算が少なすぎるのが本当の問題なのでは?といった同情的な声も出ています。日本政府は長年研究予算を減らす政策をとってきました。京都大、それも霊長類研のような花形研究ですらこの有様なのですから、そういった面もあるのかもしれません。


●会計検査院の調査で不適切会計の金額が拡大、11億円以上に…

2020/11/13:<京大教授ら11億円超不適切会計 11月10日 11時39分 NHK>というニュースによると、以前書いた京都大の「5億円の不正支出」という報告を受けて、会計検査院が、平成29年度までの100件の契約に対象を広げて調べたとのこと。この会計検査院というのは、大学に限らず、広く国の予算の使われ方を検査している機関です。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20201110/2000037077.html

 そして、この会計検査院が手広く調査した結果、すでに明らかになった不正な支出を含め、総額で11億円を超える不適切な会計処理が行われていたことがわかったとのいいます。当初、最大20億円といわれており、そこまでは増えなかったものの、かなりのところまで増えてきましたね。

 会計検査院によると、中には作業工程を分割するよう業者に指示し、競争入札ではなく随意契約で受注できるようにしていたケースもあったのこと。随意契約は全部クロ…という極端なことではないものの、安倍政権のアベノマスクのときにも疑われたように、怪しいことがちょくちょくあるんですよね…。


●特別教授ら2人を懲戒解雇処分も、本人は不正を否定し訴訟の可能性

2020/11/25:今回の不正問題について、京大は2020年11月24日、研究者と事務職員の計6人に懲戒処分を行いました。チンパンジー研究の世界的権威で文化功労者である京都大の松沢哲郎特別教授(70)と友永雅己教授(56)は懲戒解雇になっています。懲戒処分前に辞職するケースも多いのですが、処分にまで行きました。

 京大特別教授ら2人を懲戒解雇 チンパンジー研究の権威・松沢氏ら研究費不正|社会|地域のニュース|京都新聞によると、その他の人には、野生動物研究センターの平田聡教授(47)を停職1カ月、森村成樹准教授(50)を同2カ月といった処分。当時同研究所の事務方トップだった60代男性事務職員、契約担当の掛長だった50代男性事務職員を戒告としています。

 京大は懲戒処分を受けた教職員について「内容を認めていない者もいたが、個別の説明は差し控える」と説明。これは松沢哲郎特別教授のことのようで、個人サイトで疑惑を否定。「不正の判定の基礎となる大学の調査そのものが事実を誤認しており、このため誤った事実認定に基づく不正の認定になっている」「私的流用はありません」とし、今後について弁護士と相談するとしいてたとのこと。裁判に発展するかもしれません。


●松沢哲郎元特別教授「京大の調査は事実誤認で懲戒解雇は不当」と提訴

2021/05/30:前回「裁判に発展するかもしれません」と書いた通り、京都大学霊長類研究所の所長だった京都大学の松沢哲郎元特別教授はやはり提訴するみたいですね。<京大元特別教授が解雇無効など求め提訴>(NHK 05月29日 07時42分)という記事が出ていました。処分の取り消しを求めているようです。

<元特別教授は去年11月に懲戒解雇されましたが、調査には著しい事実誤認があり処分は不当だと主張し、大学に対して解雇の無効や給与の支払いなどを求めています。
元特別教授は、「不正確な調査の見直しを証拠を添えて大学にこれまで再三要請しましたが、聞き入れてもらえませんでした。真実を明らかにしたいので、今回裁判という方法を取りました」とコメントしています>
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210529/2000046374.html

 前回の記事も今回の記事も具体的に京都大の調査の何が間違っているのか?といった話は書かれておらず、松沢哲郎元特別教授の主張内容は全くわかりません。マスコミが報じていないだけかもしれませんが、ひょっとしたら裁判に影響があるので言わないということなのかも。具体的な話がわかるのは裁判が始まってから…となりそうですね。


