実名・匿名・ひどいコメント…などの話をまとめ。<匿名じゃなくて実名ならひどいコメントしない → むしろ逆効果に>、<研究でちゃんと判明、実名でむしろひどいコメントが増える人がいる!>、<リアル世界では実名なのに誹謗中傷やいじめだらけ…という現実>、<被害者は実名で攻撃される…実名主義でむしろ被害が深刻化?>などをまとめています。
2023/02/12追記:
●リアル世界では実名なのに誹謗中傷やいじめだらけ…という現実
2023/04/14追記:
●被害者は実名で攻撃される…実名主義でむしろ被害が深刻化? 【NEW】
●実名主義のGoogle+敗北、ついに匿名を認めユーザーに謝罪
2014/7/17:以前紹介した実名・匿名論争の投稿はあまり人気がなかったんですが、興味のあるところでしたのでまた取り上げちゃうことに。
「Goolge+」が実名制から基本方針を転換、ユーザーに謝罪(マイナビニュース [2014/07/16](記事提供: AndroWire編集部))という記事があったのです。
Googleが運営していたSNSであるGoogle+(グーグルプラス)では、プロフィールに実際の姓名の使用を勧めてきました。実名制のもとにGoogle+は、リアル世界の人々のコミュニティー作りの一助になったとしています。ただ、一方で、それを望まない人たちも数多く排除してしまったともしています。
記事によると、Googleでは、多くの人が実名制からの転換を求めていたこと、そして、自分たちのGoogle+上における名前のポリシーが不明瞭であったことを謝罪。ユーザーらは匿名を求め続けていたのに実名にこだわって、これまで受けれいてこなかったGoogle+が、ついに方針転換したという形。そういう意味では、実名主義Google+の敗北と言えます。
●匿名じゃなくて実名ならひどいコメントしない → むしろ逆効果に
上記記事では「リアル世界の人々のコミュニティー作り」という実名主義の利点を挙げていました。ただ、
3年後、Google+が実名ルールを捨て、ユーザーに謝罪 - TechCrunch Greg Kumparak 2014年7月16日(翻訳:Nob Takahashi)によると、別の狙いもあったんだそうです。
こちらによれば、人は実名では酷いコメントを書きにくくなる、というのが背景にあるアイデアだったんだとのこと。ところが、この狙いは逆効果となりました。実名主義によって、多くの真っ当なコメンターが書くのをやめる一方で、多くの愚か者が実名(あるいは、Googleが実名だと〈思った〉名前)で同じ行動を続けた、というのです。
私が今回一番興味ある話だったのは、最初のグーグルがついに方針転換…という話より、こちらの意外な事実の方でした。私はもともと、実名でも酷いコメントは排除できないという考え方ではありました。ただ、実名主義でまともなコメントが減ってしまったために、むしろ反対に作用したって話には、さすがにびっくり。むしろ逆効果であったようです。
●実名主義のFacebookでも同様にひどいコメントが多いという評価
TechCrunchの記事のはてなブックマークでも、「グーグルがついに方針転換」という話ではなく、「人は実名では酷いコメントを書きにくくなる」という考え方にについて絡むコメントがたくさんありました。実名でひどいコメントをしなくなるというのは「幻想」であり、間違っているという見方です。
<実名のような嘘の名前でも普通に通っていたのでもはや形骸化していたと思っていたが正式に諦めたか▼「実名ならひどいコメントしないだろう」幻想はFB(引用者注:フェイスブック)が見事ぶち破ってくれてるので>
<匿名だと失うものがないからネットで好き放題言えるとよく言うが、既に失ってしまった実名の人も失うものがないんだよな……>
<それでもまた…何度でも「実名ならひどいことにはならないだろう」ルールは甦るであろう…(大魔王的な何かの捨て台詞)>
Facebookは相変わらず実名主義なわけですが、ここで酷いコメントが多いとの実感があるみたいですね。ただ、これは飽くまで感覚的な話。この「実名ならひどいコメントしないだろう」幻想については興味があるところですので、経験談ではなくもう少ししっかりとした情報がほしいと思いました。
●研究でちゃんと判明、実名でむしろひどいコメントが増える人がいる!
