STAP論文騒動の背景を探る:「愛されすぎた」小保方氏 | nippon.com 武田 徹 [2014.04.18]
1991年1月17日、イラクへの空爆によって開始されたいわゆる「湾岸戦争」で米政府、米軍は情報戦をも展開した。そこで採用されたのはレーガン大統領時代に補佐官を務めていたマイケル・ディーバーが発案した方法論だった。米兵の死体映像が放送され、厭戦(引用者注:えんせん。戦争を嫌だと思うこと)気分がまん延して戦争遂行に困難をきたしたベトナム戦争の反省を踏まえ、米政府、米軍はより効果的な情報管制技術の開発に腐心した。そこで起用されたのが広告代理店出身のディーバーであり、彼は視聴率を稼げる広告を作成してきた経験から、2つの手法でテレビメディアは制御できると考えた。
http://www.nippon.com/ja/currents/d00118/
ひとつは放送すれば確実に視聴率が得られるように興味深い対象を選び、思わず目を引くように映像をパッケージすること。例えばまさに気の利いたショートストーリー仕立てのコマーシャル映像のような映像素材を政府や軍が用意する。
それを放送時間からあふれてしまうほど大量に提供する。ディーバーは視聴率競争にしのぎを削るテレビ局が、視聴率が取れそうな映像素材がある時にそれを放送せずにいることが難しい事情を熟知していた。そしてそうした魅力的な映像素材をニュースの放送時間を席巻できるほど用意すれば…、何ら強制力を用いずとも、テレビメディアはその映像のみを流すようになるだろうと考えたのだ。
そこで用いられた素材はバクダッドへの最初の空爆で用いられた精密誘導巡航ミサイルに搭載されたカメラが送ってきた映像だった。自分で意志を持つかのように標的を目指して飛び、照準にロックオンした後は正確に目標物を破壊する、そんなミサイルからの映像を見るのは視聴者にとって初めての経験であり、物珍しさもあってその映像は目を引いた。こうしたディーバー・システムは見事に奏功し、軍事施設のみを正確に破壊する「きれいな戦争」のイメージを喚起して、新しい「正義」の戦争を視聴者に印象づけた。
今回、理研がSTAP細胞に関する情報提供で採用したのもディーバー・システムに通じる方法論だった。小保方氏の若く、愛らしい姿に加えて「かっぽう着」「ピンクの研究室」などはテレビ報道で視聴者の眼を引く格好のビジュアル・アイテムであった。案の定、テレビはその映像を繰り返し流し、小保方氏のキャラを強調する報道に終始したし、活字メディアもそうしたビジュアル・アイテムにまつわる小保方氏のライフストーリーを報じることに明け暮れた。
激震・STAP細胞:/中 予算獲得に勇み足 理研、ヒロイン作り上げ
毎日新聞 2014年03月16日 東京朝刊
実際、文科省は発表前からSTAP細胞論文の情報を把握し、下村博文文科相に説明していた。「今どんな政策ができるかすぐにあげてくれ」と下村文科相から命じられ、STAP細胞関連の研究費の検討が始まった。「予算獲得のチャンスだと思った」と、ある文科省幹部は明かす。そして1月30日、大々的に報道され、社会では再生医療の進展や「リケジョ(理系女子)」への注目が高まり、下村文科相は翌31日、STAP細胞研究への財政支援を表明した。「演出」ともとられる発表が、理研や文科省の「思惑通り」に世の中を動かし始めた。【須田桃子、斎藤有香】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140316ddm002040054000c.html
武田 徹インタビュー 吉祥寺webマガジン:吉祥寺人
情報を出せば出すほど正しい情報にアクセスできなくなるという逆説があって、その一例としてアメリカではディーバーシステムというPR戦略があります。政府が画像などをパッケージしてきれいで見やすい情報として提供する。そうすると大衆社会はみんなそれを見て、政府が知られたくないと思うような情報を見なくなるという情報操作のやり方です。情報を出せば出すほど普通の人は大事な情報を見なくなるというシステムなんです。
http://www.kichijoji.ne.jp/person/takeda/fram10.html
美人とドラマ、大塚家具問題が残したメディア報道の課題[2015/04/02]「THE PAGE」(3Nアソシエイツ)
朝のワイドショー番組にはおよそふさわしくない「委任状争奪戦」(プロキシーファイト)といった専門用語までが飛び交って報じられ、大きな盛り上がりを見せた一連の騒動だが、そうなったのは理由がある。
一つは実の親子、しかも父と長女がガチンコで対立し、家族の中で長男と母親が父の側につき、他の弟妹は長女側について割れてしまったというドラマ性。二つ目は、いかにも苦労人で一代で会社を築いた「叩き上げ」の創業者と、知的でさっそうとした美しい女性社長という対比。メディアが反応してしまう典型的なパターンにはまったといえる。
だが、これが女性社長でなく、単に父親に反抗する息子の男性社長だったらどうだったか。おそらく世の中の関心がここまで盛り上がることはなかっただろう。(中略)
同族会社をめぐっては、最近で言えばロッテなどお家騒動が起きている会社はほかにもあるが、さほどメディアの注目を浴びないのはそうした事情もある。
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