<句読点使用は伝統的な日本語ではない?普及は明治時代から>、<西洋かぶれめ!句読点を使用し始めたのは西洋の影響だった?>、<「公文書はコンマ」を政府見直し…そもそもなぜコンマだったの?>、<句読点は「まる」と「てん」だけじゃない!多数の記号を句読点と言う>など、句読点にまつわる話をやっています。
冒頭に追記
2022/03/12追記:
●句読点は「まる」と「てん」だけじゃない!多数の記号を句読点と言う
2022/11/10追記:
●蝶と蛾は大和言葉でなく漢語の珍しい虫 万葉集にも全く出てこない 【NEW】
●句読点は「まる」と「てん」だけじゃない!多数の記号を句読点と言う
2022/03/12追記:当然知っている言葉なので普通は辞書なんか見ないと思われますが、
コトバンクで句読点の説明を念のために確認してみたところ、知らない話が多数あってびっくり。まず、日本大百科全書(ニッポニカ)によると、句読点はくぎり符号とも言うとのこと。聞いたことありませんでした。
また、句読点といえば、句点〈まる〉「。」と読点(とうてん)〈てん〉「、」だと私は理解していましたが、なんとこれは「狭義」の意味。驚くことに、「狭義」の意味の時点で、並列点〈なかぐろ、なかてん〉「・」を句読点に加えることもあるといいます。「・」が句読点だとは思いませんでしたわ…。
「狭義」ですら驚きなのに、じゃあ、「広義」の場合の句読点に何が入るのか?と言うと、〈かぎ、かぎかっこ〉「 」、〈二重かぎ〉『 』、〈丸かっこ、パーレン〉( )、〈角がっこ〉〔 〕、〈疑問符〉?、〈感嘆符〉!、〈リーダー〉……、〈ダッシュ〉などといったもの。これらも句読点だといいます。
当初の話でやっていたように、横書きの文章では、〈ピリオド〉.、〈コンマ〉,が使われる他、〈コロン〉:、〈セミコロン〉;、〈ハイフン〉‐、〈引用符〉“ ”といったものが使われると書かれていました。おそらくこれらも句読点の一種だと考えられているということでしょうね。
精選版 日本国語大辞典では、句読点を「書かれた文章につき、また、文章を書くについて、意味の切れ続きを明らかにするために用いる補助記号」と説明。文章の区切りなどを文章をわかりやすく目的で使われるものが「句読点」であるため、様々な記号も句読点の一種だと考えられているようです。
なお、句点〈まる〉「。」と読点(とうてん)〈てん〉「、」ですら伝統的な日本語ではないのですから、当然ながらそれ以外の記号の使用はほとんどの場合、伝統的な日本語の用法ではないとも言えそうでした。我々は全然伝統的な日本語を使っていないみたいですね…。
●蝶と蛾は大和言葉でなく漢語の珍しい虫 万葉集にも全く出てこない
2022/11/10追記:ほとんど関係ない話なのですけど、ピタリと来るテーマの投稿が見つからなかったのでここに追記。
チョウ - Wikipediaによると、多くの虫の名称が大和言葉(固有語)であるのに、蝶と蛾は漢語になっている…という珍しい虫だそうです。これで「日本の伝統じゃない?」的なところを連想してここに追記しました。
・日本語では、ハエ、ハチ、バッタ、トンボ、セミなど多くの虫の名称が大和言葉(固有語)であるのに対し、この蝶と蛾に関しては漢語である。蝶や蛾もかつては、かはひらこ、ひひる、ひむし、といった大和言葉で呼ばれていたが、現在ではそのような名称は一般的ではない。
・「蝶」は中国の名であり、日本語では本来「てこな」「てんがらこ」「かはびらこ」などと言う
書いてから思い出したのですが、チョウやガの古名についてなら以前紹介したことがありましたわ。当時調べたときには、蝶や蛾がどの言葉に対応するかは記載されているところによって違っていたんんですよね。なので、言葉の対応に関しては、ウィキペディアの情報も慎重に見ておいた方が良さそうです。
また、上記の記述2つはほぼ同じところにあって、内容が重複した感じなのも違和感。本来ならひとつにまとめて書くべきでしょう。ちなみに、この2つの文章の間にあった豆知識がこれまたおもしろく「万葉集には、蝶を読んだ歌は一つもない」というものでした。当時はあんまり好かれなかったんですかね…。
●句読点使用は伝統的な日本語ではない?普及は明治時代から
2019/07/28:伝統を守るべきだという主張について、私は何ら根拠がないと思っているので良いのですけど、伝統を重視する方がいて、なおかつそれを言い出すとめちゃくちゃになるということがあります。
昨日、「日本語を大事にすべき」と主張している方のサイトを見ていたら、句読点を一切使わない文章が載っていて、ひょっとしたらこれもこだわりがあるのかな?と感じました。例えば、「句読点は日本語の伝統ではなく欧米かぶれの反日売国奴が使うもので、本当の日本人なら句読点を使わない美しい日本語を書くべき」的なものです。
で、句読点はどれくらいの歴史があるのか?と検索してみました。
句読点 - Wikipediaによると、近代に入って活字の使用が増え始めると、明治20年代から明治30年代以降、日本語での句読点の使用が徐々に現れはじめたとのこと。やはり比較的新しいんですね。
●日本語において句読点が必要ない理由はひらがながあるから
この句読点の使われだした経緯の前に、まず中国語での使い方について。中国には古くから句読点に相当する記号が存在していました。しかし句読点を記すことは必須ではなく、大部分の書物には句読点が書かれていなかったため、読む側で句読点をつける必要があったそうです。
なぜこれが日本の話で必要なのかというと、昔の日本は中国の影響がたいへん大きかったため。日本では中世以前、正式な文書は漢文で書かれていたので、中国と同様に句読点は必須とされていなかった…と説明されていたのです。
日本の場合、中世以降、仮名書き文や漢字仮名交書き文が普及しました。しかし、ここにおいても句読点が重要視されることはなかったようです。Wikipediaでは以下のように、句読点なしでも問題ないかのように書いていました。句読点を禁止しろ!という過激な主張が仮にあるのなら、それを後押しする心強い見解でしょう。
<草書体から発展した平仮名での筆記は、文章の区切りごとに繋がって綴られることが多く、また語頭とそれ以外で仮名を使い分けたり、漢字と仮名を交ぜ書きすることによって、ある程度句読点に相当する機能を果たしていた>
●西洋かぶれめ!句読点を使用し始めたのは西洋の影響だった?
