「日本企業は本当にすごいのか?」ということでいろいろまとめ。<提携銀行全ユーザーが被害のおそれあるのにサービス停止せず!>、<株主総会議決権で20年不適切集計、約1400社の議決で行使書を無効に>、<通帳を飲み込むATM!システム統合に19年のみずほ銀行が3度目の大障害>などをまとめています。
2023/06/12追記:
●150件もの被害相談を受けながら問題を隠蔽、補償も放置状態 【NEW】
●日本企業は本当にすごいのか?ドコモ口座のNTTドコモ、ゆうちょ銀行など
2020/09/14:NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を使った預金の不正引き出し問題は、日本を称賛する日本すごい!的な話から遠く離れて、むしろ悪い意味での日本のすごさを知らしめるような、ちょっと信じられないひどさの事件になりました。問題の発端もひどいのですが、事後対応がひどすぎるというのが、一番まずいです。
まず、これはセキュリティ面に大きな問題がありました。日本を代表する企業であるはずのNTTドコモが、セキュリティ面で大きな穴があるサービスを提供していたということです。あまり報道されていませんが、日本のIT企業でトップクラスであるNTTデータも、ドコモ口座サービスに絡んでいるようなのも気になります。
また、提携銀行でのセキュリティのずさんさが合わさって成立した犯罪であり、当然のことながら銀行側も問題。しかも、被害が出ている銀行は地方銀行だけでなく、これまた日本を代表していて政府系でもあるゆうちょ銀行も含まれています。やはり日本企業のレベルの低さを示す象徴的な事件でしょう。
●提携銀行全ユーザーが被害のおそれあるのにサービス停止せず!
ただ、私がよりひどさが気になったのは、いつも書いている事後対応。対応の遅さも気になったのですが、サービスを停止しなかった…というのが一番信じられません。新規のドコモ口座開設だけは、対応が遅いながらもすべての銀行で止めたものの、チャージは継続している銀行が多く、ドコモ口座の従来のサービスもそのままです。
「ドコモ口座」事件が特徴的だったのは、被害者が「ドコモ口座」を使っている人ではなく、むしろ使っていない人だったこと。さらには、ドコモユーザーですらない人を中心に狙われており、ドコモ口座と提携していたすべての銀行のユーザーが不正引き出しの可能性を心配しなくてはいけない状況でした。
であれば、これ以上の被害を防ぐためにただちにサービス停止すべきなのですけど、それをしていません。NTTドコモの丸山誠治・副社長は、「1日に1万3000件のチャージがある。それを急に止めるのは、お客様への影響が大きい」としていますが、それはドコモが儲けたいというだけ。全提携銀行ユーザーが迷惑しているのですから、そちらのドコモのお客様ではない多くの人の迷惑の方が大きいです。
その上で、被害の可能性がある全銀行ユーザーに対し、「本人の通帳やオンラインで口座明細を確認できる場合は、そちらの残高の取引履歴をチェックしていただくしかない」などといってるのですから舐めています。ドコモ口座と提携していたすべての銀行のユーザーは慰謝料請求したいくらいなのに、サービス停止せずに「自分で口座を確かめろ」というのはひどすぎでしょう。
(
「ドコモ口座」の問題は、ドコモと関係ないユーザーが危険にさらされ続けていること 9/12(土) 12:30配信 BCNより)
しかも、通帳を確かめた後にも引き出される可能性があるため、常に確認し続ける必要があります。本来でしたら一旦サービス停止をして、確実に本人確認する方法を作り上げた上で、不正口座が含まれている前提でドコモ口座の全ユーザーに改めて本人確認をしてから、サービスを再開すべきでした。
●セキュリティー対策支援企業社長「ドコモはすべて停止すべきだ」
この問題でドコモを擁護する人はあまりいないとは思いますが、「そこまでする必要はないのではないか?」「素人だから悪いと思うだけでドコモの対応はセキュリティの専門家からすると妥当ではないか?」という反応も、ひょっとしたらあるかもしれません。ただ、セキュリティの専門家からもドコモの対応を否定する声が挙がっています。
