昨年投稿し損ねたのが多かったので、今年は早めに…と思ったのに間に合わなくなったノーベル賞候補シリーズ。化学賞が目前ですので今日は
ノーベル化学賞日本人有力候補 北川進,向山光昭,柴崎正勝などと二本立てで更新です。
2014/10/7:
●脂質二分子膜が功績?北九州産業学術推進機構の国武豊喜・理事長
●首都大学東京の春田正毅・教授は、ノーベル賞予想である引用賞を受賞済み
●もう一人引用栄誉賞を取っている九州大の新海征治・特別主幹教授も有力
2019/09/22:
●通説を覆した国武豊喜氏の発見、新海征治教授はノーベル賞落選
●脂質二分子膜が功績?北九州産業学術推進機構の国武豊喜・理事長
2014/10/7:まだ一度も名前出していないよな?って方が何人かいて、その一人が北九州産業学術推進機構の国武豊喜理事長です。國武豊喜と苗字を旧字で書くケースもあるようですね。
この国武豊喜さんが載っていたのは2013年の
朝日新聞デジタル:ノーベル賞を占う 来週発表 有力研究・日本人は(2013年10月3日9時23分)という記事。ただし、生体レベルの薄膜を人工的に作った北九州産業学術推進機構の国武豊喜理事長らが候補だと一言あっただけ。寂しいですね。私のメモが途切れているのでどの候補かすら書かれていませんが、たぶん内容的にノーベル化学賞です。
この研究内容について詳しく書いたところがなかなか見つからず、苦労。ノーベル賞級に該当する研究そのものかはわかりませんが、
合成二分子膜(1977年:国武豊喜)(PDF,岡畑恵雄)では、「高分子科学のブレークスルー」という特集で「合成二分子膜」を取り上げています。
「合成二分子膜」らしきものは
Wikipediaでも触れらており、<最も評価されている研究業績は、世界で初めて人工での脂質二分子膜形成を達成したものであろう>としていました。これが最大の功績っぽいですね。以下のような説明があります。
<脂質二分子膜は親・疎水性ユニットを持つ分子の自己集合によって形成されるが、この概念は国武氏を中心とする世界中の研究者の手によって大きく発展し、分子組織化学として科学の一分野を築いた。これらの知見は分子認識化学などを含む超分子科学の基礎となるものである。現在、超分子科学は基礎科学を超え新規な分子機能材料を創製する学問として発展しており、それらの基礎を築いた国武氏が達成した業績は非常に大きい>
●首都大学東京の春田正毅・教授は、ノーベル賞予想である引用賞を受賞済み
もう一つの
ノーベル化学賞日本人有力候補 北川進,向山光昭,柴崎正勝などでも引用した
ニッポンの頭脳は中国なんかに負けない 山中伸弥・望月新一・北川進・清滝信宏・村上春樹ほか ノーベル賞に手が届く日本の天才たち(「週刊現代」2012年10月13日号より)では、首都大学東京の春田正毅教授も化学分野で載っていました。
春田正毅教授は2012年にトムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞しています。「金の触媒作用の独自な基盤的発見」という研究内容です。週刊現代も当然この話がありました。
記事ではまず、ディーゼル排気の清浄装置やエアコンなどの空気清浄機能において、汚染物質を無害な物質に分解する「触媒」の役割というのは重要であるという説明があります。この"自動車の排気系などで使われてきたのは、白金などを使った触媒"です。
しかし、これらの触媒は主に高温でよく働くものでした。一方、春田教授が生み出した微細な金のナノ粒子による触媒は、常温でも、マイナス77度の極寒でも働くという画期的な特性を示します。
ノーベル賞候補シリーズで何度も書いているように、往々にして画期的な研究というのは非主流の注目されていなかったところから生まれるもので、これもそうでした。春田教授は「金は高価なこともあり、世界の誰も試していなかった」としており、触媒の場合は金を用いるということ自体が盲点になっていたようです。
なお、春田教授によれば、「この触媒がはじめて実用化されたのは'92年、松下(現・パナソニック)のビューティ・トワレというトイレの消臭機構」とのこと。トイレが最初ってのもユニークですね。
●もう一人引用栄誉賞を取っている九州大の新海征治・特別主幹教授も有力
ストックにはありませんでしたが、もう一人トムソン・ロイター引用栄誉賞を受けた方を追加。
Wikipediaによると、"トムソン・ロイター引用栄誉賞をジョージ・ホワイトサイズ(ハーバード大学)、Fraser Stoddart(ノースウェスタン大学)らと共に2003年から3年連続で受賞したとのこと。あれ、引用栄誉賞って1回貰っておしまいじゃないの?と驚きました。
Wikipediaでは、分子機械のパイオニアとしてたびたびノーベル化学賞候補として挙げられているとされています。ただ、詳しい話はなし。他に専門は多岐に渡るが、分子認識メカニズムの解明と、それらの知見を応用した分子機械システムの構築などを行っている…という説明がある程度です。
彼はトムソン・ロイター引用栄誉賞を貰っているので詳しい話があるだろうと検索したのですが、なぜか全然。
トムソンISIが2003年ノーベル賞の有力候補者を発表 - トムソン・ロイター(2003年9月29日)で、受賞テーマが「ナノスケールの機械製造およびマイクロエレクトロニクスの大幅な発展を約束する、分子自己集合に関する先駆的研究」とわかっただけでした。
●通説を覆した国武豊喜氏の発見、新海征治教授はノーベル賞落選
2019/09/22:読み直していて、新海征治教授の功績に関する説明が少なかったのに不満を持ち検索。しかし、相変わらず少なくてダメですね。また、Wikipediaが更新されていて、以下のような話が追加され、ノーベル賞落選が決まったことを明記。なぜ落選とわかるのかと言うと、同じ内容の研究成果が二度ノーベル賞になることはないためです。
<新海は分子機械のパイオニアとしてたびたびノーベル化学賞候補として挙げられていたが、2016年に「分子マシンの設計と合成」の功績からジャン=ピエール・ソヴァージュ、フレイザー・ストッダート、ベルナルト・L・フェリンハの3名にノーベル化学賞が授与されることが決定し、新海の受賞は成らなかった>
あと、3人の中で最も注目っぽい感じの国武豊喜さんについての情報を追加。今回は、
國武 豊喜 | 京都賞というところを見てみましょう。
國武豊喜博士は、1977年に人工分子から生体膜の基本構造である二分子膜が自己組織的に形成されることを世界ではじめて報告。さらに、これが広範な有機溶媒中の両親媒性化合物に起こる普遍的な現象であることを見出しました。これにより、「生体膜のような分子レベルの秩序組織構造は生体脂質によってのみ形成される」とする考えを覆したといいます。
またこれらの体系化と様々な合成技術の開発により、分子組織化学という新たな学問潮流の創出に本源的に貢献。今日、隆盛を極める分子組織化学の基礎的な部分を築いたと評価されているそうです。
さらにこれは、材料科学分野のイノベーションにもつながっているとのこと。「分子組織化学」は、先端材料設計の最も重要な概念の一つとして広く認められていることになったとされていました。
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