グルコサミン・コンドロイチンに効果なしという研究が数多くあります。それでもいいじゃない?となぜか勧めている人もいるんですけど、そうじゃありませんよという話。さらに、グルコサミン・コンドロイチンが無意味なのは、髪の毛を食っても髪が生えないのと同じ理由といった話を追加しています。
2017/11/30追記:
●学会もアメリカ政府も「グルコサミンに効果なし」
●EPAとDHA以外はすべて効果が期待できず、消費者庁が調査
2014/10/4:
寿命が伸びる? 人気サプリ「グルコサミン」の真実 :日本経済新聞(西沢邦浩 2014/7/17 6:30)によると、人気サプリメントであるグルコサミンは、ヒトを含む動物の軟骨やカニ・エビの殻などに含まれる糖の一種で、関節の痛みを緩和する、動きを潤滑にする、といった効果を期待されているそうです。
この成分の機能性については、2012年に消費者庁が「食品の機能性評価モデル事業」で評価を行い、結果を発表しています。高齢者に悩む人が多い変形性膝関節症の症状改善において、総合Bという評価を付けていました。「B」と聞くと結構良さそうに見えるのですが、そうでもありません。この「総合B」というのは、「適切な摂取によって効果があるかもしれない」という弱いものです。
ただ、同時に評価されたヒアルロン酸、ビルベリーエキスなどを含む11成分の中で、一番上位の総合A(適切な摂取によって効果が期待される)という評価を得たのは、医薬品にもなっている魚油成分であるEPAとDHAしかなかったため、グルコサミンだけが悪いわけではなく、みんなダメみたいですね。
ちなみにこの最高評価のEPAとDHAですら、
EPA、DHA(オメガ3脂肪酸)の魚油サプリ 効果なしどころか危険という説でやったように、相当否定的な説が出てきています。健康食品系は基本的にすべて科学的根拠が極めて脆弱だと考えるざるを得ない状況のようでした。
●グルコサミン・コンドロイチンに効果なしの研究
とりあえず、今回はグルコサミンの話。記事では、このグルコサミンの効果を否定する研究を紹介しています。例えば、10件の臨床試験を解析して、膝関節・股関節の変形性関節症に伴う症状に対する効果を評価した報告(BMJ;341,c4675,Sep16,2010)では、痛みの緩和も関節摩耗の予防効果も見られなかったという無残な結果になっていました。
こうした研究では、単独の研究よりもその単独の研究を多数合わせて解析したものの方が信頼性が高く、上記の研究が一番良いでしょう。ただ、2014年に入ってからも、米国で行われた、慢性的な膝関節痛を訴える患者約200人に対する臨床試験で、グルコサミンを24週間取っても病変部位に変化は起こらなかったという結果が発表されているそうです(Arthritis Rheumatol.; 66(4),930-939,2014)。
Wikipediaも見てみると、わざわざ「効果が無いとする研究」という項目ができていました。効果があるという科学的根拠は脆弱ですが、効果なしという証拠の方が強い感じ。以下のようなことが書かれています。
・50歳~60歳の6691人の女性を対象とした臨床医師が行った無作為化比較試験の結果では、治療目的でのグルコサミンの内服は、摂取と発症に関し有意な影響は見られず、発症予防の効果は証明されなかった。
^変形性膝関節症へのグルコサミン内服、初のRCTでは予防効果得られず日経メディカルオンライン 記事:2012.11.19 閲覧:2012.11.20
・メタ分析 (2008年6月まで、2つのデータベースで検索、無作為化比較試験2報について検討) において、変形性関節症の患者によるグルコサミンの長期 (3年間) 摂取は、関節腔の狭小化 (JSN) をわずかに抑えたという報告 (PMID:19544061) があるが、その後、これら2試験を含むメタ分析 (2010年6月まで、4つのデータベースで検索、200名以上を対象とした大規模無作為化比較試験10報) では、膝や腰の変形性関節症患者によるグルコサミンやコンドロイチン硫酸の単独または併用摂取は、関節の痛み、関節腔の狭小化に影響は与えなかった(PMID:20847017) 。
2つ目のメタ分析は、日経新聞と同じものかと最初思いました。10報を比較したというのが共通しています。でも、出ている論文の番号が違うなと検索したら、別の研究のようでした。これは、さらにグルコサミンに効果がないという可能性を高めるものだと考えて良いでしょうね。
BMJ. 2010 Sep 16;341:c4675. doi: 10.1136/bmj.c4675.
Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis. [BMJ. 2010] - PubMed - NCBIWandel S1, Jüni P, Tendal B, Nüesch E, Villiger PM, Welton NJ, Reichenbach S, Trelle S.
PMID: 19544061
Effect of glucosamine or chondroitin sulfate on the osteoarthritis progression: a meta-analysis. [Rheumatol Int. 2010] - PubMed - NCBILee YH1, Woo JH, Choi SJ, Ji JD, Song GG.
●グルコサミン・コンドロイチンは、無意味サプリなのか?
