2014/8/12:
●大学教授が体験を踏まえ親に贈る脱ニート本、低評価の理由は?
●ニートは家庭の問題で厳しくしろ!自己責任論的で体罰的思想だった
●今の若者はダメだ!自慢話と精神論だけの本で得るものなし
●アダルトチルドレンの亜流!ニートに文句を言いたい人にはオススメの本
●ニートには人を愛する心がない…言っている人にむしろ愛を感じない
●ニートの親はどうすればよいかのヒントが書かれている良い本
●本人や親、様々な人へのQ&Aがある「ニート」支援マニュアル
●好きなことを仕事にしよう!がニートを生み出している可能性
●大学教授が体験を踏まえ親に贈る脱ニート本、低評価の理由は?
2014/8/12:間が空きましたが、以前続けて書いていたニートシリーズ。ニートがいる家族に参考になるものはないか?ということで、アマゾンをざっくりと眺めていました。とりあえず、全然オススメできねぇ!という感じだったのが
「ニートな子」をもつ親へ贈る本
です。
紹介によると、「もし、わが子がニートだったら、親はどう向き合えばいいのか? 大学教授が脱ニートの道を厳しくも温かく、親身に考えた本」とのこと。ニートを「社会問題」ではなく、「家庭問題」としてとらえ、解決へのヒントを探るものであり、以下のような内容だと言います。
<第1部><純粋だけれどもひ弱なニートたちの内面に迫ります。同世代間でのコミュニケーションにおいてさえ、“傷つく”のを極端に恐れる若者たち。著者はその心模様を「ガラスの破片」と比ゆします。
<第2部><ニートたちへ、第3部ではニートの親たちへ向けてメッセージを発信。「したいことが見つからない」「居場所がない」「子どもにどう接すればいいのかわからない」といった、ニートや親たちがぶつかり、悩みがちなさまざまなテーマについて真摯なアドバイスを試みます>
自身の子育て経験を踏まえ、机上論的分析ではなく、現場的実践論が展開された本書は、ぜひ、ニート問題で行き詰っているすべての人に読んでいただきたい一書でだとのこと。上の紹介だけ読むと良さそうに見えますところが、レビューした人が2人とも最低点の1点評価だったのです。
●ニートは家庭の問題で厳しくしろ!自己責任論的で体罰的思想だった
言われてみると納得というものであり、一瞬良さそうだと思ってしまった私も問題がありましたね。例えば、<帯からおかしい。「ニートは家庭問題」とのことだが、家庭問題というだけでは解決できないので、社会問題としているのではないか>と指摘されています。そういえば、そうです。
さらに内容もひどいといいます。ニートを家庭問題にするというのは、自己責任論的な嗜好に見えますが、それ以外にも保守的で体罰的な思想なのかもしれません。「有害な本」とまで言われていました。
<内容面だが、この著者はニート問題を解決したいというより、ニートを叩きたいと思って書いているようだった。その証拠に、ニートは甘えであり、怠けであるというトーンが全体を通じて貫かれている。しかし、このような問題意識は、問題の解決にはつながらず、問題をこじらせるのではないか。なぜなら、親がこの本を読んでニートを叩きだそうとしても、喧嘩ですめばいいが、流血を伴う惨事を招きかねないし、ニート本人が読んだら余計頑なになってしまうだろうからである>
●今の若者はダメだ!自慢話と精神論だけの本で得るものなし
もうひとりのレビュアーさんも「自慢話と精神論だけの本」と辛辣。先程と同じで、「ニートや引きこもりの問題点を分析することなく、表面的な部分だけを見て叱責し批判しているだけ」とされていました。また、自慢話的な要素もあるそうです。
<自分の勤める大学での学生たちのダメさ加減などを槍玉に挙げては、ほとんど自慢話のような精神論をぶつ切りの文章で展開。
読み終えても、ニートや引きこもりについて何もわからない。
著者は「引きこもりは病気ではない」とするNPOに全面的な共感を示しているが、それこそが誤りでは。
いろいろ読んできたが、精神科医による本の方が、はるかに現実的で問題点も整理されており、よくわかり、希望も持てる>
「自身の体験に基づいて」というのは一見良さそうに思えるものの、こういう弊害がありますね。また、自分の体験だけだと単純に事例が少なく、信頼性が劣るという問題もあります。良さそうだと思ってしまった私は、いろいろと反省が必要です。
●アダルトチルドレンの亜流!ニートに文句を言いたい人にはオススメの本
他の本である
ニートの心理学〔文庫版〕 (小学館文庫)
はどうかな?と見ていたら次も1点。あれ、ひょっとしてみんなそうなの?
