<キルギスの誘拐婚 誘拐された女性の8割が結婚を受け入れる理由>など、キルギスや誘拐婚に関する話をまとめ。<「誘拐婚」はそもそも広く行われた伝統ではなく「捏造」だった>、<事実上の脅迫?断れば女性はその後結婚できなくなることが多い>などをまとめています。
2023/06/26:
一部見直し
●「誘拐婚」はそもそも広く行われた伝統ではなく「捏造」だった
2014/8/31:「誘拐婚」という風習があることは数年前に知りました。ただ、
Wikipediaを改めて読んでみて、あれ?と思いました。1994年に法律で禁止されたそうなのです。禁止されていたとは全然知りませんでした。
では、禁止されているので今はないのか?というと、そうではありません。警察も裁判官も黙認しているといいます。しかも、元は地方の風習であり、都市部では行われていなかったのに、2007年に公開された映画「盗まれた花嫁」の影響で、都市でも増加することになるという信じられない事態になって余計増えるということに。
ということで、「伝統だから」とやっているんじゃない地域もあるみたいですね。ただし、このように伝統ではなかったものを伝統だと言って広めるということは世界各地で起きています。実を言うと、ショッキングなことに、日本も作られた伝統というのは多いということを以前うちでは紹介しています。
(関連:
民族の伝統もナショナリズムも捏造され発明された非歴史なもの、
大相撲が捏造伝統の女人禁制で殺人未遂 救命中の女性に土俵から降りるように指示)
一応、まだ首都ビシュケクでも行われていることを知る人間は少ないとも言われているようですが、前述の通り、むしろ増えており、時代に逆行する形となりました。しかも、誘拐婚のやり方は年々暴力的なものとなっているとされるそうです。これも近年むしろ問題化という、時代に逆行する流れです。
このことは、"共和国の崩壊後、反米主義とそこから来る伝統回帰を求めるキルギスの流れの一環として考えられている"とのこと。だとすれば、"国際的にも大きな人権問題として取り上げられている"状況は、逆効果かもしれません。ただ、他国が干渉しているというだけではなく、前述の通り国内でも法的に禁止なのですし、国内でも問題となっている状況。「伝統だから」では済まないでしょう。
●事実上の脅迫?断れば女性はその後結婚できなくなることが多い
先に問題点の方をたくさん書いちゃいましたが、Wikipediaの冒頭部から誘拐婚の簡単な説明を。Wikipediaでは「アラ・カチュー」というタイトルになっており、アラ・カチューは、キルギスで行われている婚姻形態の一つで、誘拐婚の一種だと説明されています。
これは、男性が求婚する女性を誘拐し、処女を喪失させる、もしくは女性が処女を喪失したと周囲に認識させることで、事実婚としてしまうもの。国民の75%がイスラム教徒であるキルギスでは処女性は婚姻の際に重視されるため、断れば女性はその後結婚できなくなることが多いとされています。私はこの断ったらその後結婚できないって話は、記憶にありませんでした。脅迫性があるわけです。
今回の話を書く直接的なきっかけは、Wikipediaではなく
無理やり連れ去られる女性 結婚相手は「誘拐犯」 :日本経済新聞 2014/7/13 6:30という記事でした。ここでは、キルギス語で「アラ・カチュー」と呼ばれる「誘拐結婚」は、中央アジアのキルギスで、仲間を連れた若い男が嫌がる女性を自宅に連れていき、一族総出で説得し、無理やり結婚させるものだと説明しています。
●基本介入しない…ルールを破りジャーナリストが介入した例とは?
