2014/8/13:
●小さな大学を保護すべき?山岡景一郎理事長の主張
●大胆なリストラなど…山岡景一郎理事長の改革
●平安女学院大学、偏差値は低くても就職率100%
●30数億円の補助金を得て建設したキャンパスを捨てて移転
●税金を無駄にしたキャンパス移転時の理事長は誰?
●「男女別学」こそ理想の教育環境と主張する山岡景一郎理事長
2019/02/12:
●就職に特化した「大学」に税金を投入すべきなのか?
●小さな大学を保護すべき?山岡景一郎理事長の主張
2014/8/13:タイトル見ておもしろそうだなと思った
平安女学院大学、倒産寸前から再生で就職率100%達成 “大学のゴーン”が狙う次の一手 | ビジネスジャーナル(井上久男/ジャーナリスト 2014.07.08)という記事。ただ、読んでみると、どうなのかな?という部分も多い内容でした。
記事では最初、"弱肉強食といった「強欲資本主義」の流れが私立大学の経営にまで及んできている"と批判しています。ただ、平安女学院大学の山岡景一郎理事長兼学長のやり方には、"企業再生そのものを見ているようで興味深い"となぜか好意的。企業再生というのは、資本主義社会での手法なんですけどね。どうも資本主義が悪いというんじゃなくて、大きい大学だけが悪いって話の流れみたいです。
山岡景一郎理事長も「産業界では、中小企業庁などが置かれ、大店法や中小企業分野調整法等があり、中小零細企業に対して保護・支援の政策的な配慮がなされていますが、大学にはそのような措置が取られていないことに疑問を感じます」と言っていました。さらに「小規模大学連盟」によって、巨額の宣伝広告費をバックにマンモス大学は学部を新設して定員を増大させることの抑制を求めていきたいとも話していました。
"税金を使ってマンモス大学が学生集めをしている"という"資金力の強いマンモス大学しか生き残れない政策"の加速は私も支持しませんので、そちらへの批判には大いに賛同します。かと言って、小さい大学を優遇しろというのは、どうでしょうね。
一応、"経営努力をしながら特色ある教育をしている大学は、定員割れでも補助金を継続してもらう"という言い方であり、これならまあ良いかなとは思いますが…。これなら経営努力していない小さな大学は潰れて良いってことですものね。
●大胆なリストラなど…山岡景一郎理事長の改革
山岡景一郎理事長のやった「経営努力」としては、たとえば大胆なリストラ。これもガチ資本主義であり、むしろ強欲と批判が多い手法なんですけどね。とりあえず、山岡理事長の就任した頃は平安女学院大学は実質的には潰れていて、違法な借金をして続けているという状態だったようです。これは完全にダメダメ。
ここらへんは「労働組合管理の経営」と山岡理事長の呼ぶ悪さもあり、巨額の財政赤字がありながら平安女学院大学のある"京都市内でも断トツの高額な給与を教職員に払い続け、退職金も高水準"だったようです。
そこで山岡理事長は、不平だけ言って教育熱心でない教員には退場してもらいました。「教員の大整理」とのことですけど、これがまさに資本主義的と非難される手法。大学でいったん教員の身分を得られれば、不祥事でも起こさない限り、働かなくてもクビになることはない…そんな常識の世界で大鉈を振るったというのが、どうも「私学業界のカルロス・ゴーン」と呼ばれる由縁のようです。
(2019/02/12:そのカルロス・ゴーンさんが逮捕されて、彼のやったリストラまで最近は非難されています)
ここの山岡理事長のやり方で問題となりそうなのは、教員の人事権。優れた人材を採用する権限が理事会になく、教授会が学問の自由を盾に教員の採用権を持っていたのを、理事会が決定権を持つようにしたとのこと。理事会が教員をコントロールするというのは、異論が出るところかもしれません。
●平安女学院大学、偏差値は低くても就職率100%
読んでみると、上記のように予想外の内容でしたが、私がもともと興味を示したのは、就職率の話。"率直に申し上げて、平安女学院は偏差値の高い大学ではありません"という中、山岡理事長は"立派な社会人になれるような素養を身に付ける教育を徹底"することにしました。
これも学生の本分である勉強を捨てて、学生を集められる武器になる就職率だけに特化するということで、「資本主義」的な匂いを感じますが、私はあって良いやり方だと思います。ただ、「うちは女子大学ですから、立派なお母さんになれる人材を育てたい」みたいな言い方は、女性への偏見を感じます。学校自体もキリスト教系ですので、それゆえの保守性かもしれません。
それはともかく、"卒業生は積極性とコミュニケーション能力が高く、責任感も強い人材が多いと社会に評価され"、"現在の就職率は2年連続で100%"と絶好調なようです。
●30数億円の補助金を得て建設したキャンパスを捨てて移転
これだけだとちょっと短いので検索。ただ、あまりおもしろい話がありませんでした。読んで楽しいものではありませんけど、
Wikipediaではキャンパス移転で揉めたことが目についたくらいです。
<キャンパス移転裁判>
・2004年4月、大学当局は、滋賀県守山市の守山キャンパスを2004年度をもって閉鎖し、守山キャンパスの学生を大阪府高槻市の山中の高槻キャンパスへ移すという発表を行った。
・大学当局は移転の理由として、少子化の時代を見据えて少人数指導や複合的な教育を行うなどのさらなる教育の充実、大学の財政難を打破するための経営の合理化をあげた。
・ただ、両キャンパス間は50キロ離れているため、学生の一部が移転による不利益を訴えて移転反対運動を行った。
・大学側は話し合いに応じず、学生が集めた移転反対の署名も受け取らなかった。
。もともと守山キャンパスは平安女学院大学が2000年に滋賀県と守山市から30数億円の補助金を得て建設したものであるのにもかかわらず、わずか5年後の撤退であることや、移転発表の数日前に1年生の入学式を終えたばかりであったことも紛糾の拡大した要因と言われている。
裁判自体は大学・学校法人側の勝訴で終結しました。しかし、これ読むと大学側がずいぶん身勝手ですね。「30数億円の補助金を得て建設したもの」を無駄にするなんて、マンモス大学への補助金を批判できないでしょう。どの口が言うか?という話です。泥棒が泥棒を批判するようなものですね。
●税金を無駄にしたキャンパス移転時の理事長は誰?