●世界を牽引してきた霊長類研究所、不正のせいで事実上の「解体」へ

2021/10/15追記:京大が霊長類研究所を事実上「解体」へ 世界的な拠点、研究資金不正の舞台|京都新聞(2021年10月14日)という記事が出ていました。前述までの件が理由ですが、霊長類研では、京都大霊長類研究所の正高信男・元教授、大麻論文にデータ捏造疑惑  『ケータイを持ったサル』の著者もあり、最近はさんざんでしたね。

 記事によると、京都大霊長類研究所(愛知県犬山市、霊長研)について、京大が組織再編する方向で検討を進めていることが、関係者への取材で分かったとのこと。記事では、霊長類研に「世界の霊長類研究を牽引(けんいん)してきた」という枕詞をつけて説明しており、日本の誇りだったはずなのですが、一転して恥となってしまいました。

 関係者によると、学部や研究科と並ぶ組織として位置づけられる「付置研究所」だった霊長研について、この枠組みから外すことも検討。特別扱いしないってことでしょうね。「霊長類研究所」の名称も変更する可能性が高いとのこと。事実上の「解体」と見る関係者もいるといいます。一方で、霊長研が飼育してきた動物は犬山市の施設内でそのまま管理するとみられているそうです。研究は続きそうで良かったですね。


●不正で京大は国などに9億円を返還 しかし、まだ半分も返済できず…

2021/10/27追記:霊長類解体の続報。京大は22年3月末で霊長類研の組織を解体し、同年4月以降は「ヒト行動進化研究センター(仮称)」として再編することに。主に脳や進化について実験・解析する部門を新センターに残し、サルの生態や行動などを野外で研究する部門は大学院理学研究科などに移します。研究者や職員の解雇はしないとされていました。
(京都大、霊長類研を解体・再編へ 飼育施設めぐる不正経理など受け:朝日新聞デジタル(野中良祐 2021年10月26日 17時00分)より)

 これを伝えた記事ではお金の話もあります。京大が架空取引などによる支出が約5億円あったと認定した他、会計検査院が指摘した約6億円の不適正支出と合わせた計約11億円に利息にあたる加算金を上乗せした分が、事業費や研究費を助成した国や日本学術振興会への返還対象となっているそうです。

 京大によると、すでに学術振興会へ約9億円を返還。この原資は霊長類研への予算削減などでまかなっているのですが、返済額はまだ10億円以上残っているということで、きついですね。こうした不正や返還の金額の大きさからは、改めて霊長類研が優遇されていたとわかります。一方で、多額の資金をもらっていた霊長類研ですら、大規模な不正経理が起きてしまった…とも言えます。


●「日本の損失」>京大霊長類研の改編に学術界から要望書相次ぐ

2021/11/06追記:京大霊長類研の改編 学術界から要望書相次ぐ 「多大な損失憂慮」 毎日新聞 2021/11/4 17:59によると、京都大が発表した同大霊長類研究所(愛知県犬山市)の改編計画を巡り、京大の湊長博学長宛てに再考を求める要望書を学術界が相次いで提出しているとのことです。

 日本霊長類学会は10月27日付で「世界的な研究拠点の消失は我が国全体の科学研究にとっても取り返しのつかない、多大な損失であると憂慮する」とする要望書を提出しました。日本人類学会も有志233人が「貴重な学術基盤が失われないよう、重ねてお願い申し上げる」との要望書を提出しています。

 改編案について日本霊長類学会は「貴学がこれまで不断の努力で構築してきた唯一無二の研究が継続できなくなる可能性や、多様な学問分野が交流する学際的研究の中心的役割を継続できなくなる可能性もある」と指摘。改編案は「霊長類学はじめ関係分野における研究水準の低下につながると考える」と訴えていたそうです。

