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異常だった小保方晴子のSTAP細胞会見 女性研究者らしくない演出


 STAP騒動 科学者たちはどの時点で疑問を持ったのか――「STAP細胞」とは何だったのか? 科学者本音座談会(1)|矢来町ぐるり 2014年8月28日秋風月増大号という座談会の記事がありました。

 このタイトルになっている「科学者たちはどの時点で疑問を持ったのか」については、榎木英介・近畿大学医学部講師の場合、3月上旬に公表されたSTAP細胞のプロトコルのときだとしていました。そこで「STAP幹細胞にTCR再構成がない」と発表されたのを読んで、さすがにそれはマズいんじゃないかと思った…というものです。

 続いて話していた池田清彦・早稲田大学国際教養学部教授は、実は「プロトコルが発表された日、テレビ局から電話があって、小保方さんに好意的なコメントをしてしまった」そうです。しかし、池田教授も帰りの電車の中でプロトコルを読んで「これはマズいぞ」と思ったようです。好意的なコメントをしただけに池田教授にもマズい話です。

 「多くの生物学者は、あの時点でぶっ飛んだと思います」も池田教授の発言ですが、以前のSTAP細胞の画期性 専門家の中では実験手順公開時点で既に終わっていたなどで書いているように、研究者らの信頼性で決定的だったのはこのプロトコル(実験手順)です。世間の反応は実験手順を公開したのだから嘘じゃないだろう、すぐに再現されるだろう…という好意的なものだったのですが、専門家の反応は全く逆でした。


 プロトコルが決定打だったというのは逆に言うと、それまでは「問題だ」という姿勢が固まっていなかったということです。さらに疑惑が生じる前に関しては、本当に全然疑っていなかったような人が多いですね。

 たとえば、サイエンスジャーナリストの緑慎也さんは、以下のように語っています。

「ちょうど読んでいた池田先生の『生きているとはどういうことか』という本にも、ショウジョウバエの胚にエーテルを吹きかけると、本来は2枚しかない羽が4枚になるという例が出ていました。外部刺激で細胞の万能性が復活することは、自然界ではあり得るという話です。だからSTAP細胞も、非常に面白いと感じました」



 続いてその池田清彦教授が次のように発言しています。

「小保方さんが割烹着姿で実験する映像などを見て、会見が大げさだと感じましたが、STAP細胞は面白いと思いました。最近はエピジェネティクスといって、遺伝子自体ではなく、それに外部刺激を与えるとアクティビティがどう変わるかが大事になっています。そうした実験を重ねていけばSTAP細胞のような発見があってもおかしくないと。こんな簡単なやり方を今まで誰も試さなかったのは不思議でしたが、彼女には特殊な実験能力があるんだと思った。その後、「ネイチャー」誌で2つの論文を読んでも、ウソだとは思いませんでした」

 エピジェネティクスについては私は最近知ったところで、驚きました(後天的な遺伝とエピジェネティクス 恐怖の記憶で遺伝子にスイッチ)。これも信じられないような話です。

 それはいいとして、「特殊な実験能力」というのは危ない見方ですけどね。この「特殊な実験能力」はたぶんエピジェネティクス絡みのパウル・カンメラーを意識されているのだと思います。とはいえ、多くの場合は「特殊な実験能力」などではなく不正・捏造なので注意しなくてはいけません。

 カンメラーについては以下のWikipediaが参考になります。カンメラーの場合は本当に特殊な能力であった可能性がありますが、やはりそれでは科学的な証明はできません。
特に有名なのは、オーストリアのパウル・カンメラーによるサンバガエルの実験である。彼は両生類の飼育に天才的な才能を持っていたと伝えられ、陸で交接を行い足に卵をつけて孵化まで保護するサンバガエルを、水中で交接・産卵させることに成功した。水中で交接するカエルには雄の前足親指の瘤があって、これは水中で雌を捕まえるときに滑り止めの効果があると見られる。本来この瘤はサンバガエルには存在しないのだが、カンメラーはサンバガエルを3世代にわたって水中産卵させたところ、2代目でわずかに、3代目ではっきりとこの瘤が発現したと発表した。つまり、水中で交接することでこの形質が獲得されたというのである。ところが公表された標本を他の研究者が検証してみたところ、この瘤はインクを注入されたものであることが発覚。実験自体が悪質な捏造であると判断され、カンメラーは自殺した。その後、サンバガエルの水中飼育に成功した例は存在しない。

