TikTokの話をまとめ。<日本でも人気のダウンロード世界一TikTokは中国製 でもパクリ?>、<TikTokだけがなぜ日本など海外でも大きくヒットしたのか?>、<アメリカで大成功しすぎたTikTok、アメリカによる乗っ取りに?>、<「Facebook」も「YouTube」も疲れる…「TikTok」がすごい理由>などをまとめています。
その後、<ネットもスマホもやらないアップル共同創業者、TIKTOKだけはやる>などを追記しています。
2022/11/18まとめ:
●フェイスブック離れ・インスタ離れ?広告主がTikTokを選ぶ理由
2023/08/20まとめ:
●ネットもスマホもやらないアップル共同創業者、TIKTOKだけはやる 【NEW】
●日本でも人気のダウンロード世界一TikTokは中国製 でもパクリ?
2019/05/21:米調査会社センサータワーの調査によると、米アップルのApp Storeの非ゲーム部門で2018年にダウンロード数1位に輝いたのは動画アプリの「TikTok」でした。日本でもJC・JK流行語大賞2018で1位になるなど、若い世代を中心に人気になっています。
このTikTok、実を言うと、中国発アプリ。北京字節跳動科技有限公司(Bytedance、バイトダンス)によって、2016年9月にサービス開始が発表されたものだそうです。中国ビジネスに詳しい藤井 直毅さんはこれについて、今まで多かったパクリではないオリジナルアプリだと説明しています。
<長い間、中国のアプリやソフトは外国のヒット商品の模倣や後追いが多かった。しかし、TikTokは中国発で他国に広がるという、これまでとは全く逆の経路をたどることになり、ある種のパラダイムシフトを感じさせることになった>
(
中国発アプリ「TikTok」が日本でもウケた背景:日経ビジネス電子版 2019年3月29日より)
●TikTokだけがなぜ日本など海外でも大きくヒットしたのか?
藤井 直毅さんによると、大雑把に言えば、まず企業系動画、次に美貌や才能のある一部の素人の動画というブームの変遷を経て、TikTokのような「みんなが動画を気軽に配信し、みんなが見る」動画サービスが誕生したとのこと。中国国内では必ずしもTikTokの一人勝ちというわけではないそうです。
「快手(クァイショウ)」や、「西瓜(シーグワ=スイカ)視頻」というTikTokと同じ運営元、字節跳動(バイトダンス)が手掛けるお笑い中心のアプリがTOP3を争う状態。さらに、バイドゥの「好看視頻(ハオカンシーピン)」や国外ではREDの名前で知られる女性向けの「小紅書(シャオホンシュー)」など、様々なアプリが登場しているといいます。
ただし、国外で大成功したのは、TikTokのみです。このTikTokが成功できた理由について、記事では3点挙げていました。私が想像していたTikTokヒットの理由は、「投稿ハードルの低さ」というものだけでした。これは2番目の理由となっていましたが、最初にこれを紹介しておきます。
②投稿ハードルの低さ
短い秒数を基本とし、豊富な音楽やエフェクトにより簡単にそれらしい動画ができるような設計にした。
●「内輪ネタの方がおもしろい」は間違っていた?TikTokの国際的なおもしろさ
私の思いつかなかった他二つの理由はおもしろいですね。まず、内輪ネタ以外が良かったという指摘です。
①ユニバーサルなおもしろさ
「~してみた」などに色濃かった「同じネタを知っている人同士で楽しむ」というカルチャーとは正反対の、前提となる知識がなくても直感的に笑えたり、おもしろかったりするネタが多い。言語や文化背景にとらわれにくいため、海外でも広まった。
私は「最もおもしろいのは内輪ネタ」「ネタが通じる範囲が狭いほどおもしろい」という考え方を支持しています。TikTokの成功は、それと矛盾するかとなると、そうでもないでしょう。今は廃れたものの、ニコニコ動画は内輪ネタが多くて成功したサイト。2ちゃんねるなんかもそうですね。内輪ネタがウケること自体は間違いありません。
ただし、内輪ネタは幅が広がりづらいです。よく外国人や海外から戻ってきた日本人が、日本のテレビを見てもおもしろくないと言うのも、こうした問題。内輪としての予備知識がないとおもしろくないのだと考えられます。逆に日本人のお笑い芸人が、海外でウケなくて困ったという話も聞いたことがあります。
