2018/05/09:
●トラウマだけでは…身体的障害がないいじめの証明は相当困難
●いじめそのものは犯罪ではないが、犯罪行為が付随することはある
●被害届は出すべきだが…民事不介入で警察が動かないケースも多い
●いじめ罪・パワハラ罪・セクハラ罪はない…は問題の矮小化
2020/05/02:
●警察が「民事不介入で動かない」は過去の話って本当なのか?
●トラウマだけでは…身体的障害がないいじめの証明は相当困難
2018/05/09:「いじめそのものが犯罪ではない」というのは、文脈によっては「いじめの正当化」となります。もちろん私が言いたいのはそういうことではなく、困ったことにいじめそのものは犯罪ではなく、対策や補償が難しい場合が多いということです。
例えば、
弁護士ドットコムでは、子供が小学校2年生の時に受けたいじめが原因の1つで不登校になり小児精神科に通っているという小学校6年生の男子を持つ母親が相談をしていました。この女性の子供は、野球のバットを持って追いかけられたり、エアガンで撃たれたり、近所の大きな川にかかる水面から5m程の橋の上から落とされかけたりなどしました。なので、傷害罪だと母親は考えたものの、人権擁護の相談窓口では否定されました。
というのも、被害を受けた子供の証言しかなく、やっと本人がこのいじめのことを言葉にできたのが、いじめを受けてから4年程経っているため、訴えるのは難しいため…とのこと。そして、今回このことについて相談を受けた荒川和美弁護士もこれについて、証明は相当困難なことだと回答していました。
<いじめが、身体的障害でなく、精神的障害の場合、心的障害として、恐怖性障害や不安障害などの診断がされる必要があります。問題は、いじめ自体があったことの証明、いじめが原因で心的傷害となったという因果関係の証明です>
●いじめそのものは犯罪ではないが、犯罪行為が付随することはある
前述の通り、いじめそのものは「いじめ罪」などのように規定されていないのですけど、相談の母親が「傷害罪」という名前を出していたように、いじめに付随する行為が刑事罰の対象となることがあります。
文部科学省の
(別紙1)学校において生じる可能性がある犯罪行為等についてでは、「学校において生じる可能性がある犯罪行為等」において、以下のような例を挙げていました。
暴行(刑法第208条)
傷害(刑法第204条)
強要(刑法第223条)
強制わいせつ(刑法第176条)
恐喝(刑法第249条)
窃盗(刑法第235条)
器物損壊等(刑法第261条)
脅迫(刑法第222条)
名誉毀損、侮辱(刑法第230条、231条)
児童ポルノ提供等(児童買春、児童 ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条)
●被害届は出すべきだが…民事不介入で警察が動かないケースも多い
上記のように何らかの犯罪に該当しそうないじめなら、かなり対応できるのではないかと誤解する方もいるでしょうが、実際にはそうではありません。前述の通り、犯罪の証明はかなり困難であるため、警察はかなり慎重な対応を取らざるを得ないためです。
例えば、
我が子をいじめた相手に親が出来る復讐法 | 子育てペディアでは、"いじめを解決するためには警察に通報することも有効"ではあるものの、"警察は「民事不介入」と言う原則があり"、難しいことを書いていました。
こちらもやはり最初の話と同じく、「目に見える傷や物の損傷が無い」場合は、警察に「民事」と言われてしまうことが多いとしています。被害届はすぐに出せるため出しておいた方が良いとされていましたが、目に見える傷があるようなひどいいじめでないと、警察で解決まで持っていくことは困難なようです。
こうした場合には、民事訴訟という手もあり、傷害や死者が出ている例を含めて、ニュースになるようないじめではよく行われる手段です。
●いじめ罪・パワハラ罪・セクハラ罪はない…は問題の矮小化
パワハラやセクハラにおいてもいじめと同様に、傷害や脅迫、強制わいせつといった罪に問えない場合など、民事訴訟となるケースは珍しくありません。
こうした刑事事件になっていない民事訴訟は、「犯罪かどうか」という点で言うと、犯罪とは言えません。ただ、悪い行いであることには間違いなく、「~罪」という名前がついているかどうかにこだわるべきではないでしょう。
なぜこんなわかりきった話をしているか?と言うと、麻生太郎財務大臣が、財務省の福田前次官のセクハラ問題で「セクハラ罪はない。殺人とは違う」などと言っていたためです。これについて批判を受けた麻生大臣は、以下のようにおっしゃっていました。
「さあ、セクハラ罪という罪があると思っておられる方の発言ですか。私どもとしては『セクハラ罪』という罪はないという事実を申し上げただけ」
(
「セクハラ罪ない」麻生大臣「事実申し上げただけ」(2018/05/08 11:49) テレ朝より)
自民党支持者などはこれに納得しちゃうかもしれませんけど、いじめ疑惑のときにいじめっ子の保護者や学校の先生や教育委員会の人なんかが、「いじめ罪はない」などとふざけたことを言ってこんな言い訳をした場合でも納得できますか?という話。
この立場の人が「いじめ罪はない」「パワハラ罪はない」「セクハラ罪はない」などと言ってしまうのは、明らかに問題の矮小化であり、あまりにもひどすぎます。
●警察が「民事不介入で動かない」は過去の話って本当なのか?
2020/05/02:警察が動かないことが多いと書いていましたが、警察が動いてくれるに越したことはありません。
動かない警察に"確実に"動いてもらう方法 「民事では動かない」は過去の話 | PRESIDENT Online(2019/07/27 11:00)という記事がありましたので、読んでみました。元埼玉県警の警察官で危機管理コンサルタントの佐々木保博さんに話を聞いた…という記事です。
佐々木保博さんによると、警察は民事不介入だと思う人も多いものの、それはもう過去の話。「緊急で、本当に『今困っている』なら、遠慮せず110番しましょう」ともおっしゃっていました。本当にそうなっているのか心配なのですけど、もし親身になって相談してくれるのなら、それだけで助けになるでしょう。
ただし、警察に「動いてもらう」ためには、警告なのか、逮捕なのか、してほしいことを明確にする必要があるとしていました。やはり簡単に動いてもらえるとは限らない模様。また、平日17時以降と休日、祝日は人手不足…など、「動いてもらう」ためにはコツがいるという話が多くなっていました。
「緊急時以外は、平日昼間に警察署に電話予約して行ったほうがいい。#9110(警察相談専用電話)は夜間も受け付けますが、平日昼間がベター」
“犯罪が誘発される”可能性を示すことも動いてもらうポイントのひとつ。「邪魔なゴミ」ではなく「不審物」、「子供が泣いている」ではなく「虐待されているのでは」などと、市民の側で犯罪に該当しそうなものを推測するように…と言っています。ここらへんは警察の方が本来、専門だと思うんですけどね。
また、「証拠」を集めることも大事で、警察は法的証拠がなければなかなか動けないとされていました。なので、これは結局最初のいじめの話であったように、証拠をうまく集めれないと難しい…ということ。基本的に市民がある程度高度な判断と行動を取る必要があり、やはり証明の困難さはつきまとっているという印象は受けてしまいました。
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