ビットコインの話をまとめ。<ビットコインでは企業も大損 GMO・SBI・DMMが赤字か?>、<世界トップ性能を謳ったGMO、特別損失355億円で仮想通貨撤退>、<ビットコインはもう終わり?マネーフォワードが事実上の撤退>、<経済苦しいエルサルバドル、ビットコイン買いまくり30%の損失>などをまとめています。
2023/11/02追記:
●投資下手すぎ…わざわざ高いところでビットコインを購入した政府 【NEW】
●中国の半導体企業ビットメイン、ビットコインなどの採掘で世界の8割
2018/06/06:米エヌビディアもそれほど日本では有名企業ではありませんけど、世界的な半導体メーカーです。バーンスタイン・リサーチは2月のリポートで、中国の半導体企業ビットメイン(ビットマイン、Bitmain)が年間30億ドルを超える利益を上げていると試算。これははるかに規模が大きい米エヌビディアにほぼ匹敵する数字です。
ただ、この数字はちょっと大きすぎでしょう。ビットメイン・テクノロジーズの共同創業者ウー・ジハンさん(32)は2017年に35億ドル(約3850億円)の売り上げを計上したとしており、この売上の時点でも利益30億ドルは高すぎ。また、6月4日、同社の広報担当者は実際の売上高は25億ドルだったと訂正しており、そもそも売上で年間30億ドルもありませんでした。(売上ではなく、利益としているニュースもありこの記事の「売上」が誤訳なのかもしれません)
数字を大きく間違え過ぎで大丈夫かいな?という感じなのですけど、ビットメインは世界の仮想コインの最大80%を採掘(マイニング)する半導体を販売してきたという世界的な規模の企業。仮想通貨ネットワークは大量の演算処理能力と電力を必要とするマイニング技術で成り立っていおり、そのためにはビットマインの半導体が必須なのだそうです。
(
ビットコイン採掘の中国ビットマイン、仮想通貨の次はAIに照準 - Bloomberg Max Chafkin、David Ramli 2018年6月5日 15:50 JST より)
●AI向けの半導体企業としても注目されるビットメイン
ただし、仮想通貨に対する規制を中国政府は強めており、この分野は安泰ではありません。そこで、同社は人工知能(AI)分野への進出を考えているとのこと。
ビットメインはすでに2017年10月、集積回路(ASIC)チップ「ソフォン BM1680」の初期プロトタイプの販売を開始していました。機械学習の高速化を目的に設計されています。エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ製などのハイエンド画像処理カードに比べて処理範囲は劣るものの、深層学習の一部ではより強さを発揮し、価格も安いというのが強みです。
「ビットメインが米国進出」といった記事もあり、どうもアメリカでも注目されている模様。今回の記事では、ビットメインがビットコイン向け半導体企業から、AI向け半導体企業へと華麗に転身するであろうといった調子でした。
●AI向け半導体企業へと華麗に転身…どころじゃなくなったビットメイン
2018/12/14:ビットメインは「AI向け半導体企業へと華麗に転身」とはいかないかもしれません。ビットコインの凋落が予想以上の早さで進んでいるためです。2017年12月に最高値をつけた後、2018年はほぼ一貫して下落。11月にビットコインの価格は一時4000ドルを割り、最高値の5分の1の水準まで下がりました。8割が消し飛んだってのですから、すごいですね。
この説明でわかるように、実は、最初の記事が書かれた2018年6月の時点でも、かなりビットコインの価格は下がっていました。ただ、マイナーの苦境が強まったのはその後の11月に入ってからではないかと思われています。価格がこの水準では増大するコストを賄えず、マイニングを続けるほど赤字が膨らむ構図だとのこと。「ビットメインの業績が悪化しているのではないか」(関係者)との観測が流れています。
ビットメインのようなマイナーが苦しんでいるのは、価格の下落だけではありません。マイニングに必要な計算量を「ハッシュレート(採掘速度)」と呼ぶそうですが、これがビットコイン価格が下がる中、逆にものすごく上がってしまっているのです。期待を捨てきれないマイナーが2018年に入ってからも次々と参入してきたからだといいます。
大量の計算が必要になれば、マイニング装置の稼働や冷却に要する電力コストが増大してしまうとのこと。電力が安価な北欧などではビットコイン3500ドル程度だといいますから、国によってはまだ赤字ではないのでしょうが、いずれにせよ以前と比較してかなり儲からなくなってきています。
(
仮想通貨「採掘」に誤算 価格急落で撤退相次ぐ:日本経済新聞 2018/11/28 20:00より)
●ビットコインでは企業も大損 GMO・SBI・DMMが赤字か?
