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研究不正を招く日本の構造 論文・研究者の評価のあり方、厳罰化など


 STAP細胞問題としてはあまりおもしろくない…と言ったらあれですが、真面目な話。不正を減らすにはどうしたらいいか?という話もちょこちょことメモっていました。

 過去に研究者にマネジメント・営業力は必須 STAP問題の理研などは未熟だったの中でSTAP細胞問題は「評価方法の問題」が大きいのでは?と書きました。この評価というのは、「マネージャーとしての評価」「研究者として評価」「研究論文の評価」です。ここらへんに関心があります。

 また、今回引用するもの以外にも本当はもうひとりの方のツイートをメモっているのですが、力作過ぎて長くなるのでまた別の機会に。最初のものはだいぶ前ですね。例によって11次元さんのリツイートで知ったもの。
Tsuyoshi Miyakawa ‏@tsuyomiyakawa
(繰り返しになりますが)研究成果や研究者の評価の軸足を、IF至上主義から、再現性・有用性についてのpost publication evaluation(出版後評価)に移していくことが、不正のモチベーションを低下させる最良の手段の一つだと思います。
15:40 - 2014年3月14日
https://twitter.com/tsuyomiyakawa/status/444603988738969601

 IFとはインパクトファクターです。何度も引用していますが、Wikipediaをどうぞ。
インパクトファクター (impact factor、IF) は、自然科学・社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標である。(中略)現在は毎年トムソン・ロイター(旧: Institute for Scientific Information (ISI))の引用文献データベースWeb of Scienceに収録されるデータを元に算出している。(中略)

研究者や研究機関、および雑誌を評価する目的で参照される場面も多々見られるが、あくまでインパクトファクターはWeb of Scienceに収録された特定のジャーナルの「平均的な論文」の被引用回数にすぎない。

 "インパクトファクターは「学術雑誌」の評価指標であって、学術雑誌論文はもとより研究者の評価に用いるものではない"とされています。上記のIF至上主義は今回問題となったNatureや、Science、Cell至上主義とも言うことができます。"実際には多くの研究者がインパクトファクターに対する誤解を持って"おり、個人の業績比較のために使われることがあるのです。

 ツイートの続き。
守屋央朗 ‏@hisaom 3月14日
@tsuyomiyakawa それだと若い人の評価が難しい。→ 「目利きが」直接人物を判断し、採用を決めるのが良い。→ 今回の事件。今回の事件はNatureが出る前から始まっていた。

Tsuyoshi Miyakawa ‏@tsuyomiyakawa 3月14日
@hisaom 「「目利きが」直接人物を判断」のメリットもあるとは思いますが、やはり複数の第三者からの客観評価もないと危うい、ということの好例になってしまいましたね。

Yoshikazu Yonemitsu ‏@yoshipatho 3月15日
@tsuyomiyakawa @norionakatsuji 今回、小保方氏の採用に笹井氏が目利きとなった訳ですが… 採用の時点で目利きに頼ることは、今回のような人物を採用するリスクを増幅する。個人的に目利きは否定しませんが、不正へのフィルターを機能させることが重要かと。

 私も目利きに依存するのはむしろマズいと思います。今回の件はまともな博士論文を書いていない研究者を祭り上げた…という目利きの不適切さが顕著に現れた例です。

 なお、小保方さんの採用については複数の人の問題が指摘されており、笹井芳樹理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長以外にも何人かの共著者の名前が挙がっています。

 次のものは記事形式。研究者が正しく評価されないことによる歪みについて…といった感じですかね。
STAP細胞会見のリアクションからわかる日本で成果主義がフツーにならない理由 - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース) 2014.04.14

会見の内容以上に驚いたのは、茶番を見た日本の人々の少なからずが、あの会見を指示し、口々に「カワイソウだ」「許してあげよう」と言っていることでした。

人様の論文を20ページも盗作し、イギリスやアメリカのそこそこの大学であれば、学部生であっても、即時退学か単位剥奪になるような行動をとる人の研究が、どうしたら信用できることでしょう。盗作に関して訴訟をおこされる可能性もあるわけです。

しかし「カワイソウ」の人々は、その深刻さを理解していません。女性だろうが若かろうが、30歳というのは立派な大人であり、博士号を取得して研究所に雇用されるということは、プロとして結果をだすのが当たり前で、データ管理や論文の書き方などは知っていて当然、訓練は終了していて当然なわけで、私は未熟ですみません は言い訳にはなりません。自らを未熟だと考えるなら、一般企業の課長級かそれ以上に相当する職務に就いてはならないのです。

