若山照彦山梨大教授が16日、"自身が保管していたSTAP幹細胞は、小保方晴子氏に作製を依頼して渡したマウスとは別系統の細胞だったとの解析結果を発表し"ました。
この会見はあまり関心が持たれなかったのか、詳しい一問一答みたいなのは作られていないようです。私が見た中で少し載っていたのは、以下の記事くらいでした。
若山教授 STAP細胞「“できる”と言うのは小保方氏1人だ」 ― スポニチ [ 2014年6月16日 20:03 ]
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2014/06/16/kiji/K20140616008379760.html あんまり数はないんですけど、この中でも一応強烈な話はあります。たとえば、ES細胞の話。
―小保方氏側はES細胞の混入は起こりえない状況だったと説明している。
「自分の研究室の学生が過去にES細胞を小保方氏に渡していたことが分かっている。ES細胞を普段自由に使える環境だったということは間違いない」
これは若山教授の研究室のES細胞を使ったという意味ではないようですが、ES細胞を普段から取り扱っていたよという話です。
他にES細胞のテクニカルな話として、こういうのもあります。
―(STAP細胞は胎盤にも分化する能力があるため)胎盤が光ったというが。
「STAP細胞由来の胎盤のほか、比較のため胚性幹細胞(ES細胞)由来の胎盤を作った。STAP細胞由来の胎盤だけでなく、ES細胞由来の胎盤も光っていた。赤ちゃんの血が胎盤の血管に入るためだ。STAP細胞由来の胎盤では血管以外でも光っている(のでES細胞とは違う)という報告を小保方氏から受けた」
また、例の小保方さんの200回に関しては次のような話も。
―小保方氏は会見で「200回以上作製に成功した」と。受け止めは。
「STAP細胞を作るのに、生後間もない赤ちゃんのマウスを使う。200回やるなら千匹ぐらい必要と思うが、自分の研究室の規模ではそこまで提供できなかった」
200回成功はまあわかりきった話ですので、今さらツッコんでもどうかなって話ですけどね。それより今回興味深かったものとしては、こちらの方ですかね。
―今回の結果について、共著者らの反応は。
「理研の人には『(STAP細胞を作ったのが)若山研究室のマウスからではないことが分かっただけで、価値がない』などと言われた」
理研の問題への隠蔽姿勢がよくわかる話です。
ここのやり取りに関して、Twitterではこう受け取っている方も。
EARL@転勤先探し就活再開 @DrMagicianEARL
若山氏記者会見:若山氏「第三者機関や遠藤先生の解析結果については(小保方氏以外の著者からは)価値がないと言われました」記者「それは誰ですか?」若山氏「…理研の先生方です」記者「笹井先生や丹羽先生ですか?」若山氏「……丹羽さんはそのようなことはおっしゃってません」やっぱり笹井氏か?