実を言うと、ビットコイン購入者は日本人が多いと言われていますので、損失を出した日本人も多いでしょう。ただ、マイナーについては中国ばかりという印象があったんですよね。日本での損益分岐点1ビットコインあたり1万2000ドル程度とべらぼうに高く、少なくとも国内でやるには向かない感じでした。
ところが、2017年のビットコイン価格の高騰をみてマイニング事業への参入を相次いで決めた日本企業がいるといいます。判断が悪いですね。日本企業であってもマシンは海外でやって稼ぐ…みたいなのはできそうなのですけど、ガッツリ損失も出している模様です。日本企業は大丈夫だと思っていたので、予想外でしたわ…。
・GMOインターネット 18年7~9月期のマイニング事業の営業赤字が6億円。前四半期も赤字で、そこから赤字幅が約3億円拡大。
・SBIホールディングス 先行投資負担もありマイニング事業は赤字に陥っているもよう。
・DMM・com 「事業内容の再構築などを含め社内で議論を重ねている」と説明。
私が読んだ別記事では、中国人個人マイナーの苦境が紹介されていました。彼らが参入した当初は大流行だったので、マイニングのためのマシンは高額。ところが、バブルが弾けたので仕方なく売ろうとしても、需要が少なくなったマイニングマシンは全然売れません。やっと売れても非常に安くなっているそうです。
マシンの価格変動は日本でもあったようで、GMOインターネットは、高値づかみをした装置の償却費が重荷になったとの解説。また、前述のマイニングに必要な計算量増大の関係ももちろんあり、熊谷正寿GMO会長は「ハッシュレートのここまでの上昇は想定外だった」と説明。欲を出したせいで損をしてしまいましたね。
●ビットコインはもう終わり?マネーフォワードが事実上の撤退
2019/06/25:関連しそうな
マネーフォワードが仮想通貨事業撤退を決めた理由:日経ビジネス電子版(
原 隆 日経ビジネス副編集長 2019年4月15日)という記事を見つけたので追記。マネーフォワードは2019年4月15日、仮想通貨事業への参入を断念することを明らかにしました。
Wikipediaによると、マネーフォワードは、東証マザーズに上場している会社。資産管理・家計管理ツール「マネーフォワード ME」というのが、有名なサービスみたいですね。
このマネーフォワードは2018年5月に仮想通貨交換業登録を目指すための子会社、マネーフォワードフィナンシャルを設立。18年中の仮想通貨取引所の開設を目指していました。ところが、なかなかライセンスが付与されないという困った事態に。とはいえ、それだけで参入断念というのは、不可解という見方もあります。依然として「ライセンス付与を受けるのに優位な位置」(仮想通貨業界関係者)というポジションだったそうです。
このような優位な状況にもかかわらず業者登録を断念した背景には想定以上に仮想通貨業界の混乱が長引き、これ以上投資を続けるべきではないという経営判断があったと見られていました。同社の発表は「参入延期」としているものの、「完全撤退」とまで行かなくても「一時的な撤退」は確実と見て良いのではないかともされていました。
それ以外にもマネーフォワードは黒字化を目指していて、なおかつそれが厳しい状況であり、事業の選択と集中を行ったという理由も推測されています。とはいえ、落ち目の仮想通貨業界を象徴するような「参入延期」発表になってしまいました。
●世界トップ性能を謳ったGMO、特別損失355億円で仮想通貨撤退
