一見良さそうに見えるカリスマ経営者にも悪い点は見られます。他の投稿でも書いているのですが、とりあえず、<たかの友梨とワタミ渡邉美樹の共通点 ブラック企業の芽はどこに?>と<たかの友梨などカリスマ経営者が招くブラック企業化のしくみ>という投稿をまとめました。
●社会学者「たかの友梨氏とワタミ渡邉美樹会長には共通点を感じた」
2014/9/16:健康社会学者である河合 薫さんは、
私が絶望しない理由―激白。あの有名人9人の土壇場、修羅場、正念場
という書籍を出しています。ここでインタビューしたときに、ワタミの渡邉美樹さんとたかの友梨さんには共通点を感じたと、
たかの友梨氏の7年前の激白から探る“ブラック”の境界線:日経ビジネスオンライン(河合 薫 2014年9月9日)で、書いていました。
ここでインタビューしたメンバーというのは以下の通り。てっきりみんな実業家だと思ったら、経済アナリストの森永卓郎さんや書道家がいるなどややカオスなメンツです。なので、書籍に出てくるのは「みんなブラック企業社長」なんてことはなく、今回の共通点を感じたのはふたりだけのようです。
渡邉美樹………ワタミ代表取締役社長・CEO
たかの友梨……たかの友梨ビューティクリニック代表
武田双雲………書道家
森永卓郎………経済アナリスト
大石佳能子……メディヴァ代表取締役
鈴木亜久里……SUPER AGURI F1 TEAM代表
中村紀子………ポピンズコーポレーション代表取締役
清宮克幸………サントリーラグビー部監督
西室泰三………東京証券取引所会長
●むしろ人格者な逸話!たかの友梨氏とワタミ渡邉美樹会長の共通点
河合薫さんによると、"インタビューでは、あえてネガティブな部分に光を当て、子どものときのこと、家族、友だち、学校のこと、恋愛や仕事のことなどを、ひたすら伺った"そうです。"あまりの不躾さに、同行した編集者はビビっていたほど"で、"複雑な人間の心(=感情)を語ってもらうのだから、失礼な質問も山ほどした"と言っています。
そんな嫌な質問ですので、"インタビューをお願いした方の中には、明らかにその質問を嫌っていた方もいた"そうですが、渡邉美樹さんとたかの友梨さんは、それほど嫌っていなかったという不思議な共通点があったようです。
渡邉美樹 「心理分析みたいで、おもしろいなぁ。もう1回インタビューしてよ」と何故か喜ぶ。
たかの友梨 「なんか乗せられて話しちゃいけないことまで、言っちゃったわね。やぱいところはあとで削除させてね」と苦笑い。
"とても真摯に、一生懸命、ときに自問自答し、自分を納得させるように話してくださったのを記憶している"ということで、むしろ人間性ができた人のように見えます。これは後出てくる言い方だと、ストレス対処力は極めて高いとも言い換えることができます。
私が絶望しない理由―激白。あの有名人9人の土壇場、修羅場、正念場
は、もともとそういうテーマの本みたいですね。
●共通点は「最も信頼できる人は母」「他の信頼できる人は排除」
ただ、これを書いていた河合 薫さん自身は、まだ上記を共通点とは数えていなかったんですよ。実際の記事で共通点と数えていたのは、この後からでした。<極めて母親との結びつきが強く、最も「信頼できる人」になっている>と<最も「信頼できる人」の次に「信頼できる人」を排除している>というものです。
<極めて母親との結びつきが強く、最も「信頼できる人」になっている>
インタビューさせていただいた他の方たちからも、母親との関係性の強さは語られていたが、お2人の特徴はその結びつきが生涯続き、唯一の心の拠り所になっていたと解釈できる点にある。
「ストレス対処力(Sense of Coherence、SOC)」が高い人は、「信頼できる人」がいることがわかっている。お2人とも、お母さんの存在が、最大かつ最強の傘になっていた。
<最も「信頼できる人」の次に「信頼できる人」を排除している>
次に「信頼できる人」は、"渡邉さんにとって、その存在は大学時代の友人で、「渡美商事」創業メンバーである黒澤真一氏と金子宏志氏。一方、たかのさんにとっては、最初の夫だった"が、2人とも"自らの意志で信頼できる人を排除し"ている。
●たかの友梨とワタミ渡邉美樹の共通点 ブラック企業の芽はどこに?