 また、これより前には、元研究所長の杉山幸丸・京大名誉教授(86)が中心になって、霊長類学研究者有志らが、計画撤回を求めるオンライン署名活動を実施しているというニュースも。こちらは、京大霊長類研の改編計画 撤回求め元所長らがオンライン署名 毎日新聞 2021/10/27 17:11という記事の話です。

<杉山名誉教授らは署名サイトの中で「霊長研に集った研究者は世界の霊長類学をリードしてきた。霊長研は生態学や認知心理学などの研究交流の場になっており、解体は霊長類学のみならず関連分野にとっても大きな痛手」と訴え、京大の湊長博学長らに対し計画撤回を訴えている。
 杉山名誉教授は27日、毎日新聞の取材に、霊長類研の改編で脳科学系のみ残し、野外研究系が分散することを懸念。「中心である野外研究系を分けてしまっては本末転倒。霊長類学は潰されてしまう。京大伝統の、独自のアイデアで独自の研究を進められる拠点がなくなってしまう。OBとして黙っていられなかった」と語った>


●理解できる主張ではあるが、不適正支出の返済はどうするつもり?

 これらの主張は理解できないわけでもありません。京都大の案がベストかどうかは議論のあるところでしょう。権限を持たせて治外法権化したのであれば、監視を厳重にするなどといった案で十分な可能性があります。今ある霊長類研究所の研究をまとめずにバラバラに移動するという、京大案に必然性があるかもわかりません。

 ただ、多額の不正があったという事実を要望が踏まえていない感じなのは不満。さらに、10億円以上残っている返済をどうするのか?というのが一番の問題でしょう。不正を行った資金は返却する必要があり、そのお金をどこから出すか?というと、今のように研究規模を縮小して…でないと難しいというのは理解できるところ。下手すると、不正していない分野の研究費が減らされかねません。それこそあり得ない話でしょう。

 一方、こうした研究費不正については、近年の政府の研究軽視による資金不足の問題が大きいといつも書いています。不正を正当化できないものの、日本は他国と比べて異常な状態です。とはいえ、霊長類研の場合はむしろ恵まれていたところではないか?と疑われるので、今回はこの擁護も適用しづらいところ。肥大化した研究費の見直しは致し方ない気がします。


●京大の不正認定は霊長類研究所の裏金問題リークへの報復だった?

2022/02/10追記:正高信男・元教授の投稿で書いた内容と一部重なりますが、不正経理のリーク元と疑われ、論文不正の嫌疑もかけられた元教授が明かす「京大霊長類研究所」騒動のてん末(前編) | デイリー新潮(2021年10月29日)という記事についての話をこちらにも追記。正高信男・元教授の書籍を出している新潮社が、本人の主張をそのまま載せたもので、中立性は皆無ですが、正高信男・元教授の言い分を読むことができます。

 私は正高信男・元教授の投稿の方で、「霊長類研究所で20億円裏金不正疑惑の後に、正高信男・霊長類研元教授の捏造疑惑まで出て踏んだり蹴ったり」といったことを書いていたのですが、正高信男・元教授によると、霊長類研が裏金不正のリーク元と疑って報復したのではないか?というものでした。

<私はというと、一連の事案がマスコミの知ることとなるのは私からなのではないかという、あらぬ嫌疑を研究所上層部にかけられ、研究に不正があったとの口実を設けて、解体が報ぜられた翌日に不正認定の記者会見というはこびとなった次第。
 個人的には不正調査というもののヒアリングによばれたこともなく、いいがかりもはなはだしいが何を言っても研究所が旧に復することはない。サル山のサルのような喧嘩をこの年になってする気は、さらさらない>


●はるか昔の論文を不正認定なら京大側の報復説に説得力増すが…

 記事の大半は霊長類研の話だったので、不正関連は上記のみ。「敢えて反論はしない」といった感じでもあります。ただ、「ヒアリングによばれたこともなく」は京都大学側の発表と正反対であり、どちらかが嘘をついている模様。京都大学側は「高信男元教授が京大のヒアリングなどに一切応じていない」としていました。

