2014/7/8:
●アメリカ人が信じるエイズ否認主義「原因はHIVウイルスではない」
●エイズ否認主義を後押ししたのは、非専門家の知識人たちだった!
●ワクチンができないのはエイズの原因がウイルスではないから?
●なぜかエイズ患者自身が否認主義を好む また宗教右派もこれに同調
●「否認すること」自体が魅力的、スティーブ・ジョブズ氏もハマる…
●アメリカ人が信じるエイズ否認主義「原因はHIVウイルスではない」
2014/7/8:私が読んだのは、
「エイズの原因はHIVウィルスではない」という似非科学はいかに生まれ、不幸を招いたのか/a>([橘玲の世界投資見聞録] ザイオンライン 2014年6月12日)という記事。この記事のベースとなっているのは、エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇
だそうです。
詳細は略しますが、「エイズの原因はHIVウィルスではない」という説を広めたピーター・デューズバーグ教授は、分子生物学者の権威でした。しかし、彼は別にエイズについては研究していたわけではなく、エイズの専門家のなかにエイズとHIVの関係を疑う者はいませんでした。
エイズの専門家らは最初、デューズバーグの異説に徹底して反論し、それでも彼が考えを変えないと似非科学として無視しました。科学的には価値の無い説なのです。
しかし、このエイズ否認主義は急速に信奉者を増やしていき、幸いなことに日本ではまともに扱われていないものの、アメリカを中心に未だに勢力を保っているそうです。私もアメリカでは多いと以前聞いた覚えがありますね。
「エイズの原因はHIVウィルスではない」とは異なりますが、
アメリカ人が信じる陰謀論 携帯電話でがん,代替医療を圧力で禁止などでもエイズ絡みの話が一つありました。「CIAは予防接種を装ってアフリカ系アメリカ人をHIVに感染させている」というものです。
●エイズ否認主義を後押ししたのは、非専門家の知識人たちだった!
この疑似科学的な説に大きな力を与えたのは、困ったことに知識人だったのです。専門家ではないんですけど、知識があると思われていた人たちなんですね。驚くことに科学者も含まれていたようです。
それまで実績を残しており、かつ人望もあったデューズバーグ教授を知る「専門家」ではない「良心的知識人」らは、エイズ否認主義を直接唱えはしなかったものの、もっとこの説について議論すべきだと批判しました。
とはいえ、エイズが感染症であることは、コンドームの使用や注射針の交換で感染・発症率が大きく下がることから医学的(統計学的)に証明されているそうです。そうであるのなら、議論するまでもないことでしょう。
ところが、擁護派の科学者は、自分自身が科学者であるにもかかわらず、「統計的な説明では完全な証明になっていない」として、統計を無視しました。こうなると、悪質なところまで行っていますね。
●ワクチンができないのはエイズの原因がウイルスではないから?
こういった疑似科学は体に関わる話ではよく出てきます。お医者さんは頭が良いはずなのですけど、トンデモ医学説を支えているのもまたお医者さんが多いです。また、専門家は専門分野以外は素人であるために正しい判断をくだせないというのもよくある話。エイズ否認主義はこちらの力が強そうです。
この非専門家ゆえの問題というのは、「ワクチンができないのはエイズの原因がウイルスではないからだ(すくなくともその可能性はある)」というエイズ否認主義の主張にも関わってきます。
"レトロウイルスの構造について正確に理解している者など、専門の研究者以外には、科学者のなかにもほとんどいない"ため、変異が早い、正常細胞と一体化してしまうなどの理由でワクチンが開発されていない当然の理由も知らないという説明でした。
これを読んでいて思い出しましたが、風邪も原因となるウイルスや細菌が多量にあるために、ワクチンが作られていません。彼らは風邪の原因もウイルスじゃないと否定するんですかね?
●なぜかエイズ患者自身が否認主義を好む また宗教右派もこれに同調
とはいえ、「エイズの原因はHIVウイルスではない」説が勢力を保っているのは、一般人に人気があるためだと考えざるを得ません。記事によれば、奇妙なことに"エイズ否認主義を切実に求めるのは、当のエイズ患者やHIV陽性と判定されたひとたち"のようです。
彼らが支持する理由の一つとして、HIV陽性と判定された人たちはエイズになったことを認めたくないので、「エイズとHIVウイルスは関係ない」という説に魅力を感じるのでないかというものが出されていました。
これが非常に困ってしまうのは、エイズの治療法を否定してしまうことです。エイズ治療薬を「毒物」扱いすらします。これは日本でもよく見られるパターンで、薬には必ず副作用があるのに副作用だけを強調して薬が逆効果だと主張するものです。日本だと、
浜六郎医薬ビジランスセンター理事長のことを思い出しました。
あと、"エイズは同性愛や放埓な性生活、ドラッグなど不道徳な生活に対する神の罰だと考えている""キリスト教原理主義などの頑迷な保守派"もこれに同調するようです。そして、医学的な感染対策にも反対意見を述べるというのですから驚きです。
●「否認すること」自体が魅力的、スティーブ・ジョブズ氏もハマる…
また、「否認主義」は「否認すること」が目的であり、実際的な問題は彼らにとっては優先順位が低いのでは?ともありました。この話は陰謀論とセットになっていましたけど、世の中には本当陰謀論が大好きな人たちが多いらしいと気づいてうんざりしていましたので、わかる話だなと思います。科学的にどうこう言うよりも、否認する説が心地よいから飛びつくのです。
記事を読み終えてWikipediaを見ていると、専門的には「エイズ否認主義」という言葉ではなく「代替仮説」の一つとして紹介されて、批判されているようです。
代替仮説は結構危ないことになることがありますね。
スピリチュアルに頼ったすい臓がんのスティーブ・ジョブズ、マクロバイオティックも試すで書いたように、アップルのスティーブ・ジョブズさんは現代医療を疑い、代替医療として食事療法を実践しました。
スティーブ・ジョブズの「Stay foolish」の意味とヒッピー文化なども関連する話なのですけど、彼は仕事では「否定すること」に主眼に置いてきて成功してきたのですが、すい臓がんにおいて果たしてそれは適切だったのか?という話です。これもまた「否認すること」そのものが魅力であった例だと言えそうで、「エイズ否認主義」に限らず日本でも警戒しておくべきことだと思われます。
【本文中でリンクした投稿】
■
アメリカ人が信じる陰謀論 携帯電話でがん,代替医療を圧力で禁止など ■
イレッサ訴訟と浜六郎 副作用のミスリードと「薬害ゴロ」批判 ■
スピリチュアルに頼ったすい臓がんのスティーブ・ジョブズ、マクロバイオティックも試す【関連投稿】
■
ジョブズ役の俳優、役作りでフルータリアンになり膵臓をダメにする ■
スティーブ・ジョブズの「Stay foolish」の意味とヒッピー文化 ■
医療・病気・身体についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|