Wikipediaによると、中国では20世紀にはいると西洋の影響で区切り記号を使用することが試みられました。1919年には教育部に句読点に関する案を提出し、翌年正式に公布。さらに少し変更を加えたものが1951年に公布され、幾度か改定されています。
一方、日本における句読点普及に関しては、海外の影響とは明記されていません。近代に入って活字の使用が増え始めると、明治20年代から明治30年代以降、日本語での句読点の使用が徐々に現れ始めた…と説明されていました。中国と同様に、句読点の置き方の標準が政府から出るようになり、明治39年(1906年)の案が最初だといいます。
これより前の句読点が増え始めた時期に、芥川龍之介は「僕等は句読点の原則すら確立せざる言語上の暗黒時代に生まれたるものなり」と書き残しています。おそらく句読点なくても問題なしという主張とは逆に、句読点のルールがない日本語は使いづらいというスタンスなのだと思われます。
私も個人的には、句読点があった方が読みやすいと感じますね。例えば、名詞で終わる場合に文章の終わりであることをはっきりさせるため…など、論理的にも「句読点があった方が読みやすい」と考えられます。ただ、日本の伝統を取り戻せ!的な主張は理屈ではないがために、ひょっとしたら今後盛り上がるということもあるかもしれません。
●「公文書はコンマ」を政府見直し…そもそもなぜコンマだったの?
2021/06/17:だいぶ違う話ですが、
公文書の読点「,」から「、」に|【西日本新聞me】(2020/10/30 17:51 (2020/10/30 17:54 更新) )の話を追記。文化審議会の国語課題小委員会は2020年10月30日、半世紀以上前の通知に従い、公文書では読点に「,」(コンマ)を使うとのルールを見直し、一般に広く使われている「、」(テン)を用いるよう求める中間報告案をまとめたそうです。
現在のルールのベースとなっている公文書は、1952年に当時の官房長官が各省庁の事務次官に通知した「公用文作成の要領」で、「なるべく広い範囲」で左横書きとし、横書きでは句読点には「。」(マル)とコンマを使うと定められていたといいます。ただ、現在は多くの省庁がテンを使っており、文化庁は要領改定を検討していたそうです。
コンマを使う文章は、お固い文章で多かった印象。私も引用のときに面倒くさくって困っていました。官庁でも今ではあまり使ってなかったんですね。有料記事であり、全部は読めませんが、朝日新聞の
公用文の横書きのコンマ、時代遅れ?68年後の見直し案:朝日新聞デジタル(丸山ひかり 2020年12月27日 8時00分)では、もう少し詳しい話もありました。
記事によると、文化庁は、戦前~終戦直後の公用文は漢字・カタカナ交じりの文語調で、当時は漢字・ひらがな交じりの口語調に改良しようという流れがあったと説明。いわば伝統を変えようという動きとも言えるかもしれませんね。要領は「公用文を、感じのよく意味のとおりやすいものとする」としていたそうです。具体的には「打ち消しの『ぬ』は、『ない』の形に」などの言い換え例を示していました。
要領では、今回問題となった、横書きの読点にはテンではなくコンマを使うとする記述も登場。横書きでコンマが登場した背景について、同庁の担当者は「日本語は長く縦書きの文化だったが、戦後、作業効率の良さなどから公用文に横書きを導入した。多くの人々にとって全く新しい書き方だったため、英語などの句読点の表記にならったのでは」としていました。
あまり関係ない話…と思って書き始めたのですが、意外に「西洋の影響」ということで似た内容でしたね。また、そもそも現在は普及した横書き自体が、非伝統的で日本的ではない西洋かぶれなもの…とも考えられると気付かされる指摘。日本の古き良き伝統を取り戻すには、ぶっ壊さなくてはいけないものがたくさんあるようです。
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