●男性(夫)の家事・育児時間と少子化の相関関係 第二子が生まれる割合
2014/5/26:
あなたが結婚できない理由はデータが知っている!理想の年収、条件、年齢に関わる「残念な検証結果」(ダイヤモンド・オンライン 2012年9月3日 宮崎智之 [フリーライター] )という記事。ここで出てきたデータでおもしろかったのが、以下のような男性の家事と少子化との相関性です。
<夫の休日の家事・育児時間別に見た第二子が生まれる割合>
・家事・育児時間なし……32.4%
・2時間未満……45.8%
・2~4時間未満…… 61.3%
・4~6時間未満……74.0%
・6~8時間未満……82.0%
・8時間以上……74.2%
ここらへんの話が他にないかなぁ…と検索。ただ、残念なことにあまりおもしろい話が見つかりませんでした。検索して目立ったのが男性の家事と少子化は関係ない…という批判です。ほとんどこればっかり出てきました。ただ、実際のデータに言及しているものが少ないこと、データが出てきても家事をする時間が多い夫の家庭と家事する時間が短い夫の家庭の比較という重要な部分に触れていないなどで、イマイチでした。
●より新しいデータでも夫の家事が多いほど第2子以降の出生率が高い?
うーん、ここらへんの調査は少ないのかもしれませんね。検索していてやっと見つけた!と思った
朝日新聞社 ダイバーシティー・プロジェクト:関連記事・データ/も、結局上記と同じデータっぽく見えました。
<夫の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出生率が高い
厚生労働省「第9回21世紀成年者縦断調査」(2011年)によると、子どもがいる夫婦では、夫の休日の家事・育児時間が長いほど、第2子以降の出生割合が高くなっている>
ただ、よく見ると、上記とは数字が異なっており、年度違いかもしれませんので、こちらについても転記しておきます。
<子どもがいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間別にみたこの8年間の第2子以降の出生の状況>
・家事・育児時間なし……9.9%
・2時間未満……25.8%
・2~4時間未満……48.1%
・4~6時間未満……55.3%
・6時間以上……67.4%
前回の記事を見直してみると、元ネタは"2002年10月の時点で20~34歳だった男女を継続的に調査した厚生労働省の『21世紀成年者縦断調査』"でした。10年近く前のデータでした。経済的な問題が大きいのか、10年ほど経過した後の調査では、第2子以降の出生する確率は激減しているようです。ただ、見たかった育児時間と相関する傾向については変わらないですし、より違いが顕著に現れた感じです。
●女性が働き続けると余計少子化が進むから辞めさせるべきという説
他に良い話は見つかりそうになかったので、同じページからおもしろそうなデータを見ることに。上記の家事時間の後には続けて、"だがそもそも、総務省などの調査によれば、日本の男性の家事、育児に費やす時間は、世界的にみても最低の水準"とありました。日本の出生率の低さと関係している可能性があります。
<6歳未満児のいる夫婦の夫の家事・育児時間(1日当たり)>
日本 家事関連 1:07(うち育児 0:39)
アメリカ 家事関連 3:13(うち育児 1:05)
イギリス 家事関連 2:46(うち育児 1:00)
フランス 家事関連 2:30(うち育児 0:40)
ドイツ 家事関連 3:00(うち育児 0:59)
スウェーデン 家事関連 3:21(うち育児 1:07)
ノルウェー 家事関連 3:12(うち育児 1:13)
次に目についたのは「女性が働き続けること=少子化とは言えない」という話。世界では、「少子化で人口減→労働市場に女性が必要→働きたい女性が働き続けられる社会に」というサイクルである一方、日本では、「女性が働き続ければ、ますます出生率が下がり、ますます少子化が進む」という議論となってきた側面があるとまず指摘されています。
ただ、図を見てみると、他の先進国の例を見ると、必ずしもそうではなさそうな感じ。北欧諸国やニュージランドでは、女性の労働参加率が高いほど出生率が高くなっています。働き方の柔軟性を確保し、仕事と子育ての両立の基盤を整えてきた国ほど、女性労働参加率も出生率もともに上昇している、との指摘があるそうです。
