日本の病院・医療の話をまとめ。<日本の医療レベルは高い?低い?アメリカの病院と30日死亡率を比較した結果>、<入院期間がアメリカの3倍もある日本、これはメリット?デメリット?>、<日本は病床数世界一なのになぜすぐ医療逼迫?日本と海外との違い>などをまとめています。
2023/01/20追記:
●日本は病床数世界一なのになぜすぐ医療逼迫?日本と海外との違い 【NEW】
●日本の医療レベルは高い?低い?アメリカの病院と30日死亡率を比較した結果
2019/09/23:全国の大多数の医療施設から手術症例を収集し、信用性の高い巨大データベースを構築しているNCDというものがあるそうです。このNCDというのは、「National Clinical Database」の頭文字をとった略称です。英語を見ると、要するに国内の医療データベースってことみたいですね。
日本の医療レベルはそれほど高くないのではないか?と私は疑っていましたが、このデータによるとむしろ良いとのこと。これは、
日米医療施設を比べて分かった「30日死亡率」衝撃の真実!:日経ビジネス電子版(宮田 裕章 慶応義塾大学 教授 2019年6月5日)であった話です。
この記事では、米国の大規模医療施設と日本の医療施設のほぼ全数の臨床データを比較しています。膵頭十二指腸切除、膵臓低位前方切除、右半結腸切除の手術において、「2.57対1.35」、「1.07対0.44」、「3.47対1.20」とすべてで日本の方が死亡率が低くなっていました。
ただ、記事では「米国と比較して圧倒的に優れているとは必ずしも言えません」と、釘も刺す部分も。日本は在院期間が長く、術後30日以内に亡くならなくとも、その後の入院期間中に亡くなるので、在院死亡はこの値の2倍ほどになるためとの説明。アメリカでは逆に退院後に亡くなっている隠れた事例があるのではないかと思うものの、そこらへんまでのデータがなく「確かなことは言えない」といった意味なのかもしれません。
●入院期間がアメリカの3倍もある日本、これはメリット?デメリット?
3つの病気だけのデータ、しかも、かなり特殊な手術だけのデータというのも気になったのですけど、とりあえず、これらについて言うと、在院日数はどの施術の場合も、日本が軒並み約3倍に達しているというのも特徴となっています。よく言われるように日本は入院が長すぎるのです。
在院日数が長くなると何が問題なのか?と思うかもしれません。思い浮かぶのは、お金がかかるということ。ただ、これは税金の浪費という金銭面以外でもデメリットがあります。「ADL(Activities of Daily Living)」と呼ばれる日常生活動作のレベルが下がってしまうという問題です。
記事によると、若い人でも30日も入院していれば足腰が弱くなります。これが高齢者の場合なら、歩行が困難になるケースすらあるとのこと。病院が新たな病気のようなものを作る原因になっているわけです。また、過去の記事では、病院だと感染症などのリスクがあるため、入院期間は短い方が望ましいとも指摘されていました。
ただし、アメリカもとてもベストとは言い難い入院日数。米国では保険者からのプレッシャーによって退院が早まる傾向にあり、それにつれて再発・再入院率が高くなってしまいがち…。各方面の専門家とディスカッションを重ねたところ、入院日数については米国と日本の中間辺りが、医療の質としてベターではないか、という結果を得た…と記事では書いていました。
●本当に日本の医療レベルは高いのか?ランセット掲載論文の評価
ちょっと短かったので、日本の医療レベルについての別のニュースを検索。
日本の医療の「質」は世界最高レベル?最新の国際調査で発表 | ハフポスト(2017年06月29日 15時06分 JST 市川衛 医療ジャーナリスト、京都大学医学部非常勤講師)という記事が出てきました。
保健医療の質の高さやアクセスの容易さを世界195か国で調べ、ランキング化した論文が有名な医療系の雑誌Lancet(ランセット)に掲載されたことがあるそうです。論文によれば研究チームは、「もし適切に治療されていたら防げたはずの死を、どのくらい防げたか」を調べることで、医療の質を評価したとのこと。