このように否定的な研究は多数あるようですが、"食品やその成分に関する科学的根拠は必ずしも定まったものではなく、しばしば、よい結果も「効果無し」とする結果も出るものだからだ"と日経新聞が書いていたように、様々な研究結果があります。ただちにこれで「決まり」というものではありません。この考え方は間違っていません。
ところが、ここからが日経新聞の作者である西沢邦浩さんの考え方がおかしいと思いました。普通は、複数の異なる研究結果がある、特に否定的な研究が見られるのだから、効果については慎重にならなくてはいけない…と考えるものです。
それなのに、様々な研究がある、だから、都合の悪い研究結果があっても気にしない…といった方向に話を持って行っています。これは理解できません。たとえば、こんなある大学病院の医師のエピソードを紹介しています。
<「実際に、患者によっては痛みが消える場合もある。エビデンス(科学的証拠)だけで個別の患者向けの指導が行われるのなら、医師がいる意味がないのでは」と、現代医学の主流になっているエビデンス主導の治療に疑問を呈する大学病院の医師もいる>
研究結果の差の他に人には必ず個人差があります。こんなことをお医者さんに言ったら釈迦に説法ですが、誰にでも必ず効く薬というのはあまりなく、人によって効きやすい薬・効きにくい薬というのもあります。そういったところで、副作用なども考慮しながらより良い治療を目指すなどで、必ず医師がいる意味というのはあります。
そういうことを考えると、「医師がいる意味がないのでは」って発言は理解できません。そして、それより何より医師が科学的な証拠を無視しちゃいかんだろう…と思うわけですが、作者は<食品成分だけに、安全性が担保されれば、あとは個人の効果実感が優先、という考え方は理にかなっているともいえる>などと解説していました。
言えないよ、バカ。そんなこと言い出したら、ホメオパシーだろうが何とか還元水だろうが何でもアリになります。プラセボ効果があるのだから、「患者が効果を実感できれば良い」ってわけないでしょう。しかし、さらに理解できないことに、西沢邦浩さんはプラセボ効果のこともも知っているようです。知っているのになぜ?と思いますが、次のような不思議理論を展開していました。
<人は誰しも、自分に都合のいい結果に目が行きやすいという性質を持っていることも忘れてはならないだろう。実際に、偽物の成分でも、信じて飲み続けた人には効果が出ることもある。だからこそ、食品の機能性の評価については、企業も消費者も“揺れ動いて当然”というくらいの認識で接するべきかもしれない>
●プラセボというのは要するにニセの薬
変なお医者さんってのは実は多いもので、質問サイトでも似たような逸話がありました。ただ、質問サイトの内容そのものはグルコサミンに極めて否定的なものなんですよね。
最近、CMなどで話題になっているグルコサミンやコンドロイチン。
これらを飲んで、果たして本当に膝の軟骨が修復する等と言った効果を得られるのでしょうか?
というのも、グルコサミンはアミノ酸と糖が引っ付いたアミノ糖、コンドロイチンは糖鎖に硫酸が付与したものですけど
これらを経口摂取してもアミノ酸や糖に分解されて吸収され、代謝系でエネルギーに変えられてしまう、
つまり効果が無いのではないか、と考えた次第でございます。
ベストアンサー
質問された方は健康食品に対して正しい認識をお持ちだと思います。健康食品には薬効はなく、薬効が表れれば医薬品なので薬事法に違反する可能性があります。ご指摘のように、胃腸で分解されるものは体内で作りかえられますので、効能はゼロといってもいいと思います。深刻な副作用を引き起こすこともあり得ますので、注意が必要です。
いわゆる健康食品は、「全てがそうだ」と決めつけてはいけないと思いますが、医学的に有効性が認められていない場合が多いようです。サンプルが少ないとか、その食品を摂る以外の別の行動をしているとか・・・。データが怪しいものが多いです。
http://okwave.jp/qa/q6974682.html
この流れの中でお医者さんの変な話が出てきています。
コンドロイチンと言いましても現在日本でサプリとして市販されている物はコンドロイチン塩酸塩です。ヨーロッパで効果が多少認められて医薬品として販売されている物はコンドロイチン硫酸塩です。アメリカでは塩酸塩はサプリとして、硫酸塩は医薬品として販売されているようです。(中略)
妻は、硫酸塩で効果がありました。しかし、医薬品で高いですから現在は塩酸塩を飲んでいます。塩酸塩ならほとんどプラシーボ効果なのではないかと思うのですが、そのようなことは妻には言いません。ドクターが、プラシーボ効果であっても本人が調子が良いと思って運動するようになればそれは立派な効果だと言います。私もそう思います。
プラシーボ(プラセボ)ってのは、偽薬です。普通は生理食塩水が使われますが、思い込みの効果を期待するだけなら何でも良いわけで塩水じゃなくて水道水でもいいでしょう。
市販のコンドロイチンサプリがプラセボ効果しかないのであれば、その何でもいいものをわざわざサプリメント・健康食品だと言って高く売りつけているわけですよ。それって詐欺なんじゃ? なぜそんなので納得しているのかわかりません。
●健康リスクもあるグルコサミンをわざわざ推奨するのか?