で、検索すると同じTechCrunchで良さそうな記事を発見!
実名制がコメント荒らしを解決できない、驚くほど確かな証拠(TechCrunch Gregory Ferenstein 2012年7月30日(翻訳:Nob Takahashi))という記事です。研究の裏付けがあるものと研究の裏付けがないものでは、圧倒的に研究の裏付けがあるものの方が信頼性が高いですからね。
記事によると、2007年、韓国は利用者10万人以上のサイトすべてに対して、一時的に実名使用を強制。しかし、後にこれが罵倒や悪意のあるコメントの一掃に効果がないと分かり、廃止しています。なんとこのポリシーによって減少した迷惑コメントはわずか0.9%。逆効果とまではなっていませんが、ほとんど意味がありませんでした。
<韓国では4年にわたり厳格な実名コメントルールを課してきた。2003年に政治的ウェブサイトから始め、2007年には訪問者30万人以上のサイトにも拡大し、ある著名人の自殺に関してネット上の名誉棄損が言及された一年後には、年間訪問者10万人へと強化された。しかしこのポリシーは、韓国通信委員会の調査によって迷惑コメントが0.9%しか減っていないことがわかるとすぐに廃止が決定された。韓国サイトには、おそらく価値ある個人情報を求めてハッカーたちも殺到した>
カーネギーメロン大学のDaegon ChoさんとAllessandro Acquistiさんがこれを継続分析した結果、恐るべき事実が判明します。実名ポリシーは一部の利用者層において、罵りコメントの頻度をむしろ高めていることがわかったのです。一部の人が以前より過激化して罵りコメントが増えたため、実名化効果を激減させているという感じみたいですね。
<同ポリシーは、罵倒や「反道徳的」行動を全体では最大30%減少させたが、個々のユーザーはたじろいでいない。1、2件のコメントを投稿する「ライト・ユーザー」は同ポリシーの影響を強く受けているが、「ヘビー」な連中(11~16コメント以上)はひるむ様子がない。
委員会の推定によると悪質なコメントは全体の13%だけであることから、わずか30%の減少は、汚れたコメントシステムにとっては焼け石に水だろう>
こうした発見は、人々は行動をビデオに撮られていてもやがて無視するようになる、ということを以前から知っている社会科学者たちにとっては驚きではない…としていました。防犯カメラの防犯効果もないってことですかね? (2020/11/28追記:後に
監視防犯カメラの犯罪抑止力データなし?ダミーカメラは逆効果との指摘もをやっています)
こっちの話も気になりますが、今はとりあえず、実名SNSが荒れるという話を集めます…と探してみたものの、全然出てきませんでした。残念。韓国の例みたいな研究らしい研究がもう少しあると、さらに確信持てたんですけどね。
(関連する
ネットの匿名のメリットは実名のデメリット…主な理由は3つという話はやっています)
●AIが不適切コメントを繰り返すユーザーに注意…これで効果はあった?