まず、専門家ではない話からですが、被害者の方は当然憤りを感じていました。
ドコモ口座で被害の男性「サービス停止しないのは異常」 11万円なくなり、慌てて銀行口座解約 毎日新聞2020年9月12日 22時04分(最終更新 9月12日 23時25分)という記事が出ています。この人は被害を訴えてもまともに対応してもらえなかったので、ここらへんでも事後対応の悪さが出ていますね。
一方、専門家の話は、
ドコモ口座、15行なお稼働 被害額2000万円に拡大 日本経済新聞 2020/9/11 20:46に出ています。ここでは、ドコモの競合である通信大手幹部も「サービスを全面停止しなかったのは驚きだ」とコメントしていました。
上記発言はライバル企業だからかもしれませんが、企業のセキュリティー対策を支援するS&Jの三輪信雄社長も辛辣。「被害をおそれる人はこまめに通帳記入するか、ネットバンキングで残高を確認し続けるしかない」という理不尽な負担の多さを指摘した上で、「ドコモは(問題のサービスを)すべて停止すべきだ」としていました。
関係者によると、セキュリティー対策が万全との理由でドコモ口座の停止に同意しない銀行もあるということで、ドコモ口座の停止に同意しない銀行も問題ですね。銀行口座からドコモ口座に入金されると、銀行は手数料収入を得られるため、こちらも要するに「儲けたい」ということでしょう。日本企業のモラルの低さと強欲さがはっきりと見えた問題で、私もここまで日本企業が腐っているとは予想できませんでした。
●ゆうちょは他でも不正続出でかんぽ不正も ペイペイやセブンもひどい
2020/09/24:
ゆうちょ銀行、決済10社と連携停止 ペイペイなど5社でも被害―不正出金:時事ドットコムは、ドコモだけの問題ではなく、地銀の問題ですらないとわかる記事。ゆうちょ銀行は、ソフトバンク系の大手「PayPay(ペイペイ)」など、即時振り替えサービスの提携先12社のうち、ドコモ以外にも5社で被害が発生していると発表しています。
これらの被害がすべてドコモ口座なみにひどいセキュリティだったわけではないかもしれません。ただし、名前が出たソフトバンク系のペイペイは、スマホ決済サービスとしては真っ先に大規模な問題を起こしたところで、このペイペイのときにもやり方がずさんだったと言われているとことです。
また、セブンイレブンというこれまた日本最高クラスの企業が、7payで大問題を起こし、サービス停止にまで至っていました。今回ドコモがあまりにもあれなのですが、セブンイレブンも非常に対応が悪かった企業。日本を代表する企業がサービスだけでなく、事後対応でもボロクソになっています。
あと、企業の問題ではないのですが、上記の記事では、政治家の対応も気になりました。自民党の高市早苗総務相は閣議後記者会見で、「不審な出金がないか幅広く確認しないといけない」と、預金者に警戒するよう呼び掛けたらしいんですよ。国民としては、サービス提供側を一番問題視してほしいんですけどね…。
それから、ゆうちょ関連では、後にデビットカードでの被害も判明。さらに言えば、ゆうちょ系としては、かんぽ不正もありましたよね。そして、このかんぽ問題では、NHKへ不正を報じないように圧力をかけていたというひどいことになっており、ここらへんは政治も多少絡んでいるところ。どこもかしこもひどいです。
●東証が終日売買停止、他のアジアでも考えられないようなトラブル
2020/11/25:東京証券取引所が2020年10月1日に終日売買停止…という大きなトラブルを起こしました。とはいえ、東証は過去にもトラブルを起こしており、海外でも結構あると思っていたんですよ。ところが、海外では「近年のアジアで最大のトラブル」といった感じで報じられていたみたいですね。つまり、日本だけがひどいようです。