フォトジャーナリストの林典子さんは、2012年7月から5カ月間、キルギスにて誘拐結婚の実態を取材・撮影。さらに約1年半後、彼女たちを追跡して1冊の写真集『キルギスの誘拐結婚』にまとめています。今回の記事は、取材で出会った女性たちの中から、特に林さんの印象に残った女性の「物語」を紹介するというものでした。
作者であるフォトジャーナリストの林典子さんは、この誘拐婚の記録を撮っていました。その際には基本的に介入しないと決めていました。ジャーナリストが介入してしまった場合、「自作自演!」などとむしろ批判されるときがあると思われますが、こうして「介入しない」としたことにも、批判があるかもしれません。
<写真家がその場の状況に「介入」すべきかどうかについては、さまざまな意見がある。「なぜ助けずに撮影するのか」という批判がある一方、「活動家でもない写真家が介入するのはプロ意識に欠ける」という見方もある。正解はないと思っている。その場の複雑な人間関係、そこに根付いた価値観や「文化」など、そこに居合わせたからこそ判断できることもある>
"キルギスの誘拐結婚には、女性が「家に帰りたい」と言いつづければ帰さなければならないという「暗黙のルール」があることがわかっていた"というのも、介入しないことを決めた理由の一つ。しかし、一方で"女性の意思を無視し、無理やり結婚式を始めたり、彼女たちがレイプされそうになったりした場合には、介入して救出する、と決めていた"そうです。
そして、実際に介入する機会も取材中一度だけ訪れました。ただ、このケースは意外なことに、結婚を嫌がったというものではありません。それどころか、もともと好意を抱いていた男性からの求婚を、誘拐直後に承諾していたのだそうです。事前に決めた介入のルールには、全く触れていないどころか、幸せなケースに見えます。
ところが、彼女が誘拐で結婚してから1カ月半後、再び訪ねてみると、容姿が一変していました。"かなりやせ、一気に年を取ったよう"に見えたのです。夫のいない場所で話しはじめると、彼女は突然泣き出しました。夫から暴力を振るわれているとのこと。一度逃げ出そうとしたが、連れ戻されていたということもあったようです。
このときに、林典子さんは介入を決意しました。"通訳やドライバーから彼女の身に危険が及ぶかもしれない"とアドバイスされたので、"いったん彼女をその場に残し、状況を警察と人権団体に報告"するという形での介入です。そして、後日、協議の上で別れることになりました。
これは誘拐婚へ介入して中止させたというのではなく、結婚後のドメスティックバイオレンスへの介入ですけどね。
離婚理由ランキング 1位は浮気でも借金でもギャンブルでもないで書いているように、ドメスティックバイオレンスは起きており、日本でも最も多い離婚の原因。誘拐婚特有の問題ではないでしょう。
●キルギスの誘拐婚 誘拐された女性の8割が結婚を受け入れる理由
この記事によれば、"キルギスでは、誘拐された女性の8割が結婚を受け入れるといわれてい"るとありました。しかし、このケースのように"結婚後に暴力を振るわれる例も後を絶たない"そうです。"一方、誘拐で結婚し、その後、穏やかな家庭生活を送る女性たちもいる"として、記事の後編では、"誘拐され、結婚を受け入れた女性たちの、その後の暮らしを紹介する"と予告していました。
ただ、実際に後編の
「誘拐」された女性が、結婚を受け入れる本当の理由 :日本経済新聞 2014/7/20 6:30を読んでみると、これは「幸せな結婚生活」を送っているという意味ではなく、もっと複雑なもののようです。これは、作者の林典子さんは、2日前に誘拐されて結婚式を挙げる女性の取材に行ったときの話でした。
女性は客が来ると胸に手を当て、ほほ笑んで深々とお辞儀をして迎えており、とても2日前に誘拐されたばかりの女性には見えません。ところは、これはそういう態度をとっていたというだけだったのかもしれません。彼女は独りになると急に表情が暗くなり、肩を落として考え込んでいました。
作者の林典子さんは女性です。また、1983年生まれですので若いです。取材当時は2012年でしたので、29歳くらいだったでしょう。彼女は取材当初誘拐され、結婚を承諾するキルギスの女性たちの気持ちがわからなかったと言っていました。以下のように書いています。
<誘拐結婚についてよく尋ねられることに、「なぜ誘拐されたキルギスの女性たちは、逃げずに結婚を受け入れるのか」というものがある。自分が誘拐されたら、どんな手段を使ってでもその場から逃げる。女性ならそう考えるのが普通だろう。私もそうだった>