2020/05/09:新しい話じゃないのですけど、<18年7~9月期のマイニング事業の営業赤字が6億円。前四半期も赤字で、そこから赤字幅が約3億円拡大>と以前書いていたGMOインターネットの補足。この時点での報道の比ではないほど、その後損失が広がっていました。
GMOインターネットは2018年12月25日、2018年第4四半期決算で仮想通貨マイニング事業について約355億円の特別損失を計上すると発表。仮想通貨価格の下落を受けた需要の減少などにより、収益性が悪化したといいます。
マイニング事業のうち、マイニングマシンの開発・製造・販売事業は継続しないことも決めました。特別損失355億円の内訳は、自社設備によるマイニング事業の減損損失115億円と、マイニングマシン事業の債権譲渡損240億円となっています。
(
GMO、仮想通貨マイニング開発中止 特損355億円 「世界トップ性能」うたうも冷え込みに耐えきれず - ITmedia NEWS 2018年12月25日 16時31分 公開より)
●経済苦しいエルサルバドル、ビットコイン買いまくり30%の損失
2022/05/24追記:ビットコインでは、企業だけでなく国すら大損していたみたいですね。
ビットコイン急落でエルサルバドルは30%近い損失を出している - GIGAZINE(2022年05月11日)という記事が出ていました。なぜ国が損失?と思ったら、ビットコインを買いまくっていたんだそうです。
<2021年9月にビットコインを法定通貨に採用したエルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、当時のレートで約28億5000万円に相当する550BTCを保有していることを発表。その後も、相場が急落する度にビットコインの買い増しを発表しており、エルサルバドルは着々とビットコインの保有高を増やしています。
ブケレ大統領はさらに、ビットコインが大きく下落した2022年5月9日にも、500BTCを購入したことを明かしました>
<Bloombergの集計によると、エルサルバドルがこれまでビットコイン購入につぎ込んだ費用は、1億300万ドル(約134億3000万円)と見積もられているとのこと。一方、ブケレ大統領が購入していることを明かしたビットコインは7400万ドル(約96億5000万円)相当の2301BTCであるため、エルサルバドルは約30%の損失を出していることになるとBloombergは指摘しました。
1人当たりのGDPが3799ドル(約49万円)、外貨準備高が一般的に危険水準とされている「輸入額の3カ月分」の40億ドル(約5215億円)以下と厳しい経済状況にあるエルサルバドルにとって、仮想通貨取引で半年間に約2900万ドル(約37億8000万円)もの損失を出したのは手痛い失敗です>
ブケレ大統領は、2021年11月にビットコインで経済を回す「ビットコインシティ」を建設する計画を明かすなど、ビットコインへ傾倒。一方、国際通貨基金は、2022年1月にビットコインを法定通貨にするのをやめるようエルサルバドルに勧告していました。えらい人が大統領になっちゃいましたが、よく考えて投票しないとこうなります。日本も危ないでしょう。
ビットコイン好きなのでリベラルではなくて右派系だろうと
Wikipediaで確認。中道右派の「国民統合のための大連合」 (GANA) ということでやはり右派系でした。ただ、具体的な政治的スタンスを欠くと批判されることもあるそうで、明確な思想はなさげ。「世界で一番イケてる独裁者」を自称しているそうで、変人のようですね。
●ビットコイン法定通貨化から1周年…エルサルバドルはどうなった?
