野球の王貞治さんは日本国籍を取得しておらず、中華民国国籍者だと知って驚きました。政治利用を嫌っているなどの理由があるそうですけど、ネットではデマや政治利用的なものであふれていました。また、王貞治さんが日本国籍じゃないとすると、国民栄誉賞は?という疑問が出てきます。で、国民栄誉賞は実際に国籍に関する規定はないみたいですね。
2023/01/23追記:
●王貞治とは違う意味で国民栄誉賞を受賞した大鵬も特殊ケース 【NEW】
●王貞治氏は日本国籍を取得していなかった
2018/02/04:別件で
王貞治 - Wikipediaを読んでいて驚いたのが、王貞治さんが中華民国国籍者だということ。てっきり日本に帰化しているものだと思い込んでいました。この「中華民国」というのは、今だと「台湾」のことを指します。そのため、王貞治さんを台湾国籍や台湾人と書いている人もいるものの、これは実態と異なるんですよ。
今は「中華民国」=「台湾」なのに王貞治さんが台湾人じゃないということを説明するのは結構面倒。ただ、Wikipediaがそこらへんも書いていて助かりました。年齢が上の人なら知っているでしょうが、かつて中国大陸の政権与党は中国国民党であり、国号を中華民国としていました。当時は現在ある中華人民共和国ってのはなかったんですね。
ですので、この中華人民共和国がなくて、中国が「中華民国」だった当時、王さんを含めた中国内外に住む中国人(華僑・華人)は、当然みな中華民国国籍で中華人民共和国国籍じゃありません。中国大陸の人はみな中華民国国籍だったんですよ。前述の通り、まだ中華人民共和国はできていませんからね。
ところが、その中国国民党は第二次世界大戦後に中国共産党との覇権争いに敗れて中国大陸を脱出。逃亡先の台湾・台北に事実上首都を遷します。1971年には国連をも脱退し、日本を含めた国際社会の多くの国々から「中華民国」の方は国家承認を取り消されてしまいます。
ただ、王さんは自らの知名度を政治的に利用されることを嫌い、その後においても世界中より正式な国家として承認された中華人民共和国や、自身が生まれ育った日本国の国籍に、利便性のために帰化することをよしとしなかったそうです。このため、王さんは現在でも日本や中華人民共和国ではなく中華民国国籍なわけです。
また、『情熱大陸」でのインタビューではこの理由について、中華民国籍の在日中国人として生涯を全うした父親の遺志を尊重していることや、世界のホームラン王として国際的に有名になった現在、「日本国籍を取得」「中華人民共和国籍を取得」「生涯中華民国籍であることを宣言」のいずれの行動も政治的意味を帯びてしまうことなどを挙げていたとのこと。
ただし、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、海外メディアから「あなたは日本人ですか?」と質問された際、王は「父は中国人だが、母は日本人です。私は生まれたときより日本で育ち、日本の教育を受け、日本のプロ野球人として人生を送ってきました。疑うことなく日本人です」と答えていたそうです。
●王貞治氏が台湾人という説明は問題あり
ということで、王貞治さんを台湾人というのは問題がありますし、政治利用的な側面があります。
Wikipediaでは、王さんを「台湾人」と誤って表現されることがあるが、これは国籍上中華民国国民であることに加えて「台湾」と「中華民国」が混同されがちであることが誤解の理由としていました。実際に王家の祖籍は中華人民共和国実効支配下の浙江省であり、外省人でもないので台湾島とのゆかりは全くありません。
ここらへんは誤解とデマが出回っているようで、
王貞治は、台湾人ですか? - Yahoo!知恵袋という質問も出ていました。この「ベストアンサーに選ばれた回答」というのがまさにデマで、上記と全く違う説明をしています。
<本当は中国人です。
でも昔は日本と中国に国交がなかったので、巨人の海外キャンプに参加するために、
台湾の国籍を取りました。
そのさいにいろいろゴタゴタがあってすっかり嫌になったので、もうあらためて中国籍に変えたり日本に帰化したりするつもりはないそうです">
一方で、「王 貞治 氏は、第一回国民栄誉賞に輝いた日本人です」とこれまた別の嘘を書いている人も。ヤフー知恵袋でも「中華民国国籍=台湾人ではないということを理解していない人が多い」と書いている方もいたのですけど、ヤフー知恵袋らしくひどいことに。この方は、「台湾の政治的利益のために利用されて、かわいそうです」ともおっしゃっていました。
