2014/8/18:
●自衛官を養成する防衛大や高等工科学校でいじめで訴訟に
●海上自衛隊が資料を破棄し証拠を隠蔽、内部告発者潰しも
●いじめは自衛隊や防衛大の伝統 耐えることが自衛官の修行にと現役幹部
2018/06/22:
●下級生いじめ、防衛大の6割が参加 「許されない」は1%未満
2020/07/21:
●陸上自衛隊高等工科学校ではいじめの他、自衛官による暴力や体罰
●高等工科学校、前身時代には13人の生徒を溺死させる大量殺人も
●自衛官を養成する防衛大や高等工科学校でいじめで訴訟に
2014/8/18:
防大生、いじめで同級生を刑事告訴 「いじめは修行」体毛に火、集団暴力、性的暴行… ビジネスジャーナル (2014.08.12 秋山謙一郎)によると、幹部自衛官を養成する防衛大学校で、2学年の男子学生が校内でいじめを受けストレス障害になったとして、上級生や同級生8人を横浜地方検察庁横須賀支部に傷害と強要容疑で刑事告訴したそうです。
「陸自学校でいじめ」=元生徒が国など訴え―名古屋地裁支部- 時事通信(2014年8月13日20時53分)という記事があり、最初同じ件だと思って読んでいたのですが、こちらは防大じゃありませんでした。
将来の陸上自衛官を養成する高等工科学校(神奈川県横須賀市)でいじめを受け、退学せざるを得なくなったとして、愛知県に住む元生徒(18)と両親が、同級生だった2人や国などに約700万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁岡崎支部に起こしたというもの。
訴状によると、元生徒は2012年4月に全寮制の同校に入学したが、同級生らからスマートフォンの無料通信アプリ「LINE(ライン)」上に「化け物」と書かれた写真を掲載され、仲間外れにされたほか、蹴られたり「殺すぞ」と脅されたりしたそうです。脅迫まであったんですね。13年12月以降、病院で「不安障害」と診断され、2014年4月に退学することになってしまいました。
実は、最初の防衛大について書かれた記事でも、以下のようにLINEの話がありましたが、詳細が異なるのでやはり別件なのでしょう。
<昨年6月、当時1学年だった男子学生が、上級生に服を脱がされて体毛に火をつけられ、腹部に全治3週間のやけどを負ったほか、今年5月、地元に帰省した際に休暇届を出すのが遅れたことを理由に、上級生や同級生から殴られるなどした。さらに6月には、同級生から男子学生本人の顔写真を黒縁で囲み遺影のようにして、無料通話アプリLINE上にアップされた。男子学生は、これらが原因で重度ストレス障害になったといい、現在は地元の福岡県に帰省し休養している>
●海上自衛隊が資料を破棄し証拠を隠蔽、内部告発者潰しも
上記のように、時事通信の話はもともと同じ話だと思っていたら違ったかな?というもの。これを見つける前にもう少し自衛隊といじめに関するものを…と目星をつけていたのは、
海上自衛隊が「いじめ告発者」を懲戒処分?「内部告発した隊員」を処分していいのか|弁護士ドットコムトピックス 2014年01月11日 15時00分という記事でした。
2004年に亡くなった乗組員の遺書には、先輩からの暴行・恐喝の事実が記されていました。海自は乗組員が亡くなった直後、「たちかぜ」乗組員にアンケートを実施しています。しかし、その翌年に情報公開請求した遺族に「破棄した」と回答。この資料隠しを知った3佐が08年、防衛省の公益通報窓口に告発し、4年後の12年になってやっと、海自が隠ぺいを認めて謝罪しました。
ところが2013年6月、この3佐のもとに海自から懲戒処分手続き開始を通知する文書が届きました。告発時に、証拠として関連文書のコピーを自宅に保管していたことが、規律違反になるというめちゃくちゃな言い分です。
これはいじめ問題の他に、内部告発者潰しの問題でもありますね。以下のようにうちではたびたび取り上げている話題です。
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オリンパスの内部告発者いじめ・報復・パワハラ 裁判の判決も無視 ■
日本の内部告発者、保護されず制裁 携帯履歴提出で犯人探しの消防など ■
内部告発者が匿名なのはおかしい、「痛み」も伝わらない 柔道五輪代表暴力問題で大手新聞社●いじめは自衛隊や防衛大の伝統 耐えることが自衛官の修行にと現役幹部
最初の記事では防大のいじめに関して、防大OBの現役幹部海上自衛官の以下のような意見を載せていました。
「そもそも、いじめに遭うのは動作が緩慢な者か、やたらと正論を吐く理屈っぽい者が多い。自衛隊のような戦闘組織は命令一下、たとえ理不尽な命令でも率先して動かなければならない。動作が緩慢な者はいざというときに組織の足を引っ張る。海外からの侵略や震災などの有事の際は、『何が正しいか』を議論している間に、事態が深刻化することもある」
この後、自衛官は「本人の考え方を自衛官らしく矯正し、もし向いていないと判断するならば、別の進路を考えさせることも防大同窓の役目だ」としていました。ここだけ読むと、いじめを肯定しているわけではなく、適材適所をと言っているだけのようにも見えます。
ところが、そうではないとわかるのは、この話をする前の部分です。何と「こうしたいじめに耐える、いじめられないように立ち振る舞うことも自衛官としての修行になる」と、いじめを肯定化してしまっています。
