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グラフェンナノリボン論文撤回 名古屋大伊丹健一郎教授らの研究


2021/02/25追記:
●再現性がないデータ…伊丹健一郎教授のチームでさらに2論文が撤回に
2021/03/17追記:
●無駄のない美しさに魅了された世界的研究者と紹介されていた教授 【NEW】


●グラフェンナノリボン論文撤回 名古屋大伊丹健一郎教授らの研究

2020/11/27:名大チームのネイチャー論文撤回 実験データに誤り:中日新聞Web(2020年11月27日 05時00分)によると、英科学誌ネイチャーは、2019年6月に掲載した名古屋大トランスフォーマティブ生命分子研究所の伊丹健一郎教授(合成化学)らの研究チームによる論文を撤回したと発表しました。

 論文は、次世代の半導体の材料として期待される炭素素材「グラフェンナノリボン」を、精密に合成できる技術を開発したと報告したもの。ただ、発表後に、炭素素材の構造などを確認した装置の実験データの一部に誤りがあるほか、信頼性のない実験結果が含まれていたことが分かり、伊丹教授らが名大本部に申告。ネイチャー側にも論文の撤回を申し入れていたそうです。

 名大は調査委員会を設置し、経緯や原因、研究不正に当たるかなどについて調べいている最中だといいます。ただ、この記事を読む限りは、不正といった感じではありません。伊丹健一郎教授らは、自ら誤りを申告したということで、非常に真摯な対応。他の研究者の方も見習ってほしいくらいです。


●いかにもすごそうな次世代半導体素材「グラフェンナノリボン」とは?

 ところで、この研究は過去にはどう報じられていたのでしょう。次世代半導体炭素素材「グラフェンナノリボン」というのも、なんだかすごそうな響きであり、気になります。ついでに言うと、伊丹健一郎教授の所属する「トランスフォーマティブ生命分子研究所」というのも、かっこいい系ですね。わけがわかりません。

 検索して見つけた過去記事としては、次世代半導体材料「グラフェンナノリボン」を精密合成、数年以内に実用化へ|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(2019年06月28日)といったものが出てきました。「170ナノメートルの長さを制御、名大が成功」というサブタイトルもついています。

 この当時の記事によると、名古屋大学の伊丹健一郎教授らは、次世代の半導体材料となりうるグラフェンナノリボン(GNR)の精密な合成に成功。グラフェンナノリボンの長さや幅、構造をすべて制御できる「リビングAPEX重合法」を開発しました。

 重合の開始剤と反応の基質であるモノマーの混合比率を変えるだけで170ナノメートル(ナノは10億分の1)まで長さを制御できます。こうした精密制御によるグラフェンナノリボンの合成は世界初というところが画期的でした。成果は英科学誌ネイチャーに掲載されるとなっており、やはり問題となった論文の件だとわかります。

 グラフェンナノリボンはグラフェンをナノメートルサイズの幅に切り出した帯状物質であり、導電性や半導体性といった性質が長さと幅、構造に依存します。しかし、長さと幅、構造が制御できず、大量生産も困難だったのが問題でした。名古屋大学の研究は、その課題を克服したという話です。

 研究グループは、田岡化学工業と量産技術の確立に関する共同研究を実施中。数年以内に実用化することを視野に改良を続けると当時は言われていました。今回発表された「信頼性のない実験結果」がこの実用化にどの程度影響するかは不明で、関係ないような感じもありますが、一般的にこうした画期的な研究による実用化はほとんど実現しない…ということは言及しておきたいです。


●伊丹教授「不自然で人為的な操作に見える」「元データが行方不明」

2020/11/29:最初の投稿時、<この記事を読む限りは、不正といった感じではありません>とうっかり書いてしまったのですが、別記事を読むと、「実験データに不自然な点が見つかった」というニュアンスのかなり異なる書き方でした。これは、名古屋大チーム、ネイチャー論文撤回 実験データに不自然な点、不正の有無調査:朝日新聞デジタルという記事の記述です。

 気になってさらに別記事を検索。すると、名大が化学論文の不正調査 伊丹教授らが発表、撤回:時事ドットコムで決定的な話が載っていました。伊丹健一郎教授は「実験結果に不自然な部分があり、人為的な操作があると感じた」と言っていたのです。不正じゃなさそうどころか、むしろ不正の疑いが強いという見方でした。

