(10/12追記:申し訳ありません。金大中大統領がノーベル平和賞を貰ったことがありました。すっかり忘れていました。正しくは自然科学系のノーベル賞で初です。以降、それで読み替えてください)
ロイターのノーベル賞候補に理研・十倉好紀 史上初!2回目の選出を書いたときにすぐやろうと思っていたのに、すっかり忘れていた話。向こうで使った
2014年9月25日ニュース「ノーベル賞予測で再び理研の十倉好紀氏」 | SciencePortal(2014年9月25日)に韓国人の話もあったのです。
この記事によると、"今回、韓国科学技術院(KAIST)の劉龍(リュ・リョン)教授が、化学分野のメソ多孔体材料に関する研究で、韓国から初の選出となった"そうです。「劉龍」って日本語読みすると「りゅうりゅう」ですね。(後で出てくるように韓国紙は「リュ・リョン」ではなく「ユ・リョン」の読みがな)
ちなみに大学のKAISTはアジア大学ランキングの上位(8位)で、京大(7位)と同じくらいの評価の大学です。(
アジア大学ランキングベスト100 東大が連覇で日本が最高の20校より)
トムソン・ロイターは「韓国や中国の科学には勢いがあり、10年以内にノーベル賞が出てきても驚かない」とみているとも記事にはありました。本当ですかね? ただ、さっき書いた大学ランキングでも、
アジア大学ランキング、日本がトップも中国と韓国が猛追で転落間近という話が出ています。大きな傾向としてはあるかもしれません。
これは韓国の話題ですので、当然韓国メディアの方が大きく取り上げています。で、記事を見てみると、韓国では「2人」と数えていました。
ノーベル賞:韓国人研究者二人が有力候補リスト入り Chosun Online | 朝鮮日報(2014/09/26 11:36)によると、以下の2人だそうです。
・劉竜(ユ・リョン)韓国科学技術院(KAIST)化学科特勲教授(KAISTの肩書の一つで、高い業績を挙げた教授が任命される)=59=
・チャールス・リー(韓国名:イ・ジャンチョル)ソウル大学医学部碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)=45=
劉竜(ユ・リョン)教授がノーベル化学賞、チャールス・リー教授が医学生理学賞の候補者リストです。チャールス・リー教授は韓国系カナダ人ってことみたいですね。
韓国系カナダ人なら韓国人じゃないじゃん…と思うかもしれませんが、こういう風に報道されるものです。日本で言うと2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんが近いだろうと検索すると、やはり南部さんは「日系アメリカ人」という分類のされ方をしていました。
「ノーベル賞予想」トムソン・ロイター、韓国人含む予想候補27人選定 | Joongang Ilbo | 中央日報(2014年09月26日15時03分 )では、チャールズ・リー教授を別の肩書きで紹介していました。
「米国ジャクソン研究所誘電体医学研究所長」と「ソウル大学客員招聘教授」です。ユ・リョン教授も「基礎科学研究院(IBS)ナノ物質および化学反応研究団長」という肩書きを加えています。
記事では研究内容に関する話があるかと期待したのですが、トムソン・ロイター引用栄誉賞のためか引用に関わる話ばかりでした。こういう切り口はつまんないですね。研究の中身より、ノーベル賞の受賞可能性に興味があるのかもしれません。
トムソン・ロイターコリアのキム・ジンウ支社長は「ユ団長は論文数、引用数に比べて高被引用論文の数が飛び切り高い。量より質的な面で優秀な結果を出し続けているという意味」と話した。昨年、ノーベル化学賞を受けたマーティン・カープラス、アリー・ウォーシェル、マイケル・レヴィットの全体論文対比の高被引用論文比率は1.0~2.1%だ。2010年の受賞者・根岸英一、2007年受賞者ゲルハルト・エルトルらは1%を下回る。その一方、ユ団長はこの比率が5.1%にもなる。キム支社長はリー教授については「非常に速いスピードで頭角を見せている新進気鋭の研究者」として「今後受賞の可能性が大きい」と話した。
一方、最初の朝鮮日報の方は研究内容によく触れています。
"劉竜教授は「機能性メソポーラス物質」の研究で、サウジアラムコ社のチャールズ・クレスジ最高技術責任者(CTO)、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のギャレン・スタッキー教授と共同受賞の候補者に挙げられている"そうです。ノーベル賞受賞可能性で言うと、3人までとなっているので他の研究との共同受賞となると誰か落ちるかもしれません。
研究テーマにある「メソポーラス物質」とは、"直径2-50ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の微細な穴が無数に開いた物質"のことです。何か私も大学時代に論文で読んだかも。聞き覚えだけはありますわ。利用法としては、"原油から揮発油を分離させたり化学反応を促進したりする触媒または薬物伝達体など"そうです。
劉竜教授の場合、"1999年、炭素からなるメソポーラス物質を初めて開発し"たことが、画期的だったようです。2011年のユネスコ(国連教育科学文化機関)と国際純粋・応用化学連合(IUPAC)が選定する「世界の化学者100人」や『サイエンス』誌の「2011年の10大研究成果」にも選ばれていたそうです。
もう一人のチャールス・リー教授。彼の場合もやはり3人セットで、カナダ・トロント大学のステファン・シェラー教授、コールド・スプリング研究所のマイクル・ウィグラー教授と共同受賞の候補者に選ばれています。
評価された功績は、"通常は2対あるヒトの遺伝子が3対以上あったり、逆に1対だけ、もしくは全くないという、いわゆる「遺伝子コピー数変異(CNV)」を04年に初めて発見した"こと。
この"CNVは、ヒト遺伝子10個につき1個の割合で発見され、個人間あるいは人種間の遺伝的差異の究明に大きく寄与した"とされています。他にリー教授は「エイズ免疫遺伝子やがん免疫遺伝子の数も人によって違い、患者個人に合わせた診療ができる」ともおっしゃっています。
おもしろいのが、「炭水化物をほとんど取らないイヌイット(カナダの先住民族)に比べ、コメを主食にする韓国人の方が、炭水化物の消化を誘導するアミラーゼを作る遺伝子がずっと多い。これはCNVの代表例」という話。
遺伝子の数が異なるというのは通常異常だとされるでしょうけど、その異常が人種間で見られる重要な差異の理由となっているんですね。というか、「10個につき1個」もあるって多いですね。こんなに珍しくないとは…。
この朝鮮日報の記事は良かったですね。日本のメディアもそうですけど、ノーベル賞かどうかだけに興味を持たず、研究の中身に焦点を合わせた記事を書くべきです。
また、韓国の話を取り上げたのは、普段ネットでは韓国人ノーベル賞受賞者がいないって話を喜んでしているためです。中央日報内容見てわかるように韓国人自体がそうなのでしょうが、日本のネットの人もノーベル賞を取れるかどうかにしか興味がない感じで残念です。
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