●国籍が理由で国体に出場できず
ヤフー知恵袋は「海外キャンプに参加するために、台湾の国籍を取りました」という妙なことが書かれていましたが、先のWikipediaによると、国籍による弊害を受けたことが高校時代にあるそうです。
所属していた早稲田実業高校が国体の硬式野球高校部門に選出されたものの、王さんは当時の国籍規定のため出場できなかったといいます。王さんは自著「回想」では「生涯最も悔しかったこと」としていました。
でも、後年のインタビューでは「高校球児は甲子園こそ目標で、国体にはそこまでのモチベーションはなかった。今振り返ってもそういうこともあったな、程度。甲子園大会でそういう規定があったら悔やんでも悔やみきれなかっただろうけど」としており、全然違う内容となっていました。よくわかりませんね。
●国民栄誉賞なのに日本国籍必要なし 最初の王貞治氏が中華民国国籍
ところで、王貞治さんは、国民栄誉賞の初代受賞者です。日本国籍じゃないのに?と不思議に思ったのですが、先のWikipediaによると、<外国人勲章と区別される勲章と違い、国民栄誉賞の受賞に国籍制限は設けられず、王のホームラン記録を祝うために作られた賞であるとも揶揄される>と書かれていました。
国民栄誉賞 - Wikipediaの方を読むと、こちらははっきりと、<1977年(昭和52年)、当時の内閣総理大臣・福田赳夫が、本塁打世界記録を達成したプロ野球選手・王貞治を称えるために創設したのが始まり>と書いています。また、やはり"日本国籍の所持は要件にない"とのことでした。
「国民栄誉賞なのに」ということに関しては、1977年(昭和52年)8月30日に内閣総理大臣決定で制定された国民栄誉賞表彰規程によると、その目的は「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること」となっています。
つまり、栄誉ある国民を讃える賞ではなく、国民に敬愛されるような栄誉を持った人(国籍問わず)を讃える賞ということみたいです。ただ、そもそも国民栄誉賞って、
国民栄誉賞に異論 王貞治から長嶋茂雄・松井秀喜まで政治利用の歴史で書いているように、どうかな?って思う賞なんですけどね…。
●王貞治とは違う意味で国民栄誉賞を受賞した大鵬も特殊ケース
2023/01/23追記:国民栄誉賞と国籍…という関係で言うと、相撲の大鵬(納谷幸喜)のことも思い出します。孫の王鵬も関取となって話題になったのですが、とにかくおじいちゃんの「大鵬」が偉大すぎでした。Wikipediaによると、国民栄誉賞受賞事由は以下の様なもので、なんと言っても優勝回数がすごかったです。
<1960年代に“子どもの好きな物”として読売ジャイアンツや玉子焼きと並び称されることが流行語になったほどの人気者。大相撲史上最多となる32回の幕内優勝を成し遂げるなど、“昭和の大横綱”として相撲界に輝かしい功績を残すとともに、多くの国民に愛される国民的な英雄として社会に明るい夢と希望と勇気を与えることに顕著な業績があった>
で、なぜ王貞治さんを思い出すのか?と言うと、海外系であるため。父親がウクライナ人で、出生名はイヴァーン・ボリシコ。出身は北海道川上郡弟子屈町となっていますが、出生地は当時日本領だった樺太敷香郡敷香町、現在のロシア極東連邦管区サハリン州ポロナイスク市です。王貞治さんは違うケースではありますけどね。
<1940年(昭和15年)、ウクライナ人の元コサック騎兵将校、マルキャン・ボリシコの三男として、日本の領有下にあった南樺太の敷香町(ロシアの呼び名サハリン州ポロナイスク)に生まれた。マルキャンはロシア革命後に日本に亡命した、所謂白系ロシア人であった。なお、南樺太は日本領であったため、大鵬は外国出身横綱にならない>
なお、最初のときに明記していなかったのですけど、国民栄誉賞という名前はともかく、「外国人や海外系だから国民栄誉賞を受賞したらダメ」と言いたいわけではありません。ただ、最初にも書いたように、私はそもそも国民栄誉賞という賞の存在自体がおかしいのではないか?という考え方です。
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