2022/05/03まとめ:
●世界一のホワイト企業?社員支持率1位にGoogleのラリー・ペイジCEO
●ビジネス書の成功例を真似ても意味なし? 利益の源泉は「違い」
2014/5/19:
グーグルの逆説:資本主義的でないものを追求し利益を上げる(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2014年04月09日 小栁 祐輔 博報堂コンサルティング)は正直難しい書き方の記事で、わかりづらいところがありました。以下なんかもわかづらい文章だと思います。
<私は「書かれていること」に不満足であった。端的にその不満を言えば、成功ケースを語り、また、統計的に成功企業群を扱ったところで、過去に基づいて将来が描けるとは思えない。「違い」を意図的に作ることのみが利潤を生むポスト産業資本主義の中で、ベストプラクティスを模倣することは、ベストどころか次善の策にもなり得ない>
要するに成功ケースを真似しても利益は生まないってことみたいですね。みんなが真似してしまえば、どの会社も同じで優位性は生まれないためだろうと思います。
逆に言えば、みんなと同じではないという「違い」の部分に、利益を生み出せる可能性が隠れているってことでしょうね。ただ、真似できないとされていたように、これは成功例を見ても直接参考にできません。岩井克人教授は「違いというのは、正解がないということなんだ」としていたそうです。
<商業資本主義、産業資本主義を経て現前したポスト産業資本主義において、意図的に違いを作ること以外に、利潤を生む方法は残されていない。その最たるものが、時間軸を移動して違いを生み出そうとするイノベーションである。
ただし、そうであるからこそ、違いの作り方に唯一の正解など存在しない。そんなものが存在すれば、たちどころに真似されてしまう>
●お金で買えない人材はやりがいで集める 利益軽視で逆に儲かる
ここからやっとグーグルの話、そして、元記事のタイトルになっていた「資本主義的でないものを追求し」の話が出てきました。グーグルには、「20%タイム」という有名な取り組みがあります。20%タイムとは、グーグルが従業員に就業時間の20%を興味のあるプロジェクトに費やすことを許す仕組みです。
これとともに岩井克人教授はグーグルの社是に注目。この社是は「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」でというものでした。「グーグルの逆説」というのは、「資本主義的じゃないことを追究することによって、つまり、お金で買えないものを追究することによって、逆にそれが最もお金を生む仕組みになっているということ」だといいます。
なぜこのような不思議な逆説が成り立ってしまうのかというのは、重要な「違い」を生み出してくれる人間、また創造性を持っている人間というのは、基本的にはお金で買えないものを欲しがるから…というのが理由でした。それはたとえば、自由で文化的な環境、社会的な尊敬、一緒に働いて面白い優秀な同僚などです。
そこでグーグルは『自分たちは資本主義的ではない』『利益だけを追究する会社ではない』ということを意図的に標榜することで人を集めました。さらに集めた人たちに"20%は自分の興味のあるプロジェクトを"やってもらい、イノベーションを起こすということです。
このイノベーションは話の流れからすると、「違い」と言っても良いでしょうか? 「資本主義的ではない」ことを強調して集めて、「資本主義的ではない」自由な裁量を与えることで「違い」を作り出した結果、なぜか「資本主義的」に成功するという話のようですね。
●高報酬で有名なのに!お金よりやりがいで人材も集まるって本当?
