「健全なる精神は健全なる身体に宿る」の本来の意味については、
ナチス軍国主義の産物だった「健全なる精神は健全なる身体に宿る」を参考にしてほしいのですが、スポーツする人の精神が健全ってあり得ないよね…という感じの話が最近目についたのでまとめて紹介するものを作りました。(2014/9/10)
2017/10/28追記:
息子のスポーツ優先で困窮、家族が崩壊
家族をスポーツの犠牲にする逸話を美談にするな!
●健全なる精神は健全なる身体に宿る?部活でいじめ横行の現実
2014/9/10:部員の不祥事で部全体が責任を負わされるのっても変だと思うのですが、
いじめ済美対外試合禁止1年、来夏も絶望的 - 高校野球ニュース : nikkansports.com[2014年9月9日16時5分]の件は内容を見て驚きました。"4月末から2年生部員計6人が、1年生部員計19人に対して、日常的に暴力行為"を行っていたという悪質なもので、中身が本当にひどいです。
・尻をバットでたたいたり、顔や腹部への暴力を日常的に繰り返した。
・4月には2年生が1年生に対して、カメムシを食べるか、灯油を飲むかの選択を迫り、死んだカメムシを3秒間、口に入れさせた。
・5月には1年生部員7組にケンカをさせ、2年生部員が観賞する行為があった。
●傷害事件を起こした生徒の扱いで学校側が不可解対応
上記は生徒がひどい…というわかりやすいものですが、この後に読んだ
前橋育英高、国体バスケ県選抜辞退 傷害事件の扱い巡り:朝日新聞デジタル(2014年9月9日09時39分)は最初意味がわかりませんでした。
前橋育英高校"男子バスケ部では昨年12月、上級生2人が下級生1人を体育館の床に投げて鎖骨骨折のけがをさせたとして、群馬県警が今年6月に現在3年生の2人を書類送検し、地検が傷害の非行内容で家裁送致"されました。記事タイトルで「傷害事件」と書いて「いじめ」と書いていないように、ひと目で悪質な暴力だとわかります。
私はてっきりこの件で連帯責任、県選抜辞退…となってしまったのかと思ったら、違うのです。まず、同校は2人を停学処分にしたものの、"反省しているとして全国8強となった8月の高校総体に出場させた"ようです。連帯責任どころか、個人も出場させていたようです。
さらに"県バスケットボール協会が国体県代表の選考過程で、家裁送致された選手を外して同校から6人を選ぶ方針を伝えた"ところ、前橋育英高校側が"当該選手は処分済み"だからと協会の方針に反発します。そして、"他の選手たちも「気持ちよくプレーできない」などと出場辞退を申し出"たことで、「全員の辞退」となったようです。何だこりゃ?
さっきも書いたように連帯責任はどうかと思いますが、これもわけわかりません。当該選手の処分の長さについては議論があって良いでしょうけど、反発して他の選手のボイコットまで許す…となると、学校や教師の姿勢まで疑わざるを得ません。
●怪我をした子供を責めるスポーツ指導者
こういう風にスポーツは指導者の側の精神も、到底健全とは思えないところがあるんですよね。部活の話ではありませんが、数日前に読んでショックだったのが、
スポーツやめたいけど、やめられない 苦しむ子どもたち:朝日新聞デジタル(中小路徹、後藤太輔 2014年9月3日13時36分)です。
東京都のクラブチームで新体操をしていた女子中学生は、練習が嫌で行けなくなりました。新体操が嫌いだったわけではなりません。むしろ好きだったそうです。
では、なぜ練習に行けなくなったのか? 行けなくなったきっかけは指導者の罵倒でした。"前日、足のけがでドクターストップがかかり、次の大会に出られないことを指導者に伝えると、けがしたこと自体をとがめられ、一緒にいた母親もののしられた"そうです。
(2017/10/28追記:怪我関係では、怪我を押しての出場を美談とする精神も良くないと思います →
怪我押して強行出場の稀勢の里を例に安倍首相、公務員に「甘え許されぬ」と精神論 働き方改革どこ行った?)