この発言だけでも自衛隊のいじめ文化をうかがい知ることができるのですが、同じく防大OBである別の現役幹部陸上自衛官が別の角度から自衛隊のいじめ文化を証言しています。
「寝ている学生を靴やスリッパで叩いて起こす。服を脱がせ体毛を焼く。先輩の男性器をくわえさせ、それを写真に撮るなどのいじめは、数年前でも校内では行われていた。自衛隊の中でも、そうした事案は多々耳にする。今回、こうして公になったことで、自衛隊の悪弊を絶つための、いいきっかけになると思う」
ただ、まあ、前述のようないじめの伝統に肯定的な幹部もいるのですから、改善の道は険しいでしょうね。そもそも「悪弊」とすら思っていない人も多そうです。
●下級生いじめ、防衛大の6割が参加 「許されない」は1%未満
2018/06/22:安倍政権では他にも似たようなことが多く起きており、自衛隊だけの問題ではなさそうでしたが、自衛隊はその後、日報問題で「廃棄した」として、証拠隠滅を行っていました。これも彼らの伝統文化のようです。
ただ、今回追記したのは、いじめの方での追記。
防衛大、過半数が下級生いびり 「粗相」数え、体毛に火:朝日新聞デジタル(一條優太 2018年6月22日05時00分)という記事が出ていました。最初の記事と同じ件に関するものなのですけど、これはマジでいじめが伝統文化なんだという衝撃の内容でした。以下のようなものです。
・防衛大学校の学生だった福岡県の男性(23)が在校時に上級生らから暴行された事件を受け、防衛大が実施したいじめや学生間指導に関するアンケートによると、当時の4年生の過半数が「粗相ポイント制」と呼ばれる激しい下級生いびりをしたことがあると回答していた。
・「粗相ポイント制」は下級生が不手際をした際に加算される「ポイント」を清算するという名分で行われていた。体毛に火を付ける、カップ麺をお湯なしで食べる、風俗店に行って撮影などを強制してやらせていた。
・粗相ポイント制を「やったことがある」と答えたのは、最上級生の4年生の57%。「やられた」と回答したのは学年別に26~52%。行為への認識を聞く設問では「許されない」との回答は0~1%にとどまった。
粗相ポイントかどうかは不明ですけど、アンケートでは、殴る、罵声を浴びせる、髪を切る、退校願を書かせる、エアガンで撃つなどの行為があったとの回答もかなりありました。一方で、行為を止めなかった理由は「いじめと感じていない」の他、「昔から実施されていた」「慣習で受け継いで」という伝統文化派のものがやはりありました。
弁護団はアンケートなどを基に、防衛大全体としていじめをする環境があったと主張するそうですけど、こりゃどう考えてもそうですね。特にこの行為をまずいと思っている人が1%未満というのは、ショッキングなものがあります。大日本帝国軍隊の組織を見事に継承しているといった皮肉もあったんですけど、こういう人たちが自衛隊のトップに立つって怖すぎますよ…。
●陸上自衛隊高等工科学校ではいじめの他、自衛官による暴力や体罰
2020/07/21:陸上自衛隊高等工科学校の件を補足。学校ぐるみであったことがわかる話があったためです。例えば、いじめについて相談を受けた生徒の両親からの改善の申し入れも学校側は聞き入れず、ストレスから摂食障害も発症し、入学前に74キロあった体重は60キロまでに激減していたという話がありました。
また、原告代理人の勝田浩司弁護士は、職員の幹部自衛官が暴力や体罰を「愛情だ」などとして正当化していることや、職員が生徒の給与を勝手に使い私物を買うなどの行為が日常的に行われていることに、「組織として旧陸軍時代と変わらない体質があり、いじめに対する意識の低さ、健康への無配慮は目に余る」と述べています。
さらに、元男子生徒は「僕の他にもいじめは多くあり、1学年で30人くらいが辞めていく。学校には仲のいい生徒も残っているので裁判を通じて問題を世間に知らせ、運営を改善させたい」と話していました。
原告の母親も、「防衛大学校の学生が先日、先輩らからの暴行、脅迫などで抑うつ状態になり身の危険を感じ、先輩学生らを傷害容疑で刑事告訴しましたが、私の息子へのいじめと同じだと思った」と語っていました。
(
陸自学校いじめ提訴/高等工科学校元生徒「実態知らせたい」/名古屋地裁 2014年8月14日より)
●高等工科学校、前身時代には13人の生徒を溺死させる大量殺人も
また、自衛隊の歴史と伝統であるという話もここでは指摘。陸上自衛隊高等工科学校の前身である少年工科学校時代の1968年7月2日、武装行軍の仕上げで学校内の池を徒歩で渡るよう教官が命令、78人のうち13人の生徒が次々に溺れ死亡するという大量殺人事件を起こしていました。
記事では、校名は変わっても、「『国を守る』という道を若くして選び…、本校へ入校した生徒たちは、まさに『国家の宝』」(陸自高等工科学校のホームページより)という精神構造は同じだと問題視しています。「国家の宝」をいじめてるってわけわかりませんね。
ここらへんの見方には反発する人もいるでしょうが、「防衛大学校で研究する夢があった」という元男子生徒を自衛隊組織全体でいじめ、暴行したというのが現実ですからね。大げさな文句で飾ってカッコつけて美化しても、やっていることはいじめ・暴力。この事実から目をそらしてはいけません。
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