このうちの、違いを生み出してくれる人間というのはお金で買えない…というのは、本当でしょうか? グーグルは基本的に給料が高いですし、特に社員へのサービスの豪華さは有名です。IT業界の人材の取り合いの激しさは有名で、実際には人材をお金で買っている面もあると思います。
一方で、自由で文化的な環境、社会的な尊敬、一緒に働いて面白い優秀な同僚などを求めるというのもわかります。ブログ内検索しても出てきませんでしたので引用していない部分だと思いますが、グーグルジャパン幹部の徳生健太郎さんは面接で合う人、合う人がとにかく頭の回転が速いことに驚き、そこに惹かれた…といった話をしていた覚えがあるためです。
(関連:
グーグルジャパン幹部が選ばなかった日本企業の職場環境 徳生健太郎がインターンで知ったアメリカとの違い)
これはグーグルに限らず普通の会社でもそうでしょうけど、「ああ、この人と働きたい。この会社で働きたい」と思わせることが、金銭を上回る価値を持つことがあるんだと思います。
●やり方を間違えると、やりがい搾取のブラック企業になる可能性も
また、お金以上に価値のある報酬…という話題では、過去に
お金よりも価値がある社会的報酬 ゲーミフィケーションと報酬の関係というものも書いています。同じ投稿にまとめた<ナチュラルローソンのOLが開発したお弁当 お金を払ってまで仕事をさせる技術>もやはり同系統の話です。
一方で批判的な意味で使われる「やりがい搾取」なんて言葉もあり、「やりがい」を報酬にサービス残業を進んでやらせるなんてことをしてしまうと、どこかのブラックな居酒屋さんと同じになってしまいます。こちらは、
宗教・カルト的で気持ち悪い!と批判の居酒屋甲子園は、NHKが悪い?で書いていた話でした。
「やりがい」を強調しつつ不当に安いお金で働かせる「やりがい搾取」になっている企業というのは日本には多数ありますが、前述のグーグルは根本的に違っており、むしろめちゃくちゃ給料が高い企業として知られています。こういった点で考えると、「やりがい」も豊富な「金銭的報酬」も両方与えているグーグルはすごいですね。
●グーグルのクリエイティブな人材が反発し会社を去った理由とは?
2022/02/13追記:別のところで追記した話なのですが、「やりがい」で人を集めていたはずのグーグルから一部のクリエイティブな人材が去る…という事件が起きました。これは逆に言うと、たとえ多額の金銭的な報酬があったとしても、企業姿勢に共感しない人たちは辞めてしまう…という共感の大事さがわかる例になっていました。
このグーグルのクリエイティブな人材が反発し会社を去った理由が書かれていたのは、
米グーグル、社員から噴き出す企業倫理への不満:日経ビジネス電子版(長野 光 日経ビジネスニューヨーク支局記者 2019年6月10日)という記事。セクハラを理由に2014年にグーグルを辞めた幹部が、多額の退職金を受け取っていたと報じた後、グーグル社員およそ10万人のうち2万人が、会社の判断に対して猛烈に反発するということが起きていたのです。
なんと2割ですからすごいですね。なかなかこんな会社はないでしょう。ただし、社内の上層部が反発した人たちと同じ気持ちであるわけではないようです。抗議運動を主導した社員の一人が「会社の報復攻撃を受けている」として退社を決めたと最近ブログで公表したというのが、この記事のきっかけとなる出来事でした。
上記の話を取っ掛かりに、記事では様々な社員の反発した例を挙げていきます。例えば、中国政府による利用者の個人情報を集めるための検索エンジンにグーグルが関わっていたことにも社員は反発していたとのこと。これは中国が嫌いだからではありません。人権に対する問題意識のためです。
中国嫌いが問題ではないというのは、米国防総省の兵器開発に秘密裏に関わっていたことにも社員が反発したことでわかります。日本でも大学の軍事産業への関わりへの反対意見がありましたよね。グーグルは兵器開発プロジェクトには関わらない意向を表明せざるを得ませんでした。
トランスジェンダーのエンジニア、リズ・フォン・ジョーンズさんは、マイノリティーの人権をめぐる職場環境改善のための業務を担当していたものの、社内の反対派からハラスメントを受けるようになり、辞職しています。ジョーンズさんは、「幹部が多数入れ替わった15年ごろからグーグルは次第に閉鎖的になり、社員の声に耳を傾けなくなった」としていました。
このジョーンズさんは、「一人ひとりのエンジニアには倫理的に間違っているプロジェクトには関わりたくないという信念がある」と指摘しています。さすがに2万人が辞めたわけではありませんが、度重なる不穏な動きに嫌気がさし、会社を去っていくエンジニアが増えているというのです。記事では、<優秀で志の高い社員を数多く抱えていることはグーグルの強みだ。その「頭脳」が流出すれば、同社の競争力は損なわれる>と指摘していました。
●グーグルのラリー・ページCEO人気は過去のこと?社員2万人が抗議
2022/05/03追記:ここから当初<世界一のホワイト企業?社員支持率1位にGoogleのラリー・ペイジCEO>というタイトルで書いていた投稿をまとめ。グーグルが社員支持率1位だったためです。ただ、上記と同じ感じでその後社員が離反している…という話をこちらでも追記していました。
