●日本のノーベル賞級研究者 澤芳樹, 遠藤章, 岸本忠三,細野秀雄ら
2023/09/29:
一部見直し
2014/9/28:<ノーベル賞級への黄金律 認められる1%にかける>(日本経済新聞 (山本優)[日経産業新聞2014年4月4日付])は、"ノーベル賞級の成果を上げた研究者の条件、黄金律"というテーマで書かれていた記事です。4月という古いものですけど、ノーベル賞発表時期が近づいてからと思い、ここまでとっておきました。
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO69337940T00C14A4X11000/ 記事で出てきたノーベル賞級の成果を挙げた「イノベーター」は7人です。1人ずつ紹介してきます。
・岸本忠三・大阪大学特任教授
免疫をつかさどる分子「IL―6(インターロイキン6)」の遺伝子を1986年に発見。関節リウマチ薬などに発展。
岸本特任教授のポイントは、「安易な研究テーマは選ばない」というものです。記事では、"最近の研究者は2~3年ですぐに結果が出る研究を好むと言われるが"と、岸本特任教授の方針と対比させて紹介。しかし、それが難しいのでしょう。おそらく政府の考え方とも合いません。
最近の研究は成果を求められるというのが、すぐに結果を求める研究を好む理由です。成果を求められるというのが先なんですね。私は安易な成果主義批判・競争主義批判はおかしいと思いますし、税金を出すのに研究成果は出さなくて良いとは言えません。一方で地味で一見何の役にも立つかわからないような研究や長期的な研究、基礎的な研究などといった先が見えない研究も大事だというのも理解できます。
「真理を追究すれば、おのずと役に立つ成果が出る」ともおっしゃっていましたが、おそらく現在はこの考え方は受け入れられづらいでしょう。「おのずと役に立つ成果が出る」ではなく、「先に何の役に立つ研究なのか説明してください。そうじゃないとお金を出せません」となるはずです。難しいですね。
・中沢正隆・東北大学教授
光ファイバーの光が強まる現象の発見。光信号を増幅して遠くまで減衰せずに伝える通信技術に繋がる。
中沢正隆教授は「何気なく試してみた」という"光ファイバーにエルビウムという物質を混ぜて、半導体のレーザーを通す装置"の試作が"光ファイバーの光が強まる現象の発見"に繋がりました。このように、画期的な研究が失敗など意図しないところから生まれるということは、ままあります。次の細野秀雄教授の場合もやはり意図したものではありませんでした。
・細野秀雄・東京工業大学教授
省エネ半導体「IGZO」に繋がる物質を発見。
"酸化物の薄膜結晶が、実験の失敗でアモルファス(非晶質)になった物質"がスタートということで、失敗がうまく転んだ形です。ノーベル賞の田中耕一さんも確かこういった偶然からでしたが、これに気づけるか気づけないかは研究者としてのセンスの差が出ます。
また、研究者の初心とも言える好奇心や探究心を維持できているかどうかも、おそらく重要。普段からよく見ているからいつもとの違いがわかるのであって、ボーっとしている人であれば見逃してしまうでしょう。また、違うと思っても興味を示せなければそれまでです。
細野秀雄教授も田中耕一さん同様に、「あれ、これは不思議だな」と気づき、電気が流れない「できそこないのガラス」に"新しい半導体の材料になるとの勘が働いた"そうです。
(関連:
繰り返しだから気付くこと ~田中耕一さんの発見~)
・澤芳樹・大阪大学教授
iPS細胞を使った心筋細胞のシートで心臓の機能を40~50%回復する実験にブタで成功。再生医療に取り組む。
ごめんなさい、澤芳樹・大阪大学教授に関しての話は、記事ではおもしろいエピソードありませんでした。一つ一つが短いんですよね。ここまででも元記事より私の説明の方が長くなっているところがあるくらい、元記事の説明が短いです。澤芳樹教授の場合、最近ニュースになっていましたので、うちではそちらを紹介しておきます。
