2010/7/9:
イオンがお布施の目安を作成して仏教界が不快感
お布施の目安作成は企業による宗教行為への介入…なのか?
それでもお布施の「定価」は今後徐々に決まっていく
●イオンがお布施の目安を作成して仏教界が不快感
2010/7/9:いろいろと手を出しているイオンは、葬儀の際に僧侶を紹介するというサービスもしているそうです。これは元々やっている葬儀社を紹介する事業でのおまけのようです。そして、さらにこれに加えて、戒名の種類別や読経の有無ごとに、布施の金額を「目安」として打ち出したとのこと。
ところが、これに困惑しているのが、全国の伝統仏教宗派で組織する全日本仏教会。以下のような声が出ていました。
「営利企業が、目安と言いながらも、布施の料金体系化をはかっていいのか」(理事会での発言)
「(布施をどう考えていいか分からないという声があるのは承知しているが、)布施は言われて出すものではなく、出す人が額などを決めるもので極めて宗教的な行為。価格を決めて商品のように扱うのはいかがなものか」(全日本仏教会の戸松義晴事務総長)
(「宗教介入だ」仏教界困った イオンの葬儀サービスが「お布施」に目安 産経新聞 2010/07/02 赤堀正卓<より)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/410766/
●お布施の目安作成は企業による宗教行為への介入…なのか?
引用した記事タイトルの「企業による宗教行為への介入だ」は、ちょっと意訳し過ぎた感がありますが、全日本仏教会が不快感を示しているのは間違いありません。
お布施本来の意味である「慈悲の心をもって、他人に財物などを施す」(
Wikipediaより)からすれば、確かに全日本仏教会の言い分はわかります。
(関連:
お布施とは何? ~お布施の本来の意味と現在の感覚~)
ただ、実際のところ戒名などは「商品」として捉えられていると思われます。記事でも第一生命経済研究所の小谷みどり主任研究員などは、「遺族が信仰のない場合にはサービス財にすぎない」とまで言っていました。
そうすると、そんな「商品」の価格が、「お気持ちで結構です」「寺に聞いても、はっきりと教えてくれない」(イオンの客の声など)では、困ってしまうというのもまた事実。このサービスは利用者にとってありがたいことに違いないでしょうし、宗教に介入していこうという趣旨のものではないでしょう。
●それでもお布施の「定価」は今後徐々に決まっていく
この他に記事には、寺院のコンサル事業を手がける日本テンプルヴァン株式会社の井上文夫社長の話として、以下のようなものがありました。
「布施や戒名料は、寺と檀家(だんか)の長い付き合いの中で決まっていくもので、営利企業が扱う筋合いのものではない。目安とはいっても、大企業が発表すればそれが『定価』として一人歩きしてしまう恐れがある」
しかし、イオンのサービスは「僧侶を紹介する」ものですので、こういう人たちはそもそも寺との付き合いがないと考えられます。
そうすると上記発言はちょっと的外れになるわけですが、それでも「大企業」の「定価」は今までのお布施へ影響を与えるということは充分考えられ、その点は理解できます。
現在のお布施は、宗派、地域あるいは個々の寺院ごとにかなり差があります。きっと今回の「定価」は、これらのお布施の格差を埋めていくことになるでしょう。
(逆に価格が上昇するところもあるかもしれません。戒名料が極めて安いお寺というのも、ありますから。この話は、
戒名料が無料の寺もあるにて)
仏教界としてはよそ者に口を出されて不愉快かもしれませんが、これは仏教界側が時代の変化について行けなかった結果だろうと思います。お寺側がもっと歩み寄っていれば、こうはならなかったはずですし、この流れを止めることもできないでしょう。
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