2020/07/02:ランキングで1位だったことは事実であり、2015年の時点でグーグルのラリー・ページさんは社員からの支持が厚かったのは確かでしょう。ただ、その後はそうでもないかもしれません。セクハラ告発への対応が不適切だったとき、グーグルでは多くの社員が抗議を行っていました。
<ことの発端は『ニューヨーク・タイムズ』が10月末、2014年にセクハラ問題で辞職したアンディ・ルービンが、実は9,000万ドル(約102億円)もの退職金を受け取っていたと報じたことだった。これを受けて、11月1日に世界各地で社員約20,000人が一斉に抗議行動に出た>
「エリスは上司からのハラスメントによって部署を変わり、最終的にはグーグルを辞めました。会社は上司ではなく、エリスを異動させるという措置をとったのです。経営側が被害の訴えに真摯に対処しなかったり、悪いのは加害者ではなく被害者だと決めつけることで、多くの女性がキャリアを台無しにされています」
(
グーグルがセクハラ問題の対応策、それでも従業員は納得していない | WIRED.jp 2018.11.19 MON 08:00より)
●社員から支持されるCEOランキング・ベスト10、1位はグーグルCEO
2015/8/17:
「最も社員に愛されているCEO」にグーグルのラリー・ペイジ氏(GIZMODO6月13日(土)7時0分)では、Glassdoorが行なった社員調査を紹介。今回で実施3回目となる大手リクルーティングサイトにて匿名&ボランティアベースで回答されたものだそうです。
1位 グーグル ラリー・ページ
2位 ナイキ マーク・G・パーカー
3位 H-E-B チャールズ・バット
4位 フェイスブック マーク・ザッカーバーグ
5位 アルティメット・ソフトウエア スコット・シェール
6位 モンサント ヒュー・グラント
7位 ゴールドマン・サックス ロイド・C・ブランクファイン
8位 ノースウェスタン・ミューチュアル ジョン・E・シュリフスキー
9位 インサイトグローバル グレン・ジョンソン
10位 アップル ティム・クック
11位以下は元ネタの
Highest Rated CEOs | Glassdoorから翻訳なしで。30位まで紹介しておきます。
11 Dara Khosrowshahi (Expedia)
12 Jeff Weiner (LinkedIn)
13 Craig Jelinek (Costco Wholesale)
14 John Legere (T-Mobile)
15 Jim Weddle (Edward Jones)
16 John S. Watson (Chevron)
17 Calvin McDonald (Sephora)
18 Mark Weinberger (EY)
19 A.G. Lafley (Procter & Gamble)
20 Lyndon Rive (SolarCity)
21 Marc Benioff (Salesforce)
22 Jeremy Stoppelman (Yelp)
23 Martin Mucci (Paychex)
24 Omar S. Ishrak (Medtronic)
25 Corey Schiller (Power Home Remodeling Group)
26 Mickey Drexler (J. Crew)
27 Alex Gorsky (Johnson & Johnson)
28 Danny Wegman (Wegmans Food Markets)
29 Blake W. Nordstrom (Nordstrom)
30 Fred Smith (FedEx)
●世界一のホワイト企業?社員支持率1位にGoogleのラリー・ペイジCEO
ギズモードによれば、グーグルは社員支持率1位だけでなく、Glassdoorが行なった働きたい会社調査でも1位を獲得しているとのこと。記事では、「Google社員は幸せなのがよくわかりますね」としていました。ホワイト企業調査ではないものの、世界一のホワイト企業と言えるかもしれません。
…と書いてみたたものの、アメリカ限定の調査かもしれません。その場合には、「世界一のホワイト企業」ではなく、「アメリカ一のホワイト企業」と言うのが正しくなります。アメリカの調査だからなのか聞いたことのない企業が多くなっています。あまり日本人には楽しめないランキングかもしれません。
例えば、3位のH-E-B(チャールズ・バット)。会社で表記は「H-E-B」ではなく、単にHEBと表記されることも多いようです。とはいえ、どの表記であろうと、日本語情報が少ない感じ。とりあえず、調べてみると、スーパーマーケットだということはわかりました。
11位以下でおっ!と思ったのが、14位のTモバイル(John Legere)。ここはソフトバンクが買収に失敗したところで、当時ソフトバンクが既に買収していたスプリントと違って業績を伸ばしていたところです。ただ、11位以下はベスト10よりさらに日本での知名度が低い会社が多くなっている感じでした。
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