2014/7/10:
●そもそもAO入試って何? どこの説明もわかりづらい
●要するに「学力だけではない人物重視」の選考方法?
●小保方晴子を生んだAO入試の問題点
●学力軽視で大学に入れたら、勉強についていけなくなるのは当たり前
●AO入試組は一般入試組より学力がも高いという反論も
●「学ぶ意欲」重視で選んだはずのAO入試組の退学率はなぜ高いのか?
●学力を軽視し退学率も高いAO入試に意味はあるのか?
●そもそもAO入試って何? どこの説明もわかりづらい
2014/7/10:AO入試とは、アドミッションズ・オフィス入試の略であり、アドミッションズ・オフィスとは「入学管理局」という意味だとのこと。しかし、これだけだと何のことだかさっぱりわかりません。
さらに、一般的に言われるAO入試の説明というのもわかりづらいんですよ。例えば、
Wikipediaでは、「出願者自身の人物像を学校側の求める学生像(アドミッション・ポリシー)と照らし合わせて合否を決める入試方法」となど説明されています。これじゃさっぱりわかりませんわ。
AO入試は、具体的な選考手段を見ていくことで、やっとイメージが湧いてきます。例えば、1990年、日本で他に先駆けて導入した慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC2学部)のやり方は、"
学科試験の結果で合否が決まる一般入試とは異なり、
志望理由書、面接、小論文などにより出願者の個性や適性に対して多面的な評価を行い合格者を選抜する"というものでした。
●要するに「学力だけではない人物重視」の選考方法?
ただし、Wikipediaでは同様の選抜方式が一律にAO入試と称されている訳ではないとしており、選考方法はいろいろとあるようです。また、その名称も自己推薦入試、公募推薦入試、一芸入試などなど、統一されているわけでもないみたいです。
そうなるとますますわかりづらくなりそうですが、非常に乱暴な言い方をしてしまうと、一般的にイメージされる学力と呼ばれるものより人物重視の選考、テストの点数だけを見ていては逃してしまう人材を多面的な評価方法によって選抜していくといった入試だと、私は捉えています。
STAP細胞問題で話題になった小保方晴子さんもAO入試出身。彼女の話は後でやりますが、
文科省の理想の教育で育った小保方晴子 AO入試,グローバルCOEなどでは、"学力試験にとらわれずに面接や小論文等で試験の合否を決定する入試方法"であるという説明を紹介しました。(私は前からAO入試を知っていたわけではなく、この騒動で初めて知りました)
また、
小保方騒動から見えてくる日本の高等教育 : 一研究者・教育者の意見 2014年04月19日 によれば、"文科省の諮問機関である中央教育審議会の1991年の答申「新しい時代に対応する教育改革」の中で述べられた「できるだけヴァラエティに富んだ個性や才能を発掘、選抜するため、点数絶対主義にとらわれない多元的な評価方法の開発」"が、日本でのAO入試を増加させるきっかけとなったとしています。
文科省オススメの入試方法だったんですね!
●小保方晴子を生んだAO入試の問題点
ただ、このAO入試が十分に当初の目的を果たしているのだろうか?というと怪しいところであり、かなり批判があります。実際にAO入試を使った方は反発したくなる辛い話なのですが、複数の問題点が出てきてしまっているのです。
まず一つ大きな問題点として挙げられるのが、"「AO・推薦入試」が、「大学生の学力低下につながっている」"(中央教育審議会)という指摘。
"入学後の学業遂行の為必要とされる最低限の学力の確保として大学入試センター試験または大学独自の個別筆記試験を課すことが"こともあるそうですが、当然、一般の学力による評価が従来の選考方法より軽視されている分、大学入試後に苦労するおそれがあります。
低学力が原因といった考察はされていませんが、AO入試組の苦労を感じさせるニュースもありました。
AO入試合格者、6人に1人が退学…読売調査 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)2014年07月09日 10時02分
主に学ぶ意欲をみるAO(アドミッション・オフィス)入試で合格した学生のうち、6人に1人にあたる15・5%が退学していたことが、読売新聞の「大学の実力 教育力向上の取り組み」調査でわかった。
入試方法別で最も高い退学率で、一般入試の5・9%が最も低かった。入試方法別の退学率が明らかになったのは初めて。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140708-OYT1T50196.html
読売新聞はAO入試を「学ぶ意欲」重視の選抜と説明していますね。「学ぶ意欲」重視なのに退学率が高いとなると当初の狙いと全く逆。これも問題点の一つになるでしょうか?
