2014/9/28:
●大失敗の成果主義 相対的な順位を知ると営業成績低下!
●何もしなかった人たちの方が営業成績が良いという予想外の結果に
●成果を知ることは良い効果は全くなく、悪い効果しかないという事実
●成果を知らせることがうまくいった実験も…違いはどこにあるのか?
●学力テストの結果公表は成果主義成功の3つの条件を備えている?
●大失敗の成果主義 相対的な順位を知ると営業成績低下!
2014/9/28:私は成果主義の最大の問題点は、仕事をどのように評価するか?という点だと思っていました。営業成績のように数字としてはっきりとしたものというのは珍しく、評価しづらいものが多いためです。
逆に言うと、その評価の問題さえうまく乗り越えれば、成果主義はうまくいくとも考えていました。正直、成果主義の考え方は大好きです。
しかし、大好きなだけに
業績ランキングを公表すると、売り上げが落ちる?(日経ビジネスオンライン 田中 知美 2014年6月17日)という記事にはショックを受けました。
紹介されていたのは、米ペンシルベニア大学のイワン・バランケイ准教授の研究。北米でオフィス用の家具を販売する会社に勤める1754人の営業担当者を対象に3年にわたって実験を行い、社内での自分の営業成績のランキングを知ることが実際に売り上げの向上につながっているのかどうかを調べたもの。これによると、逆効果だという結果になったのです。
●何もしなかった人たちの方が営業成績が良いという予想外の結果に
この会社では、営業担当者が会社のホームページにログインした時、全米の営業担当者全員の中での自分の営業成績のランキングが表示されるように設定してありました。バランケイ准教授はこの設定を変更し、4つのグループに分割して比較を行っています。
第1のグループ:ログインの時に営業成績のランキングを見せない
第2のグループ:引き続きランキングを表示
第3のグループ:ランキングの代わりに、あとどれくらい売り上げを増やせば上位10%、25%、50%のグループに入ることができるかという情報を表示
第4のグループ:あとどれくらい売り上げを増やせば上位グループに入ることができるかという情報とランキングを両方表示
すると、「営業成績のランキングを見せない」第1のグループが11%も売り上げが向上しました。そして、今までのやり方をしていた第2のグループはそれより悪かったようです。実は第2のグループは第1のグループに劣るだけでなく、4グループ中最低の成績だったというのでさらに衝撃。この会社はずっと営業成績を悪くするやり方をしてきていた…という結果になったのです。
一方、いろいろと手を施した第4のグループは一応、第1のグループと同程度だったそうです。ただ、これだけ手間暇かけてやっと何もしないのと同じなんですから、いらぬ努力をしています。
この実験、3年という長いスパンで行っています。ですので、たまたまということではないと思います。成果主義大好きの人間としては、ショックですわ…。
なお、第3のグループについては記載なしで不明。他ただ、の書き方からすると、良かった第2・第4グループと最低の第1のグループの間ではないかと想像します。
●成果を知ることは良い効果は全くなく、悪い効果しかないという事実
もう少し分析を読むと、以下のようなことがわかったともありました。
・ランキングは、業績が悪い職員のやる気をなくさせるという負の効果が強い。
・ランキングは、業績が良い職員にやる気を出させる正の効果も観察されない。
・ランキングが上がったとき、それが励みになってさらに業績が上がることはない。
・ランキングが下がったときは、落胆してさらに業績が落ちる。
・パフォーマンスがランキングの情報に左右されるのは男性だけで、女性は影響を受けない。
女性が影響を受けないって話はおもしろいですね。
女性は数字が苦手は本当?女子が男子より数学が苦手…は思い込みでは、女性が競争を嫌うという調査がありました。それと一致する結果とみなせるかもしれません。
あと、バランケイ准教授はネット上で別の実験も行っており、やはり"自分の相対的な成績を知らされた人々は、知らされなかった人々に比べて、2回目の仕事の間に処理した写真の数が22%減少した"という結果を報告しています。
この実験では、相対的な成績を知らされると聞くだけでも応募者が減ったり、相対的な成績を知ることで2度目は引き受けない…といったやる気の減退もわかっています。見事なまでに悪いことばかり。本当ショックです。
●成果を知らせることがうまくいった実験も…違いはどこにあるのか?
ただ、成果主義賛成派はまだ希望を持てます。記事では、"違う結果を見せた実験もある"としていたのです。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのジョルディ・ブラネス・イ・ビダル准教授らの研究では、ドイツの企業の倉庫で働く人々に相対的な生産性を知らせる実験をしたところ、生産性が6.8%向上したことが示されたといいます。
このように研究によって異なる結果になることはよくあること。ただ、そもそも実験条件が全く同じということはないために、そこらへんの違いに着目しなくてはいけません。
注目すべきなのは、ブラネス・イ・ビダル准教授らの実験の場合、ドイツの倉庫労働者に関するものであったこと。ここでは、成績が悪くても解雇されることはほぼ皆無で、長年同じ仕事を続ける人が多く、しかも、基本1人で作業をするのでほかの労働者と顔を会わせることはほとんどなかったといいます。この労働環境は、バランケイ准教授が実験した米国のオフィス用の家具を販売する会社の環境とはかなり異なっていました。
営業担当者はいつも同僚と顔を合わせているし、そもそも米国は、解雇や転職が多くなっています。そして、倉庫で物を運ぶのと違い、オフィス用の家具の販売という仕事は不確実性が高く、努力したからといってそれが直接業績に結びつくわけではないという大きな違いもありました。
●学力テストの結果公表は成果主義成功の3つの条件を備えている?
私が相対的な順位を知らせない方が良いという話で思い出したのが、相対的な順位を知ることができるネットの1人用ゲームのことでした。私は一時夢中になってやっていおり、サービス停止までやめられませんした。ただその一方で順位表示のせいで高過ぎるレベルを知りショックを受けていた人たちも見ました。
とはいえ、上記の説明に従えば、このネットゲームで順位表示はプラスの効果の方が多そうです。ライバルと顔を合わせることはなく、解雇されるような心配もないですし、営業成績よりも努力の結果が反映されやすいものであるためです。
あと、こういったテーマでは注目度の高い「学力テストの結果公表」による競争の善悪については、この説明ではどちらとも言えない感じ。勉強は不確実性が高くなく、解雇の心配がありませんが、競争相手に顔見知りがいます。悪影響の可能性が高そうですけど、微妙なところです。
とりあえず、この2つ、3つの研究を見た結果では、成果主義の「成果」は場合によりけり…というもの。しかし、まだまだ研究としては足りないですし、たいへん興味深いものですのでもっと研究を進めてもらえればと思います。
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