その芸人さんがどうしたか?と言うと、海外の人でもわかる万国共通のシモネタに走りました。内輪ネタは深く刺さるのは良いものの範囲が狭く、国際的なウケには繋がりづらいです。ニコニコ動画が廃れたってのもそういうところかもしれませんね。新しい世代を取り込むことができず、高齢化した感じです。
●素人が見てもらえるに意識して特化、インフルエンサー殺しのサービスに
ネットビジネス的・技術的に興味深いと感じられるのが、最後の三番目の理由でした。
③多くの人に見てもらえる可能性の高さ
視聴や「イイネ」の履歴といったビッグデータに基づくレコメンド、つまりプラットフォーム側がトラフィックを誘導する力を強めたことで、有名ではない普通の人の動画にもある程度の視聴数をいわば「計画的に」流し込むことが可能になった。
上記だけだと特異さが伝わらないのですけど、その後の以下の説明を読むとわかるでしょう。「一部の美貌と才能がある人ではなく誰でも見てもらえる」を、運営側がかなり意識してやっている感じなのです。
<あるサイトがある一定の時間内に獲得できるトラフィックの総和は一定と考えると、そのトラフィックを一般の人にまで広く分配すれば、その分トップのインフルエンサーが得るトラフィックは減ることになる。例えば19年3月初旬現在、TikTok内でトップの投稿者のフォロワーは4300万弱。これはアクティブユーザー数が同程度の大手SNS「微博(ウェイボ)」のトップユーザーのフォロワー数(1億2000万超)と比べると、かなり少ない。この現象は多くの普通の人が「初めての投稿なのにたくさんアクセスがあった」と喜んでいることとトレードオフの関係にあるといえる>
これは通常のインフルエンサービジネスが成り立たないということにもなると、藤井 直毅さんは指摘。運営するバイトダンスは、TikTokでインフルエンサーを起用する場合、関連サービスを経由させるなどして、より多く利益を得ているみたいですね。
ただ、流行り廃りの早いネットの世界で、このままTikTokがわが世の春を謳歌することができるかどうかは怪しいところ。ダウンロード世界一になったので十二分に素晴らしい成功をしたのは間違いありませんが、TikTok自体にも飽きが来るのではないかと思います。
●アメリカで大成功しすぎたTikTok、アメリカによる乗っ取りに?
2020/08/03:その後、スパイアプリ疑惑が出て、アメリカからの締め出しを食らいそうにになっているTikTok。これは今回書きたかった話ではないのですが、触れないわけにも行かないため、軽く触れておきます。
これについて、中国でも海外アプリ規制をしているからお互い様という意見もありますが、トランプ大統領らは中国ではない企業に売るように言っていますので、締め出しではなく乗っ取りに近いですね(2020/08/07追記:その後、さらにアメリカ政府にもお金を支払うように言い出してめちゃくちゃ)。過去のケースでは、日本企業らが乗っ取られた
外資を乗っ取ったロシアのサハリン2事件 三井物産・三菱商事が損失が似ている感じです。
それから、問題だとされたTikTokの挙動について言えば、中国製ではないアプリでも見られるものとされていましたので、ひょっとしたらまたアメリカが難癖をつけているだけかも。さんざん問題視していたファーウェイも結局証拠は出てこなかった上に、交渉材料として使い終えると最後には認めました。本当に問題があったのなら、禁止されていたはずです。また、新型コロナウイルスの中国人工ウイルス論もさんざん吹いたのに、証拠がなくてトーンダウンしてしまいました。
今は日本に矛先が向いていないから良いようなものですが、一連の攻撃は日本相手でもできるであろうもの。高度経済成長時代のアメリカには、本気で日本が再び太平洋地域を侵略しようとしているという主張がかなり信じられていたらしいので、その時代にトランプ大統領がいれば、中国のようにやられていたでしょう。根拠やルール無視は問題があります。
●「Facebook」も「YouTube」も疲れる…「TikTok」がすごい理由
紹介したかった記事も、全体的には上記の絡みであり、
中国アプリ、日本で禁止されると何が起きるか | 東洋経済オンラインというタイトル。自民党が中国企業が提供するアプリ制限を求めているものの、TikTokよりSNSのWeChatやWeiboでやり取りができなくなることが日本企業のビジネスにマイナスだろうという話です。
ただ、私が興味を感じたのは技術的な部分。技術による工夫でユーザーに負担をかけないようにしているというところがすごいんですよ。これはアメリカのNetflixと似ており、