河合薫さんが「ブラックの境界線」という視点で改めて見直してみて、上記のふたつのうち2番目にあった<最も「信頼できる人」の次に「信頼できる人」を排除している>が、「ブラックの境界線越え」に関係していると推察していました。
まず、河合薫さんは、どんなに強い人でも、自分だけで生きていくことはとんでもなくしんどい作業だと指摘しています。したがって、1人きりで踏ん張るには、はがねのように堅く、決して人に弱さを見せない、それでも生きていくという意志の強さと覚悟が必要だ…ということになるわけです。
ただし、その覚悟を貫き通すには、とことん、どこまでも徹底的に自分に厳しくならなければなりません。自分に厳しくするスーパー級の訓練が必要になります。これ自体は悪くなさそうに見えますし、河合薫さんも「それ自体は決して悪いことではない」としていました。
ところが、自分に厳しくする一方で、「他人の痛みを感じること」でおろそかになることがあるとのこと。これは理解しやすいですよね。そうじゃないタイプの人もいるものの、「自分に厳しいだけでなく、他人にも厳しい」というタイプの人は実際います。今回のおふたりにぴったりな言葉でした。
●一見立派に見える人がブラック企業を作ってしまいやすい理由
なお、渡邉美樹さんはむしろ慈善大好き人間で、自民党から立候補して政治家にもなっちゃったんですが、記事では<貧困にあえぐアフリカの子どもたちを可哀そうと思えても、日常の生活に存在する他者の痛みを感じない人は、自分のルールが絶対的価値になる。自分の近くにいる人が雨に濡れていても、気付かないから傘を差し出すこともしない>とも書いていました。
ストレス対処力が高過ぎる人は、周りの人のストレスの原因になりやすいとも、河合薫さんは感じているようです。前述のように、2人はインタビューした人の中でも極めてストレス対処力が高かったように思われます。そういう意味では優秀なのでしょう。むしろいい逸話に見えたのですが、これが裏目に出たんですね。
渡邉美樹議員なんかは、かつて非常に優秀でかつ誰よりも頑張っている…といった評価がされていたことも指摘しておきましょう。私はこの評価を本当かなぁ?とは思うのですが、仮に本当だったとしても、そういった頑張りを他人にも求めてしまう…というのがブラック企業の1パターンとしてありそうでした。
自分ができるのになぜこいつはできない?努力が足りないからだ!といった考え方は、ブラック企業の芽となると考えられそうです。これはやはりブラック企業と繋がりやすい「弱者は自己責任だから助けるべきではない」といった自己責任論なんかとも共通点を感じますね。
●ブラック企業の社長、むしろ評価が高い人が多い?
2014/9/18:たかの友梨について書いたのは、上にまとめた<たかの友梨とワタミ渡邉美樹の共通点 ブラック企業の芽はどこに?>という投稿が最初。ただ、実はこの前にも気になっていた記事があります。
いま話題の「エステ業界」 数年前に聞いた「叩き上げ」社長の驚愕の本音- J-CAST会社ウォッチ(2014年9月3日11時45分 大関暁夫)というものです。
今ブラック企業で話題なのは、ワタミ・ユニクロ・すき家といった企業。このうちすき家の社長は一時期までは全然メディアに露出していなくて謎の人みたいになっていたため違いますが、ワタミの渡邉美樹会長(当時)やユニクロの柳井正社長は、業界ではむしろ立派な社長とされていて、メディアで登場する機会も多かった人たちです。
しかし、こういうカリスマ的な経営者、良いとされている経営者の会社だからこそ、ブラック企業になりやすいという面もあるのでは?と最近考えています。上記<たかの友梨とワタミ渡邉美樹の共通点 ブラック企業の芽はどこに?>なんかも、やはりそういう話ですよね。
●依頼されて社内を調べたらガチ・ブラック企業でびっくり!
