★2010/7/11 エアコンの爆風モードとは?
★2010/8/30 爆風モード対策か? エアコン試験が見直しに
★2010/7/11 エアコンの爆風モードとは?
エアコンに2つの過大表示疑惑 2010年6月21日 小笠原啓 日経ビジネスオンライン(閲覧には登録が要るかもしれません)によると、エアコンには「爆風モード」なる隠し機能があるそうです。
「爆風モード?隠し機能?何それ、カッコいい!」とおバカなことを考えてしまいましたが、記事タイトルを見てもわかる通り、あまり良い話ではありません。
この「爆風モード」というのはかなり怪しい名前ですが、大手エアコンメーカーも「何のことか全く分からない」(広報)と存在を真っ向否定しています。
しかし、あるエアコン業界関係者が、この機能について詳細に語っています。
爆風モードには、次の2つのタイプがあるそうです。
・リモコンで温度や風向といった複数のボタンを、普段の生活では絶対にやらないようなパターンで押すと、エアコンが特殊な状態になるタイプ。(記事には「隠しスイッチ」を仕込むとありましたが、ゲームでお馴染みの「隠しコマンド」と言った方が、ピンと来るかもしれません)
・特定の温度と湿度を満たす空間にエアコンが置かれると、内蔵マイコンが検知して爆風モードが作動するタイプ。
これらの爆風モードは、政府がエコポイントを付与する基準になり、カタログにも載せるAPFやCOPなどの指標を良くするために搭載されたものであり、「省エネ性能が実態以上に良く」見せる「かさ上げ行為」なんだそうです。
省エネ性能が良くなるのにいったい何が問題か?と思われるかもしれませんが、爆風モードは
一般家庭では許容できないレベルの騒音を出しながら強風を吹き出すそうです。
実は騒音を減らすとその分消費電力が増えるそうで、環境は無視して数値を良くしようという作戦です。
さらに
暖房の場合は肌寒く、冷房では生暖かい風を連続して吹き出すことでも、消費電力を抑えるそうです。
もうこうなると、エアコンの本来の機能を果たしていません。本当に詐欺に等しい行為です。
その他数値をよく見せかける手法としては、冷房試験で「除湿運転」を行わない手法もあるとありましたが、「除湿運転」や「ドライ運転」が消費電力を増すことは、
エアコンの除湿や
エアコンのドライの消費電力で書いたとおりです。
独立行政法人建築研究所の澤地孝男・環境研究グループ長が、実際に人が住んでいるような条件を再現し、省エネエアコンと一般エアコンの暖房効率を調べたところ、省エネエアコンの方がカタログ値との乖離が激しかったそうです。
これは省エネエアコンが、かなり評価数値に偏った作りをしている現れでしょう。
省エネエアコンがそれ以外のものより劣る……とまでは書かれていませんが、「カタログ効率から期待されるほどの省エネ効果は、必ずしも得られなかった」(澤地グループ長)というのは本当かもしれません。
何だかものすごく酷い話でありますし、実際にそんなのやっているの?って感じですが、業界団体である日冷工(日本冷凍空調工業会)の岸本哲郎・専務理事も、「様々な手を使って、メーカーがトップランナー基準を達成しようとしているのは事実」と認めているようです。
この日冷工自体は危機感を感じているらしく、昨年、「隠しスイッチ」による爆風モードの起動に関しては禁止したのですが、それならばと起動スイッチを「消費者に見える形」(関係者)でリモコンに搭載しちゃったメーカーもあるそうです。
昨年エアコンを買った方は是非、爆風モードの起動スイッチを探してみてください。今日はここで終わりにします。
(追記:ここでは載せませんでしたが、爆風モード以外のもう1つの過大表示については
電気代の嘘で書きました)
★2010/8/30 爆風モード対策か? エアコン試験が見直しに
ついに「爆風モード」が、大手新聞社でも取り上げられました。読売新聞の非常に短い記事ではありますが、
省エネ性能かさ上げ、エアコン試験見直しへ 2010年8月29日の最後で、