 また、実験に参加したとされる人たちが、実際に実験に参加した事実が確認できなかった…という重大な問題は解決していません。出典がどこかわからなかったのですけど、Wikipediaでは、「研究物資の購入実績が実験の規模と見合わなかった」という記述も見られており、これも事実なら不正と考えるのが妥当だと思われます。

 直接的な証拠にはなりませんが、退職から時間が経っていたり、はるか昔の論文の不正を認定したりした場合は報復説に説得力が出てくるでしょう。しかし、定年退職したのは2020年と不正判明の直前で、論文も2014~2019年に発表されたもの。最近の論文のため、「昔だからデータは消去した」とも言えそうにない感じでした。


●最近の霊長類研はダメだった?偉大な成果は昔だけで今と違い単著

 正高信男・元教授の投稿の方で紹介した内容は以上でしたが、こちらのページは霊長類研究所関連ということで、そこらへんの正高信男・元教授の話も紹介。サル学の偉大な成果は昔のものであり、なおかつ単独で行った研究であり、最近の霊長類研みたいに群れていなかった…と書いていました。最近の霊長類研への皮肉かもしれません。

<霊長研での半世紀あまりの歴史のなかで、最大の業績は何だったかと今振り返ってみると、ふたつが挙げられると思う。
 ひとつはインドに生息するハヌマンラングールというサルでの子殺しの発見。もうひとつは、屋久島での餌づけしない、まったく野生のニホンザルの詳細な研究である。(中略)前者はのちに研究所の所長にまでなった杉山幸丸氏、後者は大学院に在籍した丸橋珠樹氏の業績である。
 (中略)注目すべきことは、杉山氏がインドにおもむいてラングールの群れでは子殺しが、異常行動ではなく行われることを見出したのは大学院生として、単身、ほとんど徒手空拳でインドに滞在した末の成果であり、それは丸橋氏もしかり。
 つまり指導教官や先輩・同僚の援助や協力なしであったということだろう。それがサル学をめざす者の流儀だった。だから知見を公表した論文の著者としては、彼らの名前しか書かれていない。今日のようにプロジェクトとして、研究グループのメンバーがキンギョの糞のように名をつらねるのと大違いだ>


●霊長類研は昔から無法地帯?激しく対立して放逐・出勤の偽装不正

 上記の通り、「指導教官や先輩・同僚の援助や協力なし」の単著であり、「それがサル学をめざす者の流儀だった」との説明。「ひとりひとりが一国一城の主というのが霊長研の原則」とも書いています。ただ、一国一城の主であるがために対立ができ、対立相手を放逐する…といったことも起きたとしていました。

<その人は京大におけるアフリカでの野生チンパンジー調査の黎明期に活躍した人物で、その業績は海外でとみに評価が高かった。(中略)ただ先輩や同僚と衝突し、アフリカに行く機会を失い、40歳(1980年)のころには実家のある関東に自宅をかまえてしまったのだった>

 ただ、この人はこのまま辞めたわけではなく、「来たくない人は来なくてもかまわないという不文律」で出勤していることになって定年まで勤め上げました。ちょっといい話風ですが、不正ですね。<それがサル学の流儀とされてきたのが、もはや昨今では通用しなくなってきた>としており、昔から霊長研は無法地帯…といった感じでした。


●学外の誰でも利用可能…良くも悪くも自由な京大霊長類研究所

2022/02/23追記:前回書いた正高信男・元教授の話の後編は、「京大霊長類研究所」への惜別の辞~学生誘拐事件と「化石をかみつぶした」天才研究者の物語(後編) | デイリー新潮(2021年10月29日)というもの。こちらでは、前回の最後で出た悪い自由さではない良い自由さが見えていました。

 霊長研はその設立当初から、全国共同利用研究所だったそうです。これは、日本各地のサル研究に関心のある研究者には、門戸を開きましょうという制度。共同利用研究員となれば、自由に研究所内を出入りできたそうです。誰もやっていなかった南米のサルの研究に着手した伊澤紘生さんも霊長研に在籍した経験はなかったといいます。

