中国原産で韓国からの外来種ツマアカスズメバチが日本対馬で被害？

　原産は中国、遺伝子は韓国のツマアカスズメバチが日本で害をなす危険性がある…という話。中国や韓国が嫌いな方が「さすが中国と韓国、迷惑者だ！」と喜んで食いつきそうな話題です。でも、人が死ぬかもしれないって話ですからね、喜ぶようなものではありません。

2017/10/06：
●ツマアカスズメバチに記者が刺される…何が問題だったのか？
●駆除できるかも？対馬の新・ツマアカスズメバチ除去作戦が大成功
2021/09/28追記：
●対馬だけじゃなかった…山口県・福岡県などですでに見つかっている


●中国原産で韓国からの外来種ツマアカスズメバチが日本対馬で被害？

2014/6/30：京都産業大学の高橋純一准教授によると、「中国原産で、２００３年に韓国に侵入した。対馬には物資に紛れて１２年に入ったとみられています。（対馬のものは）ＤＮＡ解析からも韓国産ということが分かっている」とのこと。「ツマアカスズメバチはミツバチが好物のため、養蜂に大きな影響が出る可能性がある」ともありました。
(殺人スズメバチが対馬定着　中国原産　遺伝子は韓国　養蜂産業や在来種に悪影響- 夕刊フジ（2014年6月21日17時12分）より)

　ミツバチ食べちゃうんだ！と驚きましたが、他のスズメバチもそうなんですかね？　気になってWikipediaを読むと載っていました。他の種類でも、ミツバチをやっつけてしまうようです。

＜オオスズメバチは捕獲する昆虫が減少し、また大量の雄蜂と新女王蜂を養育しなければならない秋口には攻撃性が非常に高まり、スズメバチ類としては例外的に、集団でミツバチやキイロスズメバチといった巨大なコロニーを形成する社会性の蜂の巣を襲撃する。
　オオスズメバチがニホンミツバチ (Apis cerana) の巣を襲撃した場合、集団攻撃前に蜂球によって撃退されなければ、巣を占拠できる。この種に対抗する術をほとんど持たないセイヨウミツバチ (A. mellifera) の場合は攻防の関係は一方的で、養蜂家による庇護がなければ必ずといっていいほど全滅を余儀なくされる（数十匹ほどのオオスズメバチがいれば4万匹のセイヨウミツバチを2時間ほどで全滅させられる）＞


●オオスズメバチのセイヨウミツバチ退治がありがたいときもある

　オオスズメバチがセイヨウミツバチを攻撃することは悪いことばかりではないようです。ツマアカスズメバチの日本への侵入は外来種としての問題というのもありますが、セイヨウミツバチというのもまた外来種。オオスズメバチがいるお陰で、"飼育群からの分蜂による野生化が毎年あちこちで発生しているにもかかわらず、セイヨウミツバチが日本で勢力拡大するのを防ぐ要因になっている"そうです。

　一方、オオスズメバチの生息しない小笠原諸島ではセイヨウミツバチの野生化群が増加し、在来のハナバチ類を圧迫して減少させていることが確認されて"問題化しているようです。

　この他にキイロスズメバチも巣を襲撃するようですが、"ほんのわずかでも捕獲に手間取った場合には、それに気付いたニホンミツバチの集団に一斉に襲いかかられ、蜂球の内部で蒸し殺されてしまうことも多い"とあります。オオスズメバチのところでも"蜂球によって撃退されなければ"とあるのは、このことでしょう。


●ツマアカスズメバチが日本のスズメバチより厄介な理由

　対馬のツマアカスズメバチの話に戻ります。"長崎県対馬は、養蜂文化の伝承地で、希少なニホンミツバチの生息地として知られる"そうです。

　"昨年秋、ツマアカスズメバチの巣が５６カ所で確認され、すでに３０カ所ほどを撤去している"みたいですが、撤去はかなりたいへんなようです。

　高橋純一准教授によると、巣の位置は「日本のスズメバチであれば、高くても５メートルほど」であるのに対して、「ツマアカスズメバチは１０～３０メートルの高い木などに巣をつくる」というのが理由です。はしごでは届かず、「クレーン車や高所作業車が必要」という非常に面倒くさいことになっています。


●中国・韓国叩きはブーメラン…日本由来の外来種も外国で悪さ

　夕刊フジは"肺がんなどを引き起こす微小粒子状物質「ＰＭ２・５」にとどまらず、殺人バチまで飛来させるとは、はた迷惑な隣人だ"と締めていて、主に中国への非難を煽っているようです。ネットでは中国ではなく韓国への批判も出るんじゃないかと思います。

