★2014/9/21 朝日新聞の従軍慰安婦誤報、国際社会に「悪い影響与えた」は間違い
★2014/12/25 朝日新聞吉田証言慰安婦誤報、海外に誤解与えず データで確認
★2014/9/21 朝日新聞の従軍慰安婦誤報、国際社会に「悪い影響与えた」は間違い
朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解 | 冷泉彰彦 |ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト(2014年09月18日(木)12時18分)という記事が、はてなブックマークで話題になっていました。ただ、実はこの作者の冷泉彰彦さんって第一印象が悪くって、ちょっと好きじゃないんですよね。それでまず警戒しました。
また、はてなブックマークの人気コメントでは、この手の朝日新聞擁護に繋がりかねない記事は、最近ボロクソに叩かれていました。ですので、今回もてっきりそうだと思ったら、意外や意外、批判は全然ありません。
それから考えてみると、冷泉彰彦さんを私が嫌だなぁと思った点の一つは、アメリカの代弁みたいな主張をする点です。しかし、今回のテーマは国際社会の日本の見方というものですので、むしろアメリカの主張を代弁してもらった方が助かります。
ということで、「じゃあ、ちょっと覗いてみようか」ということで、読んでみました。
記事冒頭で説明しているように、朝日新聞のいわゆる「従軍慰安婦」に関する「誤報」によって、"「狭義の強制」があったと報道されたことで、「国際社会の誤解」を招いた朝日新聞には責任がある"という主張が最近多く出ています。以下のようなものです。
・安倍首相は9月14日のNHKの番組で、朝日新聞が「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められている」と述べた。
・加藤勝信官房副長官は17日の記者会見で、「誤報に基づく影響の解消に努力してほしい」と述べた。
・読売新聞の世論調査で、『朝日新聞の過去の記事が、国際社会における日本の評価に「悪い影響を与えた」と思う人が71%に達した』。
しかし、"「国際社会に誤解されている」という議論は、それ自体が「誤解」である"と冷泉さんは言います。理由は以下の5つであり、これら一つ一つが「誤解」ということみたいですね。
1.そもそも「従軍慰安婦」問題で「現在の日本国の名誉や評判」はまったく傷付いていない。
2.したがって「枢軸国日本」の行動への批判に、まるで自分たちが批判されたように感じて、反論や名誉回復をする必要はない。
3.軍の方針や軍の上層部の名誉を回復したいとして、「狭義の強制」が「事実でない」と主張することに「効果はない」。
4.「枢軸国日本の名誉回復」を進めることは、国際社会での日本の立場を強化しない。
5.慰安婦問題に関する事実関係の訂正を強硬しても、国際社会は激しく日本批判をするような外圧はかけない。
最後のものが毛色がちょっと異なりますが、はじめから。
1.そもそも「従軍慰安婦」問題で「現在の日本国の名誉や評判」はまったく傷付いていない。
これは、国際社会は「枢軸国日本」とサンフランシスコ講和を受け入れ、やがて国連に加盟した「日本国」は、「全く別」であると認識しているためという理由です。"例えば国連安保理の非常任理事国にも再三選出されているように、戦後の日本および日本人の行動が国際社会から信頼されている"としています。
2.したがって「枢軸国日本」の行動への批判に、まるで自分たちが批判されたように感じて、反論や名誉回復をする必要はない。
これは特に説明もいらない気がするので、飛ばします。
3.軍の方針や軍の上層部の名誉を回復したいとして、「狭義の強制」が「事実でない」と主張することに効果はない。
これは私も不思議でした。何か知らないんですけど、「狭義の強制性」がポイントだって読売新聞やら保守派の人やらが言っているんですよね。えー、そういう話だっけ?と首を傾げていたんですが、面倒で調べていませんでした。
冷泉さんは何て言っているか?と言うと、以下のような"「事実の訂正」をしたからといって、国際社会の評価は変わらないと考えるべき"だとしていました。
「強制連行ではなかったが人身売買だった」
「軍や警察が女性の身柄を拘束した事例があるが、それは業者の財産権という社会秩序維持のためだった」
「脱走を取り締まったが、それは戦地での危険から保護をするためだった」
「一晩に大勢の相手をさせたが、少なくとも対価として金銭の支払いはあった」
そもそもこのような「事実関係の訂正キャンペーン」を強化すれば「日本軍の従軍慰安婦という問題を初めて知ることになる」人を増やすだけで、現実問題として彼らが"「ポジティブな印象」を持つ可能性はゼロだと思います"とのこと。
4.「枢軸国日本の名誉回復」を進めることは、国際社会での日本の立場を強化しない。
「これは大変に危険な誤解」としています。中国や韓国に現在の日本が「枢軸国の延長」だというプロパガンダを国内外で展開する口実を与えるためです。
このプロパガンダにより、国際社会における日本の政治活動や経済活動に支障をきたしたり、対立を激化させた責任が日本にあるとアメリカなど同盟国の心証も悪化させるとしています。
5.慰安婦問題に関する事実関係の訂正を強硬しても、国際社会は激しく日本批判をするような外圧はかけない。
毛色の違った5番目。これは"「朝日新聞」の立場に近い人々"にとって不利な話ですが、そうじゃない方々にとってもマイナスのようです。また、前述までを見てわかるように、日本の訂正を受け入れてくれるというわけでもありません。
国際社会は「慰安婦問題に関する事実関係の訂正をしたい」という日本の意向が「全く理解できない」ため違和感、不快感を深めるだろうとしていました。日本が「もう一度戦争をしたがっている」とは感じませんが、「男尊女卑や既得権益擁護の古さを抱えている」と見て、"市場としての優先順位を下げたり、投資額を抑制したりという静かな動きを加速する"としていました。
「激しく日本批判をするような面倒なこと」はしないが、日本を軽視したり無視したりするだろうという予測です。
