昨日の
24時間テレビドラマはなちゃんのみそ汁、がんの食事療法を宣伝の「はなちゃんのみそ汁」は、原作の本の方がずっとひどいと言われていました。
ということで、アマゾンの「
はなちゃんのみそ汁
」のレビューを見てみたら、5つ星のうち 4.0とかなり良い数字になっていました。5つ星が多いのです。
ただ、これは前回心配した感化されている人の多さ、問題の深刻さを示す数字と捉えた方が良いかもしれません。「このレビューが参考になった」の投票が多いコメントは、ことごとく悪い評価です。
最も参考になったカスタマーレビューの方は、"自身も病気で身内を亡くしている"のにも関わらず、"全く同情できなかった"と言っています。辛い言い方になってしまいますが、亡くなるべくして亡くなっているような状態になっているためでしょう。
たとえば、"治療の過程で知ったマクロビオティックとホールフードに必要以上にのめり込み過ぎて、一度は命を救いかけてくれたBJ(引用者注:ブラックジャック)先生の助言まで無視し、さらに、がんの経過観察中にも関わらず、あろうことか定期検査をおろそかにするという、半ば自殺行為のようなことまでして再発している"というのが、「亡くなるべくして亡くなっている」というように見えるところです。
さらに"最善を尽くしている、という感じにまとめようとしてはいるが、単に恒常的に躁(そう)状態になっていた母親に、本来は冷静になるべき周りの人間たちが引きずられ、巻き込まれたあげく、永らえることが出来た寿命を縮めてしまったようにしか、何度読んでも思えない"とおっしゃっています。
こういったわざわざ悪い選択をして死を早めてしまった…と見えるところから、"闘病記は何冊か読んだことがあるが、こんなに後味の悪いものは初めてだった"として、タイトルも「読後感が非常に悪い」になっていました。
次のレビューの方もやはり「後味の悪い本」というタイトルです。ただ、この方の感じている後味の悪さは、先ほどと多少違います。この方が"やり切れなさを感じ"ているるのは、"この本の筆者が新聞記者である点"です。夫の方は新聞記者なのです。
"新聞記者という職業は世の中の正しいこと正しくないことを見極める力がなる人だけがつける職業だと思っていた。しかしこの本を読むとそうでないことが感じられる"といったところから来る後味の悪さでした。
この新聞記者の夫は"代替医療にのめり込み、検査さえ「免疫力が落ちる」と拒否"する"妻の盲信をいさめること"はありませんでした。それどころか、夫は"ブラックジャックのような怪しげな医者を頼り「栄養」と称する黒い液体を自ら妻の体に注射する"始末。最初のレビューではブラックジャック先生が真っ当な先生であるかのように書かれていましたが、こちらを見るとブラックジャック先生のところへ行った時点で既に道を踏み外している感じです。
で、この妻の方も実は社会的にはむしろ知識を身に着けている…と思われている職業なんですよね。アマゾンにあったお二人の経歴を載せておきます。亡くなった妻は教師だったんです。
安武/信吾
1963年9月11日生まれ。福岡県宮若市出身。下関市立大学を卒業後、西日本新聞社に入社。久留米総局、宗像支局、運動部の記者を経て、現在、企画事業局ソーシャル事業部で地域創造プロジェクト「NEWS cafe」を担当
安武/千恵
1975年1月28日生まれ。長崎県大村市出身。福岡教育大学大学院(声楽科)を修了後、北九州市の明治学園小学校に音楽教諭として勤務。がん闘病中にブログ「早寝早起き玄米生活」を立ち上げ、人気サイトに。タカコ・ナカムラWhole Foodスクール福岡校の初代事務局長。2008年7月11日、死去
ただ、言いづらいことですけど、マスコミ関係者にしても、教師にしても、考え方がおかしい人はむしろたいへん多いと感じています。特に今回のような自然科学系での判断力の悪さは際立っている印象です。
なお、この2番目のレビュアーさんは「はなちゃん」という娘さんが最大の被害者といった印象を受けているようです。"「命がけで生んだ」と書き、その上テレビ出演までさせる。結果娘は「お母さんのいない可哀そうで健気な子供」というレッテルを貼られる"としていました。
