やっぱり、納得できません。
フランス下院、ブルカ禁止法案を可決 最大野党は棄権 産経新聞 2010/07/14によれば、フランス国民議会(下院)は13日午後、イスラム教徒の女性の全身を覆う衣装ブルカやニカブなどを公共の場所で着用することを禁じる法案を賛成335、反対1で可決したそうです。
採決では、最大野党の社会党や共産党が棄権したものの、ブルカやニカブの強制着用自体には反対だそうです。また、上院は9月末に通過する見通しとのことです。
政府諮問機関の国務院は、表現や信教の自由を規定した憲法に抵触する恐れがあるとして、法律による禁止を見送るよう勧告していたようですが、結局今回の可決となりました。
イスラム衣装の着用禁止と反米・反軍・反キリスト教への批判でも書いていますけど、私はどうもこれに納得が行きません。
フランスの議員や国民の感情がイスラム教徒憎しになって、差別を行っているような気がしてなりません。
もう1つそういった思いを強めるニュースが、
妻にブルカを強制する者には国籍与えない フランス移民相 産経新聞 2010/02/03です。
記事によれば、男性はフランス人女性と結婚したことなどを理由に国籍を申請していたものの、男性が妻にイスラム教の衣装を着るよう強制し、顔をさらした状態での外出も禁じていたことを問題視され、フランス国籍の付与を拒否されました。
これについて、ベッソン移民相は「政教分離原則と男女の平等原則を踏みにじった」と述べています。
また、似たようなもので、
女性と握手拒否、国籍認めず=「同化していない」と判断-仏 時事ドットコム 2010/07/10というものもあり、フランス人女性と結婚したモロッコ出身の男性が、国籍取得を希望したものの申請を拒否されました。
この男性は審査の過程で「信仰に反する」として女性職員との握手を拒んだほか、妻も夫以外の男性がいる場で顔をさらすことを拒否したため、「共和国の価値、とりわけ個人の自由と男女平等の原則と相いれず、定められた同化条件を満たしていない」「フランスの社会習慣に同化していない」と判断しての拒否となりました。
これら2つは国籍取得の話ですので、ある程度フランスの主張は理解できます。
日本でも日本風の名前を必須としているはずですし、国籍取得の際にテストを課す国もあったはずです。そこらへんは独自のルールを設けることは大いに結構だと思います。
むしろ「国籍」とは何かを考えていくと、安易に許可せず、厳格なルールを持っていた方が良いと思います。
しかし、フランスのこれらの件は、やはり根底にイスラム差別があるものと思われます。
そもそも「政教分離」であるならばイスラム教的な慣習や服装をしても構わないわけで、「宗教」を理由に国籍取得を拒否しているのはフランス政府の方です。
先程も書いたように私は何らかのルールを持って国籍取得を拒否するのは当然だと思っていますので、こんなめちゃくちゃな理由を付けなくても良いのにと思います。
また、「男女の平等」についてもやはりおかしく、女性を尊重しているのならばその女性の言い分を聞き入れれば良いわけです。
無論脅されていたり、だまされたりして、本当のことが言えないというのは、女性に限らずあります。
詳細はこの記事だけでは判断できませんが、女性の意見を認めずに男性に強制されていると決めつけて、「男女差別」しているのはこれまたフランス政府の方に見えます。
記事でも共和国の価値として「個人の自由と男女平等」という言葉が出てきていますが、フランスの国旗の青は自由、白は平等、赤は博愛を表すと言われています。
これらの出来事からフランスに自由と平等と博愛を感じろと言われても、私にはどうしても感じることができません。
むしろ不自由や不平等や愛情の無さを感じてしまうのは、私だけではないだろうと思いつつ、今日はここで終わりにします。
(2014/5/25追記:
イスラム衣装の着用禁止と反米・反軍・反キリスト教への批判にいただいたものですけど、たぶんこちらの記事も踏まえていると思われるコメントをいただきました。もう一つの方にも同じものを掲載しています。昨日書いた
チェーン店でハラルミート使用でイギリスがパニック その理由は?でリンクしたせいだと思います。
"古い記事でしたが、たまたまリンクが上がっていたので、関連記事と一緒に読みました。
フランスは、今は違うかもしれませんが、少なくとも1980年代くらいまではキリスト教の聖人の名前を子供につけるという法律があったはずです。だから、子供に聖人とは違う名前をつけたい親が裁判に訴えたとかいう事件もありました。
今はさすがにそれはないだろうと思うのですが、フランスはカトリックの国で、カトリックの国はキリスト教中心の国の中でも特に保守的です。イタリアやアイルランドは20世紀後半になっても離婚が認められていませんでした。アイルランドはいまだに中絶が認められていない(レイプで妊娠しても認められないので、イギリスへ行ってやる)。
なので、フランスのこの手の問題のときは、カトリックの国だから保守的だ、ということは念頭に置いておいた方がよいと思います。
一方で、フランスやイタリアは共産党や社会党が強く、結局、カトリックの腐敗に対抗できるのがマルクス主義しかなかったという事情もありました(最近はあちらも左翼が弱くなっているようですが)。
フランスもイタリアも最近は右翼が力を持っているそうですが、カトリックの国の右翼はカトリック万歳なわけで、イスラム教徒への差別や制限もそれと関連があります。
ちょうど、日本の右翼が皇室の意向とは正反対の形で天皇を持ち上げているのと似ているかもしれません。
この記事の最後にある「アバター」の汎神論ですが、キリスト教は一神教なので、基本的には汎神論とは相いれない宗教です。しかし、現在では自分の宗教の考え方だけが唯一絶対正しいなどと思う宗教者は少なく、汎神論的映画がヒットしたくらいでビビるキリスト教関係者は少ないはずで、ここに書かれているようなキリスト教関係者は「一部の」非常に保守的な人々ということでしょう。この一部の人たちでキリスト教全体を考えるのは間違いだと思います。ただ、上に書いたように、国民が右傾化して右翼が力を持つと、こういう極端な保守派が力を持つので要注意です。フランスのプルカ禁止で、なおかつ、反対の社会党と共産党が棄権というのはヤバイ感じがしますね。
また、イタリアではマフィアとキリスト教の癒着があったり、北アイルランドのカトリックとプロテスタントのテロ合戦には背後に両方の教会があったりと、キリスト教会と暴力というのは実は深い関係の歴史があります(それに関する記事もありましたね)。そもそも十字軍はイスラムへの侵略戦争ですから"
フランスの「キリスト教の聖人の名前を子供につけるという法律」には驚きました。
不自由と不平等の国 フランスは古い話だったのですっかり忘れていましたが、その後やった
無神論者世界一の国は? 日本・中国・フランス・ドイツ・チェコを見ると、フランスってキリスト教国ではむしろ無神論者が多い国なんですよね。
チェーン店でハラルミート使用でイギリスがパニック その理由は?と同じく宗教に熱心なわけじゃないけどイスラム教徒だけは嫌いなのか、一部の保守派の声が大きいのか?
あと、アイルランドのテロが宗教絡みというのも知らなくて驚きましたし、そもそもテロがあるという認識だけで、「テロ合戦」という認識はありませんでした。ここらへんはもうちょっと読んでおくべきかも)
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