先端医療財団と阪大、iPS細胞の心臓病治療で協力 :日本経済新聞(2014/9/2 19:49)
<大阪大学と先端医療振興財団(神戸市)は2日、研究者の交流や先進的な医療の共同研究を推進する協定を結んだ。iPS細胞を使った心臓病などの治療で協力し、世界に先駆けて治療法を確立することを目指す。(中略)
先端財団は理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーとiPS細胞による目の難病治療を近く実施する。一方、阪大でも澤芳樹教授が重症の心疾患にiPS細胞を使う臨床研究の計画を進めており、今後協力していくことで合意した。>
・遠藤章・東京農工大学特別栄誉教授
動脈硬化を防ぐ物質「コンパクチン」を青カビから発見。動脈硬化症の治療や予防の薬に。
"「菌が作るはずはない」という反論に答えるため、研究室に寝袋を持ち込み、泊まり込みで実験を繰り返した"というのが気になったものの、記事が説明不足でわかりづらく別を検索。以下は、<研究業績 | 遠藤章ウェブサイト>からの引用です。
<2年間のアメリカ留学(1966-68)で、コレステロールがアメリカで年間60-80万人が死亡する冠動脈疾患の主要原因であることを知り、食生活が欧米化するわが国でも近い将来コレステロールが大きな問題になるだろうと感じた。その頃、体内コレステロールの大半が肝臓で合成されること、HMG-CoA還元酵素が合成を制御する重要な酵素であることが知られていた。>
http://www.endoakira.com/research.shtml 遠藤章教授は"HMG-CoA還元酵素の阻害剤が有効なコレステロール低下剤になると考え"ましたが、おそらく真に斬新だったのは"カビとキノコから阻害物質を探"そうとしたことでしょう。先の「菌が作るはずはない」はたぶん「有効なコレステロール低下剤を菌が作るはずはない」という意味だったと思われます。
ここから日経新聞に戻り、"通常の研究者なら1年程度であきらめると言われるが、実に2年間を費やし、菌の探索に没頭。調べ上げたキノコやカビは6000株に達し、やっと探り当て"るということになります。
・吉野彰・旭化成フェロー
リチウムイオン電池の原型を開発。
・中村修二・米カリフォルニア大学教授
青色発光ダイオード(LED)の開発。
中村修二教授についてはまた記載が短すぎて使えず。その前の吉野彰フェローにいたってはなぜか本文に一言も出てこないで、表にだけ名前が載っていました。日経産業新聞記事がベースなので、ウェブ版の編集の際に抜け落ちたんでしょうか? いずれにせよぞんざいです。
幸いお二人とも以前うちで扱っていますので、そちらでも読んでいただければと思います。
ノーベル化学賞日本人予想 柳田敏雄、藤嶋昭、吉野彰、水島公一と
ノーベル物理学賞候補の日本人 中村修二、中沢正隆、十倉好紀で書きました。
ここでリンクした投稿のタイトルを見ていると、先ほど出てきた中沢正隆・東北大学教授の名前もありましたね。ちょっと見覚えあるなとは思ったものの、勘違いだと思って気にしていませんでした。すみません。
一方で3番目で出てきた細野秀雄・東京工業大学教授については、以前にも書いたことを覚えていました。そちらもリンク。
ノーベル賞予想、候補者に日本人 大隅良典・水島昇・細野秀雄らというものを書きました。
3つのリンクのお名前見ていただくとわかるように、この記事以外でもたくさんのノーベル賞級研究者が日本にはいます。これは素直に誇って良いことですね。
【本文中でリンクした投稿】
■
ノーベル化学賞日本人予想 柳田敏雄、藤嶋昭、吉野彰、水島公一 ■
ノーベル物理学賞候補の日本人 中村修二、中沢正隆、十倉好紀 ■
ノーベル賞予想、候補者に日本人 大隅良典・水島昇・細野秀雄ら ■
繰り返しだから気付くこと ~田中耕一さんの発見~【関連投稿】
■
ロイターのノーベル賞候補に理研・十倉好紀 史上初!2回目の選出 ■
科学・疑似科学についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|