以上なのですが、最初にこれを読んだはてなブックマークの人気コメントは、批判的なものではなかったと書きました。「ほんと、こういうウヨクサヨク関係なく冷静に物事を考えるって大切。今の日本に一番必要な技術」や「従軍慰安婦問題では以前から冷泉さんのコラムがその時点その時点での論評・指摘として的確だと思ってる派」といったものです。
一方で、この説明で、"「狭義の強制」があったと報道されたことで、「国際社会の誤解」を招いた朝日新聞には責任がある"という主張が収まると思っていない人も目立ちます。その理由は実際にコメントを眺めてみるとわかります。
kamezo
概ね同感なんだけど〈「現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在」つまり「枢軸国の延長」だというプロパガンダを国内外で展開〉はむしろ現政権が率先してやってることでは(汗) 2014/09/18
take-it
困ったことに枢軸国日本の名誉と、「(枢軸国)日本を、取り戻」したい方々がいるんですわー。右派こそ旧来の神道を誤った道に進めた国家神道を切断処理すべきだと思うんだけど、しないんだよなー。 2014/09/18
sora-papa
この人の言ってるまさに「枢軸国日本」の名誉を回復したい人がたくさんいるのが問題かと。 2014/09/18
冷泉さんの書いている中では、日本が無視される…っていうのは大げさじゃないかな?とは思います。ただ、「狭義の強制」が「事実でない」と主張することに効果はないだろうなってのは私も感覚的に感じていたので、日本がずいぶんとズレてきているというのは本当でしょう。
日本のわかりづらい非常に微妙な主張が理解されない以上、「狭義の強制」が「事実でない」ことを強調するメリットはなくむしろデメリットが目立つというのは確からしいと思います。
★2014/12/25 朝日新聞吉田証言慰安婦誤報、海外に誤解与えず データで確認
前回と大体同じ内容ですが、向こうで元にした記事は個人的にあまり信頼していない作者さんでした。また、今回のものはデータで示しており、より信頼性が高いということもあります。
今回ベースにする記事は、
そもそも「慰安婦」という言葉は使われない?慰安婦報道を巡る欧米メディアとの認識の差【朝日第三者委員】 | Credo(深澤祐援 2014/12/23)です。
ただ、データを出していたのはここではなく、例の誤報問題で作った「慰安婦報道検証 第三者委員会」。
朝日新聞社インフォメーション | 慰安婦報道検証 第三者委員会にある
(PDF) 第三者委員会報告書・別紙資料2(データから見る「慰安婦」問題の国際報道状況)(2014.12.22)を読んで書かれたというのが最初の記事という関係です。
記事ではあまり重視されていませんが、私はまず今回の問題の発端である吉田証言(吉田清治証言)から行きます。
何と欧米メディアに出てきた"Yoshida Seiji"というキーワードは、"吉田証言取り消しの朝日新聞報道に関する記事を除くと、3本のみ"という結果になりました。別の形で出てきている可能性はあるものの、そもそも吉田証言が重視されていたのであれば、フルネームが出てくる機会も多いはずです。3回というのはどう考えても少なすぎます。
その別の形の出現例とも言える"吉田証言を数多く引用した慰安婦問題を研究するジョージ・ヒックス氏の著書『The Comfort Women. Japan’s Brutal Regime of Enforced Prostitution in the Second World War』(1995年出版)"。実はこちらも"4回しか言及されていませんでした"とのことで、極めて影響力が少ないようです。
"林委員は、欧米メディアの慰安婦問題に関する論調について、朝日新聞の報道が大きな影響を与えたということを確認することが出来なかった"としたようです。妥当な判断のように思われます。
記事では"そもそも「慰安婦」という言葉は使われない"というのをタイトルに入れていました。「“慰安婦”と言う言葉は、欧米のメディア内では”婉曲表現”(euphemism )と捉えられ、歴史事実を描写する言葉ではないと理解されています」という話です。
しかし、より本質的なのはこの後の部分です。
「欧米の論調では、植民地における軍政下では、どのような形であれ、女性たちは”強制的”( forced, enforced )に性的サービスをさせられたという認識が一般的です」
日本政府や産経新聞・読売新聞、そして、いわゆる保守派の方々は、「”狭義の強制性”はなかった」という点にこだわっています。(保守派自身は「狭義の強制性」とは言わず、単に「強制性」と言うことが多いと思います)
ところが、そもそも欧米では、”狭義の強制性”にこだわっていません。吉田証言が重視されていないこともその現れでしょう。
そして、"欧米メディアは慰安婦問題を社会構造上の女性人権問題という、東アジア限定の問題ではなく、より広い視点で考え"ています。
ですから、欧米人がそもそもこだわっていない”狭義の強制性”を持ち出して、強制性はなかったと主張すればするほど、女性の人権全体を軽視しているように見えてしまうみたいです。
これらの話は前回の指摘でも見られました。
1.そもそも「従軍慰安婦」問題で「現在の日本国の名誉や評判」はまったく傷付いていない
3.軍の方針や軍の上層部の名誉を回復したいとして、「狭義の強制」が「事実でない」と主張することに「効果はない」。
4.「枢軸国日本の名誉回復」を進めることは、国際社会での日本の立場を強化しない。
最後の「国際社会での日本の立場を強化しない」は、強化しないどころか悪影響ですらあるとしていました。
私自身も以前は海外で誤解されている部分はあると思っていましたので、今回の吉田証言のデータは意外でした。ただ、もともとそういった誤解が解けなかったとしても、日本が最も誤解されてはならない部分は別にあるという考えでした。
日本が最も恐るべきなのは、現代においても女性人権問題を軽視し続けている国家だと誤解されることです。そのことが再確認できた話でした。
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