ただし、山岡景一郎理事長が就任する前という可能性があります。前の理事会がクソだったって可能性です。で、この当時は山岡景一郎理事長は既に就任していたんだろうか?と調べると、2003年に既に就任していて笑いました。
<山岡 景一郎(やまおか けいいちろう)氏
1930年京都府生まれ。立命館大学経済学部卒。国家公務員・地方公務員を経て、経営コンサルタントとして、多くの会社・組織を起業。京都市市政改革懇談会委員、京都市政策評議会評議員、社会福祉審議会委員、郵政行政懇談会座長代理などを歴任。
2003年4月より現職。(
平安女学院 理事長・大学学長 山岡 景一郎氏 : キャリアガイダンス : リクルート進学総研 2010年9月6日更新より)
「私が理事長に就任した2003年当時、学院には巨額の債務がありました。(中略)滋賀県の守山キャンパスを高槻キャンパスへ移転・統合するという荒療治も実行した」とインタビューでもおっしゃっています。むしろ良いことをしたという見解です。
●「男女別学」こそ理想の教育環境と主張する山岡景一郎理事長
ついでに記事も読んでみました。
「男女別学」こそ理想の教育環境。
「社会適応力」を高める女子教育を徹底していきたい。
男性と女性では伸ばすべき能力が異なる。
(中略)本学は共学にはしません。今後も女子教育を徹底していきます。理由は、教育上「男女別学」が非常に効果的だからです。男性と女性は生理学的にはもちろん、教育学的にも特性が違うことが明らかになっています。概ね女性は情操において、男性は推論において優れた能力をもっている。お互いに伸びる方向性が違うのです。それを同じ扱いの中に押し込んでしまうと両方の資質が潰し合ってしまうんですね。せっかく伸びていく力を、教育が押さえ込んでしまうという矛盾が起きる。現に、そのことに気づいているアメリカでは男女別学が盛んになってきており、名門と言われる女子大学から多くの優秀な人材が輩出されています。
男女に性差があること自体は間違いありません。
女性は数字が苦手は本当?女子が男子より数学が苦手…は思い込みは男女で数学の能力は変わらないものの、男女がいっしょになっていると女性が数学に苦手意識を持つという話であり、「男女別学」も必ずしも否定すべきものだとは思いません。
ただ、何か微妙に引っかかるところがあります。ここだけじゃなくて全体に、わかることはわかる…でも、一歩間違えると変なところに向かってしまわない?という危なかっしさを感じる話でした。
●就職に特化した「大学」に税金を投入すべきなのか?
2019/02/12:読み直してみると、これでもだいぶ甘く書いていましたかね。最後のところ、山岡景一郎理事長はかなり男女で能力差が異なるようなことを言っていますが、かなり怪しいです。最初の投稿でも、「男女で数学の能力は変わらない」と書いたように、多くの部分で大きな差は見つかっていません。大抵の場合、男女間での差より、個人差の方が大きいのです。
「男女別学」も必ずしも否定すべきものではないと書いてしまっていたものの、「男女別学」が優れているという十分なエビデンスもないんじゃないかと思います。とりあえず、主張をする側、今回の場合は、「男女で能力が異なる」「男女別学が良い」と主張をする側に証明する義務があるため、信頼できる研究論文の提示などがほしいところです。
あと、偏差値を捨てて就職に特化するやり方もあって良いと書いたものの、これもまずかったですね。そもそもそういう学校が大学である必要があるのか?という疑問が出てきます。要するに、それは大学と名乗る必要はなく、就職訓練校みたいなもので良いでしょう?という話です。
平安女学院大学がそこまで低レベルなのかはわかりませんけど、
実は必要?Fランク大学の定義とFランク大学が存在する意義とは何かと関連してくる話。大学を名乗るからには、大学レベルの学力は絶対に必要です。補助金問題で言うなら、それこそ大学レベルではない大学への補助金などは出されるべきではないでしょう。少なくとも大学の補助金とは別枠にすべきです。
重要論文数の割合が減っているため、現在、日本の大学の研究レベルが落ちていることははっきりしています。そして、その理由はまさに政府のかけるお金が少なくなっているからだというのまで判明済み。なので、レベルが低い大学にまで税金を振り分けている現状は、日本の上位校(多くは私立ではない大学)のレベルを落としていると考えられます。もう少しここらへんは考えないといけなそうです。
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