STAP細胞の記事を読んでいて驚いたのが、「世界三大不正」という話。
どうも外部有識者でつくる改革委員会の岸輝雄委員長がおっしゃったみたいですね。「世界の(科学研究の)三大不正の一つと海外の研究者仲間からメールをもらった」とのことです。
改革委の岸輝雄委員長は提言内容を報告する記者会見で、STAP細胞の問題が、2000年代に起きた米ベル研究所での高温超電導研究に関する論文捏造(ねつぞう)や、ソウル大教授の胚性幹細胞(ES細胞)研究に関する捏造と並ぶ科学界の不正事件と受け止められていると切り出した。
【STAP細胞問題 】「幕引き急いでいる」 理研の姿勢、厳しく批判 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/47topics/e/254375.php
さらにそれだけでなく、「3つの事件のなかでも一番がSTAP細胞論文の問題で、これから教科書的に扱われることになる」という発言もあったようです。これは岸輝夫委員長ではなく、市川家国信州大学特任教授のお言葉だそうです。
"STAP論文問題では様々な不正が同時に行われている"というのが理由のようです。確かに話が広がりすぎて把握が難しくなってきているくらいではあります。
STAP細胞論文、世界一の不正で「教科書に載る」 改革委員会が指摘
http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/14/stap-cells-text_n_5494275.html 市川教授はこの後もガンガンと攻めます。以下のような発言もあったとされていました。
「教科書になったときに、理研が確実に真実を明らかにしなかったことが、日本として問題だ」
「これから若い人が論文を発表するときに、『理研』や『JAPAN』と名前がつくだけで疑われるとなると、国益に反する」
これを読んで思い出した話があります。
11次元さんのリツイートで見つけたものだったかな? ツイッターの話なのであれですが、早い時期にこういうツイートがありました。
南極寿星 (Canopus) @nankyokujusei
先週、隣のラボのインド人ポスドクが、蛍光顕微鏡で撮影した細胞の映像を論文投稿用に編集していました。コントラストを調製していた彼の背後から中国人のポスドクが Don't RIKEN edit. と。情報の早い医学系ポスドク達の間では、既に RIKEN は捏造と同義語で通用します。
0:31 - 2014年4月7日
https://twitter.com/nankyokujusei/status/453072660277501952
南極寿星 (Canopus) @nankyokujusei
わたしのせいでも、知ったことでもありませんが、RIKEN から発信される情報に対する信頼性が最近急激に変化したということは、日本人研究者は知っておいた方が良いでしょう。『お前は理研と共同研究などしていないだろうな』とわたしに問い質してくる同僚も少なくありません。
0:36 - 2014年4月7日
https://twitter.com/nankyokujusei/status/453073740113674240
ただ、海外で大きく話題になっているという感じではないんじゃないかな?とも思います。
上記のやりとりは当時STAP細胞が話題になっていたので、時事的なネタとして使われたというだけで、長く心に残っているとは限りません。日本のように毎日報道がされているわけではないのです。
たぶんみんなすっかり忘れていたんだろう…と感じたのは、以下の記事を読んだせいでもあります。
奇跡と騒がれたSTAP細胞が論文撤回だってさ : ギズモード・ジャパン 2014.06.05 11:00
(注:以下は米ギズの直訳です。アメリカではこういう論調なんだな、というのをそのままお伝えしたいので、敢えて修正はしていません)
「血液細胞を◯◯分で万能細胞に変えた」科学者に世界中が口ポッカーンとなったの、覚えてる?
(中略)残念ながら本当じゃなかったようです。論文が正式に白紙に撤回される見通しとなりました。
研究率いる小保方晴子さん(30)が、権威ある科学誌ネイチャーから論文2つを取り下げることに正式合意したとのことです。(中略)
それにしても今年1番のヒーロー科学者から公私認める詐欺師に一転とは…
なかなかに厳しいものがありますなあ。
http://www.gizmodo.jp/2014/06/stap.html
ただ、「すっかり忘れていたんだろう」というだけで、読んでわかる通り日本にとって極めて不名誉な受け止め方をされていることには変わりありません。小保方さんなんか既に詐欺師呼ばわりです。
また、この記事の感じからすると一般人的な感想でしょう。理研の幹部で「不正をする人の気持がわからない」みたいなことを言っている人がいて不正問題への関心の薄さに呆れましたが、研究者でも海外の不正の情報を熱心に追っかけている人はそう多くないかもしれません。
ただ、「世界の(科学研究の)三大不正の一つと海外の研究者仲間からメールをもらった」とあったように、この問題に注意を傾けていた研究者の方にとっては、やはり極めて悪質な不正と捉えられた可能性も否定できません。
STAP細胞疑惑が持ち上がった当初から何度か書いていると思いますけど、日本にとってタイミングが悪いのは、ノバルティスファーマのディオバン問題という大型の臨床研究不正と時期が重なったことです。この問題に関する報道では、海外で日本は不正をしやすい国だとみなしているという話もありました。
日本というだけで疑われる…というのは大げさであり、おそらく多くの海外の人も建前上そのことは否定するでしょう。ただ、一方で、一部の人に日本は研究不正が多い国だという認識を強くされた可能性は否定しきれませんし、それくらいの危機感を持って不正防止に当たるべきです。
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