法人税減税の狙いはいくつかありますが、その狙いの中には海外企業の参入の促進というものもあるようです。たぶん法人税が高い日本は、外国の企業にとっては参入するメリットが少ない、でも、その高い法人税がなければ外国企業にとっても魅力になるので参入しやすくなるということでしょう。
とあるところでこの話を見かけて、考えてみればそうだなと思ったものの、あまり意識していなかったことですので、意外に思いました。
そこで、この手の話に言及しているものについて検索。まず出てきたのが、
政権維持のための成長戦略(2)|アベノミクスは日本を潰すシリーズ|NETIB-NEWS(2014年8月1日07:00)。「アベノミクスは日本を潰すシリーズ」ってすごい連載名ですね。
内容は立教大学・山口義行教授へのインタビュー。インタビューアーは一つ目の質問で、「『日本は法人税率が高いため、外資が参入しにくく、しかも国内企業が海外に移転して雇用が減る』という話が流布しています」と話を向けていますので、今回のテーマにはピッタリです。
山口義行教授はこれに対し、「そもそも外資に頼るのは、発展途上国の成長戦略」だとしています。発展途上国は「外貨、技術、大企業の3つが不足しているから外資に頼らざるを得ない」のだという説明です。
外貨……外資系企業が外貨を持ってきて、経済成長に必要な生産財を外国から輸入可能になる。
技術……成長に不可欠な技術を外資系企業が持ってくる。
大企業…海外の大企業が、国内の企業で負えないリスクをともなう大型開発投資を行ってくれる。
しかし、日本は当然発展途上国ではありません。「日本はすでに3つともそろっており、わざわざ導入する意味がありません」と断言されています。
また、そもそも"外資は「安い労働力」と「将来性のあるマーケット」の2つに魅力を感じ、途上国に参入"するものなので、人件費が高く、将来性もあまりない日本は魅力に感じないとのこと。この通りだとすると、「外資系企業の参入の促進」という目的では、法人税減税はあまり効果が無いのではないか?ということになります。
今回のテーマとは関係ありませんが、国内企業の海外進出食い止めについても質問に入っていましたので、そちらも軽く。これは結局外資系企業が日本を選ばない理由といっしょだろうと思ったら、やはり海外移転する日本企業は「新興国の成長マーケットや安い人件費に魅力を感じるからこそ、海外に打って出る」という話でした。
これ以外に検索して見つけた記事は、
法人税・社会保障の負担重い日本 外資の参入遅らせる要因に- NEWSポストセブン(2014年6月3日07時00分)(長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹)でした。これは古い話で、なおかつ法人税減税をするべきだ!と積極的に評価しているものですね。さっきのものとは違います。
国と地方を合わせた東京都の実効税率を日本の法人税と考えると、35.64%だそうです。一方、ドイツは29.59%、中国は25%、韓国は24.2%、イギリスは21%、シンガポールは17%であり、日本がダントツで高いです。こういう比較はからくりがあるとも言われていますが、ひとまず今回はこの説に乗っかって進んでいきます。
記事では、"企業の負担は税だけではない。社会保険料もある。法人税だけをみると、米国よりは低くなるが、社会保険料も加えると米国より負担が重いという事情もある"としていました。さっきの例でアメリカがなかったのは、高かったからなんですね。社会保険料うんぬんを書いていますが、アメリカが高いって意外です。
なお、社会保険料は意味もなく支払っているのではなく、セーフティーネット的な役割を果たしていますので、これを比較に入れちゃうのってどうなんでしょうね? 社会保険料の話ではありませんが、アベノミクス推進に利用されたクルーグマンさんは、"ドイツは労働市場の規制を強めていたおかげで、金融危機のショックに対して耐性があり、米国よりも失業率は低い"として、競争力至上主義を非難していました(
Wikipediaより)し、企業にとって良ければそれで良いということでもなさそうです。
一方、"日本貿易振興機構(JETRO)が昨年3月に実施した外資系企業調査によると、日本への投資をためらう理由のトップは「ビジネスコストの高さ」だった"そうです。"法人税と社会保障を合わせた負担の重さを指摘する声はオフィスや用地の取得・賃貸費用の負担感を上回った"ということで、これは確かに法人税がでかいぞという話です。
また、"対内直接投資の国内総生産(GDP)比でみると、先進国は平均で30%を超えているのに、日本はわずか3.4%(2012年)にすぎない"という話もありました。これは前半でも触れようかな?と迷って、今回の主題に合うかどうかわからずに止めた話なのですが、意外に新興国の資本流入を歓迎する先進国というのは多いです。日本だと新興国企業が金を出すと侵略だ!と大騒ぎですので、ずいぶん感覚が異なるものだなと思います。
そういう意味では、「外資系企業の日本参入の促進」という法人税減税の狙いも、あまり歓迎されないのではないかと思われます。
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