 座談会に戻ります。医学博士の丸山篤史さんも「魅力的で独創的なストーリー」と言っていましたが、「周りの研究者と『本当にこんなことが起きるのか』と、侃々諤々の議論になりました」ということで、ここは本当なのかな?と思っていた人もいるようです。疑惑初期は「疑う奴は非国民」みたいな人も多かったのですけど、こういう議論が起きるというのは健全ですね。


 一方、この最初の会見については、違和感を感じた人も多かったようです。榎木英介講師は「私が知るかぎり、科学の世界の発表は、大規模なものでも、会議室のテーブルで研究者がパワーポイントを使って説明する風景です。割烹着にムーミンで、“エア実験”風景まで撮らせている。ちょっと考えられない会見でした」としていました。

 ただ、丸山博士は「税金で研究している機関にとって、マスコミ向けに会見を開くことは文科省へのアピールにもつながる。その意味では、お手本のような会見でした」ということで、わからないでもないというものです。まあ、文科省アピールで考えて…ってことですから、国民そっちのけの話ですけどね。

 この会見はその文科省が画策したものでは?という憶測記事もありました。
騒動広げた理研“最初の会見”誰がセットしたか NEWS FILE:PRESIDENT Online - プレジデント 2014年4月15日(火) PRESIDENT 2014年5月5日号 著者 ソーシャルメディアリスク研究所代表 田淵義朗

「すべてはあの記者発表に原因がある」と広報コンサルタントの石川慶子氏が言うのは、1月末の最初の会見。30歳のまだ実績のない研究者の発表に記者が大挙して押し寄せることはまずない。論文共著者、理化学研究所の名前が大きいのは明らかだ。割烹着、リケジョなどマスメディアの取り上げ方に批判も出たが、もともとは理研側が情報提供しなければ出てこない話である。(中略)

大きな疑問の一つは、誰が誇大な記者会見をセットしたのかという点だ。「理研の広報は一般の企業の広報と比べると、対外活動はそれほど積極的でない」(理研OB)という。特別な力が働いたと考えるのが自然だ。「理研というと何か一枚岩の研究組織のように思われるが、数多くの個人商店が入っている大きめの雑居ビルに近い」(理研OB)のが実態という。

(中略)「文科省からの出向者が中心となり、研究活動を把握して、予算執行、発注業務、人事などの手続きを実際に管理している。理研という組織のマネジメントを遡ると、文科省に行き着く」(前出・理研OB)。
http://president.jp/articles/-/12328

 ただ、広報は笹井芳樹理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長が中心になったものとしていたはずです。この説明を丸っきり信用することもできませんが、文科省主導と言うには証拠不足です。

 とにかく異常な会見だったわけですが、その一つの見方として、緑慎也さんの話がおもしろかったです。同様のことは初期に2ちゃんねるの不正研究板でよく言われていたものの、発言者がわかるものとしては初めて見たかもしれません。

「会見後、友人の生命科学系の女性研究者が『私なら極力、女性色を排すると思う。結果に自信があればあるほど簡素に淡々と話すだろう』と言っていました。女性研究者は基本的に男になめられているから、女性色を出すことはしないと」

 割烹着、ムーミン、ピンクや黄色の壁などを強調したことは、一般人から見ると非常に女性研究者らしく見えるのですが、女性研究者から見ると逆に女性研究者らしくなく見える異常な演出だったようです。


 関連
  ■STAP細胞の画期性 専門家の中では実験手順公開時点で既に終わっていた
  ■後天的な遺伝とエピジェネティクス 恐怖の記憶で遺伝子にスイッチ
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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