例えば、日本で昔死者の多かった結核は、その後治療が進歩し、かなり死亡することは減りました。一方で、結核に対して十分な治療を行えるシステムが整っておらず、命を落とすことが珍しくない国も…。こうした場合、結核に関しては日本のほうが「医療の質が高い」といえる…といった考え方。筋が通っていますね。これを32種類の防げる死因で比較したそうです。
結果、日本は世界195か国中で11位に。この時点で上位ですが、日本の上には小さい国があり、比較としては不適切。日本と人口規模や社会状況が近いG7(先進7か国)で比較すると、アメリカは35位、イギリスは30位などで、G7諸国の中では日本が最上位。日本の医療の質は「世界最高レベル」と評価されているようです。
●日本は病床数世界一なのになぜすぐ医療逼迫?日本と海外との違い
2023/01/20追記:このページとの関係は少しだけなのですが、
神戸新聞NEXT|5類に変更で、医療ひっ迫が改善するわけではない 豊田真由子が解説、新型コロナなぜ分類変更が必要なのか?という解説記事の話を追記。ここで日本と海外との病院事情の違いに関する話が出てきたためです。
この解説を書いていたのは、豊田真由子さんという方。秘書パワハラが問題になった自民党議員と同姓同名じゃん!と思いながら読んでいて、最後にプロフィールを見たらなんとご本人でびっくり…。そういや厚生労働省にいた元官僚でもありましたね。バリバリの専門分野なわけです。
記事で解説されていたのは、政府が新型コロナウイルスを2類から5類に変更する予定…としている理由。「変更されるとこうなる」といった説明があるのに理由説明がないのをフォローする…という真っ当な解説記事でした。解説内容も丁寧なもので、とてもパワハラ議員と同一人物とは思えません。そもそも優秀さとパワハラは関係ないので、普通にある話なんですけど…。(そういえば、ブラック企業ワタミから自民党議員に転身した渡邉美樹さんも「優秀」評価で有名でした)
<感染症法上の分類は、その感染症の「感染力」や、罹患した場合の「重篤性」、その感染症に対する国民の免疫の獲得の程度などを総合的に評価して決められます。また、WHOのガイダンスでは、パンデミックを起こした感染症のリスクを評価する指標として、(1)感染力(伝播性)、(2)重篤性(疾病としての重症度)、(3)医療や社会経済への影響、が示されています>
<「重篤性」の観点から見ると、ウイルスの性質の変化や、ワクチン接種や感染による自然免疫等によって、重症化率や致死率は低下してきており、他の感染症の致死率と比較しても、その点においては、「5類」に当てはまるといえます。
(※)2021年夏の第5波において、新型コロナウイルス感染症の日本での重症化率は、60歳未満:0.56%、6-70歳代:3.88%、80歳以上:10.21%、致死率は、60歳未満:0.08%、6-70歳代:1.34%、80歳以上:7.92%、そして、2022年夏の第7波では、重症化率は、60歳未満:0.01%、6-70歳代:0.26%、80歳以上:1.86%、致死率は、60歳未満:0.00%、6-70歳代:0.18%、80歳以上:1.69%
( 厚生労働省アドバイザリーボード資料(2022年12月21日))
(※)主な感染症の致死率
(1類) エボラ出血熱:ザイール型で約90%、スーダン型で約50%、天然痘:約20~50%
(2類) 鳥インフルエンザ(H5N1):約50%、結核:約15%、SARS:約10%、ジフテリア:約10%
(3類) コレラ:約2%
(4類) デング熱:約2.5%、マラリア:約10%。狂犬病:発症した場合は、ほぼ100%
(5類) 通常の季節性インフルエンザ 60歳未満:0.01%、60歳以上0.55%>
<なお、3類・4類を飛ばして、5類となる理由は、3類・4類は、動物を介して、あるいは、飲食物を摂取すること等によって感染するといった特殊性を持つ感染症のカテゴリーであるためです>
