<消滅可能性都市を生み出す「極点社会」は本当に問題なの?>、<極点社会は問題視されるが、コンパクトシティは推進される不思議>、<極点社会は問題の原因ではなく結果 対策すると逆効果の可能性も>などの話をやっています。
2022/06/21追記:
●極点社会は問題の原因ではなく結果 対策すると逆効果の可能性も
2023/06/20まとめ:
●過疎化進行でサービス提供コストが激増、加速度的に貧しくなる 【NEW】
●消滅可能性都市を生み出す「極点社会」は本当に問題なの?
2014/5/14:「消滅可能性都市」に関連して、
質問なるほドリ:「極点社会」防ぐには?=回答・佐藤丈一 毎日新聞 2014年05月09日 東京朝刊という記事がありました。「極点社会」という言葉を出してそれが問題だ…といった感じで書いているのですが、なぜ極点社会が問題なのかはよくわかりませんでした。
<なるほドリ>
<人口問題で「極点(きょくてん)社会」という言葉を聞いたよ>
<記者>
<岩手県知事や総務相を務めた増田寛也氏らが言い始めました。増田氏が座長の日本創成(そうせい)会議・人口減少問題検討分科会(引用者注:「消滅可能性都市」を発表した組織)は、日本では将来、多くの地方が人口減と人口流出で消滅(しょうめつ)し、大都市だけが残る可能性を指摘しました。そうした社会を「極点社会」と呼んでいます>
Q
<日本はもう人口が減ってるよね>
A
<2008年の約1億2800万人がピークで、このままでは48年に1億人を割る見込みです。人口減は3段階で起き、第1段階では子どもや働き手は減っても、高齢者は増えます。第2段階では、高齢者は横ばいか微減(びげん)。第3段階に入るとどの世代も減り、本格的に人口減少が始まります。日本は大都市が第1段階、地方は第2段階ですが、第3段階の町村もあります。地方では高齢者が減って年金頼みの経済が崩(くず)れ、働く場のない若者が介護(かいご)需要(じゅよう)が激増する大都市に移るため、極点化が進むといいます。(政治部)>
私も別に人口なんてどんどん減ってしまえばいいと言いたいわけではありません。ただ、現実には、人口が減る…ということは起こり得ます。上記の説明を見る限り、そのように人口が減ったときに極点化することはむしろ合理的な選択でしょう。これだけでは、なぜ極点社会が問題なのかが見えてきません。
そういった根本的なところが気になって「極点社会」で検索してみたものの、あまりこのことに疑問に感じている人は見つかりませんでした。極点社会が問題なのではなく、その前の段階である「人口が減る」というところが本当の問題なんじゃないかと思うのですけど…。
●極点社会は問題視されるが、コンパクトシティは推進される不思議
ところで、うちでは
向かない都市も…コンパクトシティのデメリット・問題点とは?で、コンパクトシティという構想について書いています。
Wikipediaの説明は以下のような感じです。
コンパクトシティ(英: Compact City、英語発音: /kəmˈpækt ˈsiti/ カンパクトゥ・スィティ)とは、都市的土地利用の郊外への拡大を抑制すると同時に中心市街地の活性化が図られた、生活に必要な諸機能が近接した効率的で持続可能な都市、もしくはそれを目指した都市政策のことである。(中略)
郊外化の問題点
郊外化の進展は、既存の市街地の衰退以外にも多くの問題点を抱えている。
・自動車中心の社会は移動手段のない高齢者など「交通弱者」にとって不便である。
・無秩序な郊外開発は持続可能性、自然保護、環境保護の点からも問題である。
・際限のない郊外化、市街の希薄化は、道路、上下水道などの公共投資の効率を悪化させ、膨大な維持コストが発生するなど財政負担が大きい。
コンパクトシティの発想
こうした課題に対して、都市郊外化・スプロール化を抑制し、市街地のスケールを小さく保ち、歩いてゆける範囲を生活圏と捉え、コミュニティの再生や住みやすいまちづくりを目指そうとするのがコンパクトシティの発想である。1970年代にも同様の提案があり、都市への人口集中を招くとして批判されていたが、近年になって再び脚光を浴びるようになった。再開発や再生などの事業を通し、ヒューマンスケールな職住近接型まちづくりを目指すものである。
交通体系では自動車より公共交通のほか、従来都市交通政策において無視に近い状態であった自転車にスポットを当てているのが特徴である(TOD(公共交通指向型開発))。