で、この話があったニュースを…今探してみたのですが見つからず、私のうろ覚え情報だけになってしまいました。思い出してみると、この日は珍しくテレビニュースを見ていた日でしたから、テレビ情報だったと思われます。とりあえず、ネットの場合は、
国際金融都市の実現に冷や水、東証停止に海外も失望 - Bloombergなどが、海外絡みの報道でした。
菅義偉政権は、中国からの統制が強まる香港に代わるアジアの国際金融拠点の設立を目指しており、菅首相は、就任直前のインタビューで「実現したい」と強調していたものの、到底そんなレベルじゃねーぞといった指摘が出ていたそうです。
<第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、世界情勢が時々刻々と変化する中で市場がシステム障害によってダウンしてしまうと「目隠しをされたような状態になってしまう」と指摘。「アジアの金融センターとしての地位を築こうとしているタイミングで、冷や水を浴びせられた形だ」と話した>
なお、以下のような別の指摘があるように、「国際金融拠点」で重要なのは、そもそも税制などの問題の方が大きいんですよね。政治家や一般人はこれを理解していません。実を言うと、成功している先進国の「国際金融拠点」はタックスヘイブン的な政策を取っているところもあります。
<そもそも日本が国際金融都市になるための資質に疑問を呈する声もある。モーニングスターのアナリスト、マイケル・マクダッド氏は、日本が直面しているのは「税金や東京が官僚主義的でグローバルビジネスに必ずしも適していないという評判」など今回の売買停止よりも「もっと大きな問題」だと指摘した>
●株主総会議決権で20年不適切集計、約1400社の議決で行使書を無効に
2020/12/30:東芝の株主総会を巡り、議決権行使の集計を受託した三井住友信託銀行が適切に事務処理せず、一部の株主の意見が反映されない事態が起きたことが、2020年9月に判明していました。書類が期限内に届いたにもかかわらず、集計から外されていたといいます。これは、作業を早く進めるため郵便局から本来の到着日よりも1日早く行使書を受け取っていたことが関係していたようです。
この「1日早く」の関係で、期限の最終日に届いた分は、期限後に到着したものとして無効扱いにしていた模様。じゃあOKなのか?と言うと、民法は郵送などでの意思表示について、相手への到着時点で効力が発生すると定めており、三井住友信託は期限内に着いた行使書を無効とするのは不適切だと認めています。この不適切な処理は20年間にわたって続いてきたものだというものの、企業や投資家には知らせていませんでした。
以上のような説明を見る限り、わざとやったわけではなさそうなのですが、非常にずさんだとは言えます。会社法で保障する株主の権利を損ないかねないと記事では指摘していました。株主の意見反映で最も重要なものが扱われなかったというのですから、本来もっと大きく批判されて良いもの。選挙で投票が数えられなかったようなものですからね。
(
三井住友信託、議決権集計1000社で誤り 総会議決に疑義も(2020年9月23日 19:00 (2020年9月24日 5:23更新) 日経新聞)より)
また、三井住友信託銀行が東芝の株主総会で期限内に届いた議決権行使書の一部を無効としていた問題で、みずほ信託銀行も、371社で同様の処理をしていたと発表。両行とも子会社の日本株主データサービスに委託していたためです。これで両行が受託する計約1400社の株主総会の決議で株主の声が適切に反映されなかったという、ひどすぎる話が判明してしまいました。
(
みずほ信託も不適切集計 371社の株主総会議決権: 日本経済新聞 2020年9月24日 15:45 (2020年9月24日 17:23更新) より)
●通帳を飲み込むATM!システム統合に19年のみずほ銀行が3度目の大障害