で、先に読んでいたという
いま話題の「エステ業界」 数年前に聞いた「叩き上げ」社長の驚愕の本音- J-CAST会社ウォッチ(2014年9月3日11時45分 大関暁夫)が、まさにカリスマの罪というテーマの記事でした。
実はここで出てくる話は「たかの友梨ビューティクリニック」や不二ビューティや髙野友梨さんの話ではなく、「イメージがダブる、ある経営者」の話。ただ、美のカリスマとして尊敬されていた髙野友梨さん同様、「高度成長期に一人で当社を立ち上げたカリスマに近い創業経営者」というカリスマ性を備えた方ということで非常に似ているようです。
作者の大関暁夫さんは、この美容院チェーンの女性経営者に「1年後の引退を前提として引退後の管理体制の構築をお願いしたい」と頼まれました。
そこで現場のヒアリングをしてみると、この会社は「明確な評価制度のない薄給、休暇の取りにくさ、加えて営業終了後の自主勉強会を含めた長時間労働」で20代女性スタッフの定着率が悪い…というまさにブラック企業な感じの職場だとわかりました。
●たかの友梨などカリスマ経営者が招くブラック企業化のしくみ
この会社では、「将来のために厳しい修行時代を乗り越えられる人だけが残る」というどこかで聞いたような認識があるとのこと。こういう言い方をすると一見良さそうですけど、要は人材を使い捨てにしてブラック労働に文句を言わない奴隷だけを集める選別行為ですからね、これ…。
しかし、こんなバリバリにブラックな会社がなぜやってこれたのか?と言うと、カリスマ女性経営者へのあこがれ心が不平不満を吸収し、多くの若手スタッフをギリギリ引きとめているという状況だったため。これがカリスマ経営者がいるからこそ起こりやすいブラック企業化のしくみの一形態なのでしょう。ワタミの渡邉美樹元会長なんかも信奉者が社内に多かった「尊敬される経営者」でした。
ただし、そのような状況ですから、今の経営者が引退すると美容院が崩壊するのは明らかだとも言えます。カリスマ社長が引退してダメになる会社って、こういう風に実はそもそも良い経営者ではなかった…というパターンがあるので要注意。うまく事業継承してこそ、本当の良い経営者なのです。
●社員の要求を聞いたら倒産する!で残ったのはイエスマンばかりに…
とりあえず、大関さんとしては顧客の期待に応えなくてはいけませんでしたので、経営者に「新体制づくりは何よりもまず労務管理の厳正化を軸とした職場の近代化から着手すべき」と提案。ところが、提案やスタッフの要望を、カリスマ女性経営者は以下のようにことごとく否定しました。
労務管理の厳正化 → 「若い人のわがままを聞いていたらうちの店はつぶれます。もっと現実的な提案をして欲しい」
法的にも問題ある可能性を指摘 → 「スタッフから不平不満が出ているわけではないし、最優先課題ではない」
評価制度がなく、給与があがらない → 「評価反映は賞与でおこなっている。がんばって役付きになれば役職手当がつく」
休暇が取りにくい → 「なるべく協力し合って取れるように指導している。現場に工夫と努力が足りない」
営業終了後の勉強会は残業がつかない → 「自主的におこなっているので業務ではない。嫌なら帰ればいい」
「若い人のわがままを聞いていたらうちの店はつぶれます」というのは、「将来のために厳しい修行時代を乗り越えられる人だけが残る」ことで、社長に従うイエスマンだけが店に残っているからということみたいですね。実はたかの友梨の社長さんも、スタッフの要求を聞いていたら「つぶれるよ」と言っていたそうです。本当によく似ていると感じました。
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