自治体がコンパクトシティを進めるのには、地方税増収の意図もある。例えば、地価の高い中心部に新築マンションなどが増えれば固定資産税の増収が見込まれ、また、都市計画区域内の人口が増えれば都市計画税の増収も見込まれる。すなわち、同じ自治体内の郊外から中心部に市民が住み替えるだけで地方税の増収に繋がることになり、経済停滞や人口減少が予想される自治体にとってコンパクトシティ化は有効な財源確保策と見られている。
コンパクトシティ自体は別にバラ色の政策ではなくデメリットが挙げられているものです。ただ、私はもともと人口密度が低い地域は公共サービスにとっても民間サービスにとっても不利であり、すべての地域で同等のサービスを求めるのは無理があると思っていますので、コンパクトシティの発想には好意的でした。
で、この「コンパクトシティ」というワードと「極点社会」をセットにして検索をかけると、やっとちょっと批判を発見。ただ、飽くまで少しですね。「コンパクトシティと言って推進してたのが、今度は極点社会とか言って問題視するのか」というのがあったくらいです。
検索で多く出たのは「コンパクトシティを目指すしかない」というもので、人口が減るのだからコンパクトシティ化は当然の方向性じゃないか?といった感じでした。コンパクトシティと極点社会はイコールではなくかなり違いがあるものの、どちらかというと「極点社会にすべき」といった方向性です。
●人口減少の問題点軽減のため、むしろコンパクトシティは推奨されている
また、「コンパクトシティ」を「消滅可能性都市」と絡めて検索かけると、最近の記事でもセットで出てくるものが見つかります。例えば、
50年後も人口1億人目標 政府有識者委 :日本経済新聞 2014/5/13 11:21という記事がそうでした。そして、人口減少への対策として、むしろコンパクトシティは推奨されていることがわかります。
<経済の中長期の課題を話し合う政府の有識者委員会「選択する未来」は13日、「人口減少の解決が急務だ」と提言する中間報告書をまとめた。このままでは50年後に8000万人台に落ち込む日本の人口を、1億人で維持するよう目標の設定を求めた。高齢者対策が中心だった政府予算も「子どもへ大胆に移すべきだ」と指摘。出産や子育て支援の財政支出を倍増するよう促した。(中略)
人口減少や高齢化、東京圏への人口流出で、地方自治体の4分の1が消滅する可能性があるとも指摘した。地方を再生するため、コンパクトシティの取り組みや、地方中枢都市圏の形成など、地方都市の集約を実施し、活性化を図る方策を探るべきだとした>
もう一つ、日経新聞から
自治体、2040年に半数消滅の恐れ 人口減で存続厳しく 2014/5/8 21:55という記事。こちらは国交省もコンパクトシティを推奨する方向性だというものです。前述の通り、イコールという話ではないものの、どちらかというと、極点社会的な方向性に近いように見えます。
<日本の人口が減ると、全国の地方自治体の維持が難しくなるとの長期推計が相次いでいる。(中略)
政府では、国交省も3月末に人口の予測をまとめた。1平方キロメートルごとに分けた全国の18万地点で見ると約6割で50年には人口が半分以下になる。2割にあたる約3万6千地点では、50年には住む人がいなくなる。
国交省は、行政や商業施設を一部地域に集約して効率を高める「コンパクトシティー」が必要になるとの方向性を強調。人が減る離島や山間地では、公共交通に比較的お金がかからないバスを活用するなどの施策を検討すべきだと考えている>
過疎地域にも等しく手厚いサービスを…というのは非現実的すぎますので、コンパクトシティ化は仕方ない方向性でしょう。前述の通り、極点社会化する…というのも、人が生きるためには当然の選択であり、やはり仕方ありません。この方向性に逆らうには、根本原因である人口減少の解決が必要になってきます。
あと、個人的に気になるのは海外ってどうしているの?という話。同日投稿で人口密度に関する
国の人口密度ランキング 日本は336人/km2は世界の7倍、順位は?というものを出してますが、日本はむしろ極めて人口密度の高い国。つまり、海外の方で人口密度の低い地域の問題を見れるのではないかという期待です。海外には学べる国もあるんじゃないでしょうか…。
●極点社会は問題の原因ではなく結果 対策すると逆効果の可能性も