通信の世界であったら、自分の無知や能力不足で大規模通信障害が起こった場合、未熟ですみませんでは済みません。解雇になることもありますし、顧客から損害賠償を請求されることだってあります。

日本でも、マトモな研究者や科学者の方、民間企業で技術開発に従事する方々、医療職の方、職人の方など、結果がものをいう世界で働いている人々の大半は、あの会見の内容に激怒しています。成果がモノをいう世界で勝負しているわけですから当たり前です。しかし彼らは日本では少数派です。

日本の人々の多くは、「カワイソウ」の人々であり、成果がモノを言う世界のロジックを理解していないわけです。
http://wirelesswire.jp/london_wave/201404140650.html

 最後は不正に対する罰則の厳罰化について。

 「厳罰化」に関しては以前、死刑のように厳罰化しても抑止効果がない…といったツイートを見かけて気になりました。死刑による抑止効果については今回言及しませんが、論文不正に関しては明確に勘違いだと言えます。

 「これ以上厳罰化しても抑止効果がない」という議論は、既に十二分に罰が厳しくなっているときに初めてできる話です。論文不正が判明しても筆頭著者や共著者らが不利益を受けなかったり、職を保持し続けたり、ノバルティスファーマのディオバン問題のように企業が莫大な利益を得ながらも法的な制裁が不十分であったりするという現在の日本でできる話ではありません。

 このことが言いたいがために、先に刑罰に関する以下二つの投稿をしています。(もともと書きたかった話でもありました)

  ■死刑廃止派や厳罰化反対者は、犯罪の重さに応じた刑罰を否定しない
  ■死刑のないノルウェーの連続テロ事件 無反省でも刑期21年で出所可能

 日本は研究・臨床不正に対してかなり甘いと言っていいです。全然厳しいわけではありません。

 以前も書いたように、こういった中では科学者は不正を犯すことによるメリットの方が大きいです(利益の金額のでかい臨床不正は抑止しきれないかもしれません。それでも、一定の金銭的な罰則などを自動的に与えて不正のメリットを少しでも小さくした方がいいと思います)。わざと誤解を招くような言い方をしますが、現状では科学者らが不正という選択肢を選ぶことは合理的な行動なのです。
特集ワイド:続報真相 ぬるい理研の危機管理 トカゲのしっぽ切り?で泥仕合、「証拠」パソコンは確保せず
毎日新聞 2014年04月18日 東京夕刊

 米国では80年代にバイオ分野で研究不正が相次いだことから「研究公正局(ORI)」という公的機関が92年に発足した。ORIは通報者保護を徹底し、不正の告発を呼びかけている。不正が認定された研究者には一定期間、公的機関からの研究資金配布が禁じられ、ORIのホームページで実名を公表されるなど厳しいペナルティーが科せられる。

 「成果主義が徹底され、研究費獲得競争の激しい米国では研究不正の誘惑は大きい。しかし、一度でも不正が認定されれば事実上、研究者生命が絶たれるORIの制度は大きな抑止力になっている。日本の若手研究者も同様の状況であり、製薬会社ノバルティスファーマの臨床研究不正など健康・人命に関わる大規模な不正が相次いでいる。安心して告発者が通報でき、それに基づき調査される仕組みができれば、抑止力になるはずだ」(隈本教授)

 論文不正問題を受けて、理研は10日から有識者会議を開き、5月の連休明けまでに改革案をまとめる方針だ。調査を棚上げし、改革案を急ぐのは、今国会に理研を「特定国立研究開発法人」に指定する法案を政府に提出してほしいからだろう。

 「倫理指針、規定を厳しくするだけの小手先の改革では不正がなくならないことを、そろそろ分かるべきだ。法制化の必要があることを今回の件は教えてくれている」。隈本教授はそう語る。【浦松丈二】
http://mainichi.jp/shimen/news/20140418dde012040002000c.html

 STAP細胞問題の顛末が「論文不正推奨」のメッセージになりはしないかと危惧しています。


 関連
  ■研究者にマネジメント・営業力は必須 STAP問題の理研などは未熟だった
  ■死刑廃止派や厳罰化反対者は、犯罪の重さに応じた刑罰を否定しない
  ■死刑のないノルウェーの連続テロ事件 無反省でも刑期21年で出所可能
  ■不正を許す日本の文化 理研、パワハラ被害者の不当解雇で敗訴
  ■その他の科学・疑似科学について書いた記事

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