ただ、この取材の女性の話でその答えがいくらかわかってきました。女性は以下のように話しており、「仕方なく受け入れる」というケースが多いと予想されます。Wikipediaにあった"断れば女性はその後結婚できなくなることが多い"とも関係する話でしょう。
「結婚は早すぎたと思います。でも、キルギスの女性にとって、いったん男性の家に入った後に、そこから出るのは恥ずかしいことなんです。高齢の女性にも説得されました。高齢の女性を敬うのはキルギスの伝統です。結婚を拒否して実家に帰ると、両親に恥をかかせてしまうので、あきらめて結婚を受け入れました」
●見ず知らずではなく知っている人を誘拐することも多い
最初の例でわかるように、この誘拐婚は全くの知らない女性をさらってくるというわけでもなさそうです。2人目の例では、3回だけですけど、会ったことがあったとのこと。
そして、次に紹介するケースでは、2回でした。誘拐したのは高校教師で、誘拐の10日前、市場で出会った女性に一目ぼれをし、2回目に会ったときにプロポーズをしたが、やんわり断られていたそうです。
彼は"誘拐結婚が違法だとわかっていたし、生徒の模範にならなければとためらったが、両親に勧められたこともあり、誘拐を決行した"とのこと。キルギスでは、男性に好意を持たれると、誘拐婚を警戒しなくてはいけないと思わせる話です。
●国の伝統だから受け入れなくてはならないと語る女性も
この彼女のケースも2人目の人と同様に"人前で疲れた表情や不満を一切出さず、むしろ不自然に笑顔を見せることすら"あったそうです。"結婚式の後に撮ったポートレート"でももちろんほほ笑んでいました。
ただ、やはり"台所などで独りになると、もの思いにふけってい"るところが見られました。そして、"結婚して3日後、私と二人きりになると突然"、"露和辞典を手に取り、話しかけてきた"そうです。「家事が多すぎてもう体がもたない」「アフマット(引用者注:教師の名)は私のことなんて本当はどうでもいいと思っているはずだ」と。
その日以降、私たちは夜中、みなが寝静まった後に二人で台所へ行き、辞書を片手に会話するようになりました。彼女もやはり求婚した男性のことはよく知らないし、嫌だったようです(説得にも5時間かかっていました)が、「でもこれはキルギスの伝統だから、受け入れたの」と言っていました。
●誘拐婚を受け入れた女性は自分の娘に誘拐婚を勧める?
この女性とはその後、1年4カ月ぶりに再会しています。子供ができて産休中で、"嫁いだ村でずっと生きていくことを受け止め、思い描いていた未来は奪われても、必ずここで幸せになってみせるという覚悟すら感じた"そうです。
ただ、やはり誘拐婚を快いものと感じていたわけではなさそうです。「もし子どもが女の子だったら、将来、誘拐結婚はさせたくない」と言っているためです。また、自分に言い聞かせているように「いいパートナーにめぐり合って、その人と幸せな家庭を築いていくことが、女性の幸せだと思う」とも言っていました。
当然といえば当然なのですが、誘拐婚という当人の意思を無視した結婚によって受けた傷は、そう簡単には癒えるものではありません。「誘拐された女性の8割が結婚を受け入れる」の8割は、このような犠牲によって達成されているようです。
●インドで男性の誘拐婚事件 強制結婚の風習があった地域で
2018/06/29:インドでは、男性の誘拐婚というのが起きていました。これは、
男性を拉致し銃突き付け結婚を強制、インドで捜査 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News(2018年1月5日 20:19)という記事で読んだもの。エンジニアの若い男性が拉致され、銃を突き付けられた状態で強制的に結婚させられたとして、警察が捜査を開始したことを伝える記事です。
男性は何とか逃げ出し、自宅に帰ったいいます。で、どうも彼が訴えたわけではないみたいですね。事件は、被害の様子が映る動画がソーシャルメディアに出回り発覚したといいます。
ある動画では、解放してくれと懇願する男性に対し、「おまえの結婚式をしてやろうというだけだ、何もつるし上げようというわけじゃない」などと叫ぶ男の声が、また別の動画では、花嫁の横に座りながら泣く男性などの様子が撮影されていました。
事件が起きたビハール州はインドで最も貧しい州の一つとされ、同州と周辺地域では結婚時に支払いを期待される持参金が支払えない貧しい家庭の出身者が強制的に結婚させられる風習があったとのこと。エンジニアの人であり、貧しい家庭の出身者ではないものの、こうした「伝統」が悪い影響を与えた可能性がありそうです。
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