2022/06/21追記:「極点社会の何が問題なのか?」「問題なのは極点社会ではなく人口減少ではないか?」という疑問が解けなかったので検索。すると、
極点社会~新たな人口減少クライシス~ - NHK クローズアップ現代 全記録という番組紹介ページが出てきました。
ただ、内容が短いですし、なんと「極点社会」という言葉が出ているのはタイトルだけであり、本文に一切ありません。そもそも「極点社会」という言葉が本文が出てこないため、「極点社会の何が問題なのか?」は不明。また、以下のように、内容的にも「問題なのは極点社会ではなく人口減少」といった感じです。
<いま多くの地方では高齢者すら減少し始め、日本全体が縮小しようとしている…。NHKでは最新人口統計を元に、これまでにない詳細なデータ分析を研究機関の協力を得て実施。その結果、2040年には地方の衰退だけでなく、日本自体が縮小していく危機が迫っていることが分かってきた。
最も深刻なのは既に高齢者すら減少を始めている市町村が急増。高齢者の年金で成り立ってきた地方経済がシュリンクし、雇用の場を失った若年女性が首都圏にこれまで以上に流入していくことだ。東京オリンピックを機に更に過密と集中が予想される首都圏。一方で、地方では若年女性が消え“限界自治体”化、首都圏では子供を産み育てられない女性が増加し、結果的に日本全体が縮小し始めていく>
本文では「極点社会」という言葉出て来ないものの、おそらく上記の後半部の状態を「極点社会」と呼んでいるのでしょう。生きるために人が今まで以上に都市部に流れ、地方の市町村が消えかねないという話です。これが良くないことかどうかがそもそも怪しいのですが、仮に良くなかったとしても問題は「極点社会」ではありません。
というのも、「極点社会」は人口減少の結果でしかなく、根本的な問題は人口減少であるためです。「極点社会」が問題だと見てしまうと、人の移動を制限・あるいは居住地を強制することで、都市部の人を減らし地方に回すべき…といった主張が出かねません。実際、ネットだとこういう過激なことを口にする人がいます。
なお、都市部の人を減らし地方に回すこと自体は良いことだと思うかもしれませんが、これまた怪しいところ。というのも、人口減少した中で分散化すると、集中している場合よりもあちこちにインフラを用意する必要があり、自治体がさらに疲弊するため。人口分散政策は、むしろ日本をますます衰退させるでしょう。
●過疎化進行でサービス提供コストが激増、加速度的に貧しくなる
2023/06/20まとめ:
出生率高い地域で過疎化 原因は別なので少子化対策では地域活性化しないは、個人的にはすごく興味深かった話。出生率を高めることが過疎化対策になると思い込んでいたので意外でした。ここでは、コンパクトシティに関連しそうな「過疎地の集約」という話も出てきましたので転載。他の過疎地政策とセットで紹介します。
<移住による地域の活性化>
北海道の伊達市は、今後大量に増える引退後の世帯を呼び寄せることを狙っている。また、都市部から農業に関心のある人を探して、農業の担い手を呼び寄せようとしている。
<モビリティー(移動性)を高めることが施設整備の代わりになる>
各市町村に病院を整備する代わりに、大病院のある隣町へのアクセスを容易にすれば、人が移動することによって利用可能性が広がる。
<過疎地の集約>
今後人口減少社会で、人が便利なところに移動していくと、過疎地はますます過疎になる。すると、どうしてもサービスを提供するためのコストが高くなるので、人の方が中心部に移住してもらった方がずっと安上がりとなる。(関連:
地域活性化を促進するとされるITの発展、実は地方の過疎化の原因だった)
ただし、一般にはあまり賛同を得られないことが多く、「経済学者はこれだから」という反応をされる。
【本文中でリンクした投稿】
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向かない都市も…コンパクトシティのデメリット・問題点とは? ■
出生率高い地域で過疎化 原因は別なので少子化対策では地域活性化しない ■
地域活性化を促進するとされるITの発展、実は地方の過疎化の原因だった ■
国の人口密度ランキング 日本は336人/km2は世界の7倍、順位は?【関連投稿】
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