 また、霊長研を介して、交流をもつことで、伊澤紘生さんの作ったアマゾン河上流域のプロジェクトに様々な人が参加。前回、正高信男・元教授は研究者の「孤高」を強調していたものの、各地では孤立していたとしても、霊長研を訪ねれば同好の士を見出すことができる、あるいは必要な情報をえることができるというセンターの役割を果たしていた、と説明されていました。


●学生の身代金誘拐事件が発生し、女学生が勝手に解決するカオス

 一方、旅行保険はおろか傷害保険にも加入せず、食料も現地調達という昔の「探検」みたいな活動という部分は、再び悪い自由さと言えそう。というのも、関西の私立大学の学生が、コロンビアマフィアに誘拐される身代金事件が発生してしまったため。大学院の女学生が単身解決しましたが、身代金含めて全部自腹という、ここですら自由さが出ました。

 正高信男・元教授は、この事件のせいで、南アメリカでのサル調査のプロジェクトは完全に途絶したともされています。さすがに自由さは続きませんでした。なお、この事件は隠密裏にことははこび公にならなかった…とされており、本当かいな?という話。嘘を言われてもわからないので、第三者による情報が必要かもしれません。

 上記は全体タイトルの前半部の話で、後半部の「天才研究者」というのは、霊長研に助手として着任した正高信男・元教授の4歳年上の研究者の話。「こんなに頭の良い人がいるのだ」と驚いたものの、論文をほとんど書かず、研究もしなくなってしまいました。やる前から結果が見えてしまうためやる気になれなかった…といった説明です。

 彼自身はそれで満足していたわけではなく、むしろ辛かったようで、日頃の言行が荒れるように。ついには、研究会のあとの懇親の席で酩酊した上に、他の研究者の「サルらしき動物」の歯の化石を食べて噛み潰してしまう奇行も見せたとのこと。これも本当かいな?という話ですけど、正高信男・元教授のこうした文章が読者受けするんだろうなとは感じました。


●2億円賠償提訴に松沢哲郎元所長反論「自分の不正の責任は京大」

2023/01/15追記:京都大霊長類研究所(解体)での研究資金の不正支出問題を巡り、京大がチンパンジー研究の第一人者・松沢哲郎元所長(懲戒解雇)らを相手取り、2億円の損害賠償などを求めて京都地裁に提訴していたことがわかったそうです。提訴は最近ではなく2022年10月28日付けだといいます。

・チンパンジー研究の第一人者、松沢哲郎・霊長研元所長に2億円の賠償提訴…京都大(23/1/14(土) 読売新聞オンライン)
<訴状によると、2010~12年度、松沢氏を代表とする研究が、国の選定で日本学術振興会の補助金交付の対象となった。しかし、チンパンジーを飼育する研究用ケージの一般競争入札で、仕様策定に直接関与した業者が、その後の入札に参加したのは入札妨害にあたるとして、同振興会は、補助金交付決定の一部取り消しと返還命令を出した。入札は別の業者が落札した>
https://news.yahoo.co.jp/articles/b617827366d5a030378be31037fe9b87be63b6f9

 上記は日本学術振興会による入札妨害の認定であり、京都大側による独自の主張ではなさげ。おそらく争点はこうした「入札妨害」を行った責任は誰にあるか?というところでしょう。これは以下のように主張が対立。なお、松沢哲郎元所長は2021年、京大に対し、地位確認を求める訴訟を地裁に起こしており、まだ係争中だそうです。

<京大側は、松沢氏が部下の元教授(懲戒解雇)に仕様策定作業の多くを担当させ、資格のない業者が入札に参加することを黙認したなどと主張。京大が返還した計約3億6100万円(加算金を含む)のうち、2億円の支払いなどを求めている。
 松沢氏の代理人弁護士は取材に「事業責任者である京大の違反にもかかわらず個人に責任を押しつけた不当訴訟」と反論。24日に予定される第1回口頭弁論で請求棄却を求める方針だ>