NetflixとHuluが日本で苦戦する理由 より人気なのはどっち?に追記することも検討しました。
彼女の影響で最初は渋々TikTokを始めてドハマリしてしまった東京の25歳の男性は、FacebookやYouTubeよりTikTokがずっと良い理由を以下のように語っています。(表現の一部を変更してまとめ)
「TikTokが僕の見たいものを学んでいて、自分のツボにはまる動画がタイムラインに表示される(中略)。自分が見たいものだけを見られる手軽さに、他のSNSはやらなくなった」
「(引用者注:以前使っていたFacebookは)特に『いいね』ボタンが何種類も増えてから、『どれかを選ぶべきか』と考えるのが負担になりました」
・頭を使う「Facebook」に対して、「YouTube」の視聴には体力が必要。「15分くらいのコンテンツなので、見るぞ!と思って見ないといけない。TikTokは何にも考えなくても、ただただ好きな動画が流れてくる。内容も平和なので、彼女と見ても喧嘩にならない」
●TikTokはNetflixと似ている?技術を駆使してユーザーに優しい仕様
バイトダンスはTikTok(中国版は抖音)をリリースする前は、ニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」で知られていたそうですが、どちらも人工知能(AI)を駆使したユーザーニーズへの最適化を武器としているとのこと。ここらへんの最適化が圧倒的にうまいようです。
Netflixと似たところがあるというのは、Netflixがオススメ機能を重視して、「検索をさせない」「検索をする必要がない」ことを目指したということ。検索をすることすら手間でムダで、ユーザーに負担を与えているという考え方なんですね。このNetflixについては、以下のような話を以前していました。
<Netflixのモットーに「徹底的なユーザーフレンドリー」というものがあります。広告がないことでスキップする必要がなく、スキップのための待ち時間もないので、見たいものに早くたどり着ける。だから、検索もする必要をなくす、というのがベースです>
それから、選択肢が多いと負担になるというFacebookの話もそのまんまNetflixであったんですよね。Netflixで点数評価を細かくすると、評価自体をやめる人が多くなったので仕様変更したという話がありました。ちょっとした選択が人間に思った以上の負担をかけているという実験なども多数あり、この点をTikTokもNetflixも理解して、対応しているのがすごいですね。
●フェイスブック離れ・インスタ離れ?広告主がTikTokを選ぶ理由
2022/11/18まとめ:フェイスブックのニュースを読んでいたら、TikTokの話も出ていましたので、こちらにも転載。
わずか1年で時価総額76兆円が消失のメタ 「脱・Facebook」の大きすぎた代償:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」 - ITmedia ビジネスオンライン(2022年11月04日 06時00分 公開)[古田拓也,ITmedia]という記事の話です。
<Facebookがメタ・プラットフォームズ(メタ)社に社名を変更しておよそ1年が経過した。Facebookブランドを捨ててまで「メタバース」に社運をかけたが、その代償は計り知れないほど大きかったのかもしれない。
同社の「Horizon Worlds」は、1兆円をかけて開発されるとうわさされていたメタバースアプリケーションだ。しかし、8月にCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏がFacebookアカウントでそのティーザー画像を公開すると、あまりの品質の低さから、ただでさえ下落基調であったメタ社の株価はそこから下げ足を加速させた>
<そんなメタ社の株価は、社名を変更した1年前の株価水準328ドルから、直近で95ドルと70%を超える大暴落となった。時価総額は8700億ドルから2500億ドルと5200億ドル、現在のドル円レート換算でおよそ76兆円が消失してしまったのだ>
直近のドル高によるドルベースの広告収益低下やFacebookなど主力SNSの伸び率低下、そして企業の広告出稿を控える動きで業績が悪化。企業の広告ボリュームが減少している理由としては、FacebookやInstagramと肩を並べ、成長率の面でより有望なTikTokに広告フローが流出していることが考えられるそうです。
