最近、国民の刑罰の厳罰化を願う感情が増大していると懸念している人が出てきています。また、こちらは昔からいますが、死刑は重すぎると死刑制度廃止を訴えている人たちがいます。
しかし、彼らは罪に応じた厳しさの罰というものを否定しているのでしょうか? 彼ら自身もわからずに言っている可能性がありますが、彼らも罪に応じた厳しさの罰というものは全面的には否定していないはずです。
この刑罰はいったい何のために設けられており、どのような効果が期待されているのか?ということは、考えだすとずいぶん暇つぶしができるほど悩める話だと思いますが、
Wikipediaではこうあります。
現代の日本においては、刑罰を科すことによって、一般人の犯罪を抑止する効果(一般予防論)と、同時に刑罰を受けた者の再犯の予防をする効果(特別予防論)が期待されている。言い換えれば、犯罪を犯した者が刑罰を科せられることが広く知られることで他の者が罪を犯すことを思いとどまらせ、当人に対して、刑罰自体による反省を与える効果とともに、それに当たって一定の教育を施すことで再度の犯罪を予防しよう(教育刑論)、という狙いがある。このような立場を目的刑論という。
一方で、一定の犯罪を犯したことに対して、それに見合うだけの刑罰が当然に科されるべきである、という刑罰を科すこと自体を正義とする応報刑論がある。
日本における通説は両者の側面を否定せず折衷する相対的応報刑論であるとされる。
いろいろと聞いたことのない言葉が出てきて頭がこんがらがってきますが、用語は別として考え方としては理解できないものではないでしょう。
私が取り上げたかったのはこのうちの「応報刑論」に関してでした。ただ、Wikipediaの説明では「応報」(因果応報の「応報」)に当たる部分の説明がわかりづらかったため、他からこの説明を持ってきます。
百科事典マイペディアの解説 コトバンク
応報刑論 【おうほうけいろん】
刑罰の本質を応報,贖罪(しょくざい)にあるとする説。古典派の主張。目的刑・教育刑論に対する。応報としての刑罰は,犯罪という害悪をなしたことを理由として犯人に科せられる害悪で,犯罪の重さに相応する。
軽い罪を犯したときには軽い刑罰が与えられ、それより重い罪を犯したときにはより重い刑罰が与えられ、さらに重い罪を犯したときにはさらに重い刑罰が与えられるといったものです。中にはいるかもしれませんが、厳罰化反対論者も死刑廃止論者もほとんどの人はこの考え方に対して全面的に反対していないはずです。
たとえば、現在の日本では大量殺人事件の犯人は死刑になることが確定的です。一方、道路交通法違反単独の場合は罰金や反則金(厳密には罰金とは異なるらしい)が課されるだけであるなど、かなり刑罰が異なるものが混在しています。
彼らはこれらにも異を唱えるでしょうか? 死刑も速度超過と同じく数万円の罰金であるべきだと考えているでしょうか? 当然、そうではないはずです。彼らも結局ある程度罪に応じた罰があるべきという考え方に従っています。
さらに言えば、おそらく応報刑論・相対的応報刑論的な考え方だけでなく、「一般人の犯罪を抑止する効果(一般予防論)」「刑罰を受けた者の再犯の予防をする効果(特別予防論)」的な考え方であっても、同様に罪の深刻さに応じた罰という方向性は導き出されるはずです。
わざわざこうやって言われると、何を当たり前のことを?という話ではあるのですが、「罪に応じた」の部分がすっぽりと抜け落ちて単に「厳罰化してはいけない」だけになっている人がいたのが気になりました。
中には死刑を希望する殺人犯すらいるなど、確かに厳罰化ですべての罪を防げるとは限らないでしょう。しかし、罰が軽すぎると防げない罪というのもありますし、一般予防論だけでなく特別予防論的にも問題があります。さっきの話で言うと、大量殺人事件犯が数万円支払っただけで普通に生活…という話ですね。
ここらへんに関連して書いたのが、
死刑のないノルウェーの連続テロ事件 無反省でも刑期21年で出所可能でした。この事件の犯人は裁判でも「非道ではあるが必要なことだった」と主張していました。
このタイプの方は20年くらいの禁錮ならという考えではなく、たとえ厳罰であっても「犯罪を抑止する効果」が低い可能性があるものの、「刑罰を受けた者の再犯の予防をする効果(特別予防論)」的には問題が残ります。
特別予防論とは - はてなキーワード
犯罪者の教育・更生・隔離の目的で犯罪者を処す事によって、犯罪者が再犯することを予防しうると考え。その効果は、犯罪者を教育して二度と犯罪を犯さないようにさせる教育効果と、犯罪傾向が強い者を社会から一定期間隔離して一般社会に悪影響が生じないようにする無力化効果に分類される。
ノルウェーの場合、大量殺人事件の犯人が無反省のまま出所…という悪夢が現実になる可能性が本当にあります。
私は別に死刑廃止反対論者(賛成でもない)ではないのですが、あまりに極端なところへ行ってしまうのはダメです。極端に厳罰化してもあまり効果がない…という可能性は認めるものの、逆に刑罰が軽すぎる場合にはそもそもの目的を果たせていないという点も無視しないでください。
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