 松沢哲郎元所長側の「自分の不正の責任は組織の上」という主張は、無責任で荒唐無稽に見えます。ただし、組織の一般論として、責任が上にあるのは事実です。一方、大学というのは個人の裁量と独立性が大きい特殊な組織。特に京都大霊長類研究所はこれまで書いてきたように、極めて独立性の高い特殊な組織でした。

 また、大学研究での不正経理において、大学側が研究者個人に支払いを求める…ということは珍しいことではなくよくある話。訴訟も選択肢としてはあり得ます。さらに言えば、一般的な企業においても、横領など個人の責任が強い問題だと、支払い請求はよくある話。大学にも監督責任があるものの、請求自体はあり得る話です。


●そもそも功績が少なく霊長研廃止は惜しくない?過大評価疑う声

2023/01/30追記:前回の記事のヤフーニュースコメントでは、<求められる資質も違うし、このような話で有能な人材が懲戒免職になるなんて損失が大き過ぎる>といった松沢哲郎・霊長研元所長の才能を惜しむ声が出ています。それ以前の霊長研廃止についても、「損失が大きすぎる」と反対意見が続出していました。

 ただ、今回驚いたのは、松沢哲郎・霊長研元所長や霊長研の功績がそもそも過大評価されているのでは?という誹謗中傷気味なコメントがあったこと。これは以前の霊長研廃止のときには見なかったコメントです。そういえば、霊長研の正高信男・元教授も過去の功績は認めつつ、最近はダメというスタンスだったんですよね…。

・石田雅彦 ライター、編集者
<私は何回も同研究所を取材に訪れていますし、松沢氏にもインタビューしたことがあります。チンパンジーのアイからは、観察ドームごしに強烈な攻撃を受けたことがあり、それを見て松沢氏は笑っていました。そもそも「チンパンジーはチンパンジン」という言動が果たして科学的かどうか、大いに首をひねらさたたものです>

・一般人コメント
<京大霊長類研究所の基礎を築いたのは今西錦司だが今西は今では世界で完全に否定されている「今西進化論」にこだわり長い間研究分野でのボスザルであり続け、結果日本での進化人類学、人間・動物行動学の研究を20年以上停滞させたと言われている。
 松沢氏も研究所のボスザルとして君臨し学術研究だけでなく運営にも大きな影響力を持ち続けたのではないだろうか。京大としても松沢氏の私的研究所となった霊長類研究所の現在及び将来での存在価値を認めず一日も早く研究所を廃止すことを考えていたのだろう。
 松沢氏が何をやったかはともかく普通に考えれば研究所トップの首をすげかえればいいものを研究所そのものを廃止したのは金銭的理由もあるだろうが研究所の実績と目指す方向が時代の世界的研究レベルや方向と大きく乖離していたのだと思う。その意味でも松沢氏が裁判してまで地位の復活を願うのは無理があると思う>

・別の一般人コメント
<松沢氏は,政治的な野心がとても高く,それを実現させる行動力ももっているが,純粋に研究者として超一流かというとかならずしもそうではない。だからこの件は,研究能力は高いが世間知らずの大学教授がしでかした事件かというとそうではなく,明確に自分の影響力を自覚したうえでの不正といえるだろう>


【本文中でリンクした投稿】
  ■京都大霊長類研究所の正高信男・元教授、大麻論文にデータ捏造疑惑  『ケータイを持ったサル』の著者
  ■東大でもハラスメントはあるが少ない?教授が出張旅費不正受給

【関連投稿】
  ■大阪大の青江秀史教授が反論「セクハラはしたが不正受給はしてない」
  ■広島大准教授が不正受給で東大教授へ華麗に出世 パワハラ教授も
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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