この指導者はもともと"保護者たちがいない場では、日常的にミスした子どもを平手打ちや足蹴にしていた"そうで、別のチームメートを「あなたのミスで全国大会に行けなかった」と罵倒しています。これが健全なスポーツの指導だとは到底思えません。
●体罰が横行するスポーツの現場
ここで出てきたような指導者の暴力は「いじめ」ではなく「体罰」や「指導の一環」という言い訳が成り立ちやすいです。
鳥取県教委、体罰教師10人を懲戒とせず : nikkansports.com[2014年8月30日17時45分]は、こういった「指導」が教師だけでなく、社会的にもある程度許容されていることを感じさせます。
日刊スポーツによると、"鳥取県教育委員会が2013年度、生徒に体罰をした県立高の教職員10人をいずれも懲戒処分より軽い訓告処分にしていたこと"がわかりました。"県教委の担当者は「どの事案も生徒のけがや処分後の体罰がなく、総合的に状況を判断した。過去には体罰によって懲戒処分にした事例もある」と説明している"そうですが、内容は相変わらずひどいです。
・12年12月の部活合宿中に宿泊施設の規則を守らなかった生徒7人を蹴ったり、殴った。
・12年7~12月、部活の指導で生徒に平手打ちなどの体罰を繰り返した教諭は、初めの訓告処分後に以前の体罰事案が発覚し、2回目の処分を受けた。
2人目の場合、「処分後の体罰がなく」という説明が嘘になるのではないか?と思ったのですが、昔のものが判明したのでセーフってことなんでしょうね…。
我が子の先生は「体罰教師」- NewsCafe(2013年8月16日15時00分)では、ある識者の「日本のスポーツ界におけるコーチ学の遅れ」を指摘していました。すべての「体罰信仰」の裏には「コーチ学の未熟さ」があり、自分の経験で教える危なさがあるといった主張です。
この指摘が的確かどうかはわかりませんが、とりあえず、部活やスポーツの世界が健全な精神とは程遠いところにあるというのは確かでしょう。
●息子のスポーツ優先で困窮、家族が崩壊
2017/10/28:スポーツを一生懸命やることは本当に良いことなのか?スポーツに注力することで他を犠牲にしていないか?という話を過去に書いた気がしていたのですが、見つからず。ただ、このページでも紹介した
スポーツやめたいけど、やめられない 苦しむ子どもたち:朝日新聞デジタル(中小路徹、後藤太輔 2014年9月3日13時36分)には、近いエピソードが出てきており、私が書いたと勘違いしたのは記事の内容が記憶に残っていたためでしょう。
記事では、スポーツ指導者の異常性にうすうす気づきながらも、やめることを積極的に勧められなかった母親の話が出ていました。「もしかしたら日本代表も、という期待が捨てられなかった」というのが、その理由の一つ。親の希望が子供を縛って不幸にしていた可能性があるわけです。
そして、この話と今回いっしょにしようと思ったのが、
「これ、放送しちゃダメだったろ」 TBSドラフト特番、死にたかったと嘆く「指名漏れ」選手にスタジオ絶句 J-CASTニュース / 2017年10月27日 19時7分という記事の逸話。
2017年10月26日放送の「ドラフト緊急生特番!お母さんありがとう」(TBS系)で、九州共立大の望月涼太選手(22)が特集されました。ただ、これを美談としちゃいけないだろう…という内容だったのです。
・「自分が野球をやってから、家の中がおかしくなった。死にたいと思うくらい、申し訳ないなって思っていました」と、番組VTRの中で両親に「懺悔」。特集のタイトルも「野球が切り裂いた家族の絆 今夜、笑顔を取り戻す」。
・幼い頃からプロ野球選手を目指していた望月選手は、小学4年生の時に周囲との「温度差」から少年野球チームを退団。建設会社を経営していた父に「毎日練習に付き合って欲しい」と頼むと、会社を早退するなどして協力。高額な野球塾に通わせるなど、毎月10万円以上を費やす。
・家計は苦しくなり母はパートを始めたが、父は息子のサポートを優先し、85万円のバッティングマシーンも購入。
・望月選手が中学生になると、父が会社を休んで練習に付き合い、経営を部下に任せるように。
・ところが、その部下が会社の建設資材を転売し持ち逃げ。被害額は数千万円で、父の会社は廃業。
・日々の食費にも困るようになり、父と母が衝突することも多くなったが、父は望月選手の練習優先で、新たな仕事を始めなかった。
・責任を感じ号泣する望月選手に、妹が「やめなよ、野球。家族がここまでぐちゃぐちゃになってるのに。そこまでして続けるものなの、野球って?」と言われる。
●家族をスポーツの犠牲にする逸話を美談にするな!
ただ、妹に「やめなよ、野球」と言われても、結局やめなかったから、ドラフト会議の特集のネタになっているわけです。そして、「自分が何とかしないといけない。プロ野球選手になって、親を生活できるようにさせてあげたい」という美談に転換されてしまっています。
TBSはこの望月選手が無事プロとなって大逆転!というシナリオを描いていたんだと思われます。ところが、なんとどの球団からも声がかからずという事態に。追い込むだけ追い込んで、そのまま絶望エンドです。
ただし、これは「彼が指名されれば良かった」という話じゃないと思うのですよ。たとえTBSの思惑通りに話が進んでいたとしても批判されるべきもの。美談にしてはいけない話でした。
マスコミはこういう話を美談として消費するのではなく、むしろ行き過ぎたスポーツ重視について、問題提起すべきでしょう。
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