ちなみにWikipediaでは、人によってはむしろ健康リスクが出る可能性も指摘されているという記載もありました。
またクマリン血液凝固阻止剤を利用している患者にとってはグルコサミン含有サプリメントは健康リスクが指摘されている。グルコサミンとクマリン血液凝固阻止剤(有効成分ワルファリン又はアセノクマロール含有)を同時に摂取すると、血液凝固阻止作用が異常に強まるリスクがあるとドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)によって指摘されている。
日経新聞では「食品成分だけに、安全性が担保されれば、あとは個人の効果実感が優先」という話がありましたが、医薬品と比べてリスクが低いというだけであって、食品であってもリスクはあります。科学的根拠が薄弱でリスクだけあるものを無理して飲ませるというのは、おかしな話です。
先程も言ったように、グルコサミン・コンドロイチンに効果なしの研究結果は、これで「決まり」というものではありません。今後の研究がより進んでくれることを期待します。しかし、そういった研究結果を無視する、あるいは、科学的な効果なしでも思い込みで良くなる可能性があるなら偽物でも良いじゃない…という考えは到底理解できません。詐欺師に加担する考え方でしょう。
●グルコサミン、コンドロイチンが無意味なのは、髪の毛を食っても髪が生えないのと同じ理由
2017/05/11:内容は重なるところがあるものの、補足的に
ダマされるな! 飲んでも効かない「サプリ」一覧 えっ、あれも…?(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(2017.4.30)という記事から。
武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹院長は「飲んでもほとんど効果はない」としています。理由は、「グルコサミン、コンドロイチンが軟骨の成分であるのは事実ですが、サプリメントとして経口摂取しても軟骨は再生しません」というものでした。
グルコサミンやコンドロイチンは、体内に入ると分解されていまうので、わざわざそれらを飲むメリットはないんですね。他でも紹介した言い方ですが、「髪の毛の成分を飲んだからといって髪は生えないのと同じ」と表現されていました。
記事では、これらが効果なしと証明した研究として、2010年9月のBMJに掲載された論文を挙げていました。これは、最初の投稿で紹介したものと同じです。一方、医学総合誌『ニューイングランド・ジャーナル』('06年)の報告は多分未紹介。「1583人を4グループに分け、コンドロイチン単体、グルコサミン単体、その両方、偽薬単体を6ヵ月間投与したが、はっきりとした差は出なかった」という結果でした。やはり意味はないという結論です。
●学会もアメリカ政府も「グルコサミンに効果なし」
2017/11/30:グルコサミンの有効性には医師や専門家から疑問の声が出ており、国際変形性関節症学会(OARSI)や米国立衛生研究所(NIH)は最新のひざの痛みの治療ガイドライン上で「グルコサミンの有効性は全面的に失われている」と効果を否定しているそうです。なので、この時点でもうグルコサミンはいらないサプリと考えて良いでしょう。
ただ、有効となるケースがあるかも…という研究はまだ行われています。2017年7月28日に英国医師会誌電子版に、オランダのエラスムス大学メディカルセンターやユトレヒト大学メディカルセンター、英ノッティンガム大学、キール大学、スウェーデンのルンド大学など欧州の複数の整形外科医らの論文が発表されました。
研究で行われる実験の信頼性には差があります。「ランダム化比較試験」というものは、最も信頼性が高い実験です。この「ランダム化比較試験」も一つではなくいくつも行われていますので、それらを試験を解析したものというのが、さらに信頼性が高いベストな研究となります。今回がそういうもので、1994~2014年の間に実施された、グルコサミンを飲んだ場合と飲んでいない場合を比較した試験を分析しました。
なお、分析の対象は厳密に調査したものに限定しています。資金提供があると必ず不正が起きるというわけではないものの、バイアスがかかることを防ぐため、サプリメントを製造している企業から研究資金を提供されている研究も除外されました。ここはポイントかもしれませんね。今回調べたところ、資金を提供されている研究は、データを非公開にしているものばかりだったそうです。
さて、今回の解析の結果ですが、すべての研究でグルコサミンにひざの痛みに関する効果は、まったく確認されませんでした。これまでと同じ結果です。加えて、変形性関節症の重症度や炎症の状態、年齢、肥満や過体重といった諸条件ごとに分析しても、やはり何も効果はなかったことがわかりました。
(
全文表示 | グルコサミンを偽薬と比較してみると... ひざの痛みや炎症に何の効果もなし : J-CASTヘルスケア 2017/8/23 11:30 より)
一方で、研究にあたったエラスムス大学のシータ・ビエラ・ゼインストラ博士は、副作用があることは確認されていることを指摘。こちらは、以前も少し書いたリスクだけはあるという話です。この副作用のリスクは高いわけではなく、過剰な反応をする必要はありませんが、そもそもグルコサミンの効果が証明されていないのすから、それ以前の問題です。わざわざリスクを増やす方向に働くだけのサプリメントをとる必要は全くありません。
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