実は最初の方も"「はなちゃんのみそ汁」というタイトルにも関わらず、はなちゃんは完全な脇役である。という点で、まず何か子供をダシに使っただけのような感じがして、そこがどうもしっくりこない"と書いていました。娘さんが周囲に利用されているように見えたみたいです。
これは両親だけでなく、出版社にも言えることでしょう。3番目の方は短いですが、「こらあかん。代替医療で命を落としたのに、その元凶の自然食レシピを載せるか? その神経がわからん」としていて、出版社への批判になっています。本を出したのは文藝春秋なのですけど、何を考えてこのような本を作ったのか…。
最初の方は登場する人物がことごとく悪い選択をしているように見えていたようです。後味の悪さは、他の登場人物からも感じられるのかもしれません。
たとえば、4番目の方は、"本人が怖がっているのに"も関わらず、"がんと戦う妻に危険承知で出産させる周囲の神経も疑う"としていました。そして、さらに"実父が、がんの娘に『死ぬ気で産め』なんて言います?"と指摘しています。
"もう、全般に本当に嫌悪感です。なんで売れるのかわかりません"という違和感を感じていらっしゃいました。
アマゾンの最初のページで見えるレビューは5番目までですが、最後も結局悪い内容。1点は40人中7人しかいないのに、ベスト5を独占しています。
最後の方は長いですね。まず、食事療法(マクロビオティック)について。
色々と引っかかるところがありました…
ブラックジャック先生の提唱する健康法?食事療法?生活改善方法?も
そのおかげで癌が消えたと盲信しているご夫婦も。
マクロビオティックに開眼してそれを実践してることに過信して、
一度は転移したがんを克服できていたのに、定期健診にすら通わず
二度目の再発転移が発覚した時にはすでに手の施しようがない状態になってしまったとか…
子どものこと考えるならちゃんと病院に通って、しっかり経過観察すべきだったのに
夫婦してそれを怠っているんだから自業自得と言われても仕方ないかと思います
妊娠についても、首を傾げたくなる点が見られます。
"乳がんの手術を受けたあと、抗がん剤の副作用で妊娠は難しいと言われていたかもしれないけど、
もし妊娠をしたら女性ホルモンの分泌が盛んになってがんの再発の可能性が上がることは分かっているのに
妊娠して、子供ができたとわかったら堕胎も考え涙する"
周囲の人や出版社の人がたちが悪いのは、これを美談だと思っていることです。"がんの娘に『死ぬ気で産め』"という父など、ここだけじゃなくて、全体にそうですね。世間から見るとおかしいと思うところを感動話だと捉える常識からのズレが見られます。
最後の方がドン引きしたという"旦那さんも情緒不安定な奥さんと喧嘩して往復ビンタした"といったエピソードを載せてしまう点からしても、この出版に関わった人たちの非常識がわかります。美談じゃなくてドメスティックバイオレンスですよ…。
それから、これらのレビューを読んでいて思い出したのが、
アメリカ人が信じる「エイズの原因はHIVウイルスではない」 エイズ否認主義の魅力です。本来最も正しい知識が必要なはずの患者が、トンデモな治療法にのめり込んで忠実に実践した上に、宣伝役を務めて世に広め、新たな被害者を獲得していく…という最悪な構図が全くいっしょでした。
レビュアーの方も書いていましたが、非常にやるせない話です。こんなのどうすりゃいいの?と思います。
ただ、今回のケースでは、大手出版社やテレビ局に真っ当な判断をする方がいれば、防ぐことができたはずです。大手が出版しなくても、金儲けできれば何でもいいという弱小出版社は出そうとするでしょうが、だいぶ扱いの大きさが違ったと思います。特に何だかんだ言ってもテレビの力はすごいので、テレビが取り上げないだけでも相当違ったと思われます。
ここらへんを防げなかったのは、途中で書いたマスコミ関係者の理解のなさなのですが、この点は批判によって改めていける可能性があると思います。
追加
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