夏目漱石、福沢諭吉の造語の話をまとめ。<ショック…夏目漱石、福沢諭吉の造語というのはほとんど嘘?>、<造語の名人どころか「漱石の造語」は一つもない可能性すら…>、<本当の造語の名人は夏目漱石ではなく森鴎外だった?>などをまとめています。
2023/08/03:
一部見直し
●無意識・自由など…夏目漱石、福沢諭吉の作った言葉が多すぎてやばい
2014/5/4:夏目漱石や福沢諭吉が作った言葉だといわれる単語はたくさんあり、よく見かけます。例えば、
夏目漱石と福澤諭吉が生んだ造語 : 2chコピペ保存道場では、以下のように書いていました。
833 名前: ジョウシュウアズマギク(東京都)[sage] 投稿日:2009/07/15(水) 12:23:47.06 ID:d9x1Jzvk
夏目漱石が生んだ造語
「新陳代謝」、「反射」、「無意識」、「価値」、「電力」、「肩がこる」、「電光石火」
「ひどい」、「浪漫(ロマン)」、「沢山」、「兎に角(とにかく)」、「価値」
福澤諭吉が生んだ造語
「自由」、「経済」、「演説」、「討論」、「競争」、「文明開化」、「共和政治」
、「版権」、「抑圧」、「健康」、「楽園」、「鉄道」、「尚商」
コメントでは「ところで、夏目漱石は『価値』を二個も生み出したのか」「価値が二つあるけど?」とツッコまれていました。「大事なことなので二回言いました」みたいな感じで、価値があるから二回書いたのかもしれません。
あと、「夏目漱石はもっとあったような気がする」というコメントがあったように、夏目漱石の造語の多さは特に有名。造語の神様のような扱いになっています。
●外国語の翻訳のための造語は、造語ではなく創訳と言うべき?
ただ、「造語でもないような」「造語、っつか欧米諸国からの新しいモノやコトを上手く表せたのが夏目漱石と福沢諭吉なのかも」とあったように、造語という言い方をするとおかしいでしょうか。
検索すると「創訳」という言葉があり、「ああ、そんな言葉があるのか!」と思いましたが、「創訳」で検索してもあまり例がないです。ややこしいですが、「創訳」が正真正銘の「造語」なのかも。コトバンクにも記載がありません。
ちなみに「造語」は、
コトバンクにあった大辞林 第三版の解説によると、「新しい言葉を作り出すこと。既成の語の転用・複合や擬音・擬態などにより,新語を作ること」となっています。
「海外の概念に対応する訳語を作る」といったことには、特に触れられていませんね。ただ、まあ、適当な語がないですので、一般的にはやはり「造語」と言っても良いのだと思います。
なお、訳語のための造語が多かった人としては、過去に
重力・引力・分子・遠心力・動力は、志筑忠雄(中野柳圃)の造語というのを書いています。ただ、やはり夏目漱石らの方がずっと知られていて、彼は無名といって良いほどですね。
●ショック…夏目漱石、福沢諭吉の造語というのはほとんど嘘?
志筑忠雄の話で書いたように、「海外の概念に対応する訳語を作る」というのは、すごいこと。外国語がベースにあるからといって、劣るということではないでしょう。完全な「造語」ではなく、翻訳のための言葉を作ったのであっても、夏目漱石のした行為は称賛に値すると思われます。
ところが、この夏目漱石の造語と言われているものはそもそもほとんど嘘だ…と指摘しているページが以前ありました。今探すとまだ残っていますね。「くうざん本を見る」というサイトさんです。例えば、
2008年4月3日には、江戸時代の安永ごろにはすでに使用例があり、漱石の生まれる90年ほど前から使われていることが指摘されています。事実ならぐうの音も出ないでしょう。
また、同じく「くうざん本を見る」というサイトさんでは、
2007年1月6日の方で、より多くの間違いを指摘していました。日本国語大辞典を見るだけで古い用例が見つかることが多いようです。
「新陳代謝」…夏目金之助は数えで十歳の頃の1876年の『改正増補物理大成』にすでに見える。
「沢山」(たくさん)…室町時代からある。「流石」(さすが)も同様。
「経済」…「経国済民・経世済民」の意味でなく、金銭面の意味でも、江戸時代から用例がある。
「価値」…「かちょく」は古くからあり、「かち」にも1878年の用例がある。
「電力」…1877年の「米欧回覧実記」の用例が上がっている。
この方はいくつも書かれていて詳しく、論文もしたためているそうです。「福沢諭吉やら、夏目漱石やら、なんでもかんでも、ある個人の功績にしてしまうのは、やめて欲しい」として、福沢諭吉とセットで否定しているところもありました。
●造語の名人どころか「漱石の造語」は一つもない可能性すら…
この福沢諭吉のWikipediaにはありませんが、夏目漱石の
Wikipediaでは、デマがあることについて言及されていました。夏目漱石は権威を嫌っていましたが、時が経って権威化された漱石の元に功績が集められているのは皮肉ですね。
<「新陳代謝」、「反射」、「無意識」、「価値」、「電力」、「肩が凝る」等は夏目漱石の造語であると言われているが、実際には漱石よりも古い用例がある。一例としては、漱石が「肩が凝る」という言葉を作ったとする説があるが、18世紀末頃からの歌舞伎、滑稽本に用例が見られる>
なお、Wikipediaでは"学術的に「漱石の造語」であると言える言葉はまだ一語も確認されていない"とさんざんなことを書いています。しかし、続けて"「浪漫」については『教育と文芸』中に「適当の訳字がないために私が作って浪漫主義として置きました」との記述がある"としていました。
実は「浪漫主義」については先程のページでも触れられていたんですよ。というか、さっきのブログさんが元ネタかもしれませんね。また、現在全く使われていないものの、「低徊趣味」(世俗を忘れ、人生をゆったりと眺めようとすること)もWikipediaでは漱石が作ったと書かれていました。一応ゼロではなさそうです。
●本当の造語の名人は夏目漱石ではなく森鴎外だった?
福沢諭吉の否定例が少ないので、こちらも検索してちょっと追加しておきましょう。
演説(2005.01.11) 岩本・石谷研究室 東京工業大学 資源化学研究所 有機資源部門mが良さそうでした。
作者も「演説」という訳語は福沢諭吉が作ったものと思っており、そう書いたのですけど、どうも違うようだとご自身で気づかれました。井上ひさしの「ニホン語日記2」には、以下のような記述があるとのこと。
『一般に「演説」は福沢諭吉の造語と信じられているようであるが、事実はそうではないようである。幕末の長崎で「演舌(えんぜつ)」という言葉がむやみにはやっていた。それを諭吉がスピーチの意味を付けて転用したのである。』
ただ、意味を加えたというのが本当なら、造語の一種と言って良いでしょうね。あと、森鴎外が本当の造語の名人だといった話も出ていました。
<井上によると、新造語の名人は森鴎外だという。「詩情」、「空想」、「民謡」、「女優」、「男優」、「長編小説」、「短編小説」などはすべて鴎外の造語であるという。ちなみに「浪漫主義」は漱石、「微苦笑」は久米正雄、「慕情」は高見順、「小説」は逍遙だそうだ>
ただし、これらも調べてみると本当は違った…という可能性はあるでしょう。こういった単語の初出を調べる作業はなかなか骨が折れそうですが、おもしろい話でもあるでしょうね。
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