●学力軽視で大学に入れたら、勉強についていけなくなるのは当たり前
学力の話に戻ります。
AO入試の例ではなかったと思いますし、韓国の例なのですが、通常の入試で入らなかった学生が相次いで自殺して問題になったことがありました。入学の時点では評価されなかったものによって入学後に評価されてしまうのですから、当然特殊な入り方をした人は大学で苦労するに決まっています。本来わかりきったことです。
自殺まで至ってしまったのは韓国特有の問題ではあります。日本は世界的に見て勉強熱心な国と見られることもありますが、同じ東アジアの韓国や中国は日本の比じゃないほど競争が激しく、プレッシャーも強いためです。
ただ、学力を問わずに入った学生が、入学後には学力で評価された上に、落第点の烙印を押されるという馬鹿げた話であることは、基本的に日本でも韓国でも変わりません。問題化するとわかりきっているのに、対策をしていないのですから非常に無駄です。このままではAO入試を十分に活かしているとは言えません。
●AO入試組は一般入試組より学力がも高いという反論も
では、AO入試の学生を大学で落ちこぼれにすることなく卒業させるにはどうすればいいでしょう? 授業のレベル、あるいは単位授与のレベルをAO入試の学生に合わせて引き下げると良いでしょうか?
匿名の情報であり、本当かどうかは怪しいですけど、実は小保方晴子さんの早稲田大学がAO入試の学生に合わせたおかげでコピペ大学と化しているという話も見かけました。
Wikipediaによれば、"AO入試で入学した学生の方が、一般入試で入学した学生よりも学力が優れているという報告もある"という低学力論への反論もあるようです。
たとえば、"慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスでは、「AO入試の導入以降、一貫してAO入学者のGPA(Grade Point Average)換算の成績(平均値)が一般入試による入学者よりも高い。」"とされています。しかし、これは要出典つきですので、真実ではないかもしれません。
Wikipediaにはもう一つ情報があり、こちらは要出典つきではありません。ところが、これは件の早稲田大学の話であり、「(AO入試による)入学者の入学後の学業成績も、一般入試による入学者に比べ概ね良好である」というもの。
前述の匿名情報が正しければ、そもそも早稲田大の評価がいい加減なために、AO入試組の方が概ね良好と言われても困ってしまいます。小保方晴子さんは単なる一例であり、それを一般化するのは間違いですけど、早稲田大学のAO入試が小保方さんというモンスターを生み出してしまったという事実もまた説得力をなくしてしまっています。
さらに早稲田大は今小保方晴子さん以外の博士も、博士論文がひどすぎるって話まで出ていましたしね。これらが本当なら、AO入試によって、従来型の偏差値の高い学生まで劣化しているということになりかねません。腐ったミカンが他のミカンも腐らせる…みたいな話ですね。
●「学ぶ意欲」重視で選んだはずのAO入試組の退学率はなぜ高いのか?
Wikipediaで載っていたAO入試の問題点としては他に、"学校経営安定の為の入学者の早期確保の手段となってしまっている"というのもありました。"旧来型の推薦入試では出願が11月以降という決まりがあるが、AO入試にはこの規制がないため、夏休み前に合格者を出しているケースも少なくない"そうです。
これは従来型の学力の高い学生を早期確保できる可能性もあるのですけど、「学校経営安定の為」を強調したこの書き方だと学力によらないものも含まれていそうです。
また、実は読売新聞が示唆していたAO入試の学生の退学率の高さの理由は、"AO入試は本来、学力試験で測れない意欲や能力を重視する試験だが、早ければ入学の半年以上前に合格が決まることなどで学習意欲を失わせている"というものでした。
これは途中で書いた「学ぶ意欲」重視で合格させたのにむしろ学習意欲が低いということを主に問題視するものですが、結局、従来型の学力の高い学生を確保するにしても、AO入試はマイナスになるのではないか?と感じさせる分析です。
●学力を軽視し退学率も高いAO入試に意味はあるのか?
ということで、多面的な評価方法によって優秀な学生を選抜しようというAO入試の本来の目的は、あまり果たせていないように見受けられます。端的に言って、AO入試に意味は無いのではないか?と言われかねない状態です。
どうせやるのであれば、通常の入学方法によらないAO入試などだけで一つの学部を構成し、従来型の学力によらない評価方法を卒業まで貫く…というのが、私の思いついた対策です。
ただ、小保方さんの例があるように、そもそも従来型でない人物重視の評価というのがそもそも間違っていたのではないか?と感じられる人も多いことでしょう。学力を十分に高められない大学に意味はあるのか?という話です。
私はAO入試は必ずしも否定されるべきものだとは考えていませんが、良い機会ですので改めてその意味を問い直す方向に話が進んでくれればと思います。
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