GoogleTrendsによれば、22年現在、Facebook、Instagram、TikTokの検索数はほぼ同じ。ただ、勢いは全然違っていて、Facebookは減少中で、Instagramはピークからやや下降してから横ばい、TikTokは上昇中です。なので、上昇の余地が残り将来性で勝る中国アプリのTikTokに広告が切り替わっていってるみたいですね…。
●ネットもスマホもやらないアップル共同創業者、TIKTOKだけはやる
2023/08/20まとめ:<アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアックが暴露「ネットが存在する前の時代に戻りたい」>(23/1/29(日) 9:00配信 クーリエ・ジャポン)ではTIKTOKの話も出てきたので、別のところで使った話をこちらにも転載。記事では最初に「アップル」の共同創業者スティーブ・ウォズニアックさんが携帯電話をほぼ全く使っていないという話をした上で、彼について以下のように紹介しています。
<70年代末のギークで、世界初のパーソナルコンピュータを開発したとされ、スティーブ・ジョブズと仲違いするまでは親友で、かつてSFだった世界を日常にした技術革新の立役者の一人。その人物が、2時間あまり携帯電話を見ずに過ごしたのだ>
https://news.yahoo.co.jp/articles/d94586e5a36ff43b0ebdc3ea774d644ba523b25d
インタビューを読んでみると、スティーブ・ウォズニアックさんは押し付けがましくなくて良いですね。自分は非社交的なギークなので、フェイスブックはやめた…という話について、以下のような説明。これはスマホを使うべきではないといった押し付けがましい主張ではなく、個人的なものとして語られています。
<SNSは私には向いていません。フェイスブックは勢いがあったときに使っていましたが、もうずいぶん前にアカウントを無効化しました>
<それでも動物の動画などを見るのは好きだったので、使い続けました。でも3ヵ月ほどで気づいたのです。暇さえあればログインして、スクロールして、スクロールして、スクロールしている自分に。そうなると、それはもう習慣です。そして思ったのです。習慣は「中毒」だと。本当は必要のないものの中毒になど、なりたくありません。そんなものなくても幸せでいられます。なので、やめました>
フェイスブックをやめた理由は他にもあり、情報が広告に利用されることやプライバシーの気持ち悪さもあるとのこと。同様の理由で、グーグルもできるだけ使わないようにしているといいます。ただ、ここでも反グーグル活動家のような過激な主張はなく、「個人の好き好きで良い」というスタンス。好感が持てる性格です。
<(引用者注:「プライバシーを完全に守るのは可能でしょうか」と聞かれて、)それを望むのであれば、可能です。でも、望まなくてもいいでしょう。フェイスブックを使ってもいいし、グーグルを使ってもいい。大半の人は、監視されていることを知っています>
<ソーシャルネットワークによる交流が絶対的に必要な人たちもいます。ミュージシャンや政治家、俳優、こうした人々は、多くの人と繋がっている必要がありますからね。でも私はそれを必要としていません。自分を宣伝するのが好きではないのです>
<ときどき昔に戻れたらと思うことがあります。インターネットが存在する前にね。というか、実際にはいつもそう思っています。パソコンでニュースを読んでいると、こう思うんです。「紙の新聞が好きだったな」とね。読みやすかったし、心地良かった。過去の物に多くの良い点があることに気付かされます>
一方、おもしろかったのが、「でも、ティックトックは使います」と言っていたこと。「毎晩1時間、動物を救う動画を見て過ごします。動物が大好きなんです」ということで、こちらの動画はやめていないみたいです。他に、「まだ知られていないミュージシャンを発掘するため」というのもあるといいます。
ティックトックがやめていない理由は不明。今最も勢いのある動画サービスで単純に好きな動画を見るのに最適なためかもしれません。また、ティックトックは個人の好みに合わせた最適な動画をおすすめする技術が他のサービスより高く、使用ストレスも低くて済むと言われていますので、そのせいかもしれません。
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