0:21 - 2014年6月16日
https://twitter.com/DrMagicianEARL/status/478437291778523136
まあ、確かに笹井さんについては否定していませんね。
ところで、若山照彦教授については一部の人が「犯人」と決めつけるなど強力なアンチがいるものの、全般に好意的な反応が多いです。
私はなるべく特別扱いせずに行きたいと思っていますけど、やはりあまり悪い印象はありません。皆さんの理由は知りませんが、私の理由は以下の通りです。
まず、STAP細胞論文を擁護していた段階から、若山教授はNatureや他の研究者やマスコミなどにきちんと対応していました。会見では笹井さんに責任著者を辞めたいと言ったという話もあったようですが、他の責任著者よりずっと責任を果たしています。
それから一番大きいのは、理由もなしにSTAP細胞の存在を肯定したり、屁理屈を並べてSTAP細胞を信じるふりをしたり、疑惑解明の調査を望まなかったりして問題を隠蔽するのではなく、きちんと判明した問題を認めている唯一の関係者であることです。若山教授が怪しいという声が出ているのでわかる通り、自分が不利益を受ける可能性があるのにも関わらず疑惑解明に一番積極的なのです。
(若山教授が他人に罪をなすりつけるために疑惑解明に協力していると言う人もいますが、それでは他の関係者が隠蔽する理由は説明できません。若山教授が犯人なら、他の関係者はむしろ積極的に疑惑を追求した方が良いです。これは決定的な矛盾です。というか、疑惑が生じたときにそれに答えるってのは科学者の基本ですからね)
また、Twitter情報ですが、辞表を提出したという噂を聞いていたというのもあります。会見でも以下のようなやりとりがあったようです。
―自身の懲戒処分は。
「山梨大の学長は『一切処分をしない』と言うが自分から大学側に何か処分を申し出るつもりだ」
ただ、責任を取らなきゃ…という話になっているように、もちろん若山教授にいろいろとマズいところはありました。
会見の質疑応答でマズいなぁと感じたのは以下の部分です。
―誰もチェックしていない野放し状態だった。
「チェック体制ができておらず、反省している。小保方氏の発表には必ず新しいデータが入っていて、発表の仕方もうまい。そのデータを見る限りでは研究は順調に進んでおり、実験ノートを見なければいけないという状態にならなかった」
似たようなものだとNHKの以下の記述もあります。
山教授が小保方リーダーの実験結果についてデータを確認しておらず責任は重たいとされた点については「ノートを確認するということは思いもつかなかった。どんなにすごい研究成果であっても責任ある立場として確認すべきだった」と述べ謝罪しました。
若山氏 「分析結果 STAPの存在否定」 6月16日 14時44分 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140616/t10015253621000.html
これ、本来は逆なんです。どう逆なのか?と言うと、不正は研究が順調なときこそ気をつけなくてはいけなくて、うまくいっていないときの方が安全なのです。
STAP細胞の問題が起きる前からある生物の不正研究スレで、2月にこんなレスがありました。
965 : 名無しゲノムのクローンさん[] 投稿日:2014/02/23(日) 13:08:42.60
学生がポジティブなデータばっかり持ってくるならその学生を疑え
学生がネガティブなデータばっかり持ってくるなら自分(のストーリー)を疑え
捏造、不正論文 総合スレネオ 18 | ログ速
http://www.logsoku.com/r/life/1392909724/965
元ネタあるのかないのか知りませんが、私はこれに名言だなぁと感心しました。
一応研究者は建前としては望ましい結果…のような願望を持って実験しちゃいけないのですけど、実際のところこうなってほしいという見通しは立てています。しかし、その狙いに全く合わない結果ばかり学生(理研の場合は若手研究者)が持ってくるというのは、自分が作った理論が間違っている可能性が高いです。これはわかりやすいでしょう。
問題はもうひとつの方、狙い通りのデータがバンバン出てくるときです。うまくいっているんだからいいじゃんと思うかもしれませんけど、このような場合、学生(若手研究者)が捏造していることがあります。あまりにもうまくいきすぎているときほど、注意が必要なのです。
実はさっきの悪いデータばかりのときにも、不機嫌になってデータ持ってきた若手にプレッシャーを与えるなどすると、こういった捏造する若手を作り出す原因になりかねません。ですから、悪いときは「自分(のストーリー)を疑え」の方も当たり前の言葉なように見えて、実は深い意味のある戒めの言葉になっています。
何でも成果主義の責任にするのもどうかと思いますが、野依良治理研理事長の植えつけた成果重視が危ないというのは、もっと大きい形での捏造を誘発する構造であるためですね。
おそらくこれは若山教授に限らず、多くの研究者の方が意識されていないんだろうと推測します。また、STAP細胞問題に限って言えば、小保方晴子さんの博士論文がより一層めちゃくちゃだったことから、個人の問題が大きいと考えるべきでしょう。
ただ、ここらへんの心構えは研究者の方、特に立場が上の方は肝に銘じておいてくだされば…と思います。
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