2022/09/09追記:1周年という良いタイミングだったので、<ビットコイン法定通貨化から1年、エルサルバドルはどうなったか>(22/9/8(木) 17:15配信 ロイター)というエルサルバドルの話の続報が出ていました。ビットコインは為替以上に値動きが激しいので上がるときもあると思いますが、記事のタイミングでは以前よりさらに悪化していたようです。
<法定通貨となった去年9月は4万7000ドル弱だったビットコインは、今はその半分以下、2万ドル以下に下落している。(中略)
市民への普及も進んでいない。政府が導入した電子財布「チボ」がどれくらい使われているか、大統領府も財務省もデータを公表していない。
NGO「全米経済研究所」の調査によると、アプリをダウンロードした人のうち、無料の30ドルのクレジットを使った後にアプリを使い続けた人は2割にとどまったという。今年ダウンロードした人はゼロに近い>
また、これらの話の前には、<「ビットコインシティー」になるはずだったコンチャグア山ふもとのこの街には、工事も重機も見当たらず、何の進展も見られない>との記載がありました。「ビットコインシティー」の場合、建設されない方がむしろ良いような気がしますが、作ってすらいないため、建設による経済効果も今のところないようです。
●ビットコイン利用低調のエルサルバドル、国が毎日購入することに
2022/11/19追記:中米エルサルバドルのブケレ大統領の暴走が止まりません。今度は、<「毎日1ビットコインを購入」 エルサルバドル大統領表明>(22/11/19(土) 6:56配信 共同通信)というニュースが入ってきました。「1ビットコイン」と言うと安そうに聞こえますが、執筆時点だと日本円で230万円にあたります。
<中米エルサルバドルのブケレ大統領は18日までに、「毎日1ビットコインを購入する」とツイッターで発表した。同国は昨年9月に世界で初めてビットコインを法定通貨として導入したものの利用が低調で、てこ入れする狙いがあるとみられる。
米ドルも法定通貨として併用するエルサルバドルでは、ビットコインの利用を続けているのは国民の2割程度にとどまるとみられる。大手交換所FTXトレーディングが経営破綻した影響を受け、最近の相場は低調。>
https://news.yahoo.co.jp/articles/b4ae72c123454264c5dad28f5c2e3cb41515f195
自分の間違いを認められず正当化のためにさらに問題を起こす…という政治家らしさがありますが、それより今回は失敗する投資の典型といった方が良いでしょう。値下がりしたところで、さらにお金をつぎ込んで破滅する…というパターンです。
ただ、エルサルバドルのビットコイン購入でより問題なのは、これが自分のお金ではなく国民のお金だということでしょう。エルサルバドル国民にとっては悲惨すぎます。こうならないように、日本人も選挙ではよく考えて投票した方が良いです。
●投資下手すぎ…わざわざ高いところでビットコインを購入した政府
2023/11/02追記:その後、エルサルバドルはどうなった?と検索してみます。すると、検索結果に「やはりビットコインは信用ならない…法定通貨を切り替えた」というタイトルが見えたので、ついにエルサルバドルもビットコインをやめたんだな…と思ったら違いました。
タイトルの全文を見ると、
やはりビットコインは信用ならない…法定通貨を切り替えたエルサルバドルが陥った「暗号資産の落とし穴」 経済成長の起爆剤になるはずだったのに… | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)(2023/01/18 土田 陽介三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員)というものだったのです。
<ビットコイン(BTC)の価格が低迷している。2021年11月8日の終値で1ビットコイン6万7526米ドルの史上最高値を付けて以降、ビットコインの対ドルレートは下落に転じた。そして、2022年12月31日の終値は1ビットコイン1万6564米ドルまで下落が進んだ。この間、ビットコインの価値は4分の1に暴落したわけだ。>
<エルサルバドルは2021年9月に、世界で初めてビットコインを法定通貨に定めた。エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領はビットコインをエルサルバドルの経済発展の幹に据える戦略を推し進めようとしたわけだが、状況は芳しくないようだ。
最大の失敗は、エルサルバドル政府がビットコインを「高値掴み」したことだ。ビットコインを法定通貨に定めて以降、政府は貴重な外貨でビットコインを断続的に購入してきたが、この間にビットコインの価格は下落が続いた。その結果、エルサルバドルが購入してきたビットコインは、多額の含み損が生じている状態となっている。>
以前、<経済苦しいエルサルバドル、ビットコイン買いまくり30%の損失>というタイトルで書いていたのですけど、下落が進んだために損失が拡大しているはずです。スペインの日刊紙エル・パイス(EL PAiS)は2022年11月14日付の記事で、評価損は7000万米ドルに達したと報じたといいます。
またジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ教授も2022年11月26日付のツイッターで、前日時点でエルサルバドルは総額1億642万米ドル(約200億円)のビットコインを購入してきたのに対して、時価総額が3945万米ドルにとどまっており、6697万米ドルの評価損が発生していると指摘していたそうです。
1億642万米ドルで購入して、評価額が3945万米ドル、評価損が6697万米ドル。計算してみると、半減どころではありません。購入資金の6割が吹き飛んだ…という計算。これから持ち直す可能性はありますが、国民のお金でギャンブルしているようなものですからその時点でダメ。こういうバカ政治家にこそ「自己責任」と言ってあげるべきでしょう。
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