<ニートと呼ばれる人々はみなごく普通の青年たちである。礼儀正しいし、明るいし、何よりも苦労なく育った屈託のなさと人の良さが感じられるものだ。しかし彼等には、母子癒着の結果として、自立体験のないまま過ごした子供時代という共通体験があり、それがニート=アダルトチルドレンの温床になっている。果たして、彼等の“自分探し”に終着点はあるのか? ニートから抜け出す方策はあるのか? 数々の事例を挙げながら検証していく>
<出版社からのコメント ニートはアダルトチルドレンの亜流である>
こちらなんか3人いて3人とも1点で、さらにひどいですね。レビューは1個だけ紹介。「ニートが嫌いで文句を言いたい人にはオススメ」というタイトルであり、前述の本と同じ問題を抱えているようです。
自分の塾講師時代に出会ったロクでもない生徒とその親、というものを延々と挙げ、その狭い体験からの結論として「こういうタイプの子供たちが将来ニートになるのではないか」みたいに持ってくるといったことをしているとのこと。この人の場合は、そもそも研究者ですらないわけで、思い込みで書いたという評価でした。
<(むしろこんな本を喜んで読める人のほうが危ないのではないかな、と思ってしまうのだが)居酒屋かなんかでくだを巻きながら話す分には結構だが、よくもこんなものを偉そうな文体で活字に出来たものだと思う。筆者と一緒になってくだを巻きたい人は楽しめるのかもしれません。ただただ、筆者のエゴと押し付けがましさのみが残る不快な読書体験でした。 ニートについてのまともな見識が欲しい方は他の本にしておくことをお勧めします>
●ニートには人を愛する心がない…言っている人にむしろ愛を感じない
うーん、ニート自身ではなく、家族に向けたものが欲しいという観点でタイトルを見ていくつか選んでみた…というのが、上記のラインナップでした。しかし、何かことごとく悪いですね。もう一つ候補だった
我が子をニートから救う本―ニート或いはニートの予備軍の親たちへ
も1点ではなかったものの、レビュー2つで平均2.5という数字です。
<ニートは新しい人種ではない。ごくふつうの若者が、ちょっとしたきっかけでニートになってしまったものの、なかなかはい上がれずに苦しんでいる。親を巻き込み、それでも出口が見つからない。本書では若者の就職支援で実績ナンバーワンのキャリアカウンセラー小島貴子氏が、実際にニートやその親たちとの面談の中で「これだけは伝えたい」と思ったことを全て収録。どうすればニートから救えるか、どうしたら自立できるかを厳しくも親の立場ですぱっと言い切っている。親としては「誰かにこれを言ってほしかった」ことが書いてある>
評価2点だったレビュアーさんは、ズバリ「愛がない」としていました。実を言うと、さっきの本の人は「彼らに欠けているものは人を愛する心だ」などと言っていたものの、むしろ低評価ニート本作者の方々の方に、人間的な心がないように見えるみたいです。
<とにかく文章全般から「愛」を感じない。「ニート」やその親御さんを救いたい、という思いを感じないのである。
そもそも著者の述べる「ニート」という単語自体に、全く愛情も優しさの意味も含まれず、ただの「自意識過剰の若者」というレッテルにしかなっていない。(中略)
「ニート」やその親御さんをここまで責めて、追い込んで、どうするのでしょうか>
●ニートの親はどうすればよいかのヒントが書かれている良い本
このままオススメなしだとどうしよう?と、絶望的な気分になりました。しかし、リストアップしていた残り2つの点数だけ先に覗いてみると、4.2と4.5でした。良かった、あとはすごく良いですね。
まず4.2の方は、
子どもがニートになったなら (生活人新書)
というもの。ニート問題研究の第一人者、玄田有史さん、小杉礼子さんの本で、<若者・家族・社会の背景と現状を、宮本みち子・江川紹子・小島貴子・長須正明・斎藤環?と対談したものだとのこと。
斎藤環さんは
引きこもりがいる家庭での家族の対応 基本は何もしないで見守るだけ?で出てきた方ですね。そちらもなかなか好評でした。しかし、この本の"最も参考になったカスタマーレビュー"は3点という厳し目のものでした。ヒントは書かれているが、根本的解決には程遠いとされています。
<この本の長所>
<子どもがニートになったら親はどうすればよいかのヒントが書かれているところ。一言でいうと、抱え込まないで誰かに頼ることが大事だということか>
<この本の短所>
<企業や国に対する批判が足りないというニート本一般の欠点をこの本も受け継いでいる。子どもが親の生き方を真似したくないのも、企業が「奴隷制のような働き方」(p111)を労働者に強いているのが主原因ではないだろうか(親が子に生き方を伝えられないのはそのことが原因としてかなりのウェイトを占めるのではないか)。また、この本には「フリーターも一つのステップとして認めよう」(p36)と書かれているが、このような考え方では、ニートがなくなっても、フリーターや失業者が増えるだけで、根本的には解決しないのではないか(やはり何らかの立法的手当てが必要なのでは(一例を挙げると非正規雇用を制限する法律を作る))。「社会や親のせいにしたって現実は変わらない」(p244)と言うが、ニート(や若年者雇用)の問題を根本的に解決するにはやはり(言葉は悪いが)社会のせいにしなければならないのではないか>