2021/03/02:みずほ銀行で2021年2月28日にシステム障害が発生し、過半数(報道によっては8割とも)のATMでトラブル。ATMに挿入したキャッシュカードや預金通帳が出てこなくなるというたいへんな事態になりました。「4時間以上待たされているのに誰も来ない」という人もいたそうです。みずほ銀行はこうしたトラブルの常習犯。過去に2度処罰を受けています。
<2002年4月の発足時と11年3月の東日本大震災の直後にシステム障害を起こした。とくに東日本大震災のときは被災者への義援金の振り込みが原因となり厳しい批判を招いた。当時はコンビニATMでも預金をおろせず、不都合が生じた預金者も多数出た>(
「4時間待っても誰も来ない」 みずほATM障害で混乱: 日本経済新聞より)
<第一勧業、富士、日本興業の3銀行のシステムを「みずほ銀行」として一本化するシステム統合で、統合の方針決定が紆余曲折し、システム統合のスケジュール・統合作業が遅れて、予定していたシステム稼働テストの開始がずれ込み、十分な見極めができないまま開業したため、開業初日から現金自動預入払出機(ATM)の障害が発生、さらに公共料金の自動引き落としなどの口座振替に遅延が生じるトラブルが起きた。トラブル発生後も対応が遅れるなどで、口座振替の遅延が拡大、大混乱となり最大級の大規模システム障害に陥った>
(
失敗事例 > みずほフィナンシャルグループ大規模システム障害より)
また、みずほ銀行はシステム統合にトラブって、新システム完成に19年もかかり、なかなか完成しないスペイン・バルセロナの教会にちなんで「IT業界のサグラダファミリア」とも呼ばれました。今回のATM問題では人為的なミスが重なったことに加えて、過去にも大規模トラブルを2度やっていたのにも関わらず、大規模なトラブルが起きたときの対応を全く想定していなかった感じで、過去の失敗について全然反省していなかったようです。
(2021/03/04追記:その後の3月3日にも別の理由でATM29台が障害。2月28日と同様にキャッシュカードや預金通帳が戻ってこないケースが発生していました)
<ATMにカードや通帳を入れたところ、ストップして全てが復旧するのに30時間かかった。カードや通帳が取り出せなくなる事象が約5200件発生>
<ATMには、機械の横に緊急時にかけられる電話がある。通常、カードが抜き取れなくなった際などに電話すると、警備会社の警備員が駆けつけ、すぐに状況を調査。本人と確認できれば、カードを返すという手続きが取られる。問題は、その頼みの綱となる電話がつながらなかったことだ。「電話に対応できないほどの大量の事象が発生した」(藤原頭取)からだという>
(
みずほ銀行のATM障害は、起こるべくして起きた:日経ビジネス電子版より)
●150件もの被害相談を受けながら問題を隠蔽、補償も放置状態
2023/06/12追記:最初のときに書いていたドコモ口座問題のときのゆうちょ銀行ひどすぎ!というブックマークが出てきました。今さら…ということではあるのですけど、一応紹介しておきましょう。
3年前から被害→公表せず拡大 ゆうちょ銀また顧客軽視:朝日新聞デジタル(藤田知也 井上亮2020年9月24日)という記事です。
<24日公表のゆうちょ口座での被害約380件のうち、新たな増加分は約250件。このうち約100件は、今月に入って顧客から連絡を受けたものという。
残る約150件は、2017年7月から昨年までにゆうちょ銀のコールセンターや郵便局で被害相談を受けながら、最近になって初めて集計したものだ。しかも、補償を終えたのは約50件だけ。約100件は半年以上が経っていながら補償さえしていなかった。なかには3年前後も被害者に補償してこなかった例があるとみられるという。>
記事では、、ドコモ口座での被害が表面化しなければ、そのまま放置されていた可能性もあると厳しい見方。実際、ドコモ口座を通じた被害を自ら公表し、顧客に注意を呼びかけた地方銀行とは違い、ゆうちょ銀は被害の公表に後ろ向きな姿勢が目立ったとのこと。顧客軽視と言われるのは仕方ないですね。
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