2021/03/22:ヤフーニュースのコメント欄が停止されていて、あれ?と思って検索しました。ただ、公式の説明などは見つからず。一時的な負荷対策と言っている人がいたんですけど、どうなんでしょうね。で、この検索の際に見つけたのが、
「Yahoo!ニュース」コメント欄の不適切コメントがAIによる注意メッセージで13.5%削減 | Web担当者Forum(小島昇(Web担編集部) 2021/2/17 7:02)という記事です。
ヤフーニュースのコメント欄と言うと、以前はネトウヨ系のひどいコメントばかりでネット最悪レベルでした。ただ、少数のユーザーが多数のコメントを投稿する多数派工作を排除するなど、改善が続けられており、最近はずいぶん良くなってきた感じ。最近では、AIが「不適切である可能性が高い」と判定したコメントを複数回投稿しているユーザーに注意する対策もしていたそうです。
<ヤフーは、ニュース配信サービス「Yahoo!ニュース」にコメントつける「Yahoo!ニュースコメント」で、AI(人工知能)を活用して投稿時に注意メッセージを2020年7月から掲出したところ、不適切なコメントを繰り返し投稿するアカウントが掲出直後の8月と比べて4カ月後の同年12月に13.5%減少した、と2月16日に発表した>
確信犯は本来「政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪」といった意味。不適切コメントの人たちもこういった意味での確信犯で、むしろ悪いことではないと「確信」して投稿していると思っていたので、今回効果があったというのは意外でした。ただし、減ったのは1割程度ですから、やはり劇的な効果はなかった…とも言えるかもしれません。
また、興味深いのが、開始直後の2020年8月と4カ月後の12月を比較すると、注意メッセージが掲出されたアカウント数は13.5%減少した一方で、コメントを投稿したユーザー数は増加しているということ。一部のおかしい人によるひどいコメントが減ったことで、良心的なユーザーがコメントしやすくなったのであればいいな…と思いました。
●リアル世界では実名なのに誹謗中傷やいじめだらけ…という現実
2023/02/12追記:
ネットの中傷、原則実名なら解決する?「人類総メディア時代」の功罪:朝日新聞デジタル(2022年2月14日)という記事があって気になりました。「ネット炎上の研究」などの著作がある国際大学グローバル・コミュニケーション・センター山口真一准教授に聞いた話だそうです。ただ、残念なことに有料記事でしたので、詳細は不明でした。
で、どうしようかな?と思ったのですが、
この記事のはてなブックマークでいくつかおもしろいコメントがあったのでこれを紹介することに。例えば、「無敵の人が無敵になるだけ」(REV)というコメントには納得感があります。「無敵の人」というのは、「社会的に失うものが何も無いために、犯罪を起こすことに何の躊躇もない人」といった意味のネットスラング。失うものが何も無い人たちは実名だからと言って中傷をやめようとは思わないでしょう。
また、<実名にしたところで解決するわけない。学校のいじめだって、職場のパワハラだって匿名じゃないんだし>(kakei-akihiko)というのも納得感ありますね。さらに、以前も書いたように、実名で書かれている実際のコメントを見ても、実感として効果があるように見えない…といった話が出ています。
numtostring Facebookは酷いことになってるよ。無敵の人は実名でも堂々と誹謗中傷する。
meishijia FacebookやGoogleマップなんかで、実名出してよくそんなこと書けるなってカキコミはナンボでもみるし、あんま関係ないと思うよ。
関連して、<実名顔出し状態なのに大学教授クラスがやってるので、実名化は解決にならない。むしろ石原慎太郎のような権力者が公然と中傷を垂れ流すと、権力におもねりたい連中がヨイショしたりするからな>(totoronoki)は、影響力がある人がそもそも実名で誹謗中傷していると指摘するもの。実名化では、やはり解決しないでしょうね。
●被害者は実名で攻撃される…実名主義でむしろ被害が深刻化?
2023/04/14追記:前回も書いたはてなブックマークのコメントからもう少し紹介。<匿名投稿を問題視する奴らって、実名義務付けたら中傷される側も実名になるのは頭に入ってるのかな>というコメントもありました。実名を義務づけても被害を減らす効果が低い一方で、被害が深刻化する可能性すらありそうですね。
以前、この実名化の話で読んだ記事では、攻撃する側にとっておもしろいのは匿名より実名の人だと指摘されており、これも被害が深刻化するという見方でした。なお、「中傷される側も実名になる」と書いた人は前回と「学校のいじめだって、職場のパワハラだって匿名じゃない」と書いていた人と同じ。以下なんかもここまでの話と共通点があるコメントした。
numtostring <(引用者注:実名主義である)Facebookは酷いことになってるよ。無敵の人は実名でも堂々と誹謗中傷する。そういう人を実名で注意しようとするとリアルで報復される可能性があるから誰も注意できない。無法地帯>
【本文中でリンクした投稿】
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