　ただ、このような外来種による問題は、中国・韓国以外のものでも問題になっている上に、日本が加害者というケースもあります。考えてみれば、当たり前の話ですよね。

　ここらへんでやりたい話がいくつかあったんですけど、読まれない話題だなと思って使っていませんでした。今回の話がよく読まれるようでしたら、そちらも処理しちゃいたいです。
(2017/10/06：この話は結局全然読まれなかったものの、後にアメリカを侵略した日本からの外来種マメコガネ(ジャパニーズ・ビートル)として投稿しました)


●ツマアカスズメバチに記者が刺される…何が問題だったのか？

2017/10/06：タイトルではわからなかったものの、記者はこうして外来種のスズメバチに刺された：日経ビジネスオンライン(庄司 容子 2017年9月1日)は、ツマアカスズメバチの話でした。この記者が刺された理由というのは、いろいろあります。

・一緒に見ていた関係者が「10メートル以上は離れたほうがいい」と忠告してくれるのに、好奇心に負けて木から5メートル前後の近くで見学。
・ツマアカスズメバチは巣によっておとなしい、群がるなど特徴を持っており、今回は「おとなしい巣」と言われていたのを過信した。
・「ブーン」と大きな音が耳元で聞こえてパニックになり、「近づいたらとにかく動かない」という対応の「イロハのイ」も当然のごとく忘れ、獅子舞のように頭を振り乱し、何とか避けようとしてしまい逆効果となった。


●駆除できるかも？対馬の新・ツマアカスズメバチ除去作戦が大成功

　ただ、私が紹介したかったのは、駆除が進んでいるという話です。対馬の住民が見つけた巣を取り除いた数は14年度は150個、15年度は259個と、このころはものすごい数でした。ところが、駆除件数は16年度は49個、17年度はまだ8個目と、2年前に比べて激減していたのです。駆除できなくなったのではなく、そもそも巣が減ったみたいですね。

　これは、春先の女王蜂の繁殖期に新しい作戦を採り入れた成果とみられていました。カルピスと水、ドライイーストを混ぜた液体を入れたペットボトルに穴をあけ、木の枝などにつるします。中身が反応して醗酵したにおいに誘われて、ツマアカスズメバチの女王蜂がペットボトル内で溺死するというやり方でした。

　繁殖の前の段階で殺していますので、前述の高いところに巣を作るという厄介な問題を克服。16年度は計2000個のペットボトルを住民に配り、少なくとも7000匹以上の女王蜂を駆除したと推定しているとのことでした。ただ、このやり方は他の種類のハチや別の虫も殺してしまう可能性があるのではないか？とも思いました。対馬ではなく、本州などにツマアカスズメバチが定着した場合、この対策を取れない地域があるかもしれません。


●対馬だけじゃなかった…山口県・福岡県などですでに見つかっている

2021/09/28追記：他の地域では同様の対策を取れないことがあるかもしれない…と書いていたら、対馬以外の地域でも確認されていたみたいですね。令和元年11月21日付けで、環境省_山口県防府市におけるツマアカスズメバチの確認についてというページができていました。さらに山口県以外でも見つかっているとのこと。ただ、まだ定着はしていないそうです。

＜外来生物法に基づき特定外来生物に指定されているツマアカスズメバチが、山口県防府市において本州で初めて確認されましたので、お知らせします。
スズメバチは巣の状態で見つかり、調査の結果、オス及びメスの成虫が確認されました。巣は既に焼却処理されていますが、オスの個体が確認されたことから、繁殖可能な新女王が周囲に飛翔した可能性があります＞
＜なお、ツマアカスズメバチは、国内では長崎県対馬市において定着が確認されています。対馬市以外では、これまでに九州本土及び壱岐島において、巣や個体が４地域（福岡県北九州市（平成27年９月）、宮崎県日南市（平成28年５月）、長崎県壱岐市（平成29年９月～11月、平成30年５月）、大分県大分市（平成30年11月）で確認されています。いずれも発見した巣や個体については防除を実施の上、周辺でモニタリング調査を行っており、現時点でこれらの地域において定着は確認されていません＞


【本文中でリンクした投稿】
　　■アメリカを侵略した日本からの外来種マメコガネ(ジャパニーズ・ビートル)

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