 なお、伊丹健一郎教授は「基になるデータがパソコンに入っていたはずだが、見つかっていない」とも話しています。実を言うと、こちらもかなり重要。元データなしで「不正なし」としてしまうと、不正をした人は削除すればOKになるために、元データなしの場合は基本的に不正とみなすべきです。実際、政府機関のガイドラインでもそうなっており、その意味でも不正濃厚な案件と言わざるを得ないでしょう。


●京都大でもグラフェンナノリボンの精密合成に成功したとの発表

2020/12/22:グラフェンナノリボンに関する画期的とされる研究はたびたび発表されているようで、検索してみると結構見つかります。うねり構造をもつグラフェンナノリボンの精密合成に成功 ー非ベンゼノイド構造の新規構築反応を開発ー 京都大学というプレスリリースもその一つです。

 こちらでは、小川直希 薬学研究科・日本学術振興会特別研究員、高須清誠 薬学研究科教授らの研究グループが、5~7員環芳香環を含んだうねり構造を有する新規グラフェンナノリボン(GNR)の完全精密合成に成功した…とされていました。このうち、小川直希さんを検索してみると、2018年で博士後期課程1年とあるので、まだ院生なのかもしれません。

 グラフェンナノリボンの性質は、帯の長さや幅だけでなく、エッジ構造や格子欠陥の違いで大きく異なることが知られていますが、それを原子レベルで精密に制御して作ることは困難という問題があります。今回の研究では、格子欠陥としてアズレン環(六員環構造を持たない芳香環)を高密度に組み入れたGNRの精密合成に成功。この研究成果により、これまでにない性質をもつGNRの創製につながることが期待されるそうです。


●再現性がないデータ…伊丹健一郎教授のチームでさらに2論文が撤回に

2021/02/25:最初のんきなことを書いてしまったこの件ですが、むしろ通常よりヤバイやつっぽいですね。また別の論文が撤回されました。「グラフェンナノリボン(GNR)」に関し、米化学会誌の電子版に掲載された名古屋大大学院理学研究科の伊丹健一郎教授(合成化学)らの論文が一気に2本が取り下げられています。

 化学論文、新たに2本取り下げ 名大の伊丹教授ら:時事ドットコム(2021年02月24日)によると、GNRの合成法に関する論文と、半導体製造時に用いる膜にGNRが有効活用できるとする論文。いずれも教授側が1月に撤回を申し入れていました。自ら撤回を申し入れたことは良いことではあるんですけどね。

 別記事名古屋大・伊丹教授らの研究チーム、また論文を撤回 米誌掲載:中日新聞Webによると、合成法に関する論文は、実験データの一部に再現性がなく誤ったデータも含まれていたことが撤回の理由。もう一つの有効活用できるとする論文も実験データの一部に疑義があったとされています。

 こちらの記事では、「名古屋大トランスフォーマティブ生命分子研究所の伊丹健一郎教授(合成化学)らの研究チームの論文」という書き方。SNSを見ていると、どうも筆頭著者は伊丹健一郎教授自身ではなく、別の人であった模様で、公式サイトなどではすでに痕跡を削除されたといいます。今回の不正が、この筆頭著者単独の問題なのか、チームとしての問題なのかは、今後の調査を待ちたいところです。


●無駄のない美しさに魅了された世界的研究者と紹介されていた教授

2021/03/17:不正に関係ない…というか、そもそも不正前の記事なのですが、伊丹健一郎教授について検索していたら、伊丹健一郎教授のインタビュー記事が出てきました。記事のタイトルは無駄のない美しさに魅了——世界的な研究者が、科学者への道を決めた理由 | Business Insider Japan(2020.06.25 11:00)という輝かしいもの。ノーベル賞候補って言われそうな勢いですね。

 記事では、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)拠点長を務める伊丹健一郎教授を「ナノカーボン科学で世界的な業績を上げ続けている研究者」と紹介。2016年には世界の化学者が60年間誰も実現できなかった「カーボンナノベルト」の世界初の化学合成を達成したそうです。

 日本では一生懸命勉強しなかったことをむしろ「学校では学べないことを学んだ」みたいに「いい話」のように扱うことがありますが、「大学時代は遊びに忙しすぎて、あまり勉強しなかった」という話もありました。「高校の化学の時間に、きれいな六角形をしたベンゼンに魅せられた」という話があったものの、情熱は続かなかったようです。また、記事タイトルの「無駄のない美しさに魅了」は、「美しいものには機能が宿る」を信念とし、シンプルで無駄がなく美しい形をした分子の合成にこだわり続けてきた…という説明から取られたもののようでした。


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