省エネ性能は、日冷工が日本工業規格(JIS)に基づき、消費電力に対する冷暖房能力を指標化している。ところが、一部メーカーの試験では、消費電力が大きい騒音防止機能を切り、轟音(ごうおん)が出る「爆風モード」で行うなど、省エネ性能のかさ上げが発覚した。 |
と書かれており、現在の省エネ性能試験の問題を伝えています。
ただこの記事のメインは、「エアコン試験見直し」の話です。
記事によれば、以前書いた話でも出てきた業界団体の日本冷凍空調工業会(日冷工)が、家庭用エアコンの省エネ性能が過大表示されているとの批判を受け、28日にエアコンの性能試験の見直しを発表。2011年4月をめどに、第三者機関(新たに設立する財団法人)に性能試験を委嘱する方針を固めたそうです。
これにより、日常生活では通常使わない設定で試験をするなど、現在行われている省エネ性能を高く見せる行為を防ぎ、家庭での使用実態に近い試験を行う体制を整えるようです。
これは私が
爆風モードはトップランナー制度の弊害の現れなのか?で願ったことを、おおむね達成してくれそうな感じです。
ポイントとしては、
(1) 「トップランナー制度」自体には問題はない。
(2) エアコンの省エネ性能を測る指標が問題。
(3) 実際の利用環境を反映した状況での測定すべき。(今読み直すとこれについては、はっきりと書いていませんでしたが)
です。
(1)に関しては国の問題ということもあり、日冷工が独自に変更できなかったというのもあるんでしょうが、トップランナー制度への異議はないようです。
日冷工は、トップランナー制度ではなく指標を問題視(2)し、かつ家庭での使用実態に近い試験(3)を目指すというんですから、ほぼ完璧です。
ただトップランナー制度に使う指標は見直されないということだとすれば、これによる罰則を避けるため爆風モードは残るかもしれません。
こちらも日冷工などが働きかけて修正されるのかもしれませんが、たとえされなくても業界団体である日冷工が新基準での指標を義務づければそれでほぼ解決かと思います。
他の指標がどうであろうと、消費者としては使用実態にあった新指標を参考にすれば良いことですし、爆風モードが存在していても非爆風モードで試験された新指標が良ければ問題ないからです。
まあ、指標が複数あって混乱するというのは害悪ですし、爆風モードみたいに余計なところに労力を使うとお値段が張りそうです。
さらに言えば、より省エネ性能を上げていこうというトップランナー制度には、実態にあった指標が用いられることが望ましく、そうでないと本当の技術推進にはなりません。
願わくは、こちらの方も見直し願いたいものです。
と書いてから、以前参考にした
エアコンに2つの過大表示疑惑 2010年6月21日 小笠原啓 日経ビジネスオンライン(閲覧には登録が要るかもしれません)を読み直すと、
エアコンの省エネ性能は日本工業規格(JIS)に基づき、メーカー各社が加盟する日本冷凍空調工業会(日冷工)のセンターで試験する。測定するのは冷暖房能力を消費電力で割った「COP」という指標だ。
(中略)
エアコンではCOPが(注:トップランナー制度の)指標となり、各メーカーに常に省エネ努力が課せられるようになった。 |
とあるので、日冷工試験=トップランナー基準と考えて良いのでしょうか?万事解決なのかも。
あと、わざわざ新たに財団法人を設立するというのは、ちょっと不思議に思いました。日冷工でも「隠しスイッチ」による爆風モードの起動に関して禁止していますし、ある程度の自主規制は可能な気がします。
しかし、業界団体ということもあって、そこらへんが限界なのかもしれません。
いずれにしろ良い方向には進んでいそうだなと思いつつ、今日はここで終わりにします。
関連
■
爆風モード以外のもう1つの過大表示 電気代の嘘 ■
爆風モードはトップランナー制度の弊害の現れなのか? ■
エアコンの除湿 ■
エアコンのドライの消費電力 ■
男女で違うエアコン設定温度 ■
女性に寒がりが多い理由 ■
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