「根本的解決にはつながらない」というのは確かに困ります。「企業や国に対する批判」というのも確かに必要でしょう。一番悪いのは、国だとは思います。
でも、ニートの親に「企業や国に対する批判」をたくさん聞かせても、それこそ「解決にはつながらない」のではとも思いますね。政治運動・社会運動をして少しずつ社会を変えていくというのはもちろん「根本的解決」ではあるのですが、親が今助けを求めているのとは異なるでしょう。
何しろ「子どもがニートになったなら」というタイトルですからね。ニート全般についての本であれば政治・社会批判でもいいのですが、このタイトルでそれをやったらちょっと肩透かしになるでしょう。
●本人や親、様々な人へのQ&Aがある「ニート」支援マニュアル
最後、もう一つ評価の高かった
「ニート」支援マニュアル
を。
本の紹介では、ニートに実際に接してみると、「ニートっていろいろ聞くけど、会って、話してみると"普通"の若者ですね」と、多くの人がこうした感想をもつとされていました。前半の本のように「ニートはクズだ」と叩くものではにようです。というか、前半の人たちはニートをよく知らないのかもしれませんね。
<ここ数年、働く意欲も、学ぶ意欲もなく、夢や目標をもたない若者を「ニート」と呼び、関連書籍も数多く出版されている。すでに70~80万人のニートたちがいるといわれ、マスコミでも社会問題のように取り上げられている。
しかし、本書では「彼らは働かない怠け者ではない」と強調する。著者はひきこもり、ニート、フリーターの就労支援をするNPO法人「育て上げ」ネットの理事長を務める。20代という同世代の視点から、ニートたちと接しているだけに現場感覚のアドバイスが説得力をもつ。
「家族としてどのような支援ができるのか」「ニートは精神的な病気なのか」といった疑問に率直に答えている。「一歩を踏み出すためのヒント」が、本書には書かれている>
レビューを読んだ感じも、「おっ、やっとこれいいかも」という雰囲気ですね。以下は5点の人のレビュー。やはり前半の本みたいに「ニートを叩いてストレス解消!」という内容ではないとしています。
<ニートに対する分析や、原因の究明や、ニート本人・家族社会への批判を一切含んでいないという意味で、社会に対して物申したい人には向きません。
また、誰かを元気づけるための本でもありません。
とても淡々と、ニートを支援する方法を述べています>
私は親のための本を探していたのですけど、ニート本人、家族、支援者など、いろいろな立場の人へのアドバイスがQ&A形式で列挙されているとのこと。これも良いと思います。
<挙げられているアドバイスの内容も、実務家らしい現実的なものばかりで、夢のような特効薬を提示しているわけではありません。個別的・包括的に、粘り強く、というメッセージが中心です。
ですが、実際に問題に直面している人には取り組みやすいものなのではないでしょうか。私は実際にニートを支援する立場になったことは無いので、検証はできないのですが、無茶な要求が少ないと思いましたし、カウンセリング技法の論理療法に通じる考え方も見られて、非常に興味深く感じました>
●好きなことを仕事にしよう!がニートを生み出している可能性
それから、やはり5点満点だった以下のレビューもいいなと思いました。
<読んで頭にちらついたのは村上龍の「13歳のハローワーク」でした。「本当に好きなことを仕事にしませんか?」というコピーで売り出された本のことです。
「ニート」支援マニュアルでは、
本当に好きなことを仕事にしなければという社会の空気が、自分にフィットした仕事探し、自分探しへと若い人を向かわせ、結果的にニート状態の若者を作り出す一因となっていると書いていると思いました。
執筆当時20代であった著者が20代の目線で書いたこの本と、年配の村上龍が若者向けに書いたあの本、二人の著者が本の中で述べている意見のどちらが、今の若い人のリアルをより想像できて述べているか、この本を読むと二人の著者の仕事観に対する考え方の違いに注意が向く人もいるんじゃないでしょうか?僕はその一人です。
ニートであってもなくても、仕事選び、今の仕事が自分にあっているのか等を考えている人なら読む価値はあるのではないかと思いました>
就活でもそういったことをさせられるために難しいのですが、「好きなことを仕事に」だとか「自分に合った仕事」みたいな、キラキラとした華やかな幻想が若者を追い詰めているといった批判は結構あります。
そういった幻想はある意味前向きでポジティブな考えだとは思いますよ。しかし、描く想像図がハイレベルすぎて、ギャップに苦しむことになります。大学の同級生ですごい前向きなことを言う子がいましたが、実際には精神的に病んで長期間学校を休んでいました。「隣の芝生は青い」により、彼の「普通」が高くなりすぎたのではないか?と思います。
でも、そういやそれは
ニートのいる家族の対応は?ニートの心理的特徴は欲求・欲望の無さのニート像と全然違いますね。私の想像がかなり脱線しすぎたのかも。
とりあえず、この最後の
「ニート」支援マニュアル
が一番良さそうだなぁと感じました。
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