●夫が仕事で妻は家…はすでに少数派 共働き世帯の方が多くなっている
このページでは、"2010年の厚生労働省「第14回出生動向基本調査」によると、第1子出産後に仕事を辞めている人の割合は約6割で、この数字は20年間ほとんど変化がない"という話がありました。日本では出産に伴う辞職する女性の割合は、ほぼ変化なしのようです。
一方で、共働き自体は主流となっています。図を見ると、夫が働き妻は仕事をしていないという「片働き」世帯は1980年(昭和55年)から年々減少、1997年(平成9年)に逆転し、共働き世帯の方が多くなっている状態。これは"第1子出産後に仕事を辞めている人の割合は"ほとんど変化がなくても、出産前に仕事に就く人の割合自体が増加傾向にある、出産後に再び仕事に就く人の割合が他の先進国ほどではないが増えいているといった理由だと思われます。
"ただし、共働き世帯については、夫が正規雇用で長時間労働、妻がパートなどの非正規で短時間労働というケースが多い"という指摘や、"共働きといっても、男女、年齢で就業形態がかなり違うことが分かる"という指摘もされていました。
●育児介護支援企業やワーク・ライフ・バランス支援型企業ほど成長する
他におもしろかったのは、「女性の活用は職場の利益につながる」という指摘。図を見ると、育児介護支援企業やワーク・ライフ・バランス支援型企業が伸びていることがわかります。このため、<働く人たちへの支援は、職場のコストや負担になるのではなく、むしろ意欲の向上などにつながって、利益として跳ね返ってくるといえる>としていました。
<経済産業省がまとめた資料によると、「育児介護支援に成功した企業」と、育児介護の応援だけでなく雇用者全体が柔軟に働けるようにしている「全般的ワーク・ライフ・バランス支援型企業」は、「ほとんど何もしない企業」に比べ、粗利益率が2倍以上(引用者注:2.277倍)も高い>
これは順番が逆で粗利益率が高い企業が育児介護支援に積極的という可能性もあるでしょうただ、育児に限らず働きやすい企業が伸びる企業という大きな枠でも、
残業時間が少ない企業=成長する企業 長時間労働は日本停滞の要因という話を過去にやっています。やはり支援した企業ほど伸びるという傾向がありそうです。
●日本人が結婚できないのは貧乏だから説でも「支援が重要」という結論に…
……と書いていると、次にその長時間労働の話が出てきていましたわ。これは繰り返し言われていることですね。日本人の働き方の特徴として「長時間労働」があるというのはデータ的にも明らかなのですが、その一方で日本の生産性が低いこともデータ的に明らかだという話です。
<日本人の働き方の特徴の一つが「長時間労働」だ。内閣府の「平成18年国民生活白書」によると、日本では、週当たりの労働時間が50時間を超える人の割合は28.1%。スウェーデンが1.9%、イタリア、フィンランド、デンマークなどが4~5%台なのに対し、圧倒的に高く、米国、オーストラリアの20%、英国の15.5%と比べても多くなっている。=図16
一方で、長時間労働にもかかわらず生産性は低い。財団法人日本生産性本部の調査によると、日本の「労働生産性」はOECD加盟34か国中19位となっている。=図17>
以上のように、私の求めていた情報についてはあまり見つからなかったのが残念であり、もう少し研究を進めてほしいと思います。ただ、逆のデータはそもそも見つからないため、男性(夫)の家事・育児時間と少子化の相関関係がある確率の方が高そうでした。
また、こうやって共働きの問題や企業の成長力の差を見てみると、結局前回で出てきた結婚の条件の重要な一つである「経済力」とも関わってきますので、家事の分担の要望は女性が仕事に就くことによる家庭の経済力強化や日本経済の成長と関連している…という見方もできそうです。
【本文中でリンクした投稿】
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残業時間が少ない企業=成長する企業 長時間労働は日本停滞の要因【関連投稿】
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