衛星関連の話をまとめ。<軌道上サービスにビジネスチャンス!デオービットが有望である理由>、<人工衛星が想定外のスピードで急増、宇宙保険会社が撤退する事態に>などをまとめています。
2022/10/28追記:
●人工衛星が想定外のスピードで急増、宇宙保険会社が撤退する事態に 【NEW】
●日本が注力すべき宇宙の分野は、派手さがない地味なところである
2020/10/19:以前、
スペースデブリ問題は日本にチャンス?JAXAが除去用のロボット衛星を開発という投稿を書いていたので、
「宇宙ゴミ」除去サービスの商機を見逃すな:日経ビジネス電子版(2018年5月22日)という記事をブックマークしていました。
ただ、読んでみると、いろいろ予想外。サブタイトルは「技術開発だけでなく法整備も必須」であり、なんと話を聞いているのは弁護士さんでした。思ってもいない方向性ですね。知的財産権やIT・通信だけでなく、航空宇宙産業、宇宙法が専門分野だという新谷 美保子弁護士による記事です。
私は人々が好むド派手な宇宙投資は嫌います。そういった分野については、税金を大量投入することにも反対。もっと実用性・現実性のあるところということで、小規模なロケットの方が良いと思っています。スペースデブリ関連に可能性を感じるというのも、こうした考えがベースになっていました。
航空宇宙産業関連の業務に携わる機会が多いという新谷 美保子弁護士も、日本が注力すべき分野は①小型衛星および小型ロケットの開発②衛星データを利用したビッグデータ集積によるICT(情報通信技術)ビジネスおよびその産業利用③スペースデブリの監視・除去を含む軌道上サービス──ではないかと考えているそうです。
●軌道上サービスにビジネスチャンス!デオービットが有望である理由
弁護士さんの話とは予想外でしたが、普通にビジネス的な話が多い記事ですね。スペースデブリの監視・除去を含む軌道上サービスの潜在的な市場規模は急速に拡大しつつあるとのこと。スペースデブリ除去以外では、軌道上で衛星に燃料補給して寿命を延ばしたり、衛星の軌道を修正したり…といったものが含まれるそうです。
壊れた衛星などのスペースデブリの除去は、「デオービット(軌道上からの除去)」と呼ばれるとされていました。このデオービットが有望だろうというのは、以前私が書いたのと同じような理由。小型衛星がいっそう増える一方で、スペースデブリも増加しているということですね。どちらも増えるので、当然、事故が起きやすくなります。
日本の民間企業としては、アストロスケールというベンチャー企業がデブリ回収事業を計画中だとのこと。チャレンジしようという企業はあるようです。ただ、弁護士さんの専門分野である法的なところで言うと、日本では、損害賠償などのリスクが大きなハードルになると指摘されていました。
2016年11月という最近に日本では「宇宙活動法」が成立しているものの、ここらへんは全然考えられていなかったそうです。もったいなかったですね。記事の時点でイギリスがすでにこの法律について審議しているなど先行しており、日本が法整備を怠れば、事業環境が整備された国に企業は流れてしまう…と懸念されていました。
●人工衛星が想定外のスピードで急増、宇宙保険会社が撤退する事態に
2022/10/28追記:スペースデブリ(宇宙ゴミ)関連の記事を見つけたので読んでみました。
アングル:増え続ける「宇宙ゴミ」、衛星が保険に入れなくなる日 | ロイター(2021年9月6日)という記事です。宇宙ゴミが増えすぎて、保険業界では保険の提供をためらう状況になっているといいます。
<人工衛星は何千基も新たに打ち上げられているが、打ち上げ先の軌道上には、65年近く前の初期ロケット宇宙計画以来のデブリが蓄積されている。衝突リスクが高まっており、衛星を対象とする保険を提供する数少ない保険会社に宇宙関連契約の縮小や撤退の動きが生じている、と業界幹部やアナリストは語る>
保険会社アムトラスト・ファイナンシャル傘下にあるアシュア・スペースでは、すでに記事の1年以上前に、ほとんどの衛星が運用されている地球低軌道(LEO)での宇宙保険の提供を停止。その後もわずかながら保険契約を結んでいるものの、衝突による損害は免責となっているそうです。
保険ができないってどういうこと?と思うかもしれませんが、事故リスクが高すぎるなどすると、被害にあった会社への支払いが保険料より多くなるため、保険を作れないのだと思われます。アメリカのハリケーン保険なんかは難しくて、何度も保険会社が倒産。条件がうまく揃わないと保険の提供は難しいのです。
<パーカー氏(引用者注:保険会社アシュア・スペースの共同創業者であるリチャード・パーカー氏)はロイターの取材に、「近い将来、この種の保険への加入が難しくなり始めるかもしれない。とても手に負えない巨大なリスクだと認識する保険会社が増えてくるから」と語った。
統計情報を分析しているセラデータによれば、地球の軌道上には8055個の衛星が周回しているが、そのうち42%は稼働していないという。衛星のほとんどは地表から2000キロ上空のLEO上にある。稼働中の衛星の数は前年比で68%増加し、5年前の2倍以上になっている>
上記を読むと「急増」というのが、想定外の条件だった感じ。急激に人工衛星が増えるということは、急激に事故リスクが高まる、つまり、急激に保険金を支払う可能性が上がるため、当初契約の保険料では保険金を支払えなくなってしまいます。ハリケーン保険が破綻したのも、想定外にハリケーンが頻発したためだったんですよね…。
このように事故リスクが高まった場合は、契約の保険料を引き上げることで新たな保険を作る…という選択肢はあります。ただ、保険料を上げると、今度は顧客が集まらず、保険が成り立たない…ということに。ハリケーン保険が苦労したのも、やはりこれでした。前述の通り、条件がうまく揃わないと保険の提供は難しいのです。
【本文中でリンクした投稿】
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