「重篤性」以外に全員入院などといった特殊対応も減り、正常化に近づきつつあると指摘。依然として、オミクロン株は感染力が非常に強い、広く一般に使用できる治療薬がまだ無い、長引く後遺症があるなど、いくつか注意すべき特殊な点があるものの、全体に5類に近づいていきていることを指摘していました。
この5類変更に関連して、豊田真由子さんは「新型コロナウイルスを5類にすれば、医療ひっ迫が改善する」については否定的に予想しています。以前からネットで言われていた「新型コロナウイルスを特殊対応しているから医療逼迫が起きる。特殊対応をしなければ良い」という主張を否定するものだと言えますね。
理由について言うと、ちまたで言われている「新型コロナの患者が入院できる医療機関が、特定、1類、2類の指定医療機関に限られているから、受け入れる病院が少ない」という説が、そもそも事実ではない嘘であるということ。というのも、今すでに特定、1類、2類以外多数の医療機関で入院できているため。東京なんかは、特定、1類、2類以外の方が圧倒的に多いみたいですね。
<感染症法上、「緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医療機関以外で知事が適当と認める医療機関に入院させることができる」(26条2項で準用される19条1項但書き)とされており、実際に指定医療機関以外の病院で新型コロナウイルス感染症の患者を入院させています。
例えば、東京都には、指定医療機関は37病院(特定:1病院,1類:4病院,2類:32病院)ですが、実際には142病院が「新型コロナ感染症入院重点医療機関」に、84病院が「新型コロナ感染症疑い患者受入協力医療機関」に指定され(一部重複あり)、新型コロナ患者の受け入れ病院となっています。(2022年10月1日時点)>
では、なぜ日本では医療逼迫が起きやすいのか?というのが、前述した「日本と海外との病院事情の違い」でした。これは、私が以前からずっと不思議だった「日本は患者数が少ない上に、病床数が多いにもかかわらず、医療逼迫が起きやすい」と関連するものでもあります。その分メリットもありそうですが、日本は小さい病院が多すぎるためだという説明でした。
<「医療のひっ迫」は、日本では、規模の小さい多数の病院に、限られた医療資源(医療従事者、病床、設備など)が分散されてしまっていることに、根本的な要因があります。
日本は、人口当たりの病床数は世界一ですが、人口当たりの医師の数は少ない(OECDの38加盟国中、下から4番目)という状況にあります。病床や人材や設備が足りないといった理由から、新型コロナ患者を受け入れていない病院も多く、それは、分散とキャパシティの不足といった構造的な問題です。
そして、病院の大きな懸念は、「クラスターが発生して、他の患者さんが亡くなったり、医療スタッフが感染して、人手が足りなくなり、現場が回らなくなること」です。こうした点は、分類を変更しても解決しません>
私はこれを読んで、地方での病院不足・医師不足や産婦人科不足などのことをなんとなく思い出しました。地方や産婦人科などで医師が不足する理由は、単純に医師が足りないというよりは偏りが生じるため…と確か言われていたんですよね。同様に人気のところに医師が集中してしまい、医療逼迫が起きやすくなっているのかもしれません。
ここに追記した理由は以上ですが、「発熱外来」を設置している病院が少なかったことも記事では指摘。これにもネットでは「新型コロナウイルスに特殊対応しているから」説が出ていますが、基準は2021年6月に緩和済みでありこの説では説明不可。それより「もし感染したら困る」という病院側・現場側の事情が主な理由との説明でした。
ただし、こちらについては、5類への変更で改善との予測。なぜか?というと、5類となることで、これまでのように発熱外来を拒否することが難しくなると考えられるため。「2類だから拒否」という大義名分がなくなってしまうということみたいです。なので、